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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1149140
審判番号 不服2004-15861  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-29 
確定日 2006-12-20 
事件の表示 平成8年特許願第274689号「苗植機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年5月12日出願公開、特開平10-117523〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年10月17日の出願であって、平成16年6月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年7月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同年8月30日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成16年8月30日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月30日付け手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように補正された。
「乗用型の走行車体1の後に苗植装置2が装着され、該苗植装置2には前上りに傾斜した苗載台28が設けられ、該苗載台28は左右それぞれ2条分の区分を上に折り畳みできる構成とし、
前記走行車体1はステアリングハンドル11の左右に予備の苗が載る多段の棚12を備えると共に座席10の前方及び左右にステップ13,14を備え、
下部に繰出部37を有する肥料タンク34と該肥料タンク34の前部下方に配置されるエアチャンバー35とが座席10の後で走行車体1に横長に取付けられ、その肥料タンク34及びエアチャンバー35は走行車体1に固定された中央部34a、35aと縦向の回動軸42の回りに回動する左右一対の側部34b、35bで構成され、
エアチャンバー35の側部35bの端には該エアチャンバー35内に空気を吹き込む送風機43が縦向きの回動軸55回りに回動するように取り付けられ、
肥料タンク34及びエアチャンバー35の側部34b、35bが上から見て座席10の横に折れ曲がったときにはその内側でステップ13,14に補助者が乗るスペースAが形成されるように設けられている苗植機。」
(以下、「補正発明」という。)

そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である、特開平5-304805号公報(以下、「引用例1」という。)には、「施肥装置付き乗用型苗植機」に関して、次の事項が記載されている。
(イ)「【請求項1】乗用型走行車体1にリンク機構23を介して苗植装置25を上下動自在に装着した乗用型苗植機に施肥装置36を装備してなる施肥装置付き乗用型苗植機において、苗植装置25の苗載台32の左右最外側の苗載台32a・32aと苗受板31の左右端部の左右苗受板31”・31”とを折り曲げ収納若しくは着脱自在にして左右最外側の苗植付け装置33・33の左右幅と同じかそれよりも小さくなるように構成すると共に、施肥装置36の施肥タンク37の機体左右方向幅を左右最外側の苗植付け装置33・33の左右幅と同じかそれよりも小さくなるように構成したことを特徴とする施肥装置付き乗用型苗植機。」
(ロ)「【0011】21はFRPにて成型された車体カバ-であって、エンジン4の周囲を覆うエンジンカバ-部21aと、前記エンジン4の前方及び左右側方に設けられたステップ21bと、ハンドルポストカバー21cと、エンジン4の後方に設けられたステップ21dとが一体形成され、左右フレーム2・2上に固定されている。22は操縦座席で、前記車体カバー21上面に設置固定されている。」
(ハ)「【0015】一方、苗載台32もその左右両外側の苗載せ部32a・32aが継ぎ部材32b・32bにより上記の苗受板31と同様の構成で折り曲げれるように構成されている。36は施肥装置であって、前記支持フレーム24の上端部に固着されており、施肥タンク37…と、該各施肥タンク37…の下部に装着され施肥タンク37内の粒状肥料を一定量づつ繰り出す肥料繰出装置38…と、該肥料繰出装置38にて繰り出された肥料を案内する透明の施肥パイプ39…と、中央整地フロート34・左右整地フロート35・35に固着され苗植付け位置側方の圃場に施肥溝を掘り施肥パイプ39にて案内された粒状肥料を該施肥溝内に落下案内する作溝器40…とにより構成されている。…」
(ニ)「【0016】そして、施肥タンク37…は2条単位の3つの肥料タンク37a…と1条単位の2つの肥料タンク37b…とにより構成され、1条単位の2つの肥料タンク37b…は2条単位の3つの肥料タンク37a…の左右両外側に各々蝶番37c・37cにて連結されており、図3に示すようにイ方向に収納できるように構成されている。尚、1条単位の2つの肥料タンク37b…は収納位置と施肥作用位置とで周知の係合部材で固定できるように構成している。」
(ホ)「【0021】…そして、圃場から別の圃場へ移動する時・路上走行をする時・トラックに積む時・納屋に保管する時等に、苗受板31の継ぎ部材31dを中央苗受板31’の中空角柱部31aより抜き出して折り曲げて左右苗受板31”・31”を収納状態とし、苗載台32もその左右両外側の苗載せ部32a・32aを折り曲げて収納状態とし、施肥タンク37…も左右外側の1条単位の肥料タンク37b…をイ方向に回動させて収納位置とすれば、機体の横幅は左右最外側の苗植付け装置33・33の幅W1となり、移動及び積込が容易に行なえ、保管場所も狭くてすむ。」
(ヘ)図2、3によると、苗載台32の左右両外側の苗載せ部32a・32aが折り曲げられるのは、左右それぞれ1条分の区分であることが明らかであり、図1、3によると、肥料タンク37bが上から見て操縦座席22の横に折れ曲がったときにはその内側でステップ21dに補助者が乗るスペースが形成されるように設けられていることが明らかである。

