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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1148752
審判番号 不服2004-19422  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-21 
確定日 2006-12-04 
事件の表示 平成10年特許願第22638号「撮影装置の光学系」拒絶査定不服審判事件〔平成10年9月29日出願公開、特開平10-260454〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年1月18日に出願された特願平9-19887号の特許出願を基礎とする国内優先権を主張して平成10年1月19日に出願された特願平10-22638号の特許出願に係り、平成10年3月6日に願書の発明の名称を補正する手続補正がなされた後、原審において平成16年5月31日付の拒絶理由を通知したところ、平成16年7月16日付の意見書とともに明細書を補正する同日付の手続補正書が提出され、平成16年8月13日付で前記拒絶理由により拒絶査定がなされ、その後、前記拒絶査定を不服として平成16年9月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成16年10月14日付で明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成16年10月14日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成16年10月14日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成16年10月14日付の手続補正(以下、この補正を「本件補正」という。)は、平成16年7月16日付手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲についての
「【請求項1】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系により形成される画像を撮像するイメージセンサと、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系と、
前記光束が前記イメージセンサおよび前記ファインダー光学系に導かれている状態で、前記眼側から該ファインダー光学系に入射して前記光路分割素子の分割面を透過した光が前記像の形成位置にゴースト光として入射するのを防止するゴースト防止面と、を備えることを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項2】 前記ゴースト防止面は、入射光を吸収することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置の光学系。
【請求項3】 前記ゴースト防止面は、入射光を散乱させることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置の光学系。
【請求項4】 前記ゴースト防止面は、入射光を前記像の形成位置以外の領域に反射させることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置の光学系。
【請求項5】 前記光路分割素子は、前記分割面を間に含むプリズム型の素子であり、該プリズム素子の一面が前記ゴースト防止面として構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の撮影装置の光学系。
【請求項6】 前記光路分割素子は、プレート状のハーフミラーであり、前記ファインダー光学系に前記眼側から入射して該ハーフミラーを透過した光の達する壁面がゴースト防止面として構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の撮影装置の光学系。
【請求項7】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系とを備え、
前記光路分割素子の一面は、前記光束が前記分割面を介して前記ファインダー光学系に導かれている状態で、前記眼側から前記ファインダー光学系に入射して前記分割面を透過したゴースト光が前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されていることを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項8】 前記ゴースト防止面は、入射光を吸収することを特徴とする請求項7に記載の撮影装置の光学系。
【請求項9】 前記ゴースト防止面は、入射光を散乱させることを特徴とする請求項7に記載の撮影装置の光学系。
【請求項10】 前記ゴースト防止面は、入射光を前記像の形成位置以外の領域に反射させることを特徴とする請求項7に記載の撮影装置の光学系。
【請求項11】 前記ファインダー光学系に前記眼側から入射して前記光路分割素子の前記分割面を透過した光の達する面が前記ゴースト防止面として構成されていることを特徴とする請求項7に記載の撮影装置の光学系。
【請求項12】 前記ファインダー光学系は、前記光路分割素子により分割された光束を拡散させずに撮影者の眼に導くことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置の光学系。
【請求項13】 前記ファインダー光学系は、前記光路分割素子により分割された光束を拡散させずに撮影者の眼に導くことを特徴とする請求項7に記載の撮影装置の光学系。」
の記載を、
「【請求項1】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系により形成される画像を撮像するイメージセンサと、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を有する光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系と、
前記分割面を挟んでファインダー光学系と対向する面であって、前記撮影者の眼側から前記ファインダー光学系に入射する光束が、前記分割面を透過し、前記ファインダー光学系と対向する面で反射し、前記光路分割素子に再度入射し、前記分割面で前記イメージセンサ側に反射して、ゴースト光として前記イメージセンサに入射するのを防止するゴースト防止面と、を備えており、
前記ゴースト防止面は、入射光を吸収することにより、前記光路分割素子により分割された光束が前記イメージセンサおよび前記ファインダー光学系に導かれている状態を妨げることなく、前記イメージセンサにゴースト光が入射するのを防止することを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項2】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系により形成される画像を撮像するイメージセンサと、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を有する光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系と、
前記分割面を挟んでファインダー光学系と対向する面であって、前記撮影者の眼側から前記ファインダー光学系に入射する光束が、前記分割面を透過し、前記ファインダー光学系と対向する面で反射し、前記光路分割素子に再度入射し、前記分割面で前記イメージセンサ側に反射して、ゴースト光として前記イメージセンサに入射するのを防止するゴースト防止面と、を備えており、
前記ゴースト防止面は、入射光を散乱させることにより、前記光路分割素子により分割された光束が前記イメージセンサおよび前記ファインダー光学系に導かれている状態を妨げることなく、前記イメージセンサにゴースト光が入射するのを防止することを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項3】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系により形成される画像を撮像するイメージセンサと、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を有する光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系と、
前記分割面を挟んでファインダー光学系と対向する面であって、前記撮影者の眼側から前記ファインダー光学系に入射する光束が、前記分割面を透過し、前記ファインダー光学系と対向する面で反射し、前記光路分割素子に再度入射し、前記光路分割面で前記イメージセンサ側に反射して、ゴースト光として前記イメージセンサに入射するのを防止するゴースト防止面と、を備えており、
前記ゴースト防止面は、入射光を前記像の形成位置以外の領域に反射させることにより、前記光路分割素子により分割された光束が前記イメージセンサおよび前記ファインダー光学系に導かれている状態を妨げることなく、前記イメージセンサにゴースト光が入射するのを防止することを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項4】 前記光路分割素子は、前記分割面を間に含むプリズム型の素子であり、該プリズム素子の一面が前記ゴースト防止面として構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の撮影装置の光学系。
【請求項5】 前記光路分割素子は、プレート状のハーフミラーであり、前記ファインダー光学系に前記眼側から入射して該ハーフミラーを透過した光の達する壁面が前記ゴースト防止面として構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の撮影装置の光学系。
【請求項6】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像の形成位置側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系とを備え、
前記光路分割素子における前記分割面を挟んでファインダー光学系と対向する面は、前記撮影者の眼側から前記ファインダー光学系に入射する光束が、前記分割面を透過し、前記ファインダー光学系と対向する面で反射し、前記光路分割素子に再度入射し、前記光路分割面で前記像の形成位置側に反射して、ゴースト光として前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されており、
前記ゴースト防止面は、入射光を吸収することにより、前記光路分割素子により分割された光束が前記像の形成位置および前記ファインダー光学系に導かれている状態を妨げることなく、前記像の形成位置にゴースト光が入射するのを防止することを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項7】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像の形成位置側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系とを備え、
前記光路分割素子における前記分割面を挟んでファインダー光学系と対向する面は、前記撮影者の眼側から前記ファインダー光学系に入射する光束が、前記分割面を透過し、前記ファインダー光学系と対向する面で反射し、前記光路分割素子に再度入射し、前記光路分割面で前記像の形成位置側に反射して、ゴースト光として前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されており、
前記ゴースト防止面は、入射光を散乱させることにより、前記光路分割素子により分割された光束が前記イメージセンサおよび前記ファインダー光学系に導かれている状態を妨げることなく、前記像の形成位置にゴースト光が入射するのを防止することを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項8】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像の形成位置側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系とを備え、
前記光路分割素子における前記分割面を挟んでファインダー光学系と対向する面は、前記撮影者の眼側から前記ファインダー光学系に入射する光束が、前記分割面を透過し、前記ファインダー光学系と対向する面で反射し、前記光路分割素子に再度入射し、前記光路分割面で前記像の形成位置側に反射して、ゴースト光として前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されており、
前記ゴースト防止面は、入射光を前記像の形成位置以外の領域に反射させることにより、前記光路分割素子により分割された光束が前記イメージセンサおよび前記ファインダー光学系に導かれている状態を妨げることなく、前記像の形成位置にゴースト光が入射するのを防止することを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項9】 前記ファインダー光学系に前記眼側から入射して前記光路分割素子の前記分割面を透過した光の達する面が前記ゴースト防止面として構成されていることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の撮影装置の光学系。
【請求項10】 前記ファインダー光学系は、前記光路分割素子により分割された光束を拡散させずに撮影者の眼に導くことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の撮影装置の光学系。
【請求項11】 前記ファインダー光学系は、前記光路分割素子により分割された光束を拡散させずに撮影者の眼に導くことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の撮影装置の光学系。」
と補正することを含むものである。

