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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E01C
管理番号 1150680
審判番号 無効2001-35438  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-05 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-10-10 
確定日 2006-07-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第3120150号「路面覆工方法」の特許無効審判事件についてされた平成16年 2月16日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10190号 平成17年12月 5日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第3120150号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 〔1〕手続の経緯
本件特許第3120150号発明についての出願は、平成11年11月25日に特許出願され、平成12年10月20日に設定登録がなされた。
請求人は、平成13年10月10日、本件特許の請求項1及び2に係る発明の特許について無効審判を請求した(無効2001-35438号)ところ、特許庁は、平成14年7月16日、「特許第3120150号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下、「第1審決」という。)をし、その謄本を当事者に送達した。
被請求人は、この第1審決を不服として、当該審決の取消訴訟を提起した(東京高等裁判所平成14年(行ケ)435号)。
その後、被請求人は、平成15年3月14日、本件特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載等の訂正(以下「本件訂正」という。)をする訂正審判の請求をした(訂正2003-39050号)ところ、特許庁は、同年5月23日、本件訂正を認めるとの審決をし、これが確定した。
そこで、上記取消訴訟において、「特許庁が無効2001-35438号事件について平成14年7月16日にした審決を取り消す。」との判決(以下、「第1判決」という。)が言い渡され、確定した。
これを受けて、特許庁は、さらに上記無効審判請求について審理した上、平成16年2月16日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下、「第2審決」という。)をし、その謄本を当事者に送達した。
請求人は、この第2審決を不服として、当該審決の取消訴訟を提起した(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10190号)。
そこで、上記取消訴訟において、「特許庁が無効2001-35438号事件について平成16年2月16日にした審決を取り消す。」との判決(以下、「第2判決」という。)が言い渡され、確定した。

なお、平成18年2月13日付けで被請求人より上申書が提出されている。

〔2〕本件特許の請求項1及び2に係る発明
本件特許第3120150号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、本件訂正後の本件特許に係る明細書(以下、「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

(本件発明1)
「路面に下部溝に連続して幅の広い上部溝を掘削して行う工事中に溝を覆う路面覆工方法において、
上部溝の掘削溝壁に当接させる縦壁と、上部溝の底面に当接させる横壁とを備えた山留部材を、上部溝の対向する掘削溝壁にそれぞれ縦壁の背面を当接させ、上部溝の底面にそれぞれ横壁を当接させて配設し、
次に、上部溝の対向する掘削溝壁に背面を当接させた山留部材の縦壁に両端を当接させて、山留部材の横壁上面に受桁を溝の幅方向に向け設置して、山留部材を保持固定し、
しかる後、受桁上に上面が路面と一致する覆工板を設置することを特徴とする路面覆工方法。」

(本件発明2)
「請求項1記載の路面覆工方法において、山留を断面L字形の部材としたことを特徴とする路面覆工方法。」

〔3〕当事者の主張
(1)請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書及び弁駁書によれば、「特許第3120150号の明細書の請求項1の発明に係る特許、同請求項2の発明に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、概ね次のとおり主張する。

(イ)無効理由1
本件発明1及び2は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証?甲第4号証に示された、路面覆工工事において受桁を設置するという周知慣用技術、並びに甲第2号証及び甲第3号証に示された、受桁の端部を支持枠に当接させ、桁端部の土留めを行うという技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
(ロ)無効理由2
本件発明1及び2は、甲第3号証記載の発明に基いて同業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。

(証拠)
甲第1号証:特開平6-257104号公報
甲第2号証:「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説 -土木工事編-」、株式会社大成出版社、1993年4月30日発行、目次、94?97頁
甲第3号証:「NKKライナープレート」型録、日本鋼管ライトスチール株式会社、目次、12頁
甲第4号証:「疑問に答える 路面覆工・仮桟橋の設計・施工ノウハウ」、近代図書株式会社、1996年6月15日発行、目次、130?131頁
甲第5号証:カタログ発行・頒布証明書
甲第6号証:カタログ台帳ファイルの写真

なお、審判請求人は、平成15年11月21日付けの(本件訂正に関する)意見書により次の証拠及び参考資料を提出している。
(証拠及び参考資料)
甲第4号証の2:「疑問に答える 路面覆工・仮桟橋の設計・施工ノウハウ」、近代図書株式会社、1996年6月15日発行、目次、14、54?55頁
参考資料:「横浜市水道局設計標準図」、横浜市水道局、平成10年7月発行、「図番1-6」

(2)被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。本件審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、答弁書において、概ね次のように反論する。
本件発明1及び2は、山留を置いて受桁で押圧して配置するという構成を備え、アンカーを備えておらず、余堀と埋め戻しを必要としない点及び覆工方法であるという点で、甲第1号証の発明に対して新規であり、また、甲第2?4号証に記載されたものも、余堀を行い、埋め戻しを行う一般に用いられている覆工方法であり、本件発明1及び2の技術思想を備えていないから、本件発明1及び2は、甲第1?4号証に記載されたものから容易に発明をすることができたものではない。

