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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F |
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管理番号 | 1148845 |
審判番号 | 不服2004-2128 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-06-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-05 |
確定日 | 2006-12-13 |
事件の表示 | 平成10年特許願第350724号「洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月13日出願公開、特開2000-157780号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年11月25日の出願であって、平成15年12月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月24日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年2月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年2月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「洗濯部位に具備された洗濯翼または洗濯槽等の洗濯部材を駆動するための洗濯部材用モータと、上記洗濯部位に洗浄用の流体を汲み上げる流体ポンプと、この流体ポンプを駆動するための流体ポンプ用モータと、上記洗濯部材用モータおよび上記流体ポンプ用モータを制御する制御部と、上記洗濯部材用モータ側へ制御可能に接続された上記制御部との接続を上記流体ポンプ用モータ側へ切り替えると共にその逆の切り替えを行うモータ切り替えスイッチとを備え、上記制御部は1つのインバータ部を含み、この1つのインバータ部の出力側に上記モータ切り替えスイッチを接続し、上記モータ切り替えスイッチの切り替えによって、上記制御部を上記流体ポンプ側へ接続することにより当該流体ポンプ用モータを制御し、また、上記制御部を上記洗濯部材用モータ側へ接続することにより当該洗濯部材用モータを制御するように構成したことを特徴とする洗濯機。」 と補正された。(下線は補正箇所を示す。) 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「インバータ部」について「1つの」との限定を付加し、さらに「この1つのインバータ部の出力側に上記モータ切り替えスイッチを接続し」との限定を付加するとともに、「モータ切り替えスイッチによって」を「モータ切り替えスイッチの切り替えによって」と限定するものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明と補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないので、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用した特開平9-285687号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 まず、発明の作用について、 (a)「インバータ主回路により洗濯機モータを駆動することで、回転速度制御の容易化等を図ることが可能となり、洗濯機として有効である。この場合、洗濯機モータには、その電源として、交流電源を直流化する直流電源回路からの直流電力が与えられる。ポンプを使用する場合、そのポンプモータには、その電源として、交流電源を直流化する直流電源回路からの直流電力が与えられる。つまり、洗濯機モータをインバータ主回路により駆動するための直流電源回路がポンプモータの駆動に利用され、コスト高が抑えられる。」(段落【0005】) と記載されている。 また、発明の第1実施例について、 (b)「以下、本発明を全自動洗濯機に適用した第1の実施例について図1ないし図6を参照しながら説明する。まず、全自動洗濯機の概略全体構成を示す図2において、外箱1内には、外槽2が弾性吊持機構3を介して揺動可能に配設されている。上記外槽2内には、洗濯槽と脱水槽とを兼用する回転槽4が回転可能に設けられており、この回転槽4の内底部に洗濯用の撹拌体5が回転可能に設けられている。」(段落【0006】) (c)「外槽2の外底部には、洗濯及び脱水運転用の洗濯機モータ17及び駆動機構部18が配設されている。洗濯機モータ17は、3相直流ブラシレスモータからなり、この洗濯機モータ17の回転力は、ベルト伝達機構19を介して駆動機構部18へ伝達されるようになっている。・・・(中略)・・・駆動機構部18のクラッチ機構は、モータ7の回転力を撹拌体5だけへ減速装置を介して減速して伝える状態と、回転槽4及び撹拌体5へ伝える状態とを切り替える機能を有している。」(段落【00010】) (d)「図3には、洗濯機およびポンプ27並びに浴槽28等を示している。同図において、トップカバー20の・・・(中略)・・・後板20aには、外部ホース接続口32が設けられており、このホース接続口32には、外部給水用のポンプ27の給水ホース33が接続される。以下、ポンプ27の詳細構成について説明する。まず、図4において、本体ケース34内にはポンプ収容室34aが区画形成されており、このポンプ収容室34a内には、例えば直流整流子モータからなるポンプモータ35が収容されている。そして、このモータ35の回転軸35aには羽根36が取着されている。 本体ケース34には吸水口34bおよび吐水口34cが形成されている。そして、吐水口34cには給水ホース33が接続されており、図2に示すように、本体ケース34が水源に相当する浴槽28内に沈められた状態でポンプモータ35が作動すると、図4において、浴槽28内の水が吸水口34cを通して本体ケース34内に吸引され、吐水口34bから給水ホース33を通して回転槽4に供給される。」(段落【0014】?【0016】) (e)「図1には電気的構成を示している。商用の交流電源43には、直流電源回路44が接続されている。この直流電源回路44は、交流電源43を全波整流する全波整流回路45と、この全波整流回路45の出力を平滑する平滑コンデンサ46とを有して構成されている。この直流電源回路44の出力側には、定電圧回路47が接続されていると共に、インバータ主回路48が接続されている。インバータ主回路48は、6個のIGBT48Ua,48Ub,48Va,48Vb,48Wa,48Wbを3相ブリッジ接続して構成されており、これらの各IGBTのコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオードD1?D6が夫々接続されている。なお、上記定電圧回路47の定電圧出力が後述する運転制御回路53等に与えられるようになっている。 また、インバータ主回路48の出力端子48U,48V及び48Wは、洗濯機モータ17のスター結線されたステータコイル17U,17V及び17Wの入力端子に接続されており、インバータ主回路48は、ステータコイル17U,17V及び17Wに対して駆動電圧を与えて洗濯機モータ17を回転駆動させるようになっている。また、ポンプモータ35の電源は直流電源回路44から与えられるようになっている。このポンプモータ35を通断電するスイッチング素子49は、例えばトランジスタから構成されている。しかして、上記ポンプモータ35の一端は、前記直流電源回路44の正母線44aに接続され、他端は、スイッチング素子49のコレクタ・エミッタ間および検出抵抗50を直列に介して負母線44bに接続されている。一方、前記交流電源43には、前記排水弁9および給水弁21がそれぞれスイッチング素子たるトライアック51,52を介して接続されている。 運転制御回路53は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、これには、操作パネル42に設けた各種スイッチを有するスイッチ入力回路54からのスイッチ信号、前記検出抵抗50による検出電圧が抵抗55およびコンデンサ56を介して与えられるようになっている。この抵抗55およびコンデンサ56は、前記スイッチング素子49が高周波でスイッチングされることから、上記検出電圧を平滑するために設けられている。 また、この運転制御回路53は、これに与えられる入力に応じて、内部に保有する運転プログラムに従い、前記スイッチング素子49、トライアック51,52、表示回路57およびインバータ制御回路58を制御するようになっている。つまり、洗濯機モータ17、ポンプモータ35、排水弁9、給水弁21および表示回路57を制御するようになっている。 なお、前記洗濯機モータ17には、回転位置を検出する位置検出手段としてのホール素子59U,59V,59Wが設けられており、各ホール素子59U,59V,59Wの位置検出信号HU,HV,HWは前記インバータ制御回路58に与えられるようになっている。このインバータ制御回路58は、運転制御回路53から与えられるモータ制御信号Saおよびこの位置検出信号HU,HV,HWに基づいてインバータ主回路48の各IGBT48Ua乃至48Wbをオンオフ制御するようになっている。