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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 E04D |
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管理番号 | 1151186 |
審判番号 | 無効2006-80088 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-05-16 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-05-12 |
確定日 | 2007-01-22 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3069330号発明「排水処理用床部材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3069330号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3069330号特許無効事件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成10年10月30日に出願され、平成12年5月19日に特許登録の設定がなされたものであって、その後の平成18年5月12日に、タキロン株式会社より無効審判が請求され、これに対して平成18年7月13日に被請求人より答弁書が提出されたものである。 2.本件発明 本件発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「合成樹脂製またはゴム製短冊形部材の長手方向に排水路を設けた排水処理用床部材において、該排水路を管状体とするか、またはその上部を切欠いた管状体とし、かつ前記短冊形部材における管状体の両側に幅2mm以上の熱溶着作業用領域を設けたことを特徴とする排水処理用床部材。」 3.請求人の主張 請求人は、「特許第3069330号発明の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その証拠として下記の甲第1?5号証を提出するとともに、次の理由を主張している。 無効理由 本件発明は、その出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲第1?3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明は、同法123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。 記 甲第1号証:特開平10-46726号公報 甲第2号証:実願平3-108734号(実開平5-50277号) のCD-ROM 甲第3号証:特開平6-240825号公報 甲第4号証:実公平6-9185号公報 甲第5号証:特開平7-207889号公報 4.被請求人の主張 被請求人は、答弁書において、無効理由に対して、次の乙第1号証および乙第2号証を提出するとともに、本件発明が甲第1?5号証の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものではない旨を主張している。 乙第1号証:「床仕上げ施工科テキスト、プラスチック床材編」 日本室内装飾事業協同組合連合会発行、 昭和62年4月1日改訂版発行、第116?117頁 乙第2号証:実公平7-50514号公報 5.請求人が提出した各証拠の記載について (1)甲第1号証として提出された刊行物(以下、「甲1刊行物」という。)には、「ドレイン排水溝材とドレイン排水溝付き野外廊下の床」に関して、図面とともに以下の記載がある。 (イ)「【特許請求の範囲】 【請求項1】屋外廊下用床シート2と同等乃至ほぼ同等の厚さを有して該床シートとともに屋外廊下の床に貼着する帯状貼着板の表面に、幅方向の中央にて材長方向に浅溝のドレイン排水路14を形成し、縁部を上記床シート2の縁部と当接乃至接合させるようにしたことを特徴とするドレイン排水溝材。 【請求項2】床のコンクリート下地に床シート2を貼着する屋外廊下の床において、その床シートと同等乃至ほぼ同等の厚さを有する帯状貼着板の表面に、幅方向の中央にて材長方向に浅溝のドレイン排水路14を形成したドレイン排水溝材1を、前記コンクリート下地の適所に上記床シート2の一部に代えて貼着するとともに、隣接する該ドレイン排水溝材1と上記床シート2との縁部相互を溶着一体化させたことを特徴とするドレイン排水溝付き屋外廊下の床。」 (ロ)「【0006】【発明の実施の形態】図1、図2は、請求項1及び請求項2の発明のドレイン排水溝材とドレイン排水溝付き屋外廊下の床に係る実施の形態を示している。図1、図2において、1は、ドレイン排水溝材、2は、屋外廊下用床シートであり、これらは同系の合成樹脂によるものとして、溶着工法による相互の確実な接合一体化により、下層への漏水防止を図っている。3は、コンクリート躯体であり、該コンクリート躯体の屋外廊下では、床に上記ドレイン排水溝材1及び上記床シート2を貼着するが、そのために、躯体コンクリートの直均しによりフラットなコンクリート下地を形成している。5は、屋外廊下の雨水排水側溝、6は、外壁、8は、該住戸居室のために外壁に形成した窓、9は、屋外廊下の適所に配したヒートポンプ式冷暖房屋外機、10は、住戸居室内の適所に配したヒートポンプ式冷暖房屋内機、11は、当該ヒートポンプ式冷暖房機の冷房ドレインパイプである。 【0007】ドレイン排水溝材1は、軟質、半軟質、硬質等の塩化ビニール系樹脂により成形した帯状貼着板であり、幅を50mm内外にし、床シート2と連続するなめらかな段差を設けている。また、その表面の幅方向の両側になだらかな土手13を形成することにより、その中央に材長方向に延びる浅溝のドレイン排水路14を形成している。このドレイン排水溝材1に要求される主な性能としては、次のものがある。 (マル1)段差が日常の使用に不都合を生じない程度であること。 (マル2)歩行等に対して、強度、防滑性能をもつこと。 (マル3)屋外使用に耐えること。 (マル4)床シート材と溶着できること。 (マル5)水が常時流れても性能を保持すること。 (マル6)コンクリート下地精度に追従する適度な柔軟性をもつこと。 【0008】床シート2は、軟質等の塩化ビニール系樹脂により成形したノンスリップシートであり、厚さが2mm程度のもので、既に商品化されて市場に流通しているものでよい。 【0009】屋外廊下のフラットに直均ししたコンクリート下地すなわちコンクリート躯体3の表面には、上記冷房ドレインパイプ11の設定位置において、ドレイン排水溝材1を外壁6から排水側溝5へ向けて接着剤により接着固定し、その他の箇所には、全面に床シート2を接着剤により接着固定する。また、ドレイン排水溝材1の縁部と床シート2の端部とを溶着工法により水密に溶着一体化させる。なお、床シート2の端部相互の接合も同様である。これらと外壁6との間には、止水性のシール材15を用いる。ここで溶着工法とは、溶着すべき相互を一定の隙間をあけて配し、その隙間に同材質の溶着用目地棒材を介入させ、これを加熱することで溶着一体化させることをいう。18は、その溶着部を示す。なお、溶剤等による溶着でもよい。・・・」(注:(マル1)?(マル6)は○で囲まれた数字) (ハ)「【0010】【発明の効果】請求項1及び請求項2の発明によれば、既述構成であるから、次の優れた効果を奏し、これまでの問題点を一掃できる。 1.ドレイン排水溝材1の貼着に、躯体コンクリートをフラットに直均しすればよいので、コンクリート躯体3に躯体欠損を生じず、躯体欠損によるクラックの発生がない。 2.ドレイン排水溝材1は、コンクリート躯体3のフラットなコンクリート下地に床シート2とともに貼着し、該床シート2と溶着一体化させること等により、コンクリートへの浸水は生じず、浸水が各種の不具合を生じさせる原因ともなることもない。したがって、高い信頼度を確保できる。 3.ドレイン排水溝材1は、コンクリート躯体3のフラットなコンクリート下地に床シート2とともに貼着し、該床シート2と溶着一体化させる等すればよいので、施工が簡単で、工事管理も容易であり、品質の信頼性を高めることができ、工事費、工事管理費を低減できる。 4.ドレイン排水溝材1は、コンクリート躯体3のフラットなコンクリート下地に床シート2とともに貼着し、該床シート2と溶着一体化させる等すればよいので、見映えをよくすることができる。 5.貼着したドレイン排水溝材1と床シート2を一連に溶着一体化させる等することにより、漏水を起こし難く、また、床シート2の端部にめくれを生じることはない。 6.コンクリート躯体3にパイプや溝金物等を一切埋込みしないので、躯体コンクリートの打設前に、移動、外れ等の防止のための固定養生は全く必要なく、施工を省力化できて手間がかからない。勿論、躯体コンクリートとパイプや溝金物等との肌別れが問題になることもない。 7.ドレイン排水溝材1は、簡単に合成樹脂成形でき、かつ、量産できて、安価に入手でき、コストを低減できる。また、合成樹脂の有する弾力性、復元性により、永久変形することは少なく、適度な柔軟性により、取り扱いが便利である。 