ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H |
---|---|
管理番号 | 1150527 |
審判番号 | 不服2004-15456 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-09-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-26 |
確定日 | 2007-01-10 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第 22893号「双動式動的背隙防止駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月19日出願公開、特開平 7-243484〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年2月21日の出願であって、平成16年4月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月25日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年8月25日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年8月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項4は、 「【請求項4】 双動式動的背隙防止駆動装置において、 原動ウォームシャフト(605)及び移動量制御ウォームシャフト(606)とウォームギア(608)が噛み合い、両ウォームシャフト(605、606)の回転は、ウォームギア(608)の動作を引き起こし、 原動ウォームシャフト(605)及び移動量制御ウォームシャフト(606)を回転する駆動手段が、 原動ウォームシャフト(605)に連結された第1回転動力ユニット(601)と、 移動量制御ウォームシャフト(606)に連結された第2回転動力ユニット(602)と、 両回転動力ユニット(601、602)に連結された制御ユニット(CCU607)と、から構成され、 原動ウォームシャフト(605)と移動量制御ウォームシャフト(606)は、異なる速度で反対方向に回転し、ウォームギア(608)を間隙なしに回転し、 制御ユニット(CCU607)が、第1、第2回転動力ユニット(601、602)の回転出力速度を、第1、第2回転動力ユニット(601、602)の出力トルクの増加に対して減少するよう制御する、 ことを特徴とする双動式動的背隙防止駆動装置。」 と補正された。(なお、下線は、請求人が附したものであって、補正箇所を示すものである。) 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1、第2回転動力ユニット(601、602)の回転出力速度」について「制御ユニット(CCU607)が、」?する「よう制御する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項4に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)刊行物に記載された発明 (刊行物1) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭60-84474号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「ウオーム歯車装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 (ア)「第2図において、1a及び1bは夫々ウオームホイール2に取り付けられたウオームで、回転アクチユエータ例えばサーボモータ(図示せず)によつて駆動される。3a、3bはウオーム1a、1bに設けられた歯のうち、ウオームホイール2と接している歯、4a、4bはウオームホイール2に設けられ、ウオーム1a、1bと接している歯である。5a、5bはウオーム1a、1bとウオームホイール2の歯の接触面、6a、6bはガタである。一方、7a、7bは夫々ウオーム1a、1bの回転角度を検出する回転角度検出器、8a、8bは夫々、一方のウオーム1a又は1bの回転によるウオームホイール2回転中に他方のウオーム1b又は1aの駆動装置としての回転アクチユエータにウオーム1b又は1aの歯3b又は3aがウオームホイール2の回転前方の歯車と接触するようなウオーム回転角度を引き起す指令を発するコントローラである。 次に動作について説明する。ウオーム1aが右ねじの状態で切られており、時計回りの回転角度θaで回転すると、ウオームホイール2は図に示すように、時計方向に回転する。この時のウオーム1aの回転角度θaは、回転角度検出器7aで検出され、この回転角度検出器7aの出力信号はコントローラ8aに送られる。 コントローラ8aは、右ねじの状態で切られたウオーム1bの回転アクチユエータ(図示せず)に、 θb(t)=-θa(t-Δt) の回転角度を引起す指令を発する。ここで、tは時間であり、Δtはコントローラ8aにて調節された微少時間遅れであり、上式の右辺の-はウオーム1aとウオーム1bの回転方向が逆向であることを意味している。