これらの記載事項および図面によれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。かっこ内は対応する引用例1における構成・用語である。
「乗用型の走行車体(乗用型走行車体1)の後に苗植装置(苗植装置25)が装着され、該苗植装置には前上りに傾斜した苗載台(苗載台32)が設けられ、該苗載台は左右それぞれ1条分の区分(左右最外側の苗載台32a・32a)を折り畳みできる構成とし、
前記走行車体は座席(操縦座席22)の前方及び左右にステップ(ステップ21b)を備え、
下部に繰出部(肥料繰出装置38)を有する肥料タンク(施肥タンク37)が座席(操縦座席22)の後で走行車体に横長に取付けられ、その肥料タンクは走行車体に固定された中央部(肥料タンク37a)と縦向の回動軸(係合部材)の回りに回動する左右一対の側部(肥料タンク37b)で構成され、
肥料タンクの側部が上から見て座席の横に折れ曲がったときにはその内側でステップ(ステップ21d)に補助者が乗るスペースが形成されるように設けられている苗植機。」
(以下、「引用例1発明」という。)

また、査定時に周知例として提示された刊行物である、特開平5-276818号公報)(以下、「引用例2」という。)には、「施肥田植機の施肥装置」に関し、次の事項が記載されている。
(ト)「【0009】施肥装置5は、植付苗の近傍に施肥する側条施肥装置で、まず、肥料を収容するホッパー30と該ホッパー30の下側に取り付けられる繰出部31…を、前後方向に対して植付部4の前側で走行車体2の座席9の後側に位置させ、且つ各植付条に対応した複数の繰出部31…(ここでは6条植えに対応して6体の繰出部が設けられる)が左右に一列、並ぶように設けている。そして、繰り出された肥料を作溝器27…に導く施肥ホース32…を各繰出部31…にそれぞれ連結する。更に、ブロア33とそのブロアからの圧風を一時的に貯えて施肥ホース32…の上端部へ送るエアーチャンバー34とが備えられて、施肥ホース32…内を圧風により肥料が強制的に移送されるようになっている。」
(チ)「【0019】ブロア33は、電動モーターで送風ファンが駆動回転する構成で、その圧風吹き出し口33aをエアーチャンバー34の左右一端部の圧風吹込み口34aに連結させて、エアーチェンバー34の長手方向に圧風が吹き込むように取付けられている。また、このブロア33の圧風吹き出し口33a部のエアーチャンバー34との連結部は、エアーチェンバー34に固定の上下の縦軸34c回りに回動可能に構成されており、固定具33cを解除してブロア33を回動すればエアーチェンバー34の圧風吹込み口34aを開放できるようになっている。」

これらの記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、引用例2には、次の周知技術が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用例2における構成・用語である。
「肥料タンク(ホッパー30)の前部下方にエアチャンバー(エアーチャンバー34)を配置し、エアチャンバーの端には該エアチャンバー内に空気を吹き込む送風機(ブロア33)を縦向きの回動軸(縦軸34c)回りに回動するように取り付ける。」

同じく、査定時に周知例として提示された刊行物である、特開平7-132010号公報(以下、「引用例3」という。)には、「施肥機」に関し、次の事項が記載されている。
(リ)「【0019】さて、施肥機5の構成は以下(図3?図8)のようになっている。すなわち、操縦席42の後側に肥料貯蔵部80,…と繰出部81,…が設けられ、該繰出部の下部に繰り出される肥料をフレキシブルな施肥導管82,…を通して植付条の側部近傍に導くように構成されている。ブロア83から吹き出されるエアがエアチャンバ84を経由して施肥導管82,…内に送り込まれ、その風の作用でもって施肥導管82,…内を肥料を搬送するようになっている。」
(ヌ)「【0025】エアチャンバ84は塩ビ管等で作られた円筒体で、その背面部に穿設された穴84a,…に接続管81c,…が挿入されているとともに、上面部に固着した筒体84b,…を通じて繰出部本体部81aと連通している。エアチャンバ84の左端部は吹込み口84cで、ここにブロア83の吹出し口83aが接続されている。ブロア83の吸込み口83bには、エンジン30の後方部から空気を導く導風管108が接続されている。ブロア83は、エアチャンバ84に一体のフランジ109に軸110によって前方に回動可能に取り付けられ、バックル111によって吹込み口84cと吹出し口83aとの間が密閉するように固定される。また、エアチャンバ84の右端部は肥料排出口84dで、ここには開閉自在なシャッタ112が取り付けられている。」

