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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1151194
審判番号 不服2002-24645  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-20 
確定日 2007-01-24 
事件の表示 平成 9年特許願第528952号「重層扁平上皮の上皮形成異常の初期診断および扁平上皮癌の腫瘍診断および腫瘍治療のための新規プローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月21日国際公開、WO97/30153、平成11年 6月 2日国内公表、特表平11-506021〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1997年2月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年2月12日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成14年9月17日付けで拒絶査定がなされたところ、平成14年12月20日付けで拒絶査定不服審判が請求され、平成15年1月20日付けで手続補正がされ、さらに、平成18年4月14日付けで審尋がなされたが、審判請求人からの応答はなかった。

第2 平成15年1月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]

平成15年1月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項14の「配列番号1のアミノ酸130?193、202?337、202?248または249?337を含んでなるポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体。」を「配列番号1のアミノ酸249?337を含んでなるポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体。」とする補正を含むものである。これは発明を特定するための事項が選択肢で表現されている請求項において、その選択肢の一部を削除する補正であるから、当該補正事項は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件
次に、本件補正後の請求項1?14に記載された発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正後の請求項1?14に記載された発明(以下、それぞれ「本件補正発明1」?「本件補正発明14」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 上皮および軟骨細胞の腫瘍、化生および形成異常をin vitroで検出する方法であって、(a)配列番号1のアミノ酸配列番号130?337をコードする核酸配列または同じ機能を有するその部分、(b)(a)の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または(c)(a)および/または(b)の核酸と相補的な核酸配列を有する核酸を、分析すべき上皮細胞または軟骨細胞を含有する組織サンプルと接触させて、ヒトPax9タンパク質の発現の量および/または局在を分析することを含んでなる前記方法。
【請求項2】 前記部分が、配列番号1のアミノ酸番号209?337、249?337、130?193または202?337を含むアミノ酸配列をコードすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 上皮および軟骨細胞の腫瘍、化生および形成異常をin vitroで検出する方法であって、配列番号1のアミノ酸配列130?337を有するポリペプチドに対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を、分析すべき上皮細胞または軟骨細胞を含有する組織サンプルと接触させて、ヒトPax9タンパク質の発現の量および/または局在を分析することを含んでなる前記方法。
【請求項4】 前記核酸がDNAまたはRNAである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】 形成異常、化生および腫瘍に関して上皮細胞および軟骨細胞中のPax9発現を分析するために設計されている分析、診断または治療用キットであって、(a)配列番号1のアミノ酸配列番号130?337をコードする核酸配列または同じ機能を有するその部分、(b)(a)の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、若しくは(c)(a)および/または(b)の核酸と相補的な核酸配列を有する核酸を含んでなる前記キット。
【請求項6】 前記部分が、配列番号1のアミノ酸番号209?337、249?337、130?193または202?337を含むアミノ酸配列をコードすることを特徴とする、請求項5に記載のキット。
【請求項7】 形成異常、化生および腫瘍に関して上皮細胞および軟骨細胞中のPax9発現を分析するために設計されている分析、診断または治療用キットであって、配列番号1のアミノ酸配列130?337を有するポリペプチドに対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含んでなる前記キット。
【請求項8】 真核細胞中のPax9発現の位置決定および定量のために設計されている、請求項5?7のいずれかに記載のキット。
【請求項9】 食道、皮膚、頬粘膜、舌、角膜、膣、頸、子宮内膜、肛門および皮膚脂腺の上皮細胞ならびに軟骨の変化の診断および治療のために設計されている、請求項5?7のいずれかに記載のキット。
【請求項10】 重層扁平上皮の形成異常の診断および治療のために設計されている、請求項5?7のいずれかに記載のキット。
【請求項11】 腫瘍細胞または腫瘍前駆細胞の終末分化(terminal differen
tiation) のために設計されている、請求項5?7のいずれかに記載のキット。
【請求項12】 前記核酸がDNAまたはRNAである、請求項5または6に記載のキット。
【請求項13】 前記核酸配列が、遺伝子発現を阻害するためのアンチセンス核酸である、請求項5または6に記載のキット。
【請求項14】 配列番号1のアミノ酸249?337を含んでなるポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体。」

(2)本件補正発明1?4について(検出方法に関する請求項)
理由 特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項

請求項1及び3は、「上皮および軟骨細胞の腫瘍、化生および形成異常を検出する方法」に係る発明であるが、そのために、組織サンプルを、ヒトPax9のアミノ酸配列における130?337位をコードする核酸とのハイブリダイズ実験により分析すること、又は、ヒトPax9のアミノ酸配列における130?337位を有するポリペプチドに対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体により分析することが記載されている。
一方、本件明細書において、上皮細胞等の形成異常に関して、Pax9との関連性が具体的に確認されている事項は、Pax9は、正常及び白斑病である食道上皮において、基底細胞上細胞層の細胞核中に局在しているが、食道上皮における軽度の形成異常では、細胞核に局在がみられず、重度の形成異常及び扁平上皮癌では、基底上細胞層の細胞核ではなく、細胞質中に局在する点(本願公表公報第17頁4行?第20頁16行)のみである。(なお、軽度の形成異常において、Pax9が細胞核に局在しないことは明記されているが、その際、細胞質中に存在するかどうかは、本件明細書には記載されていないし、図5Eも不鮮明であるため、不明である。)
当該実験結果は、食道という特定の組織内の上皮においてマウスPax9抗体(C末側抗体及びペアードドメイン抗体)を用い、かつ、Pax9が基底上細胞層の核内に局在するか、細胞質に局在するかを分析するという特別な検出方法を採用してはじめて、重度の形成異常及び扁平上皮癌の場合であることが検出することができたことしか評価できない。
Pax9抗体を用いる場合に限っても、食道以外の上皮癌の場合、ましてや軟骨細胞の腫瘍、化生および形成異常については、明細書に十分な裏付けをもって記載されていない。

本件補正発明1を引用し、さらに限定を付す本件補正発明2及び4も同様である。

したがって、食道以外の上皮癌の場合、ましてや軟骨細胞の腫瘍、化生および形成異常を含む本件補正発明1?4は、明細書に十分な裏付けをもって記載されていないし、また、このことは、本件補正発明1?4を当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないものでもある。

(3)本件補正発明1、2、4?12(核酸の使用に関する請求項)
理由 第36条第4項

請求項1では、「上皮および軟骨細胞の腫瘍、化生および形成異常」の検出に際して、組織サンプルを、ヒトPax9のアミノ酸配列における130?337位をコードする核酸とのハイブリダイズ実験により分析することが記載されている。
一方、本件明細書において、上皮細胞等の形成異常に関して、Pax9との関連性が記載されているのは、上記(2)で述べた点のみであるが、これらの結果は、すべて、マウスPax9抗体(C末側抗体及びペアードドメイン抗体)を使用して、Pax9の局在する位置を確認したことにより得られたものであって、該「核酸」を使用してPax9の局在を検出する方法は、本件明細書に記載されていない。「正常」又は、「形成異常・扁平上皮癌」のどちらの場合でも、Pax9遺伝子は発現されているのであるから、遺伝子発現の解析の中で最も一般的に行われているノーザンブロット法のような手法では、タンパク質の細胞中での存在位置まで特定することができないものと認められる。したがって、該「核酸」を使用して、どのようにPax9の核中、細胞質中の局在を検出するのか、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されていない。
「核酸」を使用することに関する本件補正発明2、4?12も同様である。

したがって、本件補正発明1、2、4?12を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されていない。

(4)本件補正発明5?13(キットに関する請求項)
理由 特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項

請求項5及び7には、「形成異常、化生および腫瘍に関して上皮細胞および軟骨細胞中のPax9発現を分析するために設計されている分析、診断または治療用キット」と記載されている。
一方、本件明細書において、上皮細胞等の形成異常に関して、Pax9との関連性が記載されているのは、上記(2)で述べた点のみであり、上記(2)において述べたのと同様の拒絶理由が存在する。

また、本件補正発明5及び7における「治療用キット」に係る発明については、本件明細書には、Pax9が治療に使用できることは、何ら具体的に確認されていない。
本件補正発明6?13は、本件補正発明5又は7を引用し、さらに限定を付すものであるから、本件補正発明5又は7と同様の拒絶理由が存在する。

したがって、本件補正発明5?13は、明細書に十分な裏付けをもって記載されていないし、また、このことは、本件補正発明5?13を当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないものでもある。

(5)本件補正発明14(抗体)
理由 第29条第2項、特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項

(5-1)本件補正発明14の「配列番号1のアミノ酸249?337を含んでなるポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体。」という記載が「配列番号1のアミノ酸249?337を含んでなるポリペプチド」に存在する任意の「エピトープ」に対するモノクローナル抗体を意味するのであれば、本件補正によっても、原査定の特許法第29条第2項の拒絶理由が依然として解消していない。

(5-2)なお、本件補正発明14は、「配列番号1のアミノ酸249?337」をエピトープとするモノクローナル抗体を意図しているのであれば、下記の特許法第36条第6項第1号及び第4項違反の拒絶理由が存在することになる。