2.補正の適否の検討
(1)本件補正に係る請求項1ないし5についての補正
本件補正前の請求項2(これを「旧請求項2」という。以下同様に他の請求項nについても「旧請求項n」という。)を削除して、前記旧請求項2に記載されていた発明特定事項を旧請求項1に繰り入れるとともに、旧請求項1に係る発明にさらに他の発明特定事項を付加することにより旧請求項1を限定し、また、旧請求項3ないし6について、それらの請求項の記載形式を、旧請求項1を引用する引用形式から独立形式に変更するとともに、旧請求項2が削除されたことに伴い、旧請求項3ないし6の項の番号をそれぞれ繰り上げて請求項2ないし5とする補正がなされたものである。
(2)本件補正に係る請求項6ないし8についての補正
旧請求項8を削除して、前記旧請求項8に記載されていた発明特定事項を旧請求項7に繰り入れるとともに、旧請求項7に係る発明にさらに他の発明特定事項を付加することにより旧請求項7を限定し、また、旧請求項9及び旧請求項10について、それらの請求項の記載形式を、旧請求項7を引用する引用形式から独立形式に変更するとともに、旧請求項2及び旧請求項8が削除されたことに伴い、旧請求項7ないし10の項の番号をそれぞれ繰り上げて請求項6ないし8とする補正がなされたものである。
(3)本件補正に係る請求項9についての補正
旧請求項2及び旧請求項8が削除されたことに伴い、旧請求項11の項の番号を繰り上げて請求項9とするとともに、引用形式から独立形式に請求項の記載形式が変更されたことに伴い、旧請求項11が引用していた旧請求項7を、「請求項6から請求項8のいずれか」とする補正がなされたものである。
(4)本件補正に係る請求項10及び請求項11についての補正
旧請求項2及び旧請求項8が削除されたことに伴い、旧請求項12及び旧請求項13の項の番号をそれぞれ繰り上げて請求項10及び請求項11とする補正がなされたものである。
本件補正は上記(1)ないし(4)のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号の「請求項の削除」、同条第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」及び同条第4項第4号の「明りようでない記載の釈明」の各事項を目的とする補正に該当する。

