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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1151152 |
審判番号 | 不服2004-9772 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-10 |
確定日 | 2007-01-22 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 30890号「画像形成システム及び画像形成装置及び媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月25日出願公開、特開平10-226139〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成9年2月14日の出願であって、平成16年4月6日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年5月10日付けで本件審判請求がされるとともに、同年6月9日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成16年6月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正事項 本件補正前後の請求項数は25で不変であり(したがって、本件補正は請求項削除を目的としていない。)、補正前後の同一番号の請求項がそれぞれ対応するものと認める。 請求項13についてみるに、本件補正前の「前記撮影条件と前記画像形成装置の状態とに応じて、画像形成条件を設定する設定手段」が「前記撮影条件と前記画像形成装置に適した処理条件を含む状態情報とに応じて、画像形成条件を設定する設定手段」(下線部が補正箇所)と補正されている。同様の補正が、請求項1,12,24及び25においてもされている。 2.補正目的等の検討 上記補正事項が、誤記の訂正に該当しないことは明らかであり、該当する可能性があるのは、特許請求の範囲の減縮又は明りようでない記載の釈明だけである。 補正前の上記記載によれば、画像形成条件設定の基準となるものが、「撮影条件」及び「画像形成装置の状態」の2つであることは明らかであり、後者については画像形成装置自体の情報(「状態」が「状態情報」の趣旨であることは認める。)であることも明らかである。ところが、補正後の上記記載によれば、「画像形成装置に適した処理条件」ひいては「画像形成装置に適した処理条件を含む状態情報」は、画像形成装置自体の情報とは限らない。例えば、画像形成装置としては他種類想定できるところ、種類毎に適した処理条件を「画像形成装置に適した処理条件」と称しているとの解釈が可能だからである。 「画像形成装置に適した処理条件」が「画像形成装置が実行可能な処理条件」の趣旨だとすると、上記の問題は生じない。しかし、本件補正前においても画像形成条件設定の基準の1つとして「画像形成装置の状態」があげられているのだから、その状態(情報)が「画像形成装置が実行可能な処理条件」を含むことは明らかというべきである。したがって、特許請求の範囲の減縮(特許法17条の2第4項2号該当)には該当しない。 また、本件補正後の上記記載は「画像形成装置に適した処理条件」とされているのだから、著しく不明確であり(「画像形成装置に適した処理条件」の意味が不明確であることは上記のとおりであるが、それに加えて「適した」かどうかの基準も不明確である。)、当然明りようでない記載の釈明にも該当しない(仮に該当しても、明りようでない旨の拒絶理由は通知されておらず、勝手に釈明することは許されない。)。 百歩譲って、特許請求の範囲の減縮に該当するとしても、「画像形成装置に適した処理条件」との記載は著しく不明確であるから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たさず、その結果本件補正後の請求項13に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。すなわち、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反する。 以上述べたことは、請求項1,12,24及び25についてもあてはまり、本件補正後の請求項1,12,24及び25に係る発明も特許出願の際独立して特許を受けることができない。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第4項の規定又は同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明13の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項13に係る発明(以下「本願発明13」という。)は、平成15年8月26日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項13】に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「対象画像の撮影条件を該画像と共に記録する記録手段により記録された画像を再生する再生手段を有する電子機器とともに用いられる画像形成装置であって、 前記撮影条件と前記画像形成装置の状態とに応じて、画像形成条件を設定する設定手段と、 前記設定手段により設定された前記画像形成条件で画像形成する画像形成手段とを有することを特徴とする画像形成装置。」 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-212706号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。 ア.