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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61G
管理番号 1148841
審判番号 不服2004-1852  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-27 
確定日 2006-12-11 
事件の表示 平成10年特許願第238807号「台車式担架」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月29日出願公開、特開2000- 60901号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成10年8月25日の出願であって、平成15年12月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年1月27日に審判請求がなされ、平成16年2月5日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成16年2月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
<補正却下の決定の結論>
平成16年2月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
<理由>
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「 両側が略平行する棒状の枠体に形成し、その間にシートを張架してなる主フレームと、
前記主フレームの枠体の前記フレーム車輪側の端部に固着し、前記フレーム車輪と共に前記主フレームを水平に対して略60?90度の角度で起立させ、かつ、前記シートに載せたものの移動を拘束する前記主フレームに対して略直角に形成された受板と、
前記主フレームの枠体の一端部側の幅中央に回動自在に取付けてなる1輪からなり、該車輪が前記受板より主フレームに対して外側であって、かつ前記主フレームが構成する平面を横切る位置に設けられ、中実のゴムタイヤを外周に配設した直径20乃至40cmのフレーム車輪と、
前記主フレームの枠体の反対端部側に配設し、前記主フレームの長さ方向の延長状態を維持できる副フレームと、
前記主フレームの枠体の反対端部側に回動自在とし、前記主フレームの長さ方向に対して略直角状態を維持し、かつ、前記主フレームとの重ね合せ方向に折畳んだ状態となる脚部と、前記脚部の幅方向の両側に回動自在に取付けてなる2輪からなる脚車輪とを具備することを特徴とする台車式担架。」

2.補正の目的の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「フレーム車輪」に「中実のゴムタイヤを外周に配設した直径20乃至40cm」の限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、登録実用新案第3036595号公報(以下、「引用例1」という。)、実願昭56-157024号(実開昭58-64323号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)、実願昭56-139891号(実開昭58-46320号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)にはそれぞれ次の事項が図面とともに記載されている。
ア.引用例1
(ア)「本考案は、地震や崖崩れ等の天災、交通事故や建築物の倒壊等の人災等によって自力で脱出できなくなった人やペット等を救助する所謂レスキュー活動に使用されるショベル、鋸、ロープ等の緊急救助用品を保管し搬送する緊急救助用品格納箱及び緊急救助用品運搬車に関する。」(段落【0001】)
(イ)「 図3?図6に於いて、15は、格納箱1の収納部1aに収納可能で、且つ開口部2から出入れ可能な大きさの運搬車を示し、該運搬車15は、長手方向に伸縮可能なフレーム16にキャスター17が設けられ、更に該フレーム16には薄手のシート25が敷設されてなる。
さらに詳しくは、前記フレーム16は、パイプ状に形成された一対の主杆18と、主杆18の下端に設けられた側面視略L字状の受板19と、一対の主杆18の上端から嵌入脱自在に遊嵌入された正面視略U字状の副杆20とからなり、該副杆20を主杆18に対して出し入れすることにより、フレーム16は伸縮自在である(図3及び図5参照)。」(段落【0014】
(ウ)「 かかる副杆20が主杆18から外れない程度に引き出した際、即ち、フレーム16を最大限に伸ばした際、フレーム16のほぼ内側に人を横臥させて担持することができる(横臥とは、図5二点鎖線で示すように、人を横にして寝かせることをいう)。
尚、副杆20は、主杆18に適宜螺着されたネジ21の先端によって押圧されることにより主杆18に対して移動不能に固定されており、該ネジ21を弛めることにより副杆20は出し入れ自在となる。」(段落【0015】)
(エ)「さらに、前記一対の主杆18の間には、架橋部材22が3ケ所固着されて恰も梯子状に形成され、一方、前記副杆20のハンドル部20a の下方には、架橋部材23が固着されている。
加えて、前記キャスター17は、フレーム16の受板19に固定されており、運搬車15は、受板19の下端部19aとキャスター17とによって自立可能である。」(段落【0016】)
(オ)「また、図9に示すように、運搬車15のフレーム16に、一端にキャスター32が設けられた4本の脚部材33を回動自在に設けてもよい。
かかる脚部材33を突出させると(図9の二点鎖線で示す)、該脚部材33によってフレーム16が略水平に支持され、且つ脚部材33のキャスター32の転がりにより運搬車15は移動自在となるから、フレーム16を伸ばして担架として使用する際に運搬車を担がなくても負傷者を移送することができ、従って、一人でも負傷者を移送することが可能となるという利点がある。
また、担架として使用しない場合には、脚部材33を畳んでフレーム16に添えておくことができるから緊急救助用品の搬送に際しては邪魔にならない。
尚、上記キャスター32が設けられた脚部材33は、フレーム16に回動自在に設けられることによってフレーム16に出退自在に設けられているが、脚部材33を出退自在に構成する手段は上記構成に限定されるものではない。」(段落【0027】)
(カ)図4、図5には、両側が略平行するパイプ状に形成された一対の主杆18と、主杆18の下端に、主杆18に対して略直角に取り付けられた受板19、及び主杆18が構成する平面を横切る位置で受板19に固定された2輪のキャスター17と、主杆18の上端側に配設された副杆20とからなり、薄手のシート25が主杆18、副杆20間に敷設されている緊急救助用品運搬車が図示されている。
(キ)図9には、運搬車15のフレーム16に、フレーム16の長さ方向に対して略直角様態を維持し、かつ、フレーム16との重ね合わせ方向に折畳んだ状態となる脚部材33を回動自在に取り付けた緊急救助用品運搬車が図示されている。