上記のとおり、本件補正に係る請求項1ないし11についての補正が、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正を含んでいるので、前記請求項1ないし11に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

3.独立特許要件の有無
(1)本願の本件補正後の発明
本件補正後の、特に請求項7及び請求項8に記載された発明(以下、これらを「本願補正発明7」及び「本願補正発明8」という。)は、請求項7及び請求項8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(上記「第2」の「1.補正の内容」欄を参照)。
「【請求項7】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像の形成位置側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系とを備え、
前記光路分割素子における前記分割面を挟んでファインダー光学系と対向する面は、前記撮影者の眼側から前記ファインダー光学系に入射する光束が、前記分割面を透過し、前記ファインダー光学系と対向する面で反射し、前記光路分割素子に再度入射し、前記光路分割面で前記像の形成位置側に反射して、ゴースト光として前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されており、
前記ゴースト防止面は、入射光を散乱させることにより、前記光路分割素子により分割された光束が前記イメージセンサおよび前記ファインダー光学系に導かれている状態を妨げることなく、前記像の形成位置にゴースト光が入射するのを防止することを特徴とする撮影装置の光学系。
【請求項8】 被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像の形成位置側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系とを備え、
前記光路分割素子における前記分割面を挟んでファインダー光学系と対向する面は、前記撮影者の眼側から前記ファインダー光学系に入射する光束が、前記分割面を透過し、前記ファインダー光学系と対向する面で反射し、前記光路分割素子に再度入射し、前記光路分割面で前記像の形成位置側に反射して、ゴースト光として前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されており、
前記ゴースト防止面は、入射光を前記像の形成位置以外の領域に反射させることにより、前記光路分割素子により分割された光束が前記イメージセンサおよび前記ファインダー光学系に導かれている状態を妨げることなく、前記像の形成位置にゴースト光が入射するのを防止することを特徴とする撮影装置の光学系。」(下線は当審が付与)