そして、微少時間遅れΔtは、ウオームホイール2とウオーム1bの接触面が5bとなるように即ちウオーム1bの歯3bがウオームホイール2の回転前方の歯面となるように、さらにウオームホイール2の回転を拘束しないようにコントローラ8aで調節される。」(第2頁左上欄20行?左下欄18行) (イ)「以上説明したように、本発明によればウオームホイールに2つのウオームを取り付け、一方のウオームの回転によるウオームホイール回転中に他方のウオーム駆動装置に該ウオームの歯がウオームホイールの回転前方の歯面と接触するようなウオーム回転角度を引き起す指令を発するように構成したから、ウオームの逆方向回転に瞬時にウオームホイールが追従しないいわゆる「ガタ」の存在をなくすことができ、回転伝達において不感帯が発生するのを防止できる。」(第2頁右下欄16行?第3頁左上欄5行) 以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「ウオーム1a及びウオーム1bとウオームホイール2が噛み合い、両ウオーム1a、1bの回転によりウオームホイール2が回転し、ウオーム1a及びウオーム1bを駆動する回転アクチユエータ及び回転アクチユエータに指令を発するコントローラ8a、8bを備え、ウオーム1aが回転角度θa回転したときウオーム1bをθb(t)=-θa(t-Δt)の回転角度だけ回転させることにより、一方のウオームの回転によるウオームホイール回転中に他方のウオーム駆動装置に該ウオームの歯がウオームホイールの回転前方の歯面と接触するように、すなわち「ガタ」が存在しないように回転するウオーム回転装置。」 (3)対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能に照らして、引用発明の「ウオーム1a」及び「ウオーム1b」は本願補正発明の「原動ウォームシャフト(605)」及び「移動量制御ウォームシャフト(606)」に相当し、以下同様に「ウオームホイール2」は「ウォームギア(608)」に相当する。 そして引用発明の「回転アクチユエータ」も両ウオーム1a、1bにそれぞれ設けられていることは明らかであるから、「回転アクチユエータ」は「第1回転動力ユニット」及び「第2回転動力ユニット」に相当する。 また、本願補正発明の「制御ユニット(CCU607)」と引用発明の「コントローラ8a、8b」とは、「第1回転動力ユニット」及び「第2回転動力ユニット」を制御する「制御部」である限りにおいて一致している。 そして、引用発明において「ウオーム1aが回転角度θa回転したときウオーム1bをθb(t)=-θa(t-Δt)の回転角度だけ回転させる」のであるから、ウオーム1a及びウオーム1bは異なる速度で反対方向に回転している。 また、引用発明において「一方のウオームの回転によるウオームホイール回転中に他方のウオーム駆動装置に該ウオームの歯がウオームホイールの回転前方の歯面と接触するように、すなわち「ガタ」が存在しないように回転する」のであるから、「ウォームギア(608)を間隙なしに回転し」ている。 さらに、これらの構成、機能から見て引用発明のウオーム回転装置も「双動式動的背隙防止駆動装置」と言えるものである。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、本願補正発明の用語を用いて記載すると下記の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「双動式動的背隙防止駆動装置において、 原動ウォームシャフト及び移動量制御ウォームシャフトとウォームギアが噛み合い、両ウォームシャフトの回転は、ウォームギアの動作を引き起こし、 原動ウォームシャフト及び移動量制御ウォームシャフトを回転する駆動手段が、 原動ウォームシャフトに連結された第1回転動力ユニットと、 移動量制御ウォームシャフトに連結された第2回転動力ユニットと、 制御部から構成され、 原動ウォームシャフトと移動量制御ウォームシャフトは、異なる速度で反対方向に回転し、ウォームギアを間隙なしに回転する、 双動式動的背隙防止駆動装置。」 (相違点1) 「制御部」が、本願補正発明では「両回転動力ユニットに連結された制御ユニット」であるのに対し、引用発明では「回転アクチユエータ(両回転動力ユニットに相当)に指令を発するコントローラ8a、8b」である点。 (相違点2) 本願補正発明では、「制御ユニットが、第1、第2回転動力ユニットの回転出力速度を、第1、第2回転動力ユニットの出力トルクの増加に対して減少するよう制御する」のに対し、引用発明ではそのような構成となっていない点。 以下、上記相違点について検討する。 (相違点1について) 引用発明のコントローラ8aは上記摘記事項(ア)及び図面からみて、ウオーム1bの回転アクチユエータに指令を発するものであるが、その前段階としてウオーム1aを回転させる際に、ウオーム1aの回転アクチユエータにも何らかの手段で指令を発する必要がある。その際、コントローラ8aから指令を発するようにすることは当業者が普通に採用しうる事項である。そして、コントローラ8bについても逆転時に同様の動作をするものと理解することができる。 そうすると、コントローラ8a、8bを「両回転動力ユニットに連結された」ものとすることは当業者が容易に想到できたことであり、またその際2つのコントローラを1つの制御ユニットで兼用させることも格別創意を要することとは言えない。 