「撮影した映像信号を記録媒体に記録する映像信号記録装置であって、 撮影時に再生時の画質補正を行わせるための画質補正情報を映像信号に付加して記録信号とする情報付加手段と、 該情報付加手段からの記録信号を記録媒体に記録する記録手段とを有することを特徴とする映像信号記録装置。」(【請求項1】) イ.「本発明は、上記目的を可能にする映像信号に対して撮影時の撮像条件、撮像方式等を考慮した画質補正を行って最適な映像信号を出力することができる映像信号出力装置の提供を目的とする。」(段落【0012】) ウ.「実施例におけるカメラ一体型8mmVTRは、・・・レンズ系1aと、・・・撮像部1と、・・・カメラ部2と、カメラ部2からの出力信号を記録するVTR部3と、撮像部1、カメラ部2及びVTR部3を制御する制御系4とで構成される。」(段落【0021】) エ.「VTR処理部3aは、図示しない音声信号処理部の出力信号と、カメラ信号処理部2aからの映像信号を信号処理して出力端子6から出力する。この映像信号をディスプレイに供給することにより、このカメラ一体型8mmVTRが撮影した状況をモニタすることができる。」(段落【0029】) オ.「制御系4は、フラッシュの発光と同時に画質補正情報として取り込むように図2(h)に示す情報取込みパルスを発生させる。この情報取込みパルスは、例えば白バランス、アイリス絞り、電子シャッタの開閉期間、撮像方式やフラッシュ発光の有無に関する撮像状況を示す情報をディジタル信号に変換してメモリに記憶する。このメモリに記憶されたディジタル情報が画質補正情報となる。」(段落【0045】) カ.「本発明をビデオプリンタに適用した一例を説明する。また、このビデオプリンタは、カメラ一体型の8mmVTRからの出力信号を入力端子10を介して入力している。・・・画質補正部12は、後述するように画質補正情報に応じた信号処理に対応できるように画質補正回路を有している。画質補正部12は、使用する印画紙の性能を引き出すように画質補正された出力信号をビデオプリンタ内の印刷部13に供給し、外部出力端子14からは表示させるテレビジョン受像機の性能を引き出すように画質補正された出力信号を出力している。」(段落【0056】) キ.「映像・画質補正情報分離部11は、分離抽出した画質補正情報やサブコードに対して例えばデコード処理を施して各種の撮影時の白バランス、アイリス絞り、電子シャッタの開閉期間、撮像方式やフラッシュ発光の有無に関する撮像状況を示す情報を供給された映像信号の情報としてメモリに取り込む。映像・識別情報分離部11は、分離抽出した画質補正用識別情報とこのビデオプリンタの性能及び使用する印画紙の性能を考慮して最適な印刷を行わせる制御信号を画質補正部12に出力する。」(段落【0057】) ク.「上記画質補正部12は、映像メモリ12aと信号処理部12bとで構成される。画質補正部12の映像メモリ12aには、画質補正用識別情報以外の映像信号がディジタル画像情報として供給される。映像メモリ12aは、このディジタル画像情報を信号処理部12bに供給する。また、信号処理部12bには、映像・識別情報分離部11から制御信号が供給される。信号処理部12bは、供給された映像信号にこのビデオプリンタの性能及び使用する印画紙の性能を考慮した最適な画質補正が行われた映像信号を印刷部13に出力する。」(段落【0058】) 3.引用例記載の発明の認定 記載アの「画質補正情報」には、記載キにあるように「撮影時の白バランス、アイリス絞り、電子シャッタの開閉期間、撮像方式やフラッシュ発光の有無に関する撮像状況を示す情報」が含まれている。記載キは「映像信号記録装置」についての説明であるが、上記の各情報は撮影機器によって記録されなければならないからである。 記載アには「撮影時に再生時の画質補正を行わせるための画質補正情報を映像信号に付加して記録信号とする情報付加手段」とあるけれども、情報付加を行う主体は撮影機器であって、映像信号記録装置でないことは明らかである。そうである以上、記載アの上記部分及びそれに続く「該情報付加手段からの記録信号を記録媒体に記録する記録手段」は、「撮影機器が記録した映像信号及び同信号に付加された画質補正情報に基づいて、映像信号を記録媒体に記録する記録手段」と解すべきである。 記載キの「画質補正用識別情報」と記載アの「画質補正情報」に相違を認めることはできず、、記載キ,クの「ビデオプリンタ」は記載アの「映像信号記録装置」の実施例である。 したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「撮影機器の出力信号を入力する端子を有し、前記撮影機器により撮影した映像信号を記録媒体に記録する映像信号記録装置であって、 映像・画質補正情報分離部、画質補正部及び印刷部を有し、 前記映像・画質補正情報分離部は、前記撮影機器から入力される記録信号を映像信号と画質補正情報に分離し、分離した前記画質補正情報及び前記映像信号を前記画質補正部に出力するものであり、 前記画質補正部は前記画質補正情報、前記映像信号、映像信号記録装置の性能及び使用する印画紙の性能を考慮した最適な画質補正が行われた映像信号を前記印刷部に出力するものであり、 前記画質補正情報には撮影時の白バランス、アイリス絞り、電子シャッタの開閉期間、撮像方式やフラッシュ発光の有無に関する撮像状況を示す情報が含まれる映像信号記録装置。」(以下「引用発明」という。) 4.本願発明13と引用発明との対比 引用発明の「撮影機器」は、その記録信号を映像信号記録装置に出力するのだから、「画像を再生する再生手段を有する電子機器」ということができ、引用発明の「画質補正情報」は「撮影時の白バランス、アイリス絞り、電子シャッタの開閉期間、撮像方式やフラッシュ発光の有無に関する撮像状況を示す情報」を含んでいるから、「対象画像の撮影条件」の情報ということができる。