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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 E05C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E05C 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 E05C |
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管理番号 | 1149156 |
審判番号 | 不服2006-4136 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2004-05-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-02-07 |
確定日 | 2006-12-18 |
事件の表示 | 特願2003-400639「地震時ロック方法及び地震対策付き棚」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月13日出願公開、特開2004-137886〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年3月18日に出願した特願平11-116988号の一部を平成15年10月26日に新たに特許出願としたものであって、平成17年7月13日及び平成17年11月4日に差し出された手続補正書により手続補正がなされたものであり、平成18年1月19日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月7日及び同年2月9日に差し出された手続補正書により手続補正(以下、それぞれ「本件補正1」及び「本件補正2」という。)がなされたものである。 2.補正却下の決定 (1)本件補正1(差出日:平成18年2月7日)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正1を却下する。 (2)本件補正2(差出日:平成18年2月9日)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正2を却下する。 3.補正却下の理由 (1)理由1:本件補正1の手続補正について (イ)本件補正1によると、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法において棚本体側に取り付けられた装置本体の係止体が地震時に安定位置から動く球により扉等の開く動きを停止させる位置であるロック位置へと動き、前記係止体は扉等の戻る動きとは独立して動くことにより扉等の戻る動きで解除されず地震時にロック位置に到って振動し、該振動はロック位置をしばらく継続する振動であり、地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記球は安定位置へと戻る扉等の地震時ロック方法 【請求項2】 請求項1の地震時ロック方法を用いた地震時ロック装置 【請求項3】 請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き棚 」 と補正されている。 (ロ)本件補正1は、平成17年7月13日及び平成17年11月4日に差し出された手続補正書により手続補正がなされた特許請求の範囲及び明細書に対して、特許法第17条の2第4項各号の規定に適合する補正であるか否かについて 上記本件補正1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「扉等の開く動きを停止させる位置であるロック位置へと動き」について、「安定位置から動く玉により」という限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (ハ)本件補正1後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について a)本件補正発明の記載について 補正後の上記請求項1には、「前記係止体は扉等の戻る動きとは独立して動くことにより扉等の戻る動きで解除されず地震時にロック位置に到って振動し」と記載されている。 このような記載を含む請求項1の記載であると、「地震時にロック位置に到って振動」するものが、球であるのか、あるいは係止体であるのかが判然としないので、発明を特定するために必要な事項が不明確である。 さらに、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、実施例においては、係止体は係止具に係止する位置に到るまでの間に振動しているものと解されるが、上記請求項1に記載の「係止体が・・・ロック位置に到って振動」するという構成に対応する具体的な事項が見当たらず、当該構成に対応する具体的態様や、技術的意義を理解しがたい。 したがって、本願は、その特許請求の範囲に特許を受けようとする発明が明確であるということができず、特許法第36条第6項第2号の規定に違反し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものといえる。 (ニ)まとめ したがって、本件補正1は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)理由2:本件補正2について (イ)本件補正2によると、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法において棚本体側に取り付けられた装置本体の係止体が地震時に安定位置から動く球により扉等の開く動きを停止させる位置であるロック位置へと動き、前記係止体は扉等の戻る動きとは独立して動くことにより扉等の戻る動きで解除されず地震時にロック位置に到って振動し、該振動はロック位置をしばらく継続する振動であり、地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記球は安定位置へと戻る扉等の地震時ロック方法 【請求項2】 地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法において棚本体側に取り付けられた装置本体の係止体が地震時に扉等の開く動きを停止させる位置であるロック位置へと動き、前記係止体は扉等の戻る動きとは独立して動くことにより扉等の戻る動きで解除されず地震時にロック位置に到って振動し、該振動はロック位置をしばらく継続する振動であり、地震のゆれがなくなることにより扉等の係止具から離れた後は扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は待機位置へと戻る扉等の地震時ロック方法 【請求項3】 請求項1又は2の地震時ロック方法を用いた地震対策付き開き戸 【請求項4】 請求項1又は2の地震時ロック方法を用いた地震対策付き引き出し 【請求項5】 請求項1又は2の地震時ロック方法を用いた地震対策付き棚 」 と補正されている。 (ロ)本件補正2は、特許法第17条の2第4項各号の規定に適合する補正であるか否かについて a)本件補正2は、平成17年7月13日及び平成17年11月4日に差し出された手続補正書により手続補正がなされた特許請求の範囲及び明細書に対して、特許法第17条の2第4項各号の規定に適合する補正であるか否かについて 補正後の新請求項1は、補正前の旧請求項1の発明特定事項である「扉等の開く動きを停止させる位置であるロック位置へと動き」について、「安定位置から動く玉により」という限定が付加されたものであり、また補正後の新たな請求項2は、同じく補正前の請求項1の発明特定事項である「扉等の戻る動きとは関係なく」について、「扉等の係止具から離れた後は」という限定が付加されたものである。なお、補正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「球に押される係止体」の記載は、補正後のいずれの請求項にも見当たらないので、補正により、他の請求項に繰り入れらて新請求項として記載されることなく、削除されたものと解される。 また、補正後の新請求項3ないし新請求項5についてみると、補正前の旧請求項4の記載内容と、補正後の新請求項5の記載内容とが同一であるので、これらの請求項は対応するが、補正後の新請求項3(「・・・地震対策付き開き戸」)及び新請求項4(「・・・地震対策付き引き出し」)については補正前の請求項のいずれにも対応するものはない。 ところで、特許法第17条の2第4項第2号は、単に、特許請求の範囲の減縮であればよいというものではなく、当該2号のかっこ書きに記載されているように、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。 すなわち、2号かっこ書きにおいて,その補正前の「当該請求項」に記載された発明とその補正後の「当該請求項」に記載される発明とが対応する関係に立つことが前提とされていることからすると,2号の規定は、請求項の発明特定事項を限定して、これを減縮補正することによって、当該請求項がそのままその補正後の請求項として維持されるという態様による補正を定めたものとみるのが相当であって、当該一つの請求項を削除して新たな請求項をたてるとか、当該一つの請求項に係る発明を複数の請求項に分割して新たな請求項を追加するというような態様による補正を予定しているものではない。2号の定める「特許請求の範囲の減縮」は、補正前後の請求項に係る発明が一対一の対応関係にあることを必要とする。もっとも,多数項引用形式で記載された一つの請求項を,引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や,構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項について,その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合のように,補正前の請求項が実質的に複数の請求項を含むものであるときに,これを補正に際し独立の請求項とすることにより,請求項の数が増加することになるとしても,それは,実質的に新たな請求項を追加するものとはいえず,実質的には一対一の対応関係にあるということができるから,このような補正まで否定されるものではない(平成17年(行ケ)第10192号参照)。 そうすると、本件補正2は、補正前の旧請求項1を、補正後に新請求項1とするだけではなく、旧請求項1をもとに別に新請求項2を新しくたてたものといえ、即ち実質的に新たな請求項2をたてたことになり、また、補正後の新請求項3及び新請求項4は新たに追加したことになるものといえるから、特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合しない補正であり、また当該4項のその他の規定にも適合しない補正であるといえる。 b)本件補正2は、本件補正1により補正された直前の特許請求の範囲及び明細書に対して、特許法第17条の2第4項各号の規定に適合する補正であるか否かについて 補正後の新請求項1は、補正前の旧請求項1の発明特定事項と全く同じであり、補正後の新請求項5は、引用内容は異なるものの、その記載内容は、補正前の旧請求項3と同一である。 また、補正後の新請求項2は、補正前の旧請求項1に記載の「安定位置から動く球により」という技術的限定がないので、補正前の旧請求項1を限定して記載したものとはいえない。 さらに、補正後の新請求項3(「・・・地震対策付き開き戸」)及び新請求項4(「・・・地震対策付き引き出し」)については補正前の請求項のいずれにも対応してない。 ところで、どのような記載によれば、特許法第17条の2第4項2号でいう特許請求の範囲の減縮に当たるといえるのかについては、上記a)で述べたとおりである。 そうすると、補正後の新請求項1及び新請求項1を引用する新請求項5は、実質的に補正前の請求項1及び請求項3とそれぞれの内容は同じものであるものの、補正後の新請求項2、新請求項3、新請求項4及び新請求項2を引用する新請求項5は新たに追加したことになるものといえるから、本件補正2は、特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合しない補正であり、また当該4項のその他の規定にも適合しない補正であるといえる。 (ハ)まとめ 以上検討したように、平成17年7月13日及び平成17年11月4日に差し出された手続補正書により手続補正がなされた特許請求の範囲及び明細書と、本件補正1により補正された直前の特許請求の範囲及び明細書のいずれを本件補正2が補正の対象とする特許請求の範囲及び明細書としてみても、本件補正2は、特許法第17条の2第4項各号のいずれの規定にも適合しない補正であるといえる。 したがって、本件補正2は、法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 4.本願発明について 平成18年2月7日及び平成18年2月9日に差し出された手続補正(「本件補正1」及び「本件補正2」)は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成17年7月13日に差し出された手続補正書により手続補正がなされた特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法において棚本体側に取り付けられた装置本体の係止体が地震時に扉等の開く動きを停止させる位置であるロック位置へと動き、前記係止体は扉等の戻る動きとは独立して動くことにより扉等の戻る動きで解除されず地震時にロック位置に到って振動し、該振動はロック位置をしばらく継続する振動であり、地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は待機位置へと戻る扉等の地震時ロック方法」及び 「【請求項2】球に押される係止体とした請求項1の地震時ロック方法」 (以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。) (1)本願発明1及び本願発明2の記載について (イ)本願発明1について 本願発明1には、「前記係止体は扉等の戻る動きとは独立して動くことにより扉等の戻る」と記載されている。 ここでいう、「係止体は・・・地震時にロック位置に到って振動」するとは、係止体のどのような振動を示しているのかが判然としないので、発明を特定するために必要な事項が不明確である。 さらに、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、実施例においては、係止体は、係止具に係止する位置に到るまでの間に振動しているものと解されるが、上記請求項1に記載の「係止体は・・・ロック位置に到って振動」するという構成に対応する具体的な事項が見当たらず、当該構成に対応する具体的態様や、技術的意義を理解しがたい。 (ロ)本願発明2について 本願発明2は、請求項1を引用し、請求項1の地震時ロック方法について、「球に押される係止体とした」という限定を付加している。 本願発明2の係止体は、球に押される係止体となるが、このような本願発明2の記載であると、「地震時にロック位置に到って振動」するものが、球であるのか、あるいは係止体であるのかが判然としないので、発明を特定するために必要な事項が不明確である。 さらに、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、実施例においては、係止体は、係止具に係止する位置に到るまでの間に振動しているものと解されるが、上記請求項2に記載の「係止体が・・・ロック位置に到って振動」するという構成に対応する具体的な事項が見当たらず、当該構成に対応する具体的態様や、技術的意義を理解しがたい。 したがって、本願は、その特許請求の範囲に特許を受けようとする発明が明確であるということができず、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するというべきである。 (2)まとめ 以上のとおり、本願は、その特許請求の範囲に特許を受けようとする発明が明確に記載されているということができず、特許法第36条第6項第2号に規定に違反するものであるから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-10-02 |
結審通知日 | 2006-10-10 |
審決日 | 2006-10-25 |
出願番号 | 特願2003-400639(P2003-400639) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(E05C)
P 1 8・ 572- Z (E05C) P 1 8・ 575- Z (E05C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 富士 春奈 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
西田 秀彦 柴田 和雄 |
発明の名称 | 地震時ロック方法及び地震対策付き棚 |