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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1151589 |
審判番号 | 不服2004-9467 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-12-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-06 |
確定日 | 2007-02-09 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第156977号「プラズマクリーニング方法及びこの方法に使用される配置領域保護体」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開、特開平 8-330243〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年5月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年5月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明1」という) 「排気系を備えた真空容器と、真空容器内に所定のガスを導入するガス導入機構と、真空容器内の所定の位置に基板を配置するための基板ステージと、基板ステージに所定の高周波電力を印加するステージ用高周波電源とを備えた真空処理装置において、処理する基板の表面の寸法形状又は基板ステージの表面のうちの基板配置のための領域の寸法形状に適合した寸法形状の表面を有する誘電体からなる板状の配置領域保護体を前記基板ステージの表面のうちの基板配置のための領域に配置してこの領域を覆い、エッチング作用のあるガスを前記ガス導入機構によって真空容器内に導入するとともにステージ用高周波電源によって所定の高周波電力を基板ステージに印加し、印加された高周波電力によって基板ステージの表面の近傍にプラズマを形成し、このプラズマによって生じる前記ガスのエッチング作用を利用して基板ステージの表面堆積膜又は真空容器の内面堆積膜を除去する方法であり、 前記配置領域保護体は、前記エッチング作用のあるガスによってエッチングされる材質であって基板の処理の際に異物とならない材料を放出する材質で形成されていることを特徴とする基板ステージのプラズマクリーニング方法。」 [2]刊行物の記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-226461号公報には、以下の事項が図1ないし図6とともに記載されている。 「【0003】一方、PVDやCVD装置、あるいはエッチングやアッシング装置では、運転を重ねるに従って増加する装置内壁への膜の堆積によるパーティクルの増加や、処理特性の変動が問題になっている。これを解決する一つの方法として、プラズマを使ったドライクリーニングが知られており、処理とクリーニングとを交互に行うことによって、装置特性を維持しながら稼働させることが一般的な運転方法となっている。熱や放電や光によって励起したクリーニングガスと、被クリーニング物質との化学的な反応を利用したドライクリーニングは、被クリーニング物質に対してイオンや電子の介在や、電界や磁界で運動エネルギーを供給されることによってその反応が促進されることが知られており、通常これらの方法を適当に組合わせることで、その処理時間を効率化している。また、被処理体を固定するステージと容器壁などのように、被クリーニング位置に対する効果を改善するために、磁界を使ってプラズマ流を制御したり、電界を印加することでイオンエネルギーによるアシスト効果を使ったり、クリーニング圧力を変えたりしてクリーニングが行われていた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従来方法でドライクリーニングを実施すると、ドライクリーニング実施の前後でステージの吸着面状態が変化して伝熱特性が変化するという現象が発生していた。このことにより、成長速度やその分布が変化して、装置の処理再現性が低下するという問題を引き起こしていた。この現象は、ステージへ電界による荷電粒子エネルギーの投入や磁界によるプラズマ流の集中を利用して、ステージ部分のクリーニング効果を改善しようとすると顕著に発生し、装置稼働率を妨げる原因にもなっていた。 