上記(ア)?(エ)の記載事項、及び(カ)の図示内容からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「パイプ状に形成され両端が略平行する一対の主杆18と一対の主杆18の上端から嵌入脱自在に遊嵌入された正面視略U字状の副杆20とからなるフレーム16と、主杆18の下端に、主杆18に対して略直角に取り付けられた側面視略L字状の受板19と、主杆18、副杆20間に敷設されている薄手のシート25と、主杆18が構成する平面を横切る位置で受板19に固定された2輪のキャスター17とを備え、受板19の下端部19aと2輪のキャスター17とによって自立可能な緊急救助用品運搬車。」

イ.引用例2
(ア)「本願は、病人や負傷者などを載せて、例えば病院や安全な避難場所に運搬する場合、或いは家財道具などを運搬する場合にも使用できる多目的用の運搬車に関する」(明細書2頁15行?18行)
(イ)「(14),(14)は前記主部体Aの平行杆(1),(1)の前方寄りの下面に支持部片(15),(15)を介して夫々取付けられた大径の車輪、(16),(16)は前記主部体Aの平行杆(1),(1)に、前後方向に延びかつ上方に立上がる様に夫々立設された手摺枠、(17)は前記主部体Aの平行杆(1),(1)の後端部下方に夫々垂設された軸受板(18),(18)′に両端が支承された回転軸で、その中央部には下端に自在キヤスター(19)を設けた脚杆(20)の上端が固着してある。」(明細書3頁17行?4頁15行)

ウ.引用例3
(ア)「本考案は病人,負傷者を載せて例えば災害時などに安全な場所に避難させる場合或いは病人などを病院に運搬する場合に使用する車輪付担架に関する。」(明細書2頁2行?5行)
(イ)「ついで(4),(4)は前記枠体(1)の長手方向のほゞ中間下面位置の幅方向に取付けられた1対の車輪、」(明細書3頁6行?7行)
(ウ)「つぎに枠体(1)の足受部材(9)を取付けた側の端部下方中央位置には担架移動時に役立つ前記車輪(4)より小径の自在キヤスター(12)が設けられており、枠体(1)の他端には本考案の担架を操作する人が手を掛ける把持部(13)が形成され、」(明細書5頁8行?12行)
(エ)「このようにして枠体(1)の把持部(13)を持上げ、病人の頭部が足部よりやや高くなるように枠体(1)を斜め後方に下がり加減になるよう保持し、自在キヤスター(12)を路面に接地させた状態で担架の移動を行えば、車輪と自在キヤスターの三点支持で担架の安定性は充分に確保され、担架の移動を迅速にしたときなど必要に応じて自在キヤスターを路面より隙かに浮かせた状態にして車輪だけで路面に接するよう保持してもよい。」(明細書6頁14行?7頁2行)

(2)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「パイプ状」、「敷設」、「主杆18」、「主杆18の下端」、「主杆18の上端」、「キャスター17」、「副杆20」、「緊急救助用品運搬車」は、機能、構造からみて、本願補正発明の「棒状」、「張架」、「主フレーム」、「主フレームの枠体のフレーム車輪側の端部」、「主フレームの枠体の反対端部側」、「フレーム車輪」、「副フレーム」、「台車式担架」に各々相当する。
そして、前記「第2.3.(1)ア.(エ)」の記載事項及び図4の図示内容からみて、引用発明の受板19は、キャスター17(フレーム車輪)と共に主杆18(主フレーム)を水平に対して略60?90度の角度で起立させることが可能なことは明らかであり、また、受板19は、主杆18(主フレーム)の下端に、主杆18(主フレーム)に対して略直角に取り付けられているところから、シートに載せたものの移動を拘束できることも明らかである。
また、引用発明のキャスター17(フレーム車輪)は、受板19に固定されているから、受板より主フレームに対して外側にあると云える。
更に、前記「第2.3.(1)ア.(ウ)」の記載事項からみて、引用発明の副杆20(副フレーム)は、主杆18(主フレーム)の長さ方向の延長状態を維持できることは明らかである。
してみれば、両者は、本願補正発明の文言を用いて表現すると、
「両側が略平行する棒状の枠体に形成し、その間にシートを張架してなる主フレームと、前記主フレームの枠体のフレーム車輪側の端部に固着し、前記フレーム車輪と共に前記主フレームを水平に対して略60?90度の角度で起立させ、かつ、前記シートに載せたものの移動を拘束する前記主フレームに対して略直角に形成された受板と、車輪が前記受板より主フレームに対して外側であって、かつ前記主フレームが構成する平面を横切る位置に設けられているフレーム車輪と、前記主フレームの枠体の反対端部側に配設し、前記主フレームの長さ方向の延長状態を維持できる副フレームとからなる台車式担架。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
車輪に関し、本願補正発明は、主フレームの枠体の一端部側の幅中央に回動自在に取付けてなる1輪からなり、中実のゴムタイヤを外周に配設した直径20乃至40cmのフレーム車輪と、主フレームの枠体の反対端部側に回動自在とし、前記主フレームの長さ方向に対して略直角状態を維持し、かつ、前記主フレームとの重ね合せ方向に折畳んだ状態となる脚部と、前記脚部の幅方向の両側に回動自在に取付けてなる2輪からなる脚車輪とを具備しているのに対して、引用発明は、2輪からなるフレーム車輪のみを具備し、その車輪のタイヤの構造、及び直径は明らかでない点。