8.パイプ等を埋設しないから、埋設状態が下流の排水側溝の溝底よりも下がってしまうような問題は全く生じない。 9.既存の建物にも簡単に追加設置することができる。 10.使用中の維持管理、清掃が容易である。 11.膨大な需要が期待できる。」 これら(イ)?(ハ)の記載を総合すれば、甲1刊行物には以下の発明が記載されているものと認められる。 「軟質、半軟質、硬質等の塩化ビニール系樹脂により成型した帯状貼着板の材長方向にドレイン排水路14を設けたドレイン排水溝材1において、該ドレイン排水路14を浅溝とし、かつ前記帯状貼着板における浅溝の両側縁部と床シート2の端部とを加熱することで溶着一体化したドレイン排水溝材1。」(以下、「甲1刊行物記載の発明」という。) (2)甲第2号証として提出された刊行物(以下、「甲2刊行物」という。)には、「家電機器用の排水ダクト」に関して、図面とともに以下の記載がある。 (イ)「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】排水を必要とする家電機器用の排水ダクトであって、合成樹脂により内部を排水通路として中空に構成し、その底面を偏平に、上部が半円弧状を呈するように構成し、且つ、固定手段として止め金具を備えるか、又は前記底面に両面テープを備えていることを特徴とする家電機器用の排水ダクト。」 (ロ)「【0001】【産業上の利用分野】本考案は、排水を必要とする家電機器用の排水ダクトに関するものであって、例えば、クーラーの除湿に伴う排水、洗濯機の排水等に用いるところの排水ダクトの改良に関するものである。」 (ハ)「【0011】 図2は、本考案の排水ダクト3の縦断面を示し、合成樹脂により内部を排水通路6として中空に構成し、その底面7を偏平に、上部8が半円弧状を呈するように構成し、且つ、固定手段として前記底面7に両面テープ9を備えている。従って、前記排水ダクト3は、この両面テープ9を用いて壁面及びベランダの床面に位置固定されるのである。固定手段としの前記両面テープ9は、壁面等については、通常用いられている止め金具に代えて用いるのが好ましい。」 (ニ)「【0013】【考案の効果】本考案にかかる家電機器用の排水ダクトによれば、クーラー等の排水ダクトを、その底部に備えている両面テープによりベランダの床面、或いは壁面に接着して固定できるので、例え躓いたり、強風が作用してもその位置が移動しないのであり、当初の排水位置(側溝に向けての排水)を維持させることができ、床面全体を濡らすことがなく、ベランダの床面に水苔が発生したりすることがなくて清潔であるばかりでなく、滑る恐れも無くなってベランダでの作業が安全行い得る効果を奏するに到った。また、その排水ダクトの断面が、半円弧状であるので、従来の断面円形状のダクトに比べ、高さが半分以下であるので非常に嵩が低くなり、躓き難くなるとともに、万一この上を踏んでも体勢が崩れるような足首の角度にはならないので、洗濯物を干したり、布団を抱えたりしたときの足元の注意が届き難いような場合も安心して作業を行い得る利点がある。」 (3)甲第3号証として提出された刊行物には、「家電機器用の排水ダクト」に関して、図面とともに以下の記載がある。 (イ)「【特許請求の範囲】 【請求項1】バルコニー部において、縦樋からの雨水を排水溝に案内する構成において、該バルコニー面に敷設した床仕上材の厚みと同程度の這い樋を敷設したことを特徴とするバルコニー部の這い樋。」 (ロ)「【0007】【作用】次に作用を説明する。即ち、縦樋1から落下した雨水が、排水溝3に至るまでの間に床仕上材2の上や下を通過し、これが原因で2?3年経つと床仕上材2が黒くなるという不具合を解消することができる。また、バルコニー面を歩く際に這い樋4に躓いて、這い樋4が捲れ上がるという不具合を解消することが出来る。また、雨が降り出した最初の時点で、這い樋4の表面が滑り易くなり、この上で滑ってバルコニー部で転倒し、人身事故となるという不具合を解消出来る。また、各家毎に相違するバルコニー部の幅に合わせて、這い樋4の長さを自由に設定することが出来るので、施工が簡単となる。・・・」 (ハ)「【0013】該這い樋4を流れた雨水は、バルコニー部の先端部分に設けられた排水溝3の内部に流入し、集められて、バルコニー部の縦樋から地上に落下する。図8においては、這い樋4の他の構成を図示している。(a)においては、這い樋4の折曲部4aを内向きに構成し、這い樋4の表面に滑り止め模様4dが施されている。また(b)においては、這い樋4を樋本体14と蓋樋15に分離可能とした実施例を示している。