〔4〕当審の判断
(1)甲各号証の記載事項
(1-1)本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の記載がある。
(イ)「【産業上の利用分野】この発明は排水機能を有する開削用被覆板に係り、特に歩道や車道等の道路の開削工事の際に開削面を覆うべく使用されるとともに、開削面上の液体を排水できる機能を付加した排水機能を有する開削用被覆板に関する。……【従来の技術】一般に、歩道や車道等の道路下の地中には、水道管やガス管等の各種配管が埋設されている場合がある。……各種配管の新設あるいは保守・点検作業、または地下鉄工事等の作業時には、開削工事によって形成された開削空間の上面たる開削面を被覆板にて覆い、開削面上面の道路の使用を可能としつつ、開削空間内にて所定の作業が行われている。」(1欄22?35行)
(ロ)「図1?図6はこの発明の第1実施例を示すものである。図1?図3において、2は被覆板、4は道路、6は開削空間、8は開削面である。」(2欄45?47行)
(ハ)「なお符号36は前記開削空間6の上端縁に装着される支持枠、38は支持枠36を固定するアンカーである。……次に作用について説明する。……前記道路4の開削工事により、図1に示す如く、開削空間6が形成され、この開削空間6の上端縁に支持枠36を固定し、支持枠36内に被覆板2を装着し、この被覆板2によって開削空間6の開削面8を覆っている。」(3欄33?41行)

(1-2)同じく本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、「第7章 覆工」との表題が付され、路面覆工についての記載があるとともに、第96頁下から9?5行に、「覆工する部分は、掘削に際して多少の余堀りが生ずることが通例である。この部分の埋戻しには、掘削した泥土を用いることは避け、良質な土砂を使用して十分締固めを行わなければならない。埋戻しの後、覆工部と舗装部とのすき間は、アスファルト合材等で充填して、なめらかな取付けを行っておかねばならない。」との記載があり、また、第97頁の「図-7 取付部の例」には、受桁の端部に土留板を当接させ、受桁の上に覆工板を設置し、山留板の裏面を埋戻し、AS合材を充填した状態が図示されている。

(1-3)同じく本件特許出願前に頒布された刊行物であることが、平成14年3月15日付け回答書に添付された甲第5号証及び甲第6号証により認められる甲第3号証には、次の記載がある。
(イ)12頁の「図-9 小判形立坑姿図」には、当該立坑を上方から見た図面とともに、その縦断面図とが図示されており、上方から見た立坑の形状は長径L及び短径Sにより規定された小判型をしており、その長径Lは、曲線部分と直線部分から構成されているとともに、その縦断面図には、当該立坑の下部にライナープレートにより周囲を囲まれた空間が形成され、当該空間の上部に位置する幅の広い空間を囲むように向かい合って設けられた一対の断面L字形の支えコンクリートの対向する縦壁と横壁上面とに両端が当接する覆工桁を設置し、該覆工桁上に上面が地表面と一致する覆工板を設置した立坑、が図示されている。
(ロ)同頁の右欄の下から第1?2行に、「(3)直線部が長くなりますと、縦梁4本では強度的にもたなくなる場合があります。」との記載がある。

(1-4)同じく本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、
「第2章 路面覆工の施工」との表題が付され、覆工桁及び覆工板について記載され、130頁に、「桁端部の土留めは桁受け部材と覆工板の隙間には土留め矢板を使用して行うが、本箇所の土留めが不完全であったりした場合、埋戻し部分の沈下・陥没事故が起きる。したがって、土留め矢板は隙間のないように確実に取り付け、埋戻しは良質な土砂を使用して入念に転圧・締固めを行う。」と記載され、131頁の「図-2.13 覆工受桁端部詳細図」に、覆工桁の端部に土留め矢板を当接させ、土留め矢板の裏面に埋土を埋戻し、覆工桁の上に覆工板を設置した状態が図示されている。

(2)当審の対比・判断
(2-1)第2判決(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10190号)の判示事項について
第2判決は、本件発明1と甲5発明(本審判事件における甲第3号証に記載された発明)との対比につき、両者の相違が次の相違点1、2にあることを前提として、甲5発明に基づき、同上相違点に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者であれば容易に行うことができたことであると判示し、また、本件発明1において山留を断面L字形の部材に限定した本件発明2についても同様である旨を判示する。