したがって、引用発明に基づいて「制御部」を、「両回転動力ユニットに連結された制御ユニット」とし、相違点1に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たことである。 (相違点2について) (相違点1について)に記載したとおり、引用発明も何らかの手段で前段階としてウオーム1a(逆転の場合は1b)の回転アクチユエータに指令を発する必要がある以上、その回転出力速度を制御することは当然のことである。 そして、その際例えば回転動力ユニットとして一般的な駆動方式の一つである定出力負荷特性のモータを用いれば、出力トルクの増加に対して回転出力速度を減少することになるのは必然であるから、「第1、第2回転動力ユニットの回転出力速度を、第1、第2回転動力ユニットの出力トルクの増加に対して減少するよう制御する」構成に想到することは当業者にとって格別の創意を要することではない。 そして、「制御ユニット」に前段階としてウオーム1a(逆転の場合は1b)の回転アクチユエータに指令を発するようにさせることが当業者が普通に採用しうる事項であることも(相違点1について)に記載したとおりであるから、結局引用発明に基づいて上記相違点2に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たことである。 なお、この相違点2に関連して請求人は、審判請求書の請求の理由において、「引用文献2(本審決の刊行物1に相当)には、本願発明の請求項4記載の「制御ユニット(CCU607)が、第1、第2回転動力ユニット(601、602)の回転出力速度を、第1、第2回転動力ユニット(601、602)の出力トルクの増加に対して減少するよう制御する、」構成は何ら開示されておらず、その示唆もない。」等主張している。 しかしながら、引用発明においても、第1、第2回転動力ユニットの回転出力速度を、出力トルクの増加に対して減少するよう制御することは、例えば一般的な定出力負荷特性のモータの存在を考慮することにより当業者が格別の創意なくなし得ることである点は上記したとおりである。したがって、請求人の主張は採用できない。 また、本願補正発明の効果を検討しても、引用発明から、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年8月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成16年2月12日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項4】 双動式動的背隙防止駆動装置において、 原動ウォームシャフト(605)及び移動量制御ウォームシャフト(606)とウォームギア(608)が噛み合い、両ウォームシャフト(605、606)の回転は、ウォームギア(608)の動作を引き起こし、 原動ウォームシャフト(605)及び移動量制御ウォームシャフト(606)を回転する駆動手段が、 原動ウォームシャフト(605)に連結された第1回転動力ユニット(601)と、 移動量制御ウォームシャフト(606)に連結された第2回転動力ユニット(602)と、 両回転動力ユニット(601、602)に連結された制御ユニット(CCU607)と、から構成され、 原動ウォームシャフト(605)と移動量制御ウォームシャフト(606)は、異なる速度で反対方向に回転し、ウォームギア(608)を間隙なしに回転し、 第1、第2回転動力ユニット(601、602)の回転出力速度は、第1、第2回転動力ユニット(601、602)の出力トルクの増加に対して減少する、 ことを特徴とする双動式動的背隙防止駆動装置。」 (2)刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「第1、第2回転動力ユニット(601、602)の回転出力速度」についての限定事項である「制御ユニット(CCU607)が、」?する「よう制御する」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび したがって、本願の請求項4に係る発明(本願発明)は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願の請求項4に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項1?3及び5?8に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-09 |
結審通知日 | 2006-08-15 |
審決日 | 2006-08-29 |
出願番号 | 特願平6-22893 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16H)
P 1 8・ 121- Z (F16H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔、田々井 正吾 |
特許庁審判長 |
亀丸 広司 |
特許庁審判官 |
町田 隆志 藤村 泰智 |
発明の名称 | 双動式動的背隙防止駆動装置 |
代理人 | 石戸 久子 |