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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60G
管理番号 1149705
審判番号 不服2006-16398  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-28 
確定日 2007-01-05 
事件の表示 特願2004-168894「車両用サスペンションアーム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年9月24日出願公開、特開2004-262453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年1月11日に出願した特願平7-2778号の一部を平成16年6月7日に新たな特許出願としたものであって、平成18年6月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月28日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成18年8月28日付けの手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成18年8月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成18年8月28日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という)は、平成18年6月5日付けの手続補正書により全文補正された明細書を補正しようとするものであって、本件手続補正により補正しようとする請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という)は、次のとおりである。

「【請求項3】 長手方向中間に屈曲部を有して荷重の入力面と略平行に配置される板状の本体部(13)と、この本体部(13)の両側縁に沿って連設された補強部(12)とを備えていて、鋼板をプレス加工することにより形成されると共に、一端が車体(B)に連結され且つ他端が、車輪を支持するナックル(N)に連結されるI型の車両用サスペンションアームであって、
前記補強部(12)は、前記本体部(13)の前記入力面に沿う中心面より一方側に側端を位置させて略パイプ状に形成されると共に、その補強部(12)の自由端の端縁は、該補強部(12)の、上下方向及び車両前後方向の何れの最外端よりも内側に在って、該端縁と、該端縁に対応する前記本体部(13)の側縁との間には隙間が形成されることを特徴とする、車両用サスペンションアーム。」

上記補正は、請求項3に記載した発明の構成に欠くことができない事項である「補強部(12)の自由端の端縁」について、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した技術的事項に基づいて、該補強部(12)の、「上下方向及び車両前後方向の何れの」最外端よりも内側に在るとの限定を付加するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的をするものに該当する。
そこで、上記の本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された実願昭62-58575号(実開昭63-165203号)のマイクロフィルム(以下、同様に「引用文献1」という)には、「車両の懸架装置」に関して、第1?6図とともに次の事項が記載されている。
ア.「第1図に示すように、この一実施例の車両の懸架装置10は、後輪用のストラツト式の独立懸架方式の懸架装置であつて、車体側支持部として、車両の下部に取付けられるクロスメンバ12を備えている。ここで、後輪用のタイヤ14は、車輪支持部材としてのナツクル16に取着されるものであるが、このナツクル16は、トレーリングリンク18を介してタイヤハウスの前方部分に接続され、前後方向の動きを規制されている。また、このナツクル16は、コイルスプリング20を備えたシヨツクアブソーバ22を介して、タイヤハウスの上方部分に接続され、上下方向の動きを規制されている。更に、このナツクル16は、前後に並設された一対のラテラルリンク24、26を介して、クロスメンバ12に接続され、左右方向、即ち、車両の幅方向の動きを規制されている。」(第5頁第18行?第6頁第14行)

イ.「このスタビライザ28が接続されるラテラルリンク24は、第2図に平面図として、第3図として背面図として、そして、第4図に第2図のIV-IV線に沿つて切断した断面図として示すように、前方の側面が開放された断面略コ字状に形成されている。即ち、このラテラルリンク24は、上側水平片24aと、後方起立片24bと、下側水平片24cとから一体に形成されている。」(第6頁第20行?第7頁第7行)

ウ.「このように形成されるラテラルリンク24の両端には、第1及び第2の目玉部30,32が一体に取着されている。この第1の目玉部30は、クロスメンバ12に回動自在に枢着されるために、また、第2の目玉部32は、ナツクル16に回動自在に枢着されるために設けられている。これら第1及び第2の目玉部30、32は、後方起立片24bの両端において、これと直交しつつ水平方向に沿つて延出する円筒体から構成された外筒30a,32aを夫々備えている。これら外筒30a,32aは、ラテラルリンク24が平板状の板金から、前述したように、前方の側面が開放された状態にプレス成形する際に、同時に一体成形されるものである。」(第7頁第8行?第8頁第1行)

エ.「このように形成されたラテラルリンク24の中途部には、第1及び第2の目玉部30,32の延出方向とほぼ同方向に沿つて延出するように配設された、スタビライザ28の取付け用の第3の目玉部36が設けられている。」(第9頁第1?5行)

オ.「以上のように、この一実施例の懸架装置10は構成されているので、ラテラルリンク24が前方の側面が開放される断面略コ字状に形成されることにより、第1乃至第3の目玉部30,32,36の夫々の外筒30a,32a,36aがラテラルリンク24を平板からなる板材からプレス成形により形成する際に、同時に、一体に成形されることになる。このようにして、この一実施例によれば、簡単にして、しかも、安価にラテラルリンク24を形成することが出来るようになる。」(第11頁第14行?第12頁第3行)

カ.第3図には、第3の目玉部36が設けられる位置であるラテラルリンク24の長手方向中間が屈曲している点が記載されている。

引用文献1の上下揺動自在に枢着され且つトレーリングリンク18によって車体前後方向の動きを規制されたラテラルリンク24に、荷重が第1の目玉部30と第2の目玉部32を結ぶ方向、すなわち後方起立片24bと略平行な方向に作用することは当業者にとって自明な事項であることから、上記記載事項ア?カの記載及び第1?6図の記載を総合すると、引用文献1には、
「長手方向中間に屈曲部を有して荷重の入力面と略平行に配置される板状の後方起立片24bと、この後方起立片24bの両側縁に沿って連設された上側水平片24a、下側水平片24cとを備えていて、平板状の板金をプレス加工することにより形成されると共に、一端が車体に連結され且つ他端が、車輪を支持するナツクル16に連結されるラテラルリンク24。」
の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

(2)同じく引用文献2として引用された仏国特許出願公開第2556389号明細書(以下、同様に「引用文献2」という)には、「ELEMENT PORTEUR METALLIQUE POUR STRUCTURE DE BATIMENT NOTAMMENT」に関して、図1?6bとともに次の事項が記載されているものと認められる。
キ.「本発明に従う、図2に示される形鋼20は、連続金属帯の冷間ロール形成によって得られ、最終形態で、心線22と、同様に、心線22に垂直で、心線の両側に伸び、折り曲げ線によって心線につながる2つの翼24と26とを示す。特に、翼24、26と心線22との間に接続幕28と30を準備する。各幕28(30)は、一方、折り曲げ線29(31)によって鈍角で、好ましくは135°付近で心線22につながり、他方、心線22に平行に延びる中間帯32(34)によって対応する翼24(26)につながり、結果として、翼24(26)と幕28(30)との間の折り曲げ角度は、鋭角になり、好ましくは45°付近である。変体として、翼24、26は、帯32、34を除いて、幕28,30に直接つながることを想定できる。

更に、各翼24(26)は、その自由端にフラップ36(38)を備え、翼は、心線22にほぼ平行に伸びる中間舌片40(42)によってフラップにつながり、結果として、フラップ36(38)と翼24(26)は、その間で鋭角をなし、好ましくは45°付近である。ここで更に、変体として、舌片40、42を除くことができることを想定でき、その場合、フラップ36、38は、折り曲げ線によって翼24、26に直接つながる。

形鋼の形態は、形鋼に優れた曲げ及び捩れ強度特性を与え、少なくとも図1で示されたような“I”型の標準形鋼の強度と同等であり、重量はより軽く、とりわけ簡素な冷間ロール形成の装置を使って、連続金属片から製造できることに留意する。」(第4頁第23行?第5頁第22行)

ク.図2には、心線22の両側端部の形状が略パイプ状となったものが記載されている。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「上側水平片24a、下側水平片24c」は断面略コ字状のラテラルリンク24の折り曲げられた部分であって(記載事項イ、オ、第4図参照)、平板の側端部を折り曲げると平板の強度が増加することは当業者にとって自明な事項であるから、引用発明のラテラルリンク24は、折り曲げられた部分である「上側水平片24a、下側水平片24c」により強度が増加するものと認められる。よって、引用発明の「上側水平片24a、下側水平片24c」は、本願補正発明の「補強部」に相当する。
また、引用発明の「後方起立片24b」、「平板状の板金」、「ナツクル16」、「ラテラルリンク24」は、それぞれ、本願補正発明の「本体部」、「鋼板」、「ナックル」、「I型の車両用サスペンションアーム」に相当する。