(2)本願補正発明7について
本願補正発明7は、上記(1)の【請求項7】に記載のとおりであり、その請求項7の中に、「前記イメージセンサ」なる用語が唐突に記載されている。
しかしながら、請求項7の該「前記イメージセンサ」の記載個所の前に「イメージセンサ」なる用語が前記されてなく、しかも、請求項7の中の他の部分にも「イメージセンサ」なる用語が記載されていない。
上記のとおり、本願補正発明7が果たして「イメージセンサ」を備えているのか否かについて、請求項7の記載が明確でないことにより、本願補正発明7の構成を特定することができないので、本願補正発明7が明確であるということができない。

(3)本願補正発明8について
本願補正発明8は、上記(1)の【請求項8】に記載のとおりであり、その請求項8の中に、「前記イメージセンサ」なる用語が唐突に記載されている。
しかしながら、請求項8の該「前記イメージセンサ」の記載個所の前に「イメージセンサ」なる用語が前記されてなく、しかも、請求項8の中の他の部分にも「イメージセンサ」なる用語が記載されていない。
上記のとおり、本願補正発明8が果たして「イメージセンサ」を備えているのか否かについて、請求項8の記載が明確でないことにより、本願補正発明8の構成を特定することができないので、本願補正発明8が明確であるということができない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明7及び本願補正発明8は、特許法第36条第6項第2号に規定する「特許を受けようとする発明が明確であること。」の要件に適合していないので、本願補正発明7及び本願補正発明8を含む本願特許出願の特許請求の範囲の記載が、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていないことにより、同法第49条第4項の規定により本願特許出願は拒絶されるべきものとされるから、したがって、本件補正により補正された本願補正発明7及び本願補正発明8は、特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであり、本件補正後の特許請求の範囲に記載された請求項7及び請求項8に係る発明を含む本願の特許請求の範囲の記載が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定するところの「特許出願の際独立して特許を受けることができるもの」に適合していないから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
上記「第2」欄に前述した理由により、平成16年10月14日付の手続補正が却下されたことから、当審が審理すべき本願発明は、平成16年7月16日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特にその請求項7に係る発明は、次のとおりのものである(上記「第2」の「1.補正の内容」欄を参照)。
「【請求項7】被写体の像を形成する撮影光学系と、
前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子と、
該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系とを備え、
前記光路分割素子の一面は、前記光束が前記分割面を介して前記ファインダー光学系に導かれている状態で、前記眼側から前記ファインダー光学系に入射して前記分割面を透過したゴースト光が前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されていることを特徴とする撮影装置の光学系。」(以下、これを「本願発明7」という。)