【0005】本発明の目的は、ドライクリーニング後の処理特性が変化しないドライクリーニング方法を提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明においては、静電吸着力で被処理体を保持する機能を備えた装置のドライクリーニング方法として、静電吸着面に被処理体と吸着面が平面的に同一形状の覆いを置きながらクリーニングを実施するか、静電吸着面に被処理体と立体的に同一形状の覆いを置きながらクリーニングを実施する方法をとるものとする。【0007】ここで、静電吸着面に置く覆いを静電吸着可能な材料とするか、耐クリーニング材料とするか、あるいは静電吸着可能な材料を耐クリーニング材料で被覆した構成材料とすれば好適である。」 「【0008】 【作用】ステージの被処理体が吸着される部分は、通常処理の際は被処理体があるがために汚れることはなく、装置がクリーニングを必要とする時期でも吸着面が露出しているのが普通である。ドライクリーニングの実際は、クリーニングによる昇華性生成物の再解離、再解離によって生じた物質の非昇華性物質への再結合も同時に進行しており、このときに清浄な部分が存在すれば逆に汚損される状況となり、従来技術でも述べたように、磁界や電界の効果を利用した場合には、そのエネルギーによって窒化や酸化に代表されるような表面の改質や、さらにはデポジションによる変質が起こる。しかし、これらの現象はすべて外空間から表面への化学的物理的接触によるものであり、この接触を防ぐことによって問題の発生を断つことができる。これらの課題を解決するために本発明においては、ドライクリーニング時には、被処理体が吸着される部分がドライクリーニング雰囲気に直接さらされるのを防ぐように、被処理体と吸着面が同一形状の覆いを置くことで、クリーニングの前後で被処理体を吸着する面の状態が変化しないようにするものである。 【0009】被処理体と吸着面が同一形状であることから、吸着面を包含するステージ上の汚損部分のクリーニングを妨げることなくかつ被処理体を吸着する面を露出することなく覆い、前記問題の発生を防ぐことができる。・・・ 【0010】また、覆いを耐クリーニング性の材料で構成することによって、覆いによるクリーニング物質の供給がなくなり、装置のクリーニング効果を損なうことなく、前記問題の発生を防ぐことができる。・・・ 【0011】さらに、覆いを被処理体と空間的に同一形状で構成することにより、被処理体を装置内に導入する場合と同様の方法で覆いを導入できることから、覆いを吸着面へ固定するための新たな工程や機構を必要としないので、装置稼働率を低下させることなく前記効果を得ることができる。」 「【0012】 【実施例】図1(a) に、静電吸着力を利用したステージの一構成例の断面図を示す。・・・図2にマイクロ波プラズマを使用した, 本発明に関わる装置の一構成例を示す。・・・図2において、1は反応室で、静電吸着機構によって被処理体となるウエーハ5を保持するための台、ウエーハステージ3を内包している。ウエーハは・・・、ウエーハステージ3に保持される。ガス供給口41, 42は、図示のないガス供給システムと接続されており、成膜処理時にはCVDガス、蝕刻処理時にはエッチングガス、が供給される。排気口16は、図示のない排気システムと接続され、ガスを導入しつつ反応室内の圧力を一定に保つことができる。反応室1の外周には、磁界制御コイル6が設けられている。反応室のウエーハステージ3と対向する位置には、プラズマ室2が気密に接続されている。プラズマ室2にはマイクロ波窓21を通してマイクロ波電力を供給するための導波管7が接続される。主コイル8はその幾何学的中心が、マイクロ波窓の真空側端面より大気側となるように配置されている。 【0013】ドライクリーニングの際は、ガス供給口41, 42からクリーニングガスを供給し、プラズマ発生のためにマイクロ波電力と主コイル電力とを供給し、かつ、磁界制御コイル電流を調整してプラズマ流の向きを制御して、反応室各部分にわたり高いクリーニング効果を得る。さらにステージ3には図示されないRF電源からRF電力を供給することでステージ近傍に電界を発生させて、クリーニング効果を改善している。 ・・・ 【0015】また、被処理体としてウエーハを利用した場合の平面形状を同一とした本発明の覆いの例を図5に、立体形状を同一とした本発明の覆いの例を図6に示す。芯となる基盤をシリコンウエーハで作り外周にAlをスパッタ等でコーティングして吸着材とすることも可能である。なお、図5中の符号33はつまみである。立体形状を同一とする場合には、装置搬送系で搬送可能な厚さ (0.6?30mm) としている。図中には、フッ素系のガスを使用した場合の耐クリーニング材として、Al, サファイアを、塩素系のガスを使用した場合の耐クリーニング材として、W, 石英を例として挙げたが、Au等が使用できるのはいうまでもない。 【0016】 【発明の効果】以上説明したように、被処理体と吸着面が平面的に同一形状あるいは、被処理体と空間的に同一形状の覆いで吸着面を覆いながらクリーニングを行うことによって、被処理体を保持する吸着面をクリーニングに伴う変質から防ぐことができるため、クリーニング前後での装置処理特性の再現性を確保し、安定性を高めることができ、さらに新たな機能や工程なしで覆いを取りつけることができるため、信頼性高く処理できかつ装置稼働効率を低下させることなくこの効果を得ることができる。」 [3]対比・判断 1.刊行物1に記載された発明 刊行物1には、「PVDやCVD装置、あるいはエッチングやアッシング装置では、装置内壁への膜の堆積によるパーティクルの増加や、処理特性の変動が問題になっている。これを解決する一つの方法として、プラズマを使ったドライクリーニングが知られている。」(第3段落) 「ここで、静電吸着面に置く覆いを静電吸着可能な材料とするか、耐クリーニング材料とするか、あるいは静電吸着可能な材料を耐クリーニング材料で被覆した構成材料とすれば好適である。」(第7段落) 「1は反応室で、ウエーハ5を保持するウエーハステージ3を内包している。ガス供給口41, 42は、ガス供給システムと接続されている。排気口16は、排気システムと接続され、・・・」(第12段落) 「ドライクリーニングの際は、ガス供給口41, 42からクリーニングガスを供給し、プラズマ発生のためにマイクロ波電力と主コイル電力とを供給し、さらにステージ3には図示されないRF電源からRF電力を供給することでステージ近傍に電界を発生させて、クリーニング効果を改善している。」(第13段落) 「被処理体としてウエーハを利用した場合の平面形状を同一とした本発明の覆いの例を・・・示す。図中には、フッ素系のガスを使用した場合の耐クリーニング材として、Al, サファイアを、塩素系のガスを使用した場合の耐クリーニング材として、W, 石英を例として挙げたが、Au等が使用できるのはいうまでもない。」(第15段落)が記載されている。 よって、刊行物1には以下の発明が記載されている。 「反応室は、ウエーハを保持するためのウエーハステージを内包し、排気口を有し、クリーニングの際は、ガス供給口からクリーニングガスを供給し、プラズマ発生のためにマイクロ波電力と主コイル電力とを供給し、装置内壁への膜の堆積を、プラズマを使ったクリーニング効果を得てドライクリーニングするCVDなどに用いる装置において、被処理体を固定するステージと容器壁などに対するクリーニング効果を改善するために、ステージにはRF電源からRF電力を供給し、被処理体と同一平面形状の覆いの耐クリーニング材料に、フッ素系のガスを使用した場合、Al, サファイアを、塩素系のガスを使用した場合、W, 石英を用いるドライクリーニング方法。」(以下、「刊行物1発明」という) 2.本願発明と刊行物発明との対比 本願発明1と刊行物1発明とを対比する。 刊行物1発明の「排気口」、「反応室」、「ガス供給口」、「ウエーハステージ」、「RF電源」、「RF電力」、「ドライクリーニングするCVDなどに用いる装置」、「覆い」、「クリーニングガス」が、それぞれ、本願発明の「排気系」、「真空容器」、「ガス導入機構」、「基板ステージ」、「ステージ用高周波電源」、「高周波電力」、「真空処理装置」、「配置領域保護体」、「エッチング作用のあるガス」に相当する。 刊行物1における耐クリーニング材料として、第15段落において、「サファイア」、「石英」が記載されており、さらに、第7段落において、「静電吸着面に置く覆いを静電吸着可能な材料とするか、耐クリーニング材料とするか、あるいは静電吸着可能な材料を耐クリーニング材料で被覆した構成材料とす」ることが記載されているので、「覆い」の材料として前記サファイアまたは石英を選択した場合、「覆い」は誘電体である。 また、刊行物1、第15段落において、覆いの平面形状をウエーハと同一とすることも記載されているので、覆いは、処理する基板の表面の寸法形状を有していると言える。 