(相違点1)
本件発明1は、受桁を「溝」の幅方向に向け設置したものであるのに対し、甲5文献では、覆工桁(本件発明1の「受桁」に相当)を、立坑に設置したことが記載されているが、溝に設置したものではない点。
(相違点2)
本件発明1の「山留部材」は、余堀り及び埋め戻しをすることなく、直接、その縦壁を掘削溝壁に当接した上で、受桁をその縦壁に両端を当接させて保持固定されたものである(本件の第2審決書6頁参照)のに対し、甲5発明の「断面L字形の支えコンクリート」は、現場打ちコンクリートからなり、余堀り及び埋戻しの必要なものであって、直接、掘削溝壁に縦壁を当接した上で、覆工桁(本件発明1の「受桁」に相当)をその縦壁に両端を当接させて保持固定されるというものではない点。

そこで、上記判示内容に従い、最初に、無効理由2について、以下検討する。

(2-2)本件発明1について
本件発明1と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、後者の「立坑の下部にライナープレートにより周囲を囲まれた空間」及び「当該空間の上部に位置する幅の広い空間」は、掘削により形成される空間であることが明らかであるので、後者におけるこれらの掘削空間と前者の「路面」に掘削される「溝」とは、共に「地表面から地中に掘削される掘削空間」である点で共通するといえる。
また、その機能ないし構造から見て、後者の「当該空間の上部に位置する幅の広い空間」は、前者の掘削された「下部溝に連続し」た「幅の広い上部溝」に、後者の「断面L字形の支えコンクリートの対向する縦壁」は前者の「上部溝の掘削溝壁に当接させる縦壁」に、後者の「断面L字形の支えコンクリート」の「横壁」は前者の「上部溝の底面に当接させる横壁」に、後者の「覆工桁」は前者の「受桁」に、後者の「覆工板」は前者の「覆工板」に、それぞれ対応するといえる。
さらに、後者の「立坑の下部にライナープレートにより周囲を囲まれた空間」と「当該空間の上部に位置する幅の広い空間」とにより構成される掘削空間に「覆工桁を設置し、該覆工桁上に上面が地面と一致する覆工板を設置」する点と、前者の「路面に下部溝に連続して幅の広い上部溝を掘削して行う工事中に溝を覆う路面覆工方法」の点とは、共に「地表面から地中に下部空間に連続して幅の広い上部空間を掘削して行う工事中に当該掘削空間を覆う覆工方法」である点で共通するといえる。
そうすると、両者は、
「地表面から地中に下部空間に連続して幅の広い上部空間を掘削して行う工事中に当該掘削空間を覆う覆工方法において、
上部空間の掘削壁に当接させる縦壁と、上部空間の底面に当接させる横壁とを備えた部材を、上部空間の対向する掘削壁にそれぞれ縦壁の背面を当接させ、上部空間の底面にそれぞれ横壁を当接させて配設し、
次に、上部空間の対向する掘削壁に背面を当接させた部材の縦壁に両端を当接させて、当該部材の横壁上面に受桁を掘削空間の幅方向に向け設置して、当該部材を保持固定し、
しかる後、受桁上に上面が地表面と一致する覆工板を設置する覆工方法。」である点(以下、「一致点」という。)で一致し、上記判示内容にも示されたように、次の点で相違するといえる。

(相違点1)
地表面から地中に掘削される掘削空間及び受桁に関して、本件発明1は、受桁を路面に掘削される「溝」の幅方向に向け設置したものであるのに対し、甲第3号証に記載された発明では、その空間が立坑を形成するためのものであって、覆工桁(本件発明1の「受桁」に相当)を、このような溝に設置するものではない点。
(相違点2)
上部空間の掘削壁に当接させる縦壁と、上部空間の底面に当接させる横壁とを備えた部材に関して、本件発明1の「山留部材」は、余堀り及び埋め戻しをすることなく、直接、その縦壁を掘削溝壁に当接した上で、受桁をその縦壁に両端を当接させて保持固定されたものである(本件の第2審決書6頁参照)のに対し、甲第3号証に記載された発明の「断面L字形の支えコンクリート」は、現場打ちコンクリートからなり、余堀り及び埋戻しの必要なものであって、直接、掘削溝壁に縦壁を当接した上で、覆工桁(本件発明1の「受桁」に相当)をその縦壁に両端を当接させて保持固定されるというものではない点。
(なお、本件発明1の「山留部材」が、余堀り及び埋め戻しをすることなく、直接、その縦壁を掘削溝壁に当接した上で、受桁をその縦壁に両端を当接させて保持固定されたものであるか否かは、特許請求の範囲の記載からは必ずしも明らかでないものの、上記第2判決の判示内容に従い、上記のとおり一応の相違点とした。)