2.引用刊行物の記載事項及び周知技術
(1)原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願前に頒布された実願昭57-11387号(実開昭58-115727号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物1」という。)には、「カメラの光学系」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「2.実用新案登録請求の範囲
撮影レンズと、該レンズの透過光が入射するビームスプリッタと、該ビームスプリッタから出射した第1の光束を開口絞りを介して撮像面へ導く撮影光学系と、前記ビームスプリッタから出射した第2の光束を接眼レンズへ導くファインダ光学系とを有するカメラの光学系において、
前記ファインダ光学系は、前記第2の光束の主光線が光軸と交わる位置近傍に配設されたファインダシヤツタを有し、該シヤツタは、該第2の光束を全く遮らない全開位置と、部分的に遮り透過光量を減少させる半開位置と、完全に遮り前記接眼レンズからの逆入射光を遮蔽する 全閉位置との間を少なくとも変位可能であることを特徴とするカメラの光学系。」(明細書1頁4行?2頁1行)
「本考案は、接眼レンズから入射し撮影画面に悪影響を与える逆入射光を遮断するファインダシヤツタに関する。特にビデオカメラ8mmムービーカメラ等に組み込まれるファインダシヤツタに関する。
従来この種のファインダは、アイピースシヤツタと称して接眼レンズの近傍に配置されることが多く、単に逆入射光の進入を防止する機能しかもつていなかつた。
本考案の目的は、逆入射光遮断機能に加え、ファインダ光学系の透過光量を制限する機能を持つたファインダシヤツタを得ることにある。これにより、非常に被写体輝度が高く、ファインダ視野が眩しい撮影状況、例えば逆光撮影の場合に光量制限を行ない、眩しさを低減できる。
以下、本考案の実施例を図面に従って説明する。
第1図は、ビデオカメラの光学系を示しており、前方レンズ群1と後方レンズ群2とから成る撮影レンズを有し、両レンズ群の間にファインダー光路を分岐するためのビームスプリッター3と開口絞り4と撮影光束を垂直に反射させるための直角プリズム5とが設けられている。そして撮像管6は直角プリズム5によって折り曲げられた光軸にそつて縦に配置されている。そのため、撮影装置の大きさがかなり小型に構成されている。図中カメラの全体的外形の一例を二点鎖線で示した。ここで、前方レンズ群1は図示なき複数のレンズから成り変倍レンズ群及び合焦レンズ群としての機能を有するとともに後方レンズ群2はマスターレンズとしての機能を有し、そして、ビームスプリッター3で反射されるファインダー用光束はファインダーマスターレンズ7を通り、ペンタプリズム8の入射面8aを透過し、第1反射面8b及びダハ面である第2反射面8cで反射された後、焦点板9上に正立像を形成する。この正立像は接眼レンズ10を通して観察者眼Eによつて観察される。
さらに、ビームスプリッタ3とペンタプリズム8との間には、ファインダシヤツタ11が配設されている。その配設位置は、開口絞り4と光学的に等価な位置すなわちファインダ光束の主光線が光軸と交わる位置の近傍である。」(明細書2頁3行?4頁9行)
「以上説明したように、本考案によれば逆入射光の進入防止機能と共に、ファインダ視野が眩しい場合に適宜ファインダ光束の光量を制限できるファインダシヤツタを得ることができる。」(明細書7頁7?11行)
そして、添付の第1図には、前方レンズ群1側からの入射光を、撮像管6の撮像面へ導く撮影光学系と、正立像が形成される焦点板9及び接眼レンズ10を通して観察者眼Eへ導くファインダ光学系とに2分する分割面を有するプリズムからなるビームスプリッタ3が記載されている。

そうしてみると、上記引用刊行物1には、その摘記事項及び図面の記載から、次の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。
「前方レンズ群1と後方レンズ群2とからなる撮影レンズと、前方レンズ群1側からの入射光束を2分する分割面を有するプリズムからなるビームスプリッタ3と、を有するカメラの光学系において、
前記ビームスプリッタ3の前記分割面により、前記ビームスプリッタ3に入射した前方レンズ群1側からの光束が、前記分割面を透過して出射する光束を撮像管6の撮像面へ導く撮影光学系への第1の光束と、前記分割面で反射されて出射する光束を正立像が形成される焦点板9及び接眼レンズ10を通して観察者眼Eへ導く前記ファインダ光学系への第2の光束とに分割されるとともに、
接眼レンズから入射し撮影画面に悪影響を与える逆入射光を遮断するために、前記ファインダー光学系の光路中に配設したファインダシャッタ11によりファインダ側からの光束を遮断するようにした逆入射光の進入防止機能を有するカメラの光学系」

(2)原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願前に頒布された特開昭60-258502号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「内面反射の防止処理を施したプリズム」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「〔従来技術〕
種々の光学系において光路を偏向させるための光学部品として、様々なプリズムが使用されている。このようなプリズムの多くは、予定されている反射面あるいは光入射面、光出射面の他に、プリズムブロックを構成するための付属面を備えているのが普通である。こうした付属面は、本来、光入射があってはならない面であるが、プリズムの軽量、コンパクト化などの要請から、前記付属面が光路に接近され、この付属面にも若干の光入射が生じるのが現実である。こうして付属面に入射した光は、そこで反射されることになるが、こうして生じた反射光は迷光となってプリズム内、そして光学系内を伝播し、例えば結像面においてゴーストやフレアーを発生する一因となる。
このような弊害を防ぐため、従来においては、上述したような付属面、すなわち本来は反射面として利用することを意図していない面を荒摺りして粗面とし、その上に黒色塗料を塗ることにより、この面に入射した光をそこで吸収するようにしている。」(1頁右欄3行?2頁左上欄3行)
「〔第1実施例〕
本発明の原理構成を示す第1図において、例えば硝材BK7(屈折率no≒1.516)からなるプリズムを展開して図示したガラスブロック1を、光軸2により設定される結像光路内に配置し、絞り3を通り結像面4に至る結像光束5を、入射端面6から入射させ、出射端面7から出射させる場合、ガラスブロック1を構成するための付属面8には、結像光束5が入射しないようにされている。しかし、符号9で示したような結像に寄与しない光線の一部は、付属面8に入射されることになる。
前記付属面8には、透明のアクリル板10(屈折率n1≒1.491)が、ガラスブロック1の屈折率に等しい屈折率を持った接着材、例えばバルサム等により接合されている。このアクリル板10の外表面には、このアクリル板10の成型時に同時形成された鋸歯状の光減衰領域12が設けられている。なお、この光減衰領域12にさらに黒色塗料を塗布しておいてもよい。
スネルの法則で知られるように、前記付属面8に入射した光線9の内、前記屈折率n0,n1から、その入射角θが79.58°の臨界角以下の殆どの光線は、付属面8を透過し、第2図に示すように光減衰領域12に向けられる。光減衰領域12に入射した光線9は、図示のように鋸歯状部分で反射を繰り返しながら減衰されることになるので、ガラスブロック1に再入射されることがない。従って、結像面4におけるゴースト、フレアーの発生を抑えることができる。……。
また、光減衰領域12の形状としては、鋸歯状のみならず、例えば先端に突出した多数の針状に構成してもよい。さらに、この光減衰領域12を保護したり、あるいはガラスブロック1の取り付けを簡単にするために、光減衰領域12を遮光性材料で被覆し、その外表面を平らにすることも勿論可能である。」(2頁右上欄1行?同頁右下欄3行)
「〔発明の効果〕
以上のように、本発明においては、プリズムを構成している硝材の屈折率を考慮し、プリズムの予定反射面以外の付属面に、光減衰領域を有すると共に、所定の屈折率をもった透光材を接合することによりそこでの反射をなくすようにしたから、プリズム内面での反射を確実に抑えることができる。」(3頁右上欄14行?同頁左下欄1行)