これらの記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、引用例3には、次の周知技術が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用例3における構成・用語である。
「肥料タンク(肥料貯蔵部80)の前部下方にエアチャンバー(エアチャンバ84)を配置し、エアチャンバーの端には該エアチャンバー内に空気を吹き込む送風機(ブロア83)を縦向きの回動軸(軸110)回りに回動するように取り付ける。」

さらに、今回周知例として提示する刊行物である、特開平8-154439号公報(以下、「引用例4」という。)には、「田植機」に関し、次の事項が記載されている。
(ル)「【0007】【実施例】以下、図面にあらわされた実施例について説明する。この乗用田植機1は、走行車体2の後部に設けた昇降リンク装置3に苗植付作業機4を装着してなる。さらに、必要に応じて施肥装置5が装着される。」
(オ)「【0010】機体上部には、前寄りの位置に前輪10,10を操向するハンドル40が設けられ、その後方で、エンジン10の上側を覆うエンジンカバー41の上に座席42が設置されている。…」
(ワ)「【0011】また、機体の前部左右両側には苗植付作業機4に補給する苗を載せておく予備苗載台48,48が設けられている。この予備苗載台48は、拡張ステップ46の前側に設けた予備苗載せ台フレーム200に支持ポスト201を垂直に立設し、該支持ポストに苗枠フレーム202を垂直軸回りに回動自在に装着して設け、該苗枠フレームに複数段の苗枠203,…が所定間隔で取り付けられている。各苗枠203,…は、左右中心部を支点にしてその左右両翼部を上側に折りたためるようになっている。」
(カ)「【0025】ところで、この苗載台80は、中央6条の部分80-3?80-8は一体に設けられているが、外側2条の部分80-1・2,80-9・10はこれとは別体に設けられ、該外側条部分が内側に反転させて折りたたみ可能に構成されている。その折りたたみ部の構造は次のようになっている。【0026】外側から2番目の条とその内側の条を仕切る仕切壁81-3,81-9は、内側の部位81aと外側の部位81bに分割されており、内側の部位81aは中央部分80-3?80-7に一体形成され、外側の部位81bは反転部分80-1・2または80-9・10に一体形成されている。また、この仕切壁81-3,81-9は他の仕切壁よりも苗載面80aに対して高く形成されている。そして、両部位81a,81bの上端部に形成した筒状部120a,120b,…に1本の回動軸121を挿通して設け、この回動軸121を中心として反転部分80-1・2,80-9・10を内側に反転させ、当該部分をその内側条部分80-3・4,80-7・8の上に重ね合せた状態に折りたたむようにしている。…」

これらの記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、引用例4には、次の周知技術が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用例4における構成・用語である。
「苗載台(苗載台80)は左右それぞれ2条分の区分(外側2条の部分80-1・2,80-9・10)を上に折り畳みできる構成とし、走行車体(走行車体2)はステアリングハンドル(ハンドル40)の左右に予備の苗が載る多段の棚(苗枠203)を備えるようにする。」

同じく、今回周知例として提示する刊行物である、特開平8-89032号公報(以下、「引用例5」という。)には、「田植機」に関し、次の事項が記載されている。
(ヨ)「【0007】【実施例】以下、図面にあらわされた実施例について説明する。この乗用田植機1は、走行車体2の後部に設けた昇降リンク装置3に苗植付作業機4を装着してなる。さらに、必要に応じて施肥装置5が装着される。」
(タ)「【0010】機体上部には、前寄りの位置に前輪10,10を操向するハンドル40が設けられているとともに、エンジン10の上側を覆うエンジンカバー41の上に座席42が設置されている。…」
(レ)「【0011】また、機体の前部左右両側には植付作業機4に補給する苗を載せておく予備苗載台48,48が設けられている。この予備苗載台48は、拡張ステップ46の前側に設けた予備苗載せ台フレーム200に支持ポスト201を垂直に立設し、該支持ポストに苗枠フレーム202を垂直軸回りに回動自在に装着して設け、該苗枠フレームに複数段の苗枠203,…が所定間隔で取り付けられている。各苗枠203,…は、左右中心部を支点にしてその左右両翼部を上側に折りたためるようになっている。…」
(ソ)「【0028】ところで、この苗載台80は、中央6条の部分80-3?80-8は一体に設けられているが、外側2条の部分80-1・2,80-9・10はこれとは別体に設けられ、該外側条部分が内側に反転させて折りたたみ可能に構成されている。その折りたたみ部の構造は次のようになっている。【0029】外側から2番目の条とその内側の条を仕切る仕切壁81-3,81-9は、内側の部位81aと外側の部位81bに分割されており、内側の部位81aは中央部分80-3?80-7に一体形成され、外側の部位81bは反転部分80-1・2または80-9・10に一体形成されている。また、この仕切壁81-3,81-9は他の仕切壁よりも苗載面80aに対して高く形成されている。そして、両部位81a,81bの上端部に形成した筒状部120a,120b,…に1本の回動軸121を挿通して設け、この回転軸121を中心として反転部分80-1・2,80-9・10を内側に反転させ、当該部分をその内側条部分80-3・4,80-7・8の上に重ね合せた状態に折りたたむようにしている。…」

