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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1149148
審判番号 不服2004-22824  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-04 
確定日 2006-12-20 
事件の表示 特願2000-283763「生産計画作成方法、情報処理装置及び生産管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月29日出願公開、特開2002- 91543〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成12年9月19日の特許出願であって、その請求項1ないし18に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項16に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりである。
「各々複数のラインを有する複数の工場において複数の品種の製品を生産するための生産計画を作成する情報処理装置であって、
複数の日からなる期間を単位として管理される各品種についての全体売上を予め設定された配分パラメータに基づいて按分して品種別工場別期間別の必要生産量を決定する手段と、
日を単位として管理される各品種についての全体売上見込を予め設定された配分パラメータに基づいて按分して品種別工場別日別の必要生産量を決定する手段と、
前記期間を単位として管理される品種についての前記品種別工場別期間別の必要生産量を該当する期間の特定の日における該当する工場の複数のラインに対して予め設定された制約に基づいて山積みし、その山積みした必要生産量のうち予め設定された制約に違反する制約違反分を山崩しし、その後に更に、前記日を単位として管理される品種についての前記品種別工場別日別の必要生産量を該当する工場の複数のラインに対して予め設定された制約に基づいて山積みし、その山積みした必要生産量のうち予め設定された制約に違反する制約違反分を山崩しし、これによりライン別日別の生産計画を作成する手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

なお、「複数の日からなる期間を単位として管理される各品種」については「全体売上」、「日を単位として管理される各品種」については「全体売上見込」と、記載が異なっているが、本件発明は、将来の販売のために生産を行うものであるから、ともに「全体売上見込」の意であることは明らかである。

2 引用例記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に頒布された刊行物である菊池康也,“現場管理者のためのロジスティクス講座”,工場管理,日刊工業新聞社,平成8年,第42巻,第2号,p.116-120(以下「引用例1」という。)、及び特開平6-176031号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されていると認める。

(1) 引用例1
ア 116頁右欄3行-117頁左欄2行
「また,物流チャネルは,図2のとおりで・・・ほとんどのビールが,工場から特約店に出荷される点である.ただ,東京の一部特約店に対して,少量品種(たとえばキリンライト,スタウト,黒など)については物流センターから別建て配送されている.」
イ 119頁左欄3行-120頁左欄7行
「[最適な需要計画を策定]
これらの反省を踏まえて,1989年に新しい需給計画システムが構築された.これは需給計画シミュレーションモデルを使って,需給シミュレーションを行ない最適な需給計画を策定するものである(図5).
・・・そして各支社からの販売計画,工場からの製造制約条件(液種別半製品在庫量,壜・缶詰機の条件,人員の条件など),在庫率を需給シミュレーションモデルにインプットして工場の最適な品種別製造計画,輸送計画などを策定するシステムである.
このシステムは各工場ではすべての製品を作っていないので,物流拠点である工場に製品を転送する必要があり,そのため酒とボトリング体制のバランスをとりながら転送費最少を第一に考えて計画が立てられている.
・・・
工場の製造は需給計画によって行なわれ,さらに要員計画,原料・資材の調達計画,工場の在庫計画,移出入計画もその需給計画に基づいて決まるということで新需給計画システムは全システムの中心となるものである.
ここで旬別ローリングプランについてみる.
・・・需給計画を策定する.
つまり,各工場に最適な生産や輸送を指示することになる(表1).
この策定された需給計画は,首都圏・近畿圏業務部,各ブロック支社や工場に送信され,首都圏・近畿圏業務部,各ブロック支社では工場別取引計画,各工場では製造計画(日別・機械別製造計画,仕込計画など),資材調達計画,工場間転送計画などが策定されて,そして実行に移される.」
ウ 図5
本社で需給計画を立て、各工場で日別列別製造計画を立てること.

「各工場」なる記載から工場が複数あることは、明らかであり、各工場にラインが複数あることは、技術常識である。
また、需給計画シミュレーションモデルを使って、需給シミュレーションを行い最適な需給計画を策定しているのであるから、情報処理装置によって生産計画を作成していることは、技術常識より明らかである。

以上のとおりであるので、引用例1には、次の「情報処理装置」が記載されていると認める。
「各々複数のラインを有する複数の工場において少量品種を含む複数の品種の製品を生産するための生産計画を作成する情報処理装置であって、
各品種についての需要予測に基づいて品種別工場別の必要生産量を決定する手段と、
前記品種別工場別の必要生産量を該当する工場の複数のラインに対してライン別日別の生産計画を作成する手段と、
を備える情報処理装置。」(以下「引用例1記載の発明」という。)