(3)本願特許出願前に頒布された刊行物である特開昭61-9845号公報(以下、「周知技術文献1」という。)には、「光学式ピックアップ装置」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
(1)光ビームを分離する為の略直方体形状のハーフプリズム若しくは偏光ビームスプリッタを有する光学式ピックアップ装置であって、
光ビームの入射面若しくは出射面として利用しない前記ハーフプリズム若しくは偏光ビームスプリッタの面を光乱反射面及び若しくは光吸収面としたことを特徴とする光学式ピックアップ装置。」(1頁左欄3?10行)
「第5図はノイズの発生原因の一つであるハーフプリズム(3)とそれを通るレーザビーム光の干渉作用を示している。図に於いて、入射光(A)はハーフプリズム(3)に依り、その約半分が透過光(B)となり、残りの半分が反射光(C)となる。透過光(B)はディスクにより反射されて反射光(B′)となり、更にハーフプリズム(3)にて反射されてフォトセンサ(7)に向う情報光(D)となる。
一方、反射光(C)はハーフプリズム(3)の壁面(3a’)によって約1%前後が反射され、残りがハーフプリズム(3)の位置決め兼保持用の基台壁面(9)にて反射され、両者が反射光(C’)となる。
而して、情報を含んだ光(D)と情報を何等含んでいない反射光(C’)が相互に干渉し、その干渉波がフォトセンサ(7)に入射する。」(2頁左上欄10行?同頁右上欄5行)
「ニ、発明の構成
本発明に於いては、光ビームの入射面若しくは出射面として利用しないハーフプリズム若しくは偏光ビームスプリッタの面を、光乱反射面及び若しくは光吸収面として、不必要な反射光を抑制したものである。
ホ、実施例
第2図は本発明に係るピックアップ装置に使用するハーフプリズム(3)を示す。略直方体形状のハーフプリズム(3)の、光ビームの入射面若しくは出射面の何れでもない面を、光学的に粗い面(3a)とし、更にその表面に光を吸収し易い膜(3b)を形成するものである。即ち、ハーフプリズム(3)の一面を粗ずり仕上げにすることにより粗い面(乱反射面)(3a)を形成し、更に墨、タール、黒色系塗料等を蒸着、吹付け、塗布等して光吸収面(3b)を形成するものである。
斯かるハーフプリズム(3)を使用した場合、第3図に示す如く反射光(C)の一部は乱反射面(3a)にて乱反射(発散)され、また、乱反射面(3a)を透過した反射光(C)は光吸収面(3b)にて吸収される為、情報を含んだ光(D)と光路を同じくする光は著しく減少することとなる。」(2頁左下欄12行?同頁右下欄14行)
「へ、発明の効果
以上述べた本発明に依れば、不必要な光は乱反射及び若しくは吸収するように為し、情報を含んだ光の光路と一致させないように構成したので、従来のものに比較して、斯かる不必要な光の強度を1/10以下に減少させることができ、干渉ノイズレベルも10dB以上の改善が達成され、更にRF信号への干渉波の重畳もかなり低レベルに抑えることができる。」(3頁左上欄2?10行)

3.対比
本願発明7と前記引用発明とを比較すると、引用発明における「分割面を透過して出射する光束を撮像管6の撮像面へ導く撮影光学系」、「前方レンズ群1」、「前方レンズ群1側からの入射光束を2分する分割面を有するプリズムからなるビームスプリッタ3」、「分割面で反射されて出射する光束を正立像が形成される焦点板9及び接眼レンズ10を通して観察者眼Eへ導くファインダ光学系」、「撮像管6の撮像面」及び「カメラの光学系」のそれぞれが、本願発明7の「被写体の像を形成する撮影光学系」、「撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズ」、「被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子」、「光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系」、「像の形成位置」及び「撮影装置の光学系」のそれぞれに対応する。
また、本願特許出願の明細書の段落【0003】に「なお、本明細書においては、ゴースト光を、撮影画質に悪影響を与えるような不要光という意味で用いている。」と定義されていることから、引用発明の「接眼レンズから入射し撮影画面に悪影響を与える逆入射光」は、本願発明7の「ゴースト光」に対応する。
そして、引用発明の「接眼レンズから入射し撮影画面に悪影響を与える逆入射光を遮断するために、前記ファインダー光学系の光路中に配設したファインダシャッタ11」と、本願発明7の「前記眼側から前記ファインダー光学系に入射して前記分割面を透過したゴースト光が前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面」とは、いずれも接眼レンズ側からファインダー光学系に入射して撮影画質に悪影響を与えるゴースト光の進入を防止するための手段であるから、両者は「ゴースト光進入防止手段」である点において共通する。

そうすると、本願発明7と引用発明とは、「被写体の像を形成する撮影光学系と、前記撮影光学系を構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズより前記像側に配置され、前記被写体側から入射して前記像を形成する光束を分割する分割面を間に含むプリズム型の光路分割素子と、該光路分割素子により分割された光束を撮影者の眼に導くファインダー光学系とを備え、ゴースト光進入防止手段を有する撮影装置の光学系」である点で、両者の構成が一致し、次の点で構成が相違する。
相違点1:ゴースト光進入防止手段が、本願発明7では「光路分割素子の一面は、眼側からファインダー光学系に入射して分割面を透過したゴースト光が像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されている」のに対し、引用発明では、ファインダー光学系の光路中に配設したファインダシャッタ11により接眼レンズ10から入射した逆入射光束を遮断するようにした点。
相違点2:眼側からファインダー光学系に入射して分割面を透過したゴースト光が像の形成位置に入射する場合に、本願発明7では、光束が分割面を介してファインダー光学系に導かれている状態であるのに対し、引用発明では、入射光束がビームスプリッタ3の分割面を透過して撮像管6への撮影光学系に導かれると同時に、ビームスプリッタ3の分割面で反射されて接眼レンズ10へのファインダー光学系にも導かれるものの、ファインダー光学系の光路中に配設したファインダシャッタ11により接眼レンズ10からの逆入射光束が遮断されることにより、入射光束が分割面を介して接眼レンズ10までは導かれない点。