したがって、両者は、
【一致点】
「長手方向中間に屈曲部を有して荷重の入力面と略平行に配置される板状の本体部と、この本体部の両側縁に沿って連設された補強部とを備えていて、鋼板をプレス加工することにより形成されると共に、一端が車体に連結され且つ他端が、車輪を支持するナックルに連結されるI型の車両用サスペンションアーム。」
に係る発明である点で一致し、次の点で相違する。

【相違点】
補強部について、本願補正発明では、「前記補強部(12)は、前記本体部(13)の前記入力面に沿う中心面より一方側に側端を位置させて略パイプ状に形成されると共に、その補強部(12)の自由端の端縁は、該補強部(12)の、上下方向及び車両前後方向の何れの最外端よりも内側に在って、該端縁と、該端縁に対応する前記本体部(13)の側縁との間には隙間が形成される」と限定しているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用文献2の形鋼20は、板材(金属帯)からなるもので、その側端部の形状が心線22の中心面より一方側(図2における左側)に側端を位置させて略パイプ状に形成されると共に、その自由端の端縁は、パイプ状の部分(幕28,30、中間帯32,34、翼24,26、中間舌片40,42、フラップ36,38)の、上下方向及び左右方向の何れの最外端よりも内側に在って、該端縁と、該端縁に対応する心線22の側縁との間には隙間が形成されているから(記載事項キ、ク参照)、引用文献2の形鋼20は、本願補正発明の補強部と同様の形状をした略パイプ状の側端部を有するものと認められる。そして、このように板材の側端部を略パイプ状に形成すると板材の剛性が高まることは、従来周知の技術事項である(例えば、記載事項キ、特開平2-187225号公報、実願平3-44341号(実開平6-14393号)のCD-ROM参照)。
したがって、引用発明において、板材からなるラテラルリンク24(I型の車両用サスペンションアーム)の剛性を高めるために、側端部にある上側水平片24a、下側水平片24cの形状を引用文献2にも記載されている従来周知の略パイプ状に形成し、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることに、格別の技術的困難性があるとは認められない。

また、上記相違点で指摘した構成を備える本願補正発明の作用効果は、引用文献1、2の記載事項及び上記周知技術から、当業者であれば予測できる程度以上のものではない。

よって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願の発明について
1.本願の発明
平成18年8月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成18年6月5日付けの手続補正書により全文補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものと認められるが、そのうち請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。

「【請求項3】 長手方向中間に屈曲部を有して荷重の入力面と略平行に配置される板状の本体部(13)と、この本体部(13)の両側縁に沿って連設された補強部(12)とを備えていて、鋼板をプレス加工することにより形成されると共に、一端が車体(B)に連結され且つ他端が、車輪を支持するナックル(N)に連結されるI型の車両用サスペンションアームであって、
前記補強部(12)は、前記本体部(13)の前記入力面に沿う中心面より一方側に側端を位置させて略パイプ状に形成されると共に、その補強部(12)の自由端の端縁は、該補強部(12)の最外端よりも内側に在って、該端縁と、該端縁に対応する前記本体部(13)の側縁との間には隙間が形成されることを特徴とする、車両用サスペンションアーム。」

2.引用文献とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献とその記載事項は、前記「第2.2.引用文献とその記載事項」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.で検討した本願補正発明から、補強部(12)の自由端の端縁が内側に在る補強部(12)の最外端についての限定事項である「上下方向及び車両前後方向の何れの」との構成を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4.当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項1、2、4、5に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-08 
結審通知日 2006-11-08 
審決日 2006-11-21 
出願番号 特願2004-168894(P2004-168894)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60G)
P 1 8・ 575- Z (B60G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 良隆  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 永安 真
ぬで島 慎二
発明の名称 車両用サスペンションアーム  
代理人 落合 健  
代理人 仁木 一明  
代理人 落合 健  
代理人 仁木 一明  

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