本件明細書に具体的に記載されている抗体は、「マウスPax9タンパク質の252?342位に対するポリクローナル抗体281-IV」及び、第2の血清として、「ニワトリPax9のペアードドメインを認識する105-IV抗血清」の2つのみである。「配列番号1のアミノ酸249?337」をエピトープとするモノクローナル抗体は、本件明細書には記載されていないし、また、当業者がこのような抗体を製造することができるように発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているものとも認められない。

(5-3)そもそも、本件補正発明14は、下記に述べるように、引用例1及び引用例2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1(Nature Genetics, Vol.3,No.4(1993)p.292-298)には、ヒトのゲノムライブラリーを、PAX-1ペアードドメインプローブを利用してスクリーニングして得られたクローンのDNA配列を決定したところ、2つのクローンがペアードボックスを有していたので、さらに、サブクローニングしてDNA配列を決定したところ、新しいPAX遺伝子が得られたので、PAX-9と命名したこと、第2図aには、隣接するイントロン配列と共に、PAX-9のペアードドメインエクソンのDNA配列を示すこと、そして、ヒトPAX-9cDNAは、またクローニングされていないことが記載されている(第294頁左欄1行?右欄4行)。

原査定の拒絶の理由に引用された引用例2(Developmental Biology, Vol.170, No.2(1995)p.701-716)には、マウスPax9cDNAをクローニングし、これらのクローンは、342アミノ酸のPax9タンパク質であると推測されるオープンリーディングフレームを含むことが記載されており(第704頁左欄下10行?右欄1行)、第1図には、該アミノ酸配列が記載されている。また、マウスの咽頭嚢においてPax9が発現することが記載されている(第701頁要約13?14行)。

本件補正発明14は、「配列番号1のアミノ酸249?337を含んでなるポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体」に係る発明であるが、「配列番号1のポリペプチド」とは、ヒトPax9のことであるから、まず、ヒトPax9をコードするcDNAをクローニングして、配列決定し、それがコードするアミノ酸配列を決定することが当業者にとって容易であったか否かについて以下検討する。

引用例1には、ヒトPax9cDNAはまだクローニングされていない旨が記載されており、この記載に接した当業者であれば、ヒトPax9をコードする全長cDNAを取得しようとすることは、当然考えることである。その際、引用例2の、マウスの咽頭嚢においてPax9が発現する旨の記載を考慮して、咽頭嚢が分化して形成される器官のひとつである食道についてヒトのcDNAライブラリーを作製し、引用例1に記載のヒトPax9のペアードドメインエクソンDNA配列、及び、引用例2に記載のマウスPax9をコードするcDNAを基にプライマーを作製して、PCRにより増幅する等の周知の手法により、ヒトPax9をコードするcDNAをクローニングして、配列決定し、該cDNAがコードするアミノ酸配列を解析することは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、得られたヒトPax9をコードするcDNAを適当な宿主で発現させて、ヒトPax9タンパク質を生産し、該タンパク質に対する抗体を調製することは、当業者にとっては常套手段を用いて容易に行うことができることである。

3.むすび
したがって、本件補正発明1?14は、特許法第36条第4項及び同第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができないものであり、本件補正発明14は、同第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件補正発明1?14は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成15年1月20日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成14年8月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうちの請求項14に係る発明(以下、「本願発明14」という。)は次のとおりのものである。
「配列番号1のアミノ酸130?193、202?337、202?248または249?337を含んでなるポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体。」

2.当審の判断
本願発明14は、本願補正発明14を包含するものであるから、当該本願補正発明14について、前記第2の2.(5-1)で指摘したのと同様の理由で、引用例1又は2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるという原査定の拒絶理由が解消されていないものである。

なお、当審において、上記と同趣旨の審尋を送付したが、指定期間を過ぎても請求人からは何らの応答もない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明14は、引用例1又は2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-28 
結審通知日 2006-08-29 
審決日 2006-09-13 
出願番号 特願平9-528952
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C12N)
P 1 8・ 536- Z (C12N)
P 1 8・ 537- Z (C12N)
P 1 8・ 572- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高堀 栄二  
特許庁審判長 佐伯 裕子
特許庁審判官 冨永 みどり
阪野 誠司
発明の名称 重層扁平上皮の上皮形成異常の初期診断および扁平上皮癌の腫瘍診断および腫瘍治療のための新規プローブ  
代理人 藤田 節  
代理人 中村 至  
代理人 平木 祐輔  

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