4.相違点についての判断
(1)相違点1について
プリズムに入射した光が内面反射を繰り返した後に光反射、光入射及び光出射を意図しない面からの反射光が迷光となって結像面に有害なゴースト、フレアーを発生させることがないようにするために、プリズムの光反射、光入射及び光出射を意図しない面を、例えば粗面とすることにより有害光を吸収させるようにした、ゴースト光進入防止手段としてのゴースト防止面は、本願特許出願時の周知技術(一例として、引用刊行物2の記載を参照。)である。
また、プリズム型光路分割素子においても、プリズム型光路分割素子に入射した光が、プリズム型光路分割素子の分割面を透過し、内面反射を繰り返した後に分割面を再透過することにより、光入力部にゴースト光となって入射して有害なゴースト、フレアーを引き起こさないようにするために、プリズム型光路分割素子の一面を、例えば粗い面にして乱反射面を形成し、更に黒色系塗料を塗布して光吸収面を形成するなどして、不必要な光の反射は抑制するようにした、ゴースト光進入防止手段としてのゴースト防止面は、本願特許出願時の周知技術(一例として、周知技術文献1の記載を参照。)である。
そうしてみると、引用発明のゴースト光進入防止手段としての「ファインダシャッタ11」に代えて、引用発明におけるビームスプリタ3に対し、前記周知技術であるゴースト光進入防止手段を採用することにより、本願発明7の前記相違点1に係る前記「光路分割素子の一面は、眼側からファインダー光学系に入射して分割面を透過したゴースト光が像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面として構成されている」構成とすることは、当業者が容易に想到できることである。

(2)相違点2について
引用発明の「接眼レンズから入射し撮影画面に悪影響を与える逆入射光を遮断するために、前記ファインダー光学系の光路中に配設したファインダシャッタ11」と、本願発明7の「前記眼側から前記ファインダー光学系に入射して前記分割面を透過したゴースト光が前記像の形成位置に入射するのを防止するゴースト防止面」は、いずれも接眼レンズ側からファインダー光学系に入射して撮影画質に悪影響を与えるゴースト光の進入を防止するための手段であり、両者は「ゴースト光進入防止手段」である点において互いに代替性があるといえるから、引用発明におけるビームスプリタ3に対して前記周知技術を採用する場合には、ファインダーの接眼レンズ10から撮像管6の撮像面に逆入射して撮影画面に悪影響を与えるゴースト光の進入を防止するための手段である「ファインダシャッタ11」は、同じく「ゴースト光進入防止手段」である前記周知技術の「プリズム型光路分割素子の一面を、例えば粗い面とすることにより不必要な光の反射は抑制するようにした、ゴースト光進入防止手段としてのゴースト防止面」に代替されることになるから、引用発明に周知技術を採用した場合には、前記周知のゴースト光進入防止手段が奏する作用効果の当然の結果として、「光束が分割面を介してファインダー光学系に導かれている状態」が維持されるということになる。
したがって、本願発明7における上記相違点2は、本願発明7の「ゴースト光進入防止手段」が奏する作用効果を、単に請求項7に表明したものにすぎないから、前記相違点2は構成上の実質的な相違点とはいえない。

そして、本願発明7の奏する作用効果は、引用発明、引用刊行物2に記載された発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明7は、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明7が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-13 
結審通知日 2006-10-13 
審決日 2006-10-24 
出願番号 特願平10-22638
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 柏崎 正男
森口 良子
発明の名称 撮影装置の光学系  
代理人 松岡 修平  

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