(2) 引用例2
ア 3欄36-41行
「【0007】一方、ASICLSIと呼ばれる生産ラインでは、図9に示すように、処理の優先度、重要度の異なる何品種ものロットが存在する。例えば、特注品や特殊仕様の製品は、生産量が少なく、設計・製造のコストが高いので重要度が高くなるが、メモリや汎用品等の量産品は重要度が低くなる。」
イ 4欄48行-5欄4行
「【0010】本発明の目的は、進捗を制御しなければならない優先度/重要度の高いロットが、優先度/重要度とも高くない量産品に混在しているような製造ラインにおいて、上記スケジューリング(キー情報の作成)時の処理時間の短縮と使用メモリの低減を図り、これによって、ラインの管理、優先/重要ロットの進捗予測を正確に行うことができるようにすることにある。」
ウ 7欄40行-8欄28行
「本発明によれば、作成される予定は短期間の処理予定であっても、進捗制御ロットは長期間の計画に基づいた予定となっているので、対象の各ロットの完成日が納期に間に合うように、処理順序が制御されている。なおかつ、他の量産ロットの処理予定も同時に作成されている。このようなスケジューリングの作成が、メモリを削減し、計算時間を短縮して行うことができる。
【0022】スケジューラは進捗制御ロットの処理予定(重要処理予定)を先ず作成するが・・・まず、スケジューラにより進捗制御ロットi,j,k,l,…の現在の処理開始工程(a,b,c,d,…)を認識する。次いで、各ロットの工程表を参照して、以下の工程を装置の稼動時間帯に順に並べて(a)のように仮予定を立てる。この仮予定は、他のロットとの重複は考慮にいれていないので、図中の網かけ部分(装置M2,M3)のように実際には他のロットの処理と重複するため、処理できない工程がある。重複がある場合には、優先度の低いロットの処理予定を(b)のように後ろへずらす。同じ優先度の場合には、先に投入した方を優先させる、工程の進んだ方を優先させる等のルールを決めておけばよい。しかし、(b)のように工程をずらすと、今度は別の時間帯で重複(装置M2)が生じる。これも、同じように一方の処理予定をずらす。工程の処理時間をずらす場合は、なるべく影響が少なくなるようにし、重なりが小さい場合には、後から入ってくる工程を後ろへずらす。また、一度ずらされたロットは、議事的に処理の優先度をあげておくと、特定ロットのみがずれることがないのでよい。なお、図中で工程と工程の間にすきまがあるので、工程間の搬送時間等である。このようにして、各ロットの全工程の処理予定を並べる(あるいは指定期間中の処理予定を並べる)ことにより処理予定(c)を作成すればよい。」
エ 8欄38-45行
「【0024】一方、優先度、重要度ともに低い非進捗制御ロットは、進捗制御ロットと同じようにロットの処理予定をたてることも可能である。その処理予定作成法としては、以下のような方法を用いることができる。
【0025】(1) 進捗制御ロットの処理予定を立て、その稼動時間を、その装置の非稼動時間と見立てて登録し、その残りの時間を稼動可能時間として処理予定を割り振るようにスケジュールする。」
オ 9欄26-43行
「【0028】ロット群Aとロット群Bの処理予定のスケジューラの合成法について図5を参照して述べる。・・・合成法としては、まず、優先度の高いもの(進捗制御ロット分)は、はじめに作成された処理予定時刻で割り当てる。非進捗制御ロット分は、処理開始可能時刻を見て、その時刻以降で、処理時間の範囲の空き時間あるかを判断し、空きの場所に割り当てる。これを他の工程にも順次実施する。工程が入らない分は、次の日に回す。」

以上のとおりであるので、引用例2には、次のことが記載されていると認める。
「少量品種と量産品種とを製造する製造装置において、少量品種についてその処理を装置に仮に割り当て、該仮の割り当てを調整し、その後、量産品種についてその処理を装置に割り当てること。」(以下「引用例2記載の技術的事項」という。)

3 対比
本件発明と引用例1記載の発明とを対比すると、本件発明の「複数の日からなる期間を単位として管理される各品種についての全体売上を予め設定された配分パラメータに基づいて按分して品種別工場別期間別の必要生産量を決定する手段と、日を単位として管理される各品種についての全体売上見込を予め設定された配分パラメータに基づいて按分して品種別工場別日別の必要生産量を決定する手段」は、各品種についての全体売上予測に基づいて品種別工場別の必要生産量を決定する手段であることに限り、引用例1記載の発明のそれと一致している。
また、本件発明の「前記期間を単位として管理される品種についての前記品種別工場別期間別の必要生産量を該当する期間の特定の日における該当する工場の複数のラインに対して予め設定された制約に基づいて山積みし、その山積みした必要生産量のうち予め設定された制約に違反する制約違反分を山崩しし、その後に更に、前記日を単位として管理される品種についての前記品種別工場別日別の必要生産量を該当する工場の複数のラインに対して予め設定された制約に基づいて山積みし、その山積みした必要生産量のうち予め設定された制約に違反する制約違反分を山崩しし、これによりライン別日別の生産計画を作成する手段」は、品種別工場別の必要生産量を該当する工場の複数のラインに対してライン別日別の生産計画を作成する手段であることに限り、引用例1記載の発明のそれと一致している。

したがって、本件発明と引用例1記載の発明とは、次の「情報処理装置」で一致している。
「各々複数のラインを有する複数の工場において複数の品種の製品を生産するための生産計画を作成する情報処理装置であって、
各品種についての全体売上予測に基づいて品種別工場別の必要生産量を決定する手段と、
前記品種別工場別の必要生産量を該当する工場の複数のラインに対してライン別日別の生産計画を作成する手段と、
を備える情報処理装置。」

そして、両者は、次の点で相違している。
本件発明では、各品種が複数の日からなる期間を単位として管理される各品種と日を単位として管理される各品種とからなり、各品種についての全体売上に基づいて品種別工場別の必要生産量を決定する手段が、複数の日からなる期間を単位として管理される各品種については、全体売上を予め設定された配分パラメータに基づいて按分して品種別工場別期間別の必要生産量を決定する手段であり、日を単位として管理される各品種については、全体売上見込を予め設定された配分パラメータに基づいて按分して品種別工場別日別の必要生産量を決定する手段であり、
かつ、ライン別日別の生産計画を作成する手段が、前記期間を単位として管理される品種についての前記品種別工場別期間別の必要生産量を該当する期間の特定の日における該当する工場の複数のラインに対して予め設定された制約に基づいて山積みし、その山積みした必要生産量のうち予め設定された制約に違反する制約違反分を山崩しし、その後に更に、前記日を単位として管理される品種についての前記品種別工場別日別の必要生産量を該当する工場の複数のラインに対して予め設定された制約に基づいて山積みし、その山積みした必要生産量のうち予め設定された制約に違反する制約違反分を山崩しし、これによりライン別日別の生産計画を作成する手段であるのに対し、
引用例1記載の発明では、そのようなものではない点。

4 相違点についての検討
相違点について、検討する。
少量品種の生産について、例えば月一回というような複数の日からなる期間に一回生産するように工場に指示を出すことは、例えば特開平11-96213号公報(1欄17-33行に記載の従来の技術を参照。)に記載されているように、従来周知である。
したがって、引用例1記載の発明において、その複数の品種のうちの少量品種を複数の日からなる期間を単位として管理される品種とし、量産品種を日を単位として管理される品種とし、これらの各品種についての全体売上に基づいて品種別工場別期間別と品種別工場別日別との必要生産量をそれぞれ決定することに、格別の困難性はない。
また、各品種についての全体売上に基づいて品種別工場別期間別や品種別工場別日別の必要生産量を決定するに際しては、各工場の品種別生産能力に差違があることが常識であるから、配分パラメータを予め設定しておき、この配分パラメータに基づいて全体売上を按分して上記必要生産量を決定することは、必要に応じて適宜なされる設定的事項にすぎない。
生産計画の策定に際しては、コスト削減等の観点から、各ラインがすべての品種の生産が可能なものではなく、ラインとそのラインによって生産することができる品種とは、あらかじめ設定されていることが一般的であるので、引用例1記載の発明において、期間を単位として管理される各品種についての品種別工場別期間別の必要生産量を該当する期間内の特定の日における該当する工場の複数のラインに対して、あらかじめ設定された制約に基づいて割り当て、日を単位として管理される各品種についての品種別工場別日別の必要生産量を該当する工場の複数のラインに対して、あらかじめ設定された制約に基づいて割り当てて、これによりライン別日別の生産計画を作成することにも格別の困難性はない。
このようなライン別日別の生産計画を作成する際に、期間を単位として管理される各品種の割り当てと、日を単位として管理される各品種の割り当てとのいずれを優先するかについて検討する。引用例1記載の発明と生産計画に関する点で技術分野が共通する引用例2には、上記2の(2) のとおりの技術的事項、すなわち少量品種についての割り当てを優先することが記載されている。少量品種を、複数の日からなる期間を単位として管理される品種とすることは、前記のとおり困難性はない。よって、割り当ての優先については、まず少量品種である期間を単位として管理される各品種について割り当て、その後に更に、量産品種である日を単位として管理される各品種について割り当てることにも格別の困難性はない。
さらに、割り当てにおいて、まず山積みし、次にその山積みした必要生産量のうち、あらかじめ設定された制約に違反する制約違反分を山崩しすることは、例えば、特開平8-249043号公報、特開平5-108658号公報、特許第2745801号公報に記載されているように従来周知にすぎない。
したがって、相違点全体をみても、格別の困難性を見いだすことはできず、本件発明の奏する作用効果についても、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術的事項、及び上記従来周知の各事項より、当業者が予測できる程度のものであって、格別のものではない。

5 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術的事項、及び上記従来周知の各事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願の他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-11 
結審通知日 2006-10-13 
審決日 2006-11-07 
出願番号 特願2000-283763(P2000-283763)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 健児八木 誠  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 鈴木 孝幸
豊原 邦雄
発明の名称 生産計画作成方法、情報処理装置及び生産管理システム  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  

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