また(c)においては、這い樋4を完全な角パイプ16により構成した実施例を示している。また(d)においては,角パイプ16の下部から両方に敷設縁17を突出した実施例を示している。」 (4)甲第4号証として提出された刊行物には、「バルコニーの排水装置」に関して、図面とともに以下の記載がある。 (イ)「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】床部に仕上材が敷設され、階上の屋根部から床部近傍まで雨樋が垂設されて、床部の端縁部近傍箇所に排水路が設けられたバルコニーにおいて、前記雨樋による雨水落下部分から排水路に至る部分の仕上材を取り除いて雨水通路を形成し、この雨水通路部分に、支持脚部を有し下面側が開放された渡板を敷設したことを特徴とするバルコニーの排水装置。」 (ロ)「第3図は、本考案の第2の実施例を示す斜視図であって、これは、上板部に上下に貫通する長孔(5c)、(5c)…を幅方向に長く、長手方向に複数条設けた渡板(5A)を、プレーキャストコンクリート板(PC板)からなる仕上板3Aの一部を取り除いて形成された雨水通路(4)部分に敷設している。 このように、複数条の長孔(5c)、(5c)…を設けた渡板(5A)を雨水通路(4)部分に敷設することによって、雨樋(1)から落下される雨水を仕上材(3A)の上表面を汚染することなく排水することができるだけでなく、仕上材(3A)上に直接落下する雨水をこの渡板(5A)の複数条の長孔(5c)、(5c)…を通して雨水通路(4)から排水路に良好に排水することができる利点がある。」(公報2頁第4欄19?32行) (5)甲第5号証として提出された刊行物には、「床材」に関して、図面とともに以下の記載がある。 (イ)「【特許請求の範囲】 【請求項1】天板を有し、底部に内方に凹陥した凹溝を有する筒状のカバー材と、平板状の底部と上記筒状のカバー材が嵌入係止される側壁とを有する溝部が設けられた床材本体とからなる床材であって、上記カバー材の天板に貫通孔または切欠きが設けられていることを特徴とする床材。」 (ロ)「【0020】図2は本発明床材のカバー材の他の例を示した斜視図である。図2において、30は筒状のカバー材、31はカバー材30の天板、32は天板31に設けられた切欠き、33、33はそれぞれカバー材30の側面に円弧状に形成された側壁、34はカバー材30の底部に設けられた内方に凹陥した凹溝である。 【0021】床材30上に溜まった雨水等は切欠き32から筒状のカバー材30内に流入し、外部に排出される。」 6.当審の判断 (1)本件発明と甲1刊行物記載の発明との対比 本件発明と甲1刊行物記載の発明との対比すると、甲1刊行物記載の発明における「軟質、半軟質、硬質等の塩化ビニール系樹脂により成型した帯状貼着板」、「ドレイン排水路14」、「ドレイン排水溝材1」は、本件発明の「合成樹脂製またはゴム製短冊形部材」、「排水路」、「廃水処理用床部材」にそれぞれ相当する。 したがって、本件発明と甲1刊行物記載の発明とは、 「合成樹脂製またはゴム製短冊形部材の長手方向に排水路を設けた排水処理用床部材において、前記短冊形部材における排水路の両側を熱溶着する排水処理用床部材。」 である点で一致して、次の点で相違しているということができる。 [相違点1]排水路が、本件発明では、管状体とするか、または上部を切欠いた管状体としているのに対して、甲1刊行物記載の発明では浅溝である点。 [相違点2]短冊形部材における管状体の両側に、本件発明では、幅2mm以上の熱用着作業領域を設けているのに対して、甲1刊行物記載の発明では、そのような熱溶着作業領域を有しているか明らかではない点。 (2)各相違点の判断 [相違点1について] ベランダ等に設置される合成樹脂製の家電機器用排水ダクトの排水通路(本件発明における「排水路」に相当する)を管状体とすることは、例えば甲2刊行物に記載されているように、従来より周知の技術であるといえる。 したがって、甲1刊行物記載の発明に上記した周知の技術を適用して、排水路を本件発明のように管状体とすることは、当業者が容易に想到し得たものということができる。 なお、管状に形成された排水路を上部を切欠いたような形状とすることも、従来より普通に採用されている事項であるから、掃除を行う際の便宜等を考慮して当業者が適宜採用することができる設計的な事項であるということができる。 [相違点2について] シート状の部材の継ぎ目部分を熱溶着して一体化するのに、V字状あるいはU字状の溝を形成して熱溶着を行う工法は、従来より周知の工法であるということができ、甲1刊行物記載の発明において、短冊形部材における排水路の両側をシート状の床部材の端部と熱溶着する際の工法として、上記のような周知のV字状あるいはU字状の溝を形成して熱溶着を行うような工法を用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるといわざるを得ない。 