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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1151542
審判番号 不服2004-23328  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-15 
確定日 2007-02-08 
事件の表示 平成9年特許願第260752号「インクジェット記録シート」拒絶査定不服審判事件〔平成11年4月13日出願公開、特開平11-99741〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年9月26日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成14年4月16日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明は次のとおりのものと認める。
「支持体の少なくとも片面にインク受容層が設けられ、かつ該インク受容層表面に油性インクで印刷が施されてなるインクジェット記録シートにおいて、該印刷がランダムドット方式によって網点が形成されたものであり、かつ該油性インクによるドットの被覆面積率が70%以下であることを特徴とするインクジェット記録シート。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、刊行物1及び刊行物2には下記の事項がそれぞれ記載されている。
(刊行物1:特開平8-230307号公報の記載事項)
(1a)「【請求項1】油性インキで印刷を行った後、水性インクでインクジェット記録を行うインクジェット記録方法において、インクジェット記録の単位ドット面積に占める油性インキ転写面積の割合が70%以下である領域に、インクジェット記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。」
(1b)「【0009】特に、本発明では、油性インキで印刷を行った後、水性インクでインクジェット記録を行うインクジェット記録方法に関するものであり、特に、インクジェット記録された文字や画像が著しく高い鮮鋭度を有するインクジェット記録方法に関するものである。」
(1c)「【0010】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問題解決につき鋭意検討を重ねた結果、インクジェット記録の単位ドット面積に占める油性インキ転写面積に注目し、特定割合にある領域に対してインクジェット記録を行うことによって、インクジェット記録された文字や画像の鮮鋭度を著しく高めることが可能であることを見いだした。」
(1d)「【0014】インクジェット記録の単位ドット面積に占める油性インキ転写面積の割合が70%超える領域にインクジェット記録を行った場合、油性インキによる印刷表面でインクジェット記録される水性インクが弾いてしまい、十分なインク吸収性が得られず、インクジェット記録した文字や画像の鮮鋭度が低下するため好ましくない。」
(1e)「【0015】本発明におけるインクジェット記録方法で使用されるインクジェット記録シートは、支持体の少なくとも一方に、接着剤を主成分とするインク受理層を設けた構成である。」
(1f)「【0039】実施例1
[インクジェット記録シート作製]・・・長網抄紙機で抄造し・・・支持体を得た。
【0040】上記支持体表面に、合成非晶質シリカ・・・ポリビニルアルコール・・・ラテックス・・・カチオン性染料定着剤・・・塗液を・・・塗工・乾燥してインクジェット記録シートを作製した。
・・・
【0042】上記インクジェット記録シートに、ローランドオフセット印刷機を使用して、TRANS-G-Sシアンインキ(大日本印刷製)で網点階調チャートを印刷し、室温で一昼夜放置した。
【0043】得られた印刷が施されたインクジェット記録シートの階調チャートを、ルーゼックス画像処理装置で40倍に拡大して、それぞれのインクジェット記録の単位ドット面積(0.00785mm2)に占める油性インキ転写面積の割合を測定した。そして、転写面積の割合が10%である領域に、インクジェットプリンタ(MJ-700V2C:エプソン製)でブラックインクの文字印字及びベタ印字を行った。」

(刊行物2:特開平8-339088号公報の記載事項)
(2a)「【0005】更に、近年、実物により忠実な印刷物を得るために、1インチ300線以上の線数からなる原画フィルムおよびFMスクリーニングにより得られた原画フィルムを使用することが行われている。」

3.対比
上記刊行物1の記載事項(上記(1a)(1e)(1f))から、刊行物1には、「支持体の少なくとも片面にインク受理層が設けられ、該インク受理層表面に油性インキで印刷が施されているインクジェット記録シートにおいて、インクジェット記録の単位ドット面積に占める油性インキ転写面積の割合が70%以下である領域に、水性インクによるインクジェット記録を行うインクジェット記録シート」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているところ、本願発明1と刊行物1発明とを比較すると、両者の間には、以下のような一致点及び相違点がある。

(一致点)
支持体の少なくとも片面にインク受容層が設けられ、かつ該インク受容層表面に油性インクで印刷が施されてなるインクジェット記録シートである点。
(相違点)
本願発明が、印刷がランダムドット方式によって網点が形成されたものであり、かつ該油性インクによるドットの被覆面積率が70%以下であるのに対して、刊行物1発明は、印刷の方式を規定せず、ランダムドット方式による印刷の油性インクによるドットの被覆面積率は不明である点。

4.判断
上記相違点について検討する。
まず、刊行物1(上記(1c)(1d))には、インクジェット記録の単位ドット面積に占める油性インキ転写面積の割合が70%超える領域にインクジェット記録を行った場合、油性インキによる印刷表面でインクジェット記録される水性インクが弾いてしまい、十分なインク吸収性が得られず、インクジェット記録した文字や画像の鮮鋭度が低下することが記載され、本願明細書(段落【0043】)にも、油性インクの被覆面積率が70%を超えると後から打込まれる水性インクジェット用インクの吸収性が十分に得られず、インクジェット記録した文字や画像の鮮鋭度が低下することが記載されているように、油性インクによる印刷の方式は別として、両者は、予め施される油性インクの印刷面積と、後から施される水性インクの吸収性及び印字の鮮鋭度の関係を見出した点で共通する発明である。
そして、ランダムドット方式は、刊行物2にも記載されるように、本願出願前より、よく知られた印刷方式であるから、刊行物1発明のインクジェット記録シートの油性インクによる印刷の方式として採用することに何ら困難性はなく、この方式を適用した際にも、油性インキによる印刷表面でインクジェット記録される水性インクの弾きがなく、十分なインク吸収性が得られるように、油性インクの印刷被覆率を決める必要があることは、刊行物1に接した当業者であれば当然に考えることであり、実験を行い、十分なインク吸収性及び印字の鮮鋭度が得られる最適な値を求め、油性インクによるドットの被覆面積率が70%以下とすることに何ら困難性はない。
審判請求人は審判請求理由で、本願明細書の実施例であるランダムドット方式と比較例である150線/インチの従来法の結果から、本願発明は、ランダムドット方式によるドットの被覆率が70%以下であることによって、特異的に優れた効果を奏するものであることを主張するが、本願明細書の【表1】【表2】をみると、インク被覆面積率とインク吸収性の関係については、印刷方式により特に異なるものではなく、鮮鋭度については、ランダムドット方式が従来の方式に比べて優れていることが示されているものの、この効果は、予め施した印刷の方式が油性インクで覆われない部分が細かくランダムに分布するランダムドット方式であることにより必然的に奏された効果といえ、これを確認したにすぎないものといえる。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-30 
結審通知日 2006-12-05 
審決日 2006-12-20 
出願番号 特願平9-260752
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 勲  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 福田 由紀
秋月 美紀子
発明の名称 インクジェット記録シート  

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