よって、本願発明と刊行物発明とは、 「排気系を備えた真空容器と、真空容器内に所定のガスを導入するガス導入機構と、真空容器内の所定の位置に基板を配置するための基板ステージと、基板ステージに所定の高周波電力を印加するステージ用高周波電源とを備えた真空処理装置において、処理する基板の表面の寸法形状又は基板ステージの表面のうちの基板配置のための領域の寸法形状に適合した寸法形状の表面を有する誘電体からなる板状の配置領域保護体を前記基板ステージの表面のうちの基板配置のための領域に配置してこの領域を覆い、エッチング作用のあるガスを前記ガス導入機構によって真空容器内に導入するとともにステージ用高周波電源によって所定の高周波電力を基板ステージに印加し、プラズマによって生じる前記ガスのエッチング作用を利用して基板ステージの表面堆積膜又は真空容器の内面堆積膜を除去する方法である基板ステージのプラズマクリーニング方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本願発明1が、「ステージに印加された高周波電力によって基板ステージの表面の近傍にプラズマを形成」しプラズマクリーニングするのに対し、刊行物1発明は、高周波電源からステージに高周波電力を供給することでステージ近傍に電界を発生させてプラズマクリーニング効果を改善している点。 相違点2 本願発明1が、「前記配置領域保護体は、前記エッチング作用のあるガスによってエッチングされる材質であって基板の処理の際に異物とならない材料を放出する材質で形成されている」のに対し、刊行物1発明では、この点が明確に記載されていない点。 3.相違点についての判断 相違点について検討する。 相違点1について プラズマクリーニングにおいて、ステージに高周波電力を供給してプラズマを発生させることは、特開平4-249318号公報、特開平7-130713号公報の刊行物に記載されているように周知であり、ステージに印加された高周波電力によって、プラズマクリーニング効果を改善する電界を発生させることに替えて、基板ステージ近傍にクリーニング用のプラズマを形成することは当業者が容易に為し得たものである。また、それによる効果も予測しうるものである。 相違点2について 本願明細書、発明の実施例の欄の第38段落において「エッチング作用のあるガス、フロン14ガス(CF4 )を用いた例について説明を行ってきたが、フロン116ガス(C2F6)、6弗化硫黄ガス(SF6 )を用いたり、・・・配置領域保護体400を形成する材料としては、酸化硅素、石英ガラス等以外には、酸化アルミニウム、サファイア等が挙げられる。」と記載されている。このエッチング作用のあるガスとして挙げられたフロン14ガス(CF4 )、フロン116ガス(C2F6)、6弗化硫黄ガス(SF6 )は、刊行物1発明のクリーニングガスとしての「フッ素系のガス」に包含されており、両ガスは、実質的に同一である。また、本願発明1の配置領域保護体の材料および刊行物1発明の耐クリーニング材として、共にサファイアが用いられており、同一の材料である。 よって、本願発明1と刊行物1発明とでは、配置領域保護体およびエッチング作用のあるガスに同じ材料を用いており、同じ効果を奏するものと認められるので、刊行物1発明においてもエッチング作用のあるガスによってエッチングされる材質であって基板の処理の際に異物とならない材料を放出する材質で形成されているものと認められる。また、たとえ、配置領域保護体がエッチングされたとしても、その際、有害な不純物を出さないものとすることは、当業者が当然考慮すべきことである。 よって、相違点2点は、実質的に相違はない。 なお、請求人は、審判請求の理由で、刊行物1発明の「耐クリーニング性」について違いを主張しているが、本願発明において、配置領域保護体を積極的にエッチングしなくてはならない必要性や、その意義の記載はなく、また、ドライクリーニングの際、SF6ガスに対してサファイアや石英等の覆いをすることは、周知(必要ならば、特開平5-55184号公報参照)であり、覆いは、ドライクリーニングの影響を受けるものであり、たとえ、消極的にせよエッチングされたとしても、その際、有害な不純物を出さないものが好ましいことは、当業者が当然考慮すべきことである。本願発明1においても配置領域保護体は、保護膜としての用途を考えると、刊行物1発明において、耐エッチング材を用いるのと同様に積極的にエッチングするようなものではないと認められ、この点は相違点とはならない。 [4]むすび よって、本願発明1は、刊行物1に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-20 |
結審通知日 | 2006-11-28 |
審決日 | 2006-12-11 |
出願番号 | 特願平7-156977 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 浩一 |
特許庁審判長 |
岡 和久 |
特許庁審判官 |
綿谷 晶廣 宮崎 園子 |
発明の名称 | プラズマクリーニング方法及びこの方法に使用される配置領域保護体 |
代理人 | 保立 浩一 |
代理人 | 保立 浩一 |