また、インバータ制御回路58は、上記位置検出信号HU,HV,HWに基づいて回転速度検出信号Ssを運転制御回路53に与えるようになっている。」(段落【0019】?【0023】) (f)「前記インバータ主回路48およびインバータ制御回路58と運転制御回路53のソフトウエアとによって、洗濯機モータ駆動制御手段60が構成され、また、スイッチング素子49と運転制御回路53のソフトウエアとによってポンプモータ駆動制御手段61が構成され」(段落【0025】) (g)「次に上記構成の作用について説明する。運転制御回路53は、コース設定スイッチにより全自動コースが設定された上で、スタートスイッチが操作されると、全自動コースの運転プログラムに従って各種制御を順次実行してゆくが、特に洗濯機モータ17の制御について簡単に述べると、運転制御回路53は、洗い時には、インバータ制御回路58に正逆のための指令信号を出力して、洗濯機モータ17を正逆回転させ、脱水時には、インバータ制御回路58に回転速度指令信号を出力して、所定回転速度で洗濯機モータ17を回転制御する。この場合、洗濯物量や布質等によって、洗濯機モータ17の制御形態が変更されるようになっている。 さて、風呂水給水スイッチが操作された上でスタートスイッチの操作があると、運転制御回路53は、ポンプモータ35を図5のフローチャートに示すように制御する。まず、運転制御回路53は、ステップS1で示すように、デューティー比をオン50%に設定する。そしてステップS2に示すように、スイッチング素子49を20kHzのPWM信号によってスイッチングしてポンプモータ35をオンする。このときのオンオフデューティー比は上述の50%オンとなるように制御する。直流電源回路44の出力電力が、このデューティー比に見合った電力に調整されてポンプモータ35に供給され、もってポンプモータ35が駆動される。これと同時に、ポンプモータ35に流れる電流が、検出抵抗50によって検出され、その検出電圧が運転制御回路53に与えられる。」(段落【0026】?【0027】) と記載されている。 さらに、発明の第2実施例について、 (h)「図8および図9は本発明の第2の実施例を示しており、この実施例においては、次の点が第1の実施例と異なる。ポンプモータ71は、3相直流ブラシレスモータから構成されており、このポンプモータ71の電源は、直流電源回路44から与えられるようになっている。すなわち直流電源回路44の出力側には、インバータ主回路72が接続されている。インバータ主回路72は、6個のIGBT72Ua,72Ub,72Va,72Vb,72Wa,72Wbを3相ブリッジ接続して構成されており、これらの各IGBTのコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオードD7?D12が夫々接続されている。また、インバータ主回路72の出力端子72U,72V及び72Wは、ポンプモータ71のスター結線されたステータコイル71U,71V及び71Wの入力端子に接続されており、インバータ主回路72は、ステータコイル71U,71V及び71Wに対して駆動電圧を与えてポンプモータ71を回転駆動させるようになっている。 なお、この場合も、インバータ主回路72の各IGBT72Ua乃至72Wbのオンオフ制御を、例えば周波数20kHzの搬送波によるPWM制御によって行うようになっている。 前記ポンプモータ71には、回転位置を検出する位置検出手段としてのホール素子73U,73V,73Wが設けられており、各ホール素子73U,73V,73Wの位置検出信号HUP,HVP,HWPは前記インバータ制御回路74に与えられるようになっている。このインバータ制御回路74は、運転制御回路53から与えられるモータ制御信号Saおよびこの位置検出信号HU,HV,HWに基づいてインバータ主回路72の各IGBT72Ua乃至72Wbをオンオフ制御するようになっている。 上記インバータ制御回路74は上記位置検出信号HUP,HVP,HWPを回転速度検出信号Nsとして運転制御回路53に与えるようになっている。運転制御回路53は、この回転速度検出信号Nsによりポンプモータ71の負荷状態を検出するようになっていて、もって、負荷検出手段として機能するようになっている。そして、運転制御回路53は、第1の実施例と同様に、ポンプモータ71のオンオフデューティー比を初期にはオン50%とし、以後上記回転速度検出信号Nsに基づいて、このデューティー比を50%あるいは100%に変更するようになっている。」(段落【0037】?【0040】) と記載されている。 また、これらの記載事項からみて、以下のような事項が記載されていると認めることができる。 (i)前記(b)及び(c)に摘記したように、洗濯槽と脱水槽とを兼用する回転槽4と、回転槽4の内底部に設けた洗濯用の撹拌体5は、どちらも洗濯機モータ17によって駆動されて洗濯するものであるから、回転槽4及び撹拌体5は「洗濯手段」であるということができる。 (j)前記(f)及び(g)に摘記した事項によれば、第1実施例の洗濯機においては、「インバータ主回路48、インバータ制御回路58、スイッチ素子49、及び運転制御回路53」を「洗濯機モータ17およびポンプモータ35を制御する制御手段」ということができる。 (k)前記(e)及び(h)に摘記した事項によれば、第2実施例の洗濯機においては、洗濯機モータ17はインバータ主回路48、インバータ制御回路58、及び運転制御回路53によって制御され、ポンプモータ71はインバータ主回路72、インバータ制御回路74、及び運転制御回路53によって制御されるので、「インバータ主回路48、インバータ制御回路58、インバータ主回路72、インバータ制御回路74、及び運転制御回路53」を「洗濯機モータ17およびポンプモータ71を制御する制御手段」ということができる。そうすると、前記「制御手段」は、インバータ主回路48とインバータ主回路72とからなる「2つのインバータ主回路」を含んでいるということができる。 (l)前記(g)に摘記した事項及び前記(j)でみるように、第1実施例の洗濯機においては、コース設定スイッチにより全自動コースが設定された上で、スタートスイッチが操作されると、洗濯機モータ17を回転制御し、また、風呂水給水スイッチが操作された上でスタートスイッチが操作されると、ポンプモータ35が駆動されるように構成されているから、「洗濯機モータ17側へ制御可能に接続されるとともに、ポンプモータ35側へも制御可能に接続され、それぞれのモータを制御する制御手段」を備えているということができる。そして、この点に関しては、第2実施例の洗濯機においても同様であることは、前記(h)に摘記した事項から明らかであるから、第2実施例の洗濯機も同様に、「洗濯機モータ17側へ制御可能に接続されるとともに、ポンプモータ71側へも制御可能に接続され、それぞれのモータを制御する制御手段」を備えているということができる。 これらの事項を総合すると、引用例には、第2実施例の洗濯機に関して、 「外槽2内に具備された撹拌体5または回転槽4等の洗濯手段を駆動するための洗濯機モータ17と、上記回転槽4に水を供給するポンプ27と、このポンプ27を駆動するためのポンプモータ71と、上記洗濯機モータ17および上記ポンプモータ71を制御する制御手段であって、上記洗濯機モータ17側へ制御可能に接続されるとともに、上記ポンプモータ71側へも制御可能に接続される上記制御手段とを備え、上記制御手段は2つのインバータ主回路48,72を含み、一方のインバータ主回路48に上記洗濯機モータ17を接続し、他方のインバータ主回路72に上記ポンプモータ71を接続し、それぞれのモータを上記制御手段により制御するように構成した洗濯機。」の発明(以下、「引用発明」という。) が記載されていると認めることができる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者における「外槽2内」は、その構造又は機能からみて、前者における「洗濯部位」に相当し、以下同様に、「撹拌体5」が「洗濯翼」に、「回転槽4」が「洗濯槽」に、「洗濯手段」が「洗濯部材」に、「洗濯機モータ17」が「洗濯部材用モータ」に、「回転槽4に水を供給するポンプ27」が「洗濯部位に洗浄用の流体を汲み上げる流体ポンプ」に、「ポンプモータ71」が「流体ポンプ用モータ」に、「制御手段」が「制御部」に、「インバータ主回路48,72」が「インバータ部」に、それぞれ相当する。 また、後者の「一方のインバータ主回路48に上記洗濯機モータ17を接続し、他方のインバータ主回路72に上記ポンプモータ71を接続」する態様は、前者の「インバータ部の出力側に」制御されるモータを接続する態様の限りで共通している。 してみると、本願補正発明と引用発明とは、 「洗濯部位に具備された洗濯翼または洗濯槽等の洗濯部材を駆動するための洗濯部材用モータと、上記洗濯部位に洗浄用の流体を汲み上げる流体ポンプと、この流体ポンプを駆動するための流体ポンプ用モータと、上記洗濯部材用モータおよび上記流体ポンプ用モータを制御する制御部であって、上記洗濯部材用モータ側へ制御可能に接続され、また、上記流体ポンプ用モータ側へ制御可能に接続される上記制御部とを備え、上記制御部はインバータ部を含み、インバータ部の出力側を上記流体ポンプ側へ接続して当該流体ポンプ用モータを制御し、また、インバータ部の出力側を上記洗濯部材用モータ側へ接続して当該洗濯部材用モータを制御するように構成した洗濯機。