これらの記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、引用例5には、次の周知技術が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用例5における構成・用語である。
「苗載台(苗載台80)は左右それぞれ2条分の区分(外側2条の部分80-1・2,80-9・10)を上に折り畳みできる構成とし、走行車体(走行車体2)はステアリングハンドル(ハンドル40)の左右に予備の苗が載る多段の棚(苗枠203)を備えるようにする。」

(3)対比・判断
補正発明と引用例1発明を比較すると、両者は、
「乗用型の走行車体の後に苗植装置が装着され、該苗植装置には前上りに傾斜した苗載台が設けられ、該苗載台は左右それぞれの区分を折り畳みできる構成とし、
前記走行車体は座席の前方及び左右にステップを備え、
下部に繰出部を有する肥料タンクが座席の後で走行車体に横長に取付けられ、その肥料タンクは走行車体に固定された中央部と縦向の回動軸の回りに回動する左右一対の側部で構成され、
肥料タンクの側部が上から見て座席の横に折れ曲がったときにはその内側でステップに補助者が乗るスペースが形成されるように設けられている苗植機。」
の点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:補正発明では、苗載台は左右それぞれ2条分の区分を上に折り畳みできる構成とし、走行車体はステアリングハンドルの左右に予備の苗が載る多段の棚を備えるのに対し、引用例1発明では、苗載台は左右それぞれ1条分の区分を折り畳みできる構成とし、走行車体はステアリングハンドルの左右に予備の苗が載る多段の棚を備えていない点。
相違点2:補正発明では、肥料タンクの前部下方にエアチャンバーが配置され、エアチャンバーは走行車体に固定された中央部と縦向の回動軸の回りに回動する左右一対の側部で構成され、エアチャンバーの側部の端には該エアチャンバー内に空気を吹き込む送風機が縦向きの回動軸回りに回動するように取り付けられているのに対し、引用例1発明では、そのようなエアチャンバーが配置されていない点。

相違点1について検討するに、引用例4、5には、上記のとおり、「苗載台は左右それぞれ2条分の区分を上に折り畳みできる構成とし、走行車体はステアリングハンドルの左右に予備の苗が載る多段の棚を備えるようにする。」という周知技術が記載されており、当該周知技術を、引用例1発明に適用し、相違点1に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得るものと認められる。

相違点2について検討するに、引用例2、3には、上記のとおり、「肥料タンクの前部下方にエアチャンバーを配置し、エアチャンバーの端には該エアチャンバー内に空気を吹き込む送風機を縦向きの回動軸回りに回動するように取り付ける。」という周知技術が記載されており、当該周知技術を、引用例1発明に適用し、かつ、エアチャンバーも肥料タンクと同様に、走行車体に固定された中央部と縦向の回動軸の回りに回動する左右一対の側部で構成するようにして、相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得るものと認められる。

そして、補正発明の作用効果も、引用例1発明および周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであると認める。

よって、補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明
平成16年8月30日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年4月27日付け手続補正で補正された請求項1に記載された事項により特定される、次のものである。
「乗用型の走行車体1の後に苗植装置2が装着され、
その走行車体1は座席10の両横にステップ13,14を備え、
下部に繰出部37を有する肥料タンク34と該肥料タンク34の前部下方に配置されるエアチャンバー35とが座席10の後で走行車体1に横長に取付けられ、その肥料タンク34及びエアチャンバー35は走行車体1に固定された中央部34a、35aと縦向の回動軸42の回りに回動する左右一対の側部34b、35bで構成され、
エアチャンバー35の側部35bの端には該エアチャンバー35内に空気を吹き込む送風機43が縦向きの回動軸55回りに回動するように取り付けられ、
肥料タンク34及びエアチャンバー35の側部34b、35bが上から見て座席10の横に折れ曲がったときにはその内側でステップ13,14に補助者が乗るスペースAが形成されるように設けられている苗植機。」
(以下、「本願発明」という。)

(1)引用刊行物
引用刊行物の記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した補正発明から限定事項を削除したものであり、本願発明に限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-09 
結審通知日 2006-08-29 
審決日 2006-10-10 
出願番号 特願平8-274689
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01C)
P 1 8・ 575- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 忠悦  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
発明の名称 苗植機  

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