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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1151616
審判番号 不服2004-3688  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-10-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2007-02-05 
事件の表示 特願2001-67571「ピン立設樹脂製基板、ピン立設樹脂製基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月4日出願公開、特開2002-289729〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願は、平成13年3月9日(優先権主張:平成12年4月10日、平成12年10月13日、平成13年1月18日)の出願であって、その請求項1?12に係る発明は、平成16年3月29日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項2】主面を有する略板形状をなし、樹脂または樹脂を含む複合材料から構成され、上記主面に露出したピンパッドを有する樹脂製基板と、
上記ピンパッドにハンダ接合されたピンと、
を備え、
上記ピンは、
600℃以上に加熱する熱処理が施されており、
棒状部と、
この棒状部と同材質からなり、この棒状部より径大で、この棒状部の一方の端部に形成された径大部と、を有し、
上記熱処理に先立って、機械的研磨を施されてなり、
少なくとも上記径大部が上記ピンパッドにハンダ付けされている
ピン立設樹脂製基板。」

2.先願・周知文献、及び先願明細書・周知文献の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平11-354532号(特開2001-177038号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)、及び本願の優先権主張日前の刊行物である特開昭63-115353号公報(以下、「周知文献」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)先願明細書(特開2001-177038号公報)
(1a)「【請求項1】 絶縁基板と、該絶縁基板の表面および/または内部に形成された複数の配線導体と、前記絶縁基板の下面に形成され、前記配線導体に電気的に接続されたランドと、該ランドに頭部がろう付けされたリードピンとを具備して成り、半導体素子が前記絶縁基板の上面に搭載されるとともに前記配線導体に電気的に接続されるリードピン付き配線基板であって、前記リードピンは、頭部の頭頂側の周縁にC面またはR面が設けられており、かつ軸部のヤング率が30?80GPaであることを特徴とするリードピン付き配線基板。」
(1b)「【0017】しかしながら、このような従来のリードピン付き配線基板32および電子部品31において、配線基板34の絶縁層37を有機樹脂系の材料で構成する場合は、その有機樹脂材料のガラス転移温度が約100?150℃と低いことから、リードピン35をろう付けする際の熱に対する耐熱性に難点があるという問題点があった。
・・・・・
【0019】そのため、これら耐熱性に劣る配線基板34に対しては、ろう材44により融点が低いもの、例えば鉛-錫系半田等を用いてリードピン35をろう付け接合してリードピン付き配線基板32および電子部品31を作製することが行なわれている。
【0020】しかしながら、このような従来のリードピン付き配線基板32およびこれを用いたリードピン付き電子部品31によれば、前述の樹脂基板を用いた場合のような基板の反りによる実装信頼性の低下は避けられるものの、リードピン35接合用のろう材44に用いる鉛-錫系半田の降伏応力が小さいことと、通常はリードピン35の頭部35aのコーナー部すなわち頭頂側の周縁35cは角が立っており、かつリードピン35の軸部35bのヤング率が大きくて剛直であることから、このリードピン35を外部電気回路基板のソケットに挿抜するような実際的な使用状況においては、軸部35bの先端に加えられた斜め方向の外力が頭部35aの頭頂側の周縁35cに大きなモーメントとして作用して、この頭部35aの周縁35cからろう材44の表面に大きな応力が働くために、リードピン35に対する垂直引っ張り試験では1ピン当たりの接合強度が約30?50Nと充分であっても、例えば20゜の斜め方向への引っ張り試験では10?20N程度と極めて弱い接合強度しか得ることができず、また、リードピン35に外力が加わるとろう材44が容易に破壊されてしまい、実用上充分な接合強度を得ることができないという問題点があった。