そして、甲1刊行物記載の発明に、上記のようなV字状あるいはU字状の溝を形成して熱溶着を行う工法を用いるようにする際に、加熱によって排水路に悪影響を及ぼさないようにする、あるいは熱溶着作業を効率よく実施できるようにする等のために、短冊形部材における管状体の両側に、所定寸法(例えば、2mm以上といったような)の熱溶着作業のための作業領域を設けるようにすることは、当業者が適宜設定することができる事項であるといえる。 ところで、被請求人が答弁書とともに提出した乙第1号証には、シート状の床シートの継ぎ目を熱溶着によって接合する際に、継ぎ目を電動溝切機または溝切カッタを用いて、床シートの厚さの1/2?2/3の深さに幅を均一にU字型またはV字型の溝切りをして、熱溶接機を用いて溶接作業を行って、溶接完了後、溶接棒が温かいうちに包丁で余盛りを荒削りし、完全に冷却してから仕上げ削りをして、床シート表面を平滑に仕上げることが記載されている。 また、同じく乙第2号証には、床材の継ぎ目部分にU字状あるいはV字状の溝を形成するための手動の溝切カッターが記載されている。 そうすると、上記説示したとおり、シート状の部材の継ぎ目部分を熱溶着するのに、V字状あるいはU字状の溝を形成して熱溶着を行う工法が、これら乙第1、2号証に記載されている事項からも、従来より周知の工法であるということができる。 そして、本件発明が奏する効果も、甲1刊行物記載の発明、甲2刊行物に記載された事項及び周知の技術から当業者が予測し得るものであって、格別のものという事ができない。 なお、被請求人は次のような主張をしているので、この点について付言すると、以下のとおりである。 被請求人は、「甲第1号証に記載されたドレイン排水溝材は、ドレイン排水溝材の端部と床材の端部の厚みの差に起因する段差や、溶接部分の至近距離に土手の盛り上がりがあるので、溶接作業がやりにくく、余盛をきれいにカットしにくいため仕上がり外観も劣ってしまう。」旨主張する(答弁書6頁5?11行)。 上記主張は、甲1刊行物に記載されたドレイン排水溝材1の「ドレイン排水溝材の端部と床材の端部の厚みの差に起因する段差」が、溶着作業がやりにくい(もしくは、溶着作業後、余盛りをきれいにカットできない)程度に顕著な段差である旨を主張したものと解される。 しかしながら、甲1刊行物には、ドレイン排水溝材1について、「また、その表面の幅方向の両側になだらかな土手13を形成することにより、その中央に材長方向に延びる浅溝のドレイン排水路14を形成している。このドレイン排水溝材1に要求される主な性能としては、次のものがある。 (マル1)段差が日常の使用に不都合を生じない程度であること。(マル2)歩行等に対して、強度、防滑性能をもつこと。 (マル3)屋外使用に耐えること。 (マル4)床シート材と溶着できること。(マル5)水が常時流れても性能を保持すること。 (マル6)コンクリート下地精度に追従する適度な柔軟性をもつこと。」(上記5.(1)の(ロ)参照、下線部分は、強調のため当審が付記したもの)と記載されていることからして、甲1刊行物に記載されたドレイン排水溝材1の「ドレイン排水溝材の端部と床材の端部の厚みの差に起因する段差」が、溶着作業がやりにくい(もしくは、溶着作業後、余盛りをきれいにカットできない)程度に顕著な段差であるといった旨の被請求人の主張は、これを採用することはできない。 6.むすび 以上のとおり、本件発明は、甲1刊行物記載の発明、甲2刊行物に記載された事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-24 |
結審通知日 | 2006-11-30 |
審決日 | 2006-12-12 |
出願番号 | 特願平10-311424 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Z
(E04D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鉄 豊郎 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
宮川 哲伸 西田 秀彦 |
登録日 | 2000-05-19 |
登録番号 | 特許第3069330号(P3069330) |
発明の名称 | 排水処理用床部材 |
代理人 | 友松 英爾 |
代理人 | 岡本 利郎 |
代理人 | 森 治 |