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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1149454
審判番号 不服2004-7075  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-08 
確定日 2006-12-28 
事件の表示 平成11年特許願第68474号「エアバッグの処理方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年9月26日出願公開、特開2000-264161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年3月15日の出願であって、平成16年3月3日付けで拒絶査定がなされ(発送3月9日)、これに対し、同年4月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月7日に手続補正がなされたものである。

第2.平成16年5月7日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年5月7日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成16年5月7日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。

「【請求項1】
不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させて処理するエアバッグの処理方法において、密閉空間内で、前記インフレータを作動させ、少なくとも当該インフレータの作動後に、前記密閉空間内の気体を、排気装置を用いて強制的に排気するとともにこれをフィルタ機に導くことを特徴とするエアバッグの処理方法。」

前記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「密閉空間内の気体」に関して「排気装置を用いて(強制的に排気するとともに)これをフィルタ機に導く」との限定を付加するもので、前記補正に係る事項は、新規事項を含むものでなく、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由において引用された本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平10-1017号公報(以下、「引用文献」)という。)には「ガス発生体の作動方法」に関し図面とともに、以下の事項が記載されている。
(あ)「 未作動のガス発生体を容器内部に収容するガス発生体収容行程と、前記容器内部に収容したガス発生体をガス発生体作動手段により作動させるガス発生体作動行程とを備えることを特徴とするガス発生体の作動方法。」(【請求項10】)
(い)「【発明の属する技術分野】この発明は、車両衝突時の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置の廃棄に用いられるガス発生体の作動装置及びその方法に関するものである。」(【0001】)
(う)「ガス発生体の作動装置2は、未作動のガス発生体を含むエアバッグ装置4を内部に収容する容器本体部6及びこの容器本体部6の内部を外部から密閉する蓋体部8を備えている。」(【0029】)
(え)「また、ガス発生体の作動時における容器本体部6の内圧の上昇に耐えれるように、容器本体部6と蓋体部8とを固定するクランプ18が設けられている。このクランプ18は、容器本体部6の側壁に沿って複数個(図においては、1個のみを示す)設けられており、このクランプ18により、容器本体部6と蓋体部8との固定を完全なものとすることができる。これにより容器本体部6の内部の密閉度の向上が図られている。なお、容器本体部6と蓋体部8との接触面には、容器本体部6と蓋体部8との密着度を上げるためのゴム板等の弾性部材が備えられている。」(【0033】)
(お)「上述の実施の形態においては、未作動のガス発生体を含むエアバッグ装置をガス発生体の作動装置内に収容し、ガス発生体を作動させることについて説明したが、これに限らずエアバッグ装置から取り外したガス発生体のみをガス発生体の作動装置内に収容し作動させるようにしてもよい。」(【0066】)

以上を総合すると、引用文献には、「廃棄されるエアバッグ装置のガス発生体を作動させて処理するエアバックの処理方法において、容器本体部6と蓋体部8からなるガス発生体の作動装置2内で、前記ガス発生体を作動させるエアバッグの処理方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比するに、引用発明の「廃棄されるエアバッグ装置」、「ガス発生体」、「容器本体部6と蓋体部8からなるガス発生体の作動装置2内」は、本願補正発明の「不要となったエアバッグ装置」、「インフレータ」、「密閉空間内」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおり認定できる。

[一致点]
不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させて処理するエアバッグの処理方法において、密閉空間内で、前記インフレータを作動させるエアバッグの処理方法。

[相違点]
密閉空間内の気体の排気に関し、本願補正発明では、少なくともインフレータの作動後に、排気装置を用いて強制的に排気するとともにこれをフィルタ機に導くとしているのに対し、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

4.当審の判断
以下、相違点につき検討する。
各種処理実施に伴って有害物質が発生する場合、有害物質を除去し排気を行うために有害物質を含む気体を排気装置を用いて強制的に排気するとともにこれをフィルタ機に導き無害化することは、技術分野を問わず、従来より周知の技術手段である[例えば、国際公開第98/46943号パンフレット(明細書第16頁記載のベントファン22による排気、スクラバ27の作用参照)、特開昭63-200883号公報(第2ファン19、フィルターボックス21参照)、登録実用新案第3034732号公報(本引ポンプ11、フィルタエレメント30参照)]。よって、引用発明において、少なくとも有害物質を含む気体が発生するインフレータの作動後に、密閉空間内の気体を排気装置を用いて強制的に排気するとともにこれをフィルタ機に導く工程を付加することは、前記周知の事項に倣って当業者が容易に想到し得た事項である。

そして、本願補正発明により得られる効果も、引用発明及び前記周知の技術手段から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。
[出願人は、審判請求の理由中にて、「本願発明に係る処理方法によれば、インフレータを作動後に密閉空間内の気体を強制的に排気し、かつこれをフィルタ機に導いて浄化するので、処理済みのインフレータを取り出して次のインフレータをセットする際に作動ガスが作業室に充満することがなくなります。また、インフレータの交換作業も即座に行うことができます。」と主張しているが、この点に関しても前記国際公開第98/46943号パンフレット第16頁第11行?第16行に「In practice, using the method and apparatus described?after each explosion to remove the treated work piece and replace it with the next.」と示唆されている。]

したがって、本願補正発明は、引用発明及び前記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成16年5月7日付け手続補正は上記のとおり却下されたので 、本願の請求項1?12に係る発明は、平成15年7月14日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させて処理するエアバッグの処理方法において、密閉空間内で、前記インフレータを作動させ、少なくとも当該インフレータの作動後に、前記密閉空間内の気体を強制的に排気することを特徴とするエアバッグの処理方法。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献とその記載事項は、前記の「第2.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「密閉空間内の気体」に関して「排気装置を用いて(強制的に排気するとともに)これをフィルタ機に導く」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-26 
結審通知日 2006-10-31 
審決日 2006-11-14 
出願番号 特願平11-68474
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60R)
P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 前田 仁
特許庁審判官 永安 真
鈴木 久雄
発明の名称 エアバッグの処理方法および装置  
代理人 西出 眞吾  

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