【0021】本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、有機材料系の配線基板の場合であれば高密度な低抵抗配線が可能で、低誘電率で高周波に対する電気的特性に優れ、しかも低コストである等の優れた特性を生かしつつ、・・・・、さらに、・・・リードピンに対する斜め方向の引っ張り荷重に対しても極めて高い接合強度および接合信頼性でリードピンをろう付け接合でき、配線基板内に形成される配線導体の高密度化を図ることができるとともに多ピン化の要求にも充分に応えることのできるリードピン付き配線基板およびこれを用いたリードピン付き電子部品を提供することを目的とするものである。」
(1c)「【0030】図1は本発明のリードピン付き配線基板およびリードピン付き電子部品を実施の形態の一例を示す、有機材料系のPGA型の配線基板を例にとった断面図である。また、図2?図5はそれぞれ本発明のリードピン付き配線基板およびリードピン付き電子部品に用いるリードピンの形状を示す側面図である。
・・・・
【0035】本発明のリードピン付き配線基板2およびリードピン付き電子部品1は、上記の構成において、リードピン5の頭部5aの少なくとも頭頂側の周縁5cにC面またはR面を設けたことを特徴とするものである。本発明にかかるリードピン5においては、例えば図1および図5に示すように、リードピン5の頭部5aの軸部5b側の周縁5dにもR面を設け、このR面から頭頂側の周縁5cに設けたR面にかけて連続的な曲面を有するようなネイルヘッド側面を形成したり、・・・・種々の形態とすることができる。・・・・」
(1d)「【0044】本発明においては、さらにリードピン5の軸部5bのヤング率が30?80GPaであることが特徴であり、軸部5bのヤング率をこの範囲に特定したことによって、リードピン5にかかるモーメントの支点がリードピン5のろう材14との接合部から軸部5b寄りに移行して、ろう材14にかかるモーメント自体を小さくすることができるために、斜め方向の引っ張りにより生じるモーメントからろう材14に加わる応力を効果的に軸部5b側に分散させることができて、斜め引っ張りにおいて垂直引っ張りと同等の接合強度を得ることができるものとなる。」
(1e)「【0056】ろう材14としては、例えば錫(Sn)および/または鉛(Pb)を主成分とし・・・た半田等を用いるとよく、有機樹脂材料を主成分とした絶縁層7の耐熱性を考慮すると、ろう材14の融点は、絶縁層7のガラス転移温度+100℃程度を超えない温度であることが好ましい。上記の錫-鉛系の半田であれば、その融点は約270℃以下であることから、ガラス転移温度が約150℃より低い有機樹脂材料である上記の熱硬化性樹脂に対しても使用できるものである。・・・」
(1f)「【0060】リードピン5の材質については、ランド12とリードピン5との熱膨張差を考慮したピン接合強度の点からは、ランド12を形成する導体材料と熱膨張率が概ね同等のものを用いることが好ましく、・・・このような材質としては、例えばFe-Ni-Co合金やFe-Ni合金が挙げられる。
【0061】しかし、これらFe-Ni-Co合金やFe-Ni合金を用いて作製されるリードピンのヤング率は一般に100?130GPaと高く、既に説明したように本発明におけるリードピン5の軸部5bのヤング率の範囲である30?80GPaを逸脱しているため、そのまま用いることは不適当である。そのため、これらの材料から成るリードピン5に対しては、700?1100℃の温度で所定の時間熱処理することによって合金材料の再結晶化を促進して、ヤング率を所望の範囲に制御することが必要となる。」
(1g)「【0071】<実施例2>実施例1と同様の試験基板に対し、ろう材として・・・合金半田を用い、リードピンには、図1および図5に示した形状と同様の、軸部の直径が0.45mm・・・、頭部のネイルヘッド径が0.9mmまたは1.1mm・・・であるとともに、頭部の軸部側の周縁のコーナー部に・・・R面を、頭頂側の周縁のコーナー部に・・・R面をそれぞれ設けた円板状のネイルヘッドを有するFe-Ni-Co合金製のものを用いて、このリードピンを試験基板のランドに・・・合金半田を用いて接合して、本発明による評価用試料を得た。
【0072】ここで、リードピンには約790℃の熱処理を行なってその軸部のヤング率を60?70GPaに調整し、リードピンの接合は、温度プロファイルが270℃ピークのリフロー接合により行なった。」

(2)周知文献(特開昭63-115353号公報)
(2a)「背景技術
一般に、金属端子用Ni-Fe合金またはNi-Co-Fe合金からなるAgろうクラッドリードピンは、所要の製品径を有する前記合金線材を所要長さに切断し、この切断線をヘッダー加工にて、平頭を有する形状等の所要形状に成形加工し、その後、被加工品の頭部に形成されるバリを取るため及び先端部のR加工のために、Al2O3またはSiO2等の砥粒にてバレル研摩加工し、さらに、・・・」(1頁右下欄3?11行)
(2b)「この発明は、金属端子用Ni-Fe合金またはNi-Co-Fe合金の所要径の素線を、従来法の如く、所要長に切断し、ヘッダー加工により所要形状に加工した後、被加工品の端部に形成されるバリを除去し、かつ先端部をR加工するため、Al2O3、SiO2等の砥粒を使用して、バレル研摩した後、・・・」(2頁右上欄3?10行)