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点:本願補正発明においては、「上記洗濯部材用モータ側へ制御可能に接続された上記制御部との接続を上記流体ポンプ用モータ側へ切り替えると共にその逆の切り替えを行うモータ切り替えスイッチ」を備え、「上記制御部は1つのインバータ部を含み」、「この1つのインバータ部の出力側に上記モータ切り替えスイッチを接続し」「上記モータ切り替えスイッチの切り替えによって、上記制御部を上記流体ポンプ側へ接続することにより当該流体ポンプ用モータを制御し、また、上記制御部を上記洗濯部材用モータ側へ接続することにより当該洗濯部材用モータを制御するように構成」しているのに対して、引用発明においては、制御部は2つのインバータ部を含んでおり、モータ切り替えスイッチやその関連構成を備えていない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 引用例には、前記(2)(a)に摘記したように、コストを考慮して直流電源回路を共用するという技術思想が開示されているから、部品点数を削減することによってコストの低減を図るという課題が示唆されているということができる。 ところで、インバータ回路で制御される2つの被制御部を備えた洗濯機において、2つの被制御部を共通の1つのインバータ回路を介して制御できるようにしてコスト低減を図るために、1つのインバータ回路の出力側に切り替えスイッチを接続し、この切り替えスイッチの切り替えによってインバータ回路を一方の被制御部へ接続することにより当該一方の被制御部を制御し、また、インバータ回路を他方の被制御部へ接続することにより当該他方の被制御部を制御するように構成することは、例えば特開平6-190188号公報や特開平8-252393号公報などに見られるように、従来周知であったということができる。 そうすると、洗濯機モータ17とポンプモータ71との2つの被制御部を備え、これら2つの被制御部をそれぞれ別々のインバータ主回路48,72で制御するように構成した引用発明において、部品点数をさらに削減してコスト低減を図るために、高価なインバータ主回路についてその数を減らそうとすることは、引用例に接した当業者であれば普通に考慮することであり、そのために、上記周知の技術手段を適用して、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことであるということができる。 そして、本願補正発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年9月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「洗濯部位に具備された洗濯翼または洗濯槽等の洗濯部材を駆動するための洗濯部材用モータと、上記洗濯部位に洗浄用の流体を汲み上げる流体ポンプと、この流体ポンプを駆動するための流体ポンプ用モータと、上記洗濯部材用モータおよび上記流体ポンプ用モータを制御する制御部と、上記洗濯部材用モータ側へ制御可能に接続された上記制御部との接続を上記流体ポンプ用モータ側へ切り替えると共にその逆の切り替えを行うモータ切り替えスイッチとを備え、上記制御部はインバータ部を含み、上記モータ切り替えスイッチによって、上記制御部を上記流体ポンプ側へ接続することにより当該流体ポンプ用モータを制御し、上記制御部を上記洗濯部材用モータ側へ接続することにより当該洗濯部材用モータを制御するように構成したことを特徴とする洗濯機。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「インバータ部」についての限定事項である「1つの」との構成、及び「この1つのインバータ部の出力側に上記モータ切り替えスイッチを接続し」との構成を省くとともに、本願補正発明における「モータ切り替えスイッチの切り替えによって」という構成から「切り替え」という限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-24 |
結審通知日 | 2006-09-19 |
審決日 | 2006-10-02 |
出願番号 | 特願平10-350724 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(D06F)
P 1 8・ 575- Z (D06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金丸 治之 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
川本 真裕 平上 悦司 |
発明の名称 | 洗濯機 |
代理人 | アイアット国際特許業務法人 |
代理人 | アイアット国際特許業務法人 |