(相違点の検討)
そこで、上記相違点1及び2について検討する。

(相違点1について)
甲第3号証の「図-9 小判型立坑姿図」(甲5の12頁)においては、上方から見た立坑の形状は、長径L及び短径Sにより規定された小判型をしており、その長径Lは、曲線部分と直線部分から構成されているが、直線部分の長さについては、特にこれを限定する記載はなく、構造及び機能上の観点からも、これを制約する理由はない。
さらに、甲第3号証に示されたのと同様の覆工桁や覆工板を設置する技術を、路面に掘削により形成される「溝」の覆工方法に用いることは、例えば、本件の特許明細書においても従来技術として示されているように、従来より普通に採用され、当業者にとって周知の技術であったということができる。
そうすると、甲第3号証に記載された発明の「小判型立坑」の長径Lの直線部分を延長して、これを細長く掘られた「溝」の形状とすることにより、これと同様の覆工方法が従来より普通に採用され、当業者にとって周知であったところの路面に掘削により形成される「溝」の覆工方法に適用すること、いいかえれば、路面掘削溝の覆工方法に適用することは、当業者が容易に想到し得た転用であるといわざるを得ない。

(相違点2について)
例えば、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証の2(「疑問に答える 路面覆工・仮桟橋の設計・施工ノウハウ」、近代図書株式会社、1996年6月15日発行)の第55頁の「図-1.34」に、路面に下部溝に連続して幅の広い上部溝を掘削して行う工事中に溝を覆う路面覆工方法において、上部溝の溝壁に土留め板が当接され、その土留め板が覆工桁により保持固定された構造が図示されており、また、このような構造と同様の構造が「横浜市水道局設計標準図」(横浜市水道局、平成10年7月発行。)に地方公共団体の設計標準図として記載されていることからも明らかなとおり、このような構造は、本件特許出願当時、当業者に周知の構造であったと認められる。
さらに、このように、予め製造された土留め板を用いれば、土留め部材を現場打ちコンクリートにより現場で形成するのに比べて、土留め板を設置する際に、余掘りや埋戻しの必要性が乏しくなることも当業者にとって自明な事項である。
そして、路面覆工において、土留め部材(山留部材)を余堀り及び埋戻しの必要な現場打ちコンクリートにより形成する方法によるか、あるいは、そのような余堀りや埋戻しの必要性の乏しい予め所定形状に製造されたコンクリートその他の部材(いわゆるプレキャストされたコンクリート部材等)を設置する方法によるかは、工事の場所、地盤の性状、工期、予算、部材に要求される大きさ・強度等の諸事情を踏まえて当業者において適宜選択されるものであり、甲第3号証に記載の覆工方法においても、断面L字形の部材が、最終的に形成された上部溝の溝壁と底面に当接し、その対向する縦壁に覆工桁の両端を当接させるとともに横壁上面に覆工桁を設置するという点では、その断面L字形の部材が必ずしも現場打ちコンクリートで形成されなければならない必然性があるとは認められない。
そうすると、上記相違点1において説示したところの転用をする際に、甲第3号証に記載の覆工方法において、現場打ちコンクリートの「断面L字形の支えコンクリート」に代えて、予め製造された部材を上部溝の溝壁に当接し覆工桁により同部材を保持固定するという上記周知の技術事項を採用し、予め断面L字形に形成した部材を設置することにより、コンクリートの現場打ちに伴う余堀り及び埋戻しの必要をなくして、上記相違点2に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者であれば容易に想到することができたことといえる。

(2-3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用する発明であって、本件発明1の構成を全て含むとともに、さらに「山留を断面L字形の部材とした」という限定事項を付加したものである。
ところで、上記の限定した点は、上記「(2-2)本件発明1について 」の「(相違点2について)」で述べたように、甲第3号証に記載の覆工方法においても、「断面L字形の部材」が、最終的に形成された上部溝の溝壁と底面に当接し、その対向する縦壁に覆工桁の両端を当接させるとともに横壁上面に覆工桁を設置することが示されており、また、当該断面L字形の部材を予め製造された土留め板とすることが容易であることも、上述したとおりである。
したがって、本件発明2は、本件発明1について説示したのと同様の理由から、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

(3)まとめ
以上検討したことから、本件発明1及び2は、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

[6]むすび
したがって、他の無効理由につき検討するまでもなく、本件発明1及び2は、本願出願前に頒布された刊行物である甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものといえるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、審決の結論のとおりとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-07-02 
結審通知日 2004-02-03 
審決日 2002-07-16 
出願番号 特願平11-334251
審決分類 P 1 122・ 121- Z (E01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松浦 久夫  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 木原 裕
柴田 和雄
登録日 2000-10-20 
登録番号 特許第3120150号(P3120150)
発明の名称 路面覆工方法  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 木村 三朗  
代理人 秋山 敦  
代理人 石川 壽彦  
代理人 久力 正一  
代理人 城田 百合子  
代理人 小林 久夫  

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