上記相違点について以下検討する。
上記「第2.3.(1)イ.(ア)(イ)」の記載事項からみて、引用例2には、自在キャスター(19)と、大径の車輪(14)、(14)からなる3輪で移動可能に構成された運搬車が記載されており、また、上記「第2.3.(1)ウ.(ア)?(エ)」の記載事項からみて、引用例3には、自在キャスター(12)、一対の車輪(4)、(4)からなる3輪で移動可能に構成された車輪付担架が記載されている。そして、引用例2の「運搬車」、引用例3の「車輪付担架」は、その機能、構造からみて、本願補正発明の「台車式担架」に相当する。
そうすると、引用例2、3には、3輪で移動可能に構成された台車式担架が記載されていると云える。
また、上記「第2.3.(1)ア.(オ)、(キ)」の記載事項、及び図示内容からみて、引用例1には、運搬車15のフレーム16に、フレーム16の長さ方向に対して略直角様態を維持し、かつ、フレーム16との重ね合わせ方向に折畳んだ状態となる脚部材33を回動自在に取り付けた緊急救助用品運搬車が記載されている。
更に、建築現場等において1輪の台車が使用されていて、この1輪の台車は巾の狭い移動時を車輪の転動によって通過させることができることは例示するまでもなく周知の事項であり、また、中実のゴムタイヤを外周に配設して車輪を構成することも周知の事項である(例えば、実開平2-77026号公報、実開昭60-46305号公報参照)。
そして、脚部材33をフレーム16のどの位置に設けるか、フレーム車輪の直径をどの程度にするかはその使用態様に応じて当業者が適宜決めることである。
してみれば、引用発明のフレーム車輪を1輪とし、主フレームの枠体の一端部側の幅中央に回動自在に取付けるとともに、主フレームに脚部を折りたたみ自在に設け、脚部の幅方向の両側に2輪からなる脚車輪を回動自在に取付けて3輪とし、本願補正発明の上記相違点に係る発明特定事項とすることは、引用発明、引用例1?3に記載された発明、及び上記周知の事項から当業者が容易に想到し得たことである。

そして、上記相違点によって奏する作用、効果も、引用発明、引用例1?3に記載された発明、及び上記周知の事項から予測される範囲のものであって、格別なものとは云えない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例1?3に記載された発明、及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第156条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年7月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「両側が略平行する棒状の枠体に形成し、その間にシートを張架してなる主フレームと、
前記主フレームの枠体の前記フレーム車輪側の端部に固着し、前記フレーム車輪と共に前記主フレームを水平に対して略60?90度の角度で起立させ、かつ、前記シートに載せたものの移動を拘束する前記主フレームに対して略直角に形成された受板と、
前記主フレームの枠体の一端部側の幅中央に回動自在に取付けてなる1輪からなり、該車輪が前記受板より主フレームに対して外側であって、かつ前記主フレームが構成する平面を横切る位置に設けられたフレーム車輪と、
前記主フレームの枠体の反対端部側に配設し、前記主フレームの長さ方向の延長状態を維持できる副フレームと、
前記主フレームの枠体の反対端部側に回動自在とし、前記主フレームの長さ方向に対して略直角状態を維持し、かつ、前記主フレームとの重ね合せ方向に折畳んだ状態となる脚部と、前記脚部の幅方向の両側に回動自在に取付けてなる2輪からなる脚車輪とを具備することを特徴とする台車式担架。」

第4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2.3.(1)」に記載したとおりである。

第5.対比・判断
本願発明は、前記「第2(1)」で検討した本願補正発明から、フレーム車輪の限定事項である「中実のゴムタイヤを外周に配設した直径20乃至40cm」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.3.」に記載したとおり、引用発明、引用例1?3に記載された発明、及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用例1?3に記載された発明、及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例1?3に記載された発明、及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-21 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願平10-238807
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61G)
P 1 8・ 575- Z (A61G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 洋昭  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 森川 元嗣
増沢 誠一
発明の名称 台車式担架  
代理人 山中 郁生  
代理人 富澤 孝  
代理人 岡戸 昭佳  

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