3.対比・判断
上記摘記事項(1f)の段落【0061】によれば、先願明細書には、Fe-Ni-Co合金やFe-Ni合金を用いて作製されるリードピンのヤング率が、一般に、100ないし130GPaと高く、本発明におけるリードピンの軸部のヤング率の範囲である30?80GPaを逸脱しているため、そのまま用いることは不適当であるから、リードピンに対して700?1100℃の温度で所定の時間熱処理することが記載されている。
また、摘記事項(1g)によれば、先願明細書の実施例2には、その頭部の軸部側周縁のコーナー部と頭頂部周縁のコーナー部とにR面を設けた円板状のネイルヘッドを有するリードピンを、合金半田を用いてろう付け接合すること、ここで、リードピンには約790℃の熱処理を行なってその軸部のヤング率を60?70GPaに調整することが記載されている。更に、実施例2には、リードピンの軸部直径が0.45mm、頭部のネイルヘッド径が0.9mmまたは1.1mmであることが記載され、通常、軸部と頭部は同じ材質からなるものであるから、該リードピンは、軸部と、この軸部と同材質からなり、この軸部より径大で、この軸部の一方の端部に形成された頭部と、を有しているといえる。
ここで、リードピンの頭部にR面を設ける加工を施すと、加工硬化が生じるものであって、その後加工硬化を除く熱処理を必要とするものである。そうすると、これらの記載からみて、実施例2には、リードピンの頭部にR面を設けた後、リードピンに700?1100℃の熱処理を行なって、その軸部のヤング率を低く調整しているものと認められる。

そして、先願明細書の摘記事項(1a)?(1g)を総合してみると、先願明細書には、「有機樹脂系材料から構成され、その下面に露出したランドを有する配線基板と、該ランドに合金半田を用いてろう付けされたリードピンとを具備して成り、さらに、リードピンは700?1100℃の温度で熱処理が施されており、軸部と、この軸部と同材質からなり、この軸部の一方の端部に形成された軸部より径大な頭部とを有し、熱処理に先立ってリードピンの頭部にR面を設けたものであって、頭部がランドに合金半田を用いてろう付けされているリードピン付き配線基板。」(以下、「先願発明」という。)が記載されていることになる。

そこで、本願発明2と上記先願発明とを対比すると、先願発明の「ランド」、「リードピン」、「軸部」と「頭部」は、それぞれ本願発明2の「ピンパッド」、「ピン」、「棒状部」と「径大部」に相当するから、両者は、「主面を有する略板形状をなし、樹脂または樹脂を含む複合材料から構成され、上記主面に露出したピンパッドを有する樹脂製基板と、上記ピンパッドにハンダ接合されたピンと、を備え、上記ピンは、700℃以上に加熱する熱処理が施されており、棒状部と、この棒状部と同材質からなり、この棒状部より径大で、この棒状部の一方の端部に形成された径大部と、を有し、少なくとも上記径大部が上記ピンパッドにハンダ付けされているピン立設樹脂製基板。」の点で一致するものの、次の点で一応相違している。

相違点:本願発明2では、ピンは、熱処理に先立って、機械的研磨が施されているのに対し、先願発明では、ピンは、熱処理に先立って、頭部にR面を設けられているものの、機械的研磨が施されているかが記載されてない点。

上記相違点について次に検討する。
リードピンの頭部に形成されたバリを取るためと先端部のR加工のために、バレル研磨加工を施すことは上記周知文献に記載されているように周知の技術である。
そうすると、先願発明において、リードピンの頭部に設けられたR面は、バレル研磨加工のような機械的研磨によるものと解するのが相当である。
よって、上記相違点は実質的な差異とは認められず、本願発明2は先願発明と同一である。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明2は先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明2の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願発明2は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-13 
結審通知日 2006-11-07 
審決日 2006-11-22 
出願番号 特願2001-67571(P2001-67571)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 薫昭酒井 英夫  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 宮崎 園子
大嶋 洋一
発明の名称 ピン立設樹脂製基板、ピン立設樹脂製基板の製造方法  
代理人 山中 郁生  
代理人 奥田 誠  
代理人 富澤 孝  

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