そうである以上、引用発明を「対象画像の撮影条件を該画像と共に記録する記録手段により記録された画像を再生する再生手段を有する電子機器とともに用いられる画像形成装置」と称しても一向に差し支えない(本願発明13の「対象画像」又は「画像」に相当するのは、「映像信号」である。)。 引用発明における「映像信号記録装置の性能及び使用する印画紙の性能」は、本願発明13の「画像形成装置の状態」に相当するものであり、そうである以上、引用発明の「画質補正部」及び「印刷部」の全体と、本願発明13の「画像形成条件を設定する設定手段」及び「画像形成手段」の全体とは、撮影条件と画像形成装置の状態とに応じた適切な画像を記録媒体に形成する手段である点で一致する。そして、「画像形成条件」とは、上記の意味での適切な画像を形成するための条件であるから、引用例に直接記載があろうとなかろうと、引用発明の「画質補正部」においては、最適な画像形成条件を設定した上で、同条件に従って印刷部に出力すべき映像信号を作成していると解すべきである。したがって、引用発明は、本願発明13でいう「前記撮影条件と前記画像形成装置の状態とに応じて、画像形成条件を設定する設定手段」及び「前記設定手段により設定された前記画像形成条件で画像形成する画像形成手段」を有するものと認める。 請求人は、「本願発明では、画像に対する画像処理条件として、画像形成装置に適した処理条件を与えることが出来る。このような技術思想は、引用文献には開示も示唆もされていない。」(平成16年7月5日付け手続補正書(方式)4頁下から6?4行)と主張するが、引用例の記載キ,クを無視した主張であり、到底採用することができない。 以上のとおりであるから、本願発明13と引用発明とは、 「対象画像の撮影条件を該画像と共に記録する記録手段により記録された画像を再生する再生手段を有する電子機器とともに用いられる画像形成装置であって、 前記撮影条件と前記画像形成装置の状態とに応じて、画像形成条件を設定する設定手段と、 前記設定手段により設定された前記画像形成条件で画像形成する画像形成手段とを有する画像形成装置。」である点で一致し、両者に相違点は存在しない。すなわち、本願発明13は引用発明そのもの(特許法29条1項3号該当)であるから、特許法29条1項の規定により特許を受けることができない。 百歩譲って、引用発明において、最適な画像形成条件を設定した上で、同条件に従って印刷部に出力すべき映像信号を作成していると解すことができないとすると、「画像形成条件を設定する設定手段」の有無(それに伴い「前記設定手段により設定された前記画像形成条件で画像形成する」かどうかの点を含む。)が、本願発明13と引用発明との相違点となる(他に相違点は存在しない。)。そこで検討するに、本願の【図2】には撮影条件として、符番13-1の「解像度情報」及び符番13-14の「画像データサイズ」があげられているところ、これらの情報は引用例の撮影情報として例示されていない。しかし、解像度や画像データサイズと記録媒体種類に基づいて、画像形成装置の解像度に変換したり、倍率を設定したり、印刷速度を設定したり、印刷品位を設定すること(これらはすべて画像形成条件設定といえる。)は周知である。そうである以上、引用発明の撮影条件に「解像度情報」及び「画像データサイズ」を加えて、画像形成条件を設定すること、すなわち「画像形成条件を設定する設定手段」を有し、「前記設定手段により設定された前記画像形成条件で画像形成する」構成を採用することは当業者にとって想到容易であるから、結局のところ、本願発明13は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとして、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 5.本願発明14の進歩性の判断 請求項14の記載は「前記画像形成手段は、インクジェット記録により画像を形成する手段であることを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。」となっているから、請求項14に係る発明(以下「本願発明14」という。)は、本願発明13の「画像形成手段」を「インクジェット記録により画像を形成する手段」と限定したものであり、同限定の有無が本願発明14と引用発明の相違点に追加される。 そこで検討するに、「インクジェット記録により画像を形成する手段」は本件出願当時例をあげるまでもなく周知であり、同手段を引用発明に採用できない理由はない。 したがって、引用発明の「印刷部」に「インクジェット記録により画像を形成する手段」を採用、すなわち上記相違点に係る本願発明14の構成に至ることは当業者にとって容易である。また、同手段を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明14は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明13及び本願発明14が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-24 |
結審通知日 | 2006-11-27 |
審決日 | 2006-12-08 |
出願番号 | 特願平9-30890 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B41J)
P 1 8・ 57- Z (B41J) P 1 8・ 121- Z (B41J) P 1 8・ 537- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畑井 順一、桐畑 幸▲廣▼、石原 徹弥 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
尾崎 俊彦 長島 和子 |
発明の名称 | 画像形成システム及び画像形成装置及び媒体 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |