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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01D
管理番号 1152471
審判番号 不服2006-7523  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-20 
確定日 2007-02-15 
事件の表示 特願2004-235534「コンバイン」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月24日出願公開、特開2005- 46152〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年11月13日に出願した特願平4-328750号の一部を平成13年11月9日に新たな特許出願(特願2001-344665号)とし、この新たな特許出願の一部を平成15年9月26日に新たな特許出願(特願平2003-335460号)とし、この新たな特許出願の一部を平成16年8月12日に新たな特許出願としたものであって、平成18年3月17日付で拒絶査定がなされ、これに対して同年4月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年5月22日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「【請求項1】
刈取部(8)をメインビーム(34)を介して昇降支点筒軸(12)に回転自在に軸支させて、同刈取部(8)を前記昇降支点筒軸(12)を中心に昇降させる一方、水平支点軸(32)を中心に刈取部(8)を略水平に回転させ、同刈取部(8)を機体側方に水平回転させて脱穀部(4)の前側並びに運転台(18)の左側を開放することができるようにしたコンバインにおいて、
運転台(18)に備えた運転席(20)の下方にエンジン(21)を設け、同エンジン(21)の前方に、左右走行クローラ(2)が張架される駆動スプロケット(23)が両側に配置されたミッションケース(22)を配置し、これらの左側に位置するようにエンジン(21)の出力プーリ(24)とミッションケース(22)の入力プーリ(25)との間に走行テンションローラクラッチ(26)を介して走行駆動力を伝える走行ベルト(27)を張設して走行駆動力を走行ベルト(27)によってミッションケース(22)に伝えるものであり、前記走行テンションローラクラッチ(26)は、前記コンバインの機台(3)に立設させる支柱(28)を介して張設されるテンションバネ(29)によって走行ベルト(27)に弾圧して緊張されており、同走行ベルト(27)を挟んでミッションケース(22)と反対側に刈取駆動軸(33)を内挿させる前記メインビーム(34)を配設して、前記昇降支点筒軸(12)の右側に設ける刈取入力プーリ(37)とミッションケース(22)に設けた刈取プーリ(38)との間に刈取ベルト(40)を張設して、上記刈取入力プーリ(37)からメインビーム(34)内の刈取駆動軸(33)を介して刈取部(8)各部に駆動力を伝えるようにし、
エンジン(21)とミッションケース(22)は、前後方向の直線上に配設すると共に、機体中央寄りに設け、同ミッションケース(22)よりも後方に前記昇降支点筒軸(12)を設置したことを特徴とするコンバイン。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-3984号(実開昭63-112425号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、「刈取収穫機」に関して、図面とともに、以下の記載がある。
(イ)「第4図に示すように、エンジン(1)及び脱穀装置(2)を搭載すると共に、クローラ走行装置(3)を備えた車体(A)の前部に、刈取前処理部(B)を、その後部の横向き軸芯(P)周りで揺動自在に連結し、かつ、油圧シリンダ(4)の作動で揺動昇降するようにして、刈取収穫機の一例としてコンバインを構成する。
同図に示すように、刈取前処理部(B)は複数の引越し装置(5)・・、バリカン型の刈取装置(6)、刈取穀稈を前記脱穀装置(2)に送る搬送装置(7)及びこれらを支持するよう該刈取前処理部(B)の左右方向での略中央に配設された刈取フレーム(8)で成り、この刈取フレーム(8)は、刈取前処理部(B)に対する動力を伝える駆動軸(9)を内装すると共に、その後端が前記軸芯(P)で揺動できるよう車体側に支持されている。」(明細書第4頁第20行-第5頁第15行)
(ロ)「・・・車体(A)の右側前部には運転座席(13)が設けられている。・・・
つまり、第1図に示すように前記エンジン(1)の出力軸(1a)には出力プーリ(16)が2つ取付けられると共に、この出力プーリ(16)と走行用のミッションケース(17)の入力プーリ(18)との間に第1ベルト伝動機構(9)が設けられ、又、他の出力プーリ(16)と脱穀装置(2)の入力プーリ(20)との間に第2ベルト伝動機構(21)が設けられ、第1ベルト伝動機構(19)には第1テンションプーリ(19t)が設けられ、第2ベルト伝動機構(21)には第2テンションプーリ(21t)で成る第2テンションクラッチ(C2)が介装されている。
又、前記刈取フレーム(8)は第2図及び第4図に示すように、その後端部を、平面視で「T」字状に成形して横向きフレーム部(8a)が形成され、この横向きフレーム部(8a)を車体側のポスト(22)に遊転支持させることで、該横向きフレーム部(8a)の中心部に前記軸芯(P)が位置するように設定してある。更に、この軸芯(P)と同軸芯上に前記駆動軸(9)に動力を伝える中間軸(23)が配設され、この中間軸(23)に入力プーリ(24)が取付けられている。
前記ミッションケース(17)には該ミッションケース(17)に入力された動力を、そのまま出力するプーリ(25)が取付けられ、このプーリ(25)と前記中間軸(23)に取付けられた入力プーリ(24)との間に第3ベルト伝動機構(26)が設けられ、この第3ベルト伝動機構(26)には第3テンションプーリ(26t)で成る第3テンションクラッチ(C3)が介装されている。」(明細書第6頁第1行-第7頁第20行)

これらの記載及び図面の内容を総合すると、引用例1には、
「刈取前処理部(B)を刈取フレーム(8)を介して横向きフレーム部(8a)に回転自在に軸支させて同刈取前処理部(B)を横向きフレーム部(8a)を中心に昇降させたコンバインにおいて、
運転台に備えた運転座席(13)の下方にエンジン(1)を設け、同エンジン(1)の前方にミッションケース(17)を配置し、エンジン(1)の出力プーリ(16)とミッションケース(17)の入力プーリ(18)との間に第1テンションプーリ(19t)を介して走行駆動力を伝える第1ベルト伝動機構(19)を張設して走行駆動力を第1ベルト伝動機構(19)によってミッションケース(17)に伝えるものであり、ミッションケース(17)の側方に駆動軸(9)を内挿させる前記刈取フレーム(8)を配設して、前記横向きフレーム部(8a)の右側に設ける入力プーリ(24)とミッションケース(17)に設けたプーリ(25)との間に第3ベルト伝動機構(26)を張設して、上記入力プーリ(24)から刈取フレーム(8)内の駆動軸(9)を介して刈取前処理部(B)各部に駆動力を伝えるようにし、
ミッションケース(17)よりも後方に前記横向きフレーム部(8a)を設置したコンバイン」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認めるられる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願平1-56049号(実開平2-148240号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、「コンバインの刈取部のシリンダ昇降機構との連結装置」に関して、図面とともに、以下の記載がある。
(ハ)「第6図・第7図において、図中(1)は走行クローラ(2)を装設するトラックフレーム、(3)はトラックフレーム(1)上に架設する機台、(4)はフィードチエン(5)を左側に張設し扱胴(6)および処理胴(7)を内蔵する脱穀部、(8)は刈刃および穀稈搬送機構などを具備する刈取部・・・(12)は運転席(13)および運転操作部(14)を備える運転台・・・ように構成されている。」(明細書第5頁第6-20行)
(二)「第1図および第10図・第11図に示すように前記機台(3)の前端に横フレーム(35)・左右支持受台(36a)(36b)・左右支柱(37a)(37b)・支柱横パイプ(38)を介して左右の軸受台(39a)(39b)を固設し、左軸受台(39a)に水平回動用の支点軸受ケース(40)を固設するとともに、右軸受台(39b)に上下回動用右支点軸受部材(41)を固設している。そして、前記軸受ケース(40)に上下回動用左支点軸受部材(42)下端の刈取開放軸(43)を水平回動可能に嵌合支持させるとともに、前記支点軸受部材(41)(42)の上端軸受部(41a)(42a)に刈取入力ケース(44)左右両側の刈取昇降軸(45)を上下回動可能に支持させている。」(明細書第7頁第8-20行)
(ホ)「・・・刈取部(8)は刈取開放軸(43)を軸にして横側方に開放することができるようになる。」(明細書第14頁第10-12行)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-171408号公報(以下、「引用例3」という。)には、「コンバインにおける刈取部」に関して、図面とともに、以下の記載がある。
(へ)「前記刈取部9は、フレーム1側に上端を軸着10した支持パイプ11に取付けられており、・・・・19はエンジン、20はその回転軸、21はミッションケース、22は入力軸、23は出力軸であり、支持パイプ11内には刈取部9を駆動する駆動軸24を設け・・・。」(公報第2頁左下欄第4行-右下欄第6行)
(ト)第1図、第3図を参酌するとミッションケース21の左右両側にクローラタイプの走行装置2が配置され、当該走行装置に動力を伝達できるような機構が記載されている。
(チ)第3図には、エンジン19とミッションケース21は、前後方向の略直線上に配設し、エンジンとミッションケースの進行方向左側にエンジンからミッションケースに走行駆動力を伝える伝動体を張設した点が記載されている。

3.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「刈取前処理部(8)」は本願発明の「刈取部(8)」に相当し、以下同様に「刈取フレーム(8)」は「メインビーム(34)」に、「横向きフレーム部(8a)」は「昇降支点筒軸(12)」に、「運転座席(13)」は「運転席(20)」に、「ミッションケース(17)」は「ミッションケース(22)」に、「出力プーリ(16)」は「出力プーリ(24)」に、「入力プーリ(18)」は「入力プーリ(25)」に、「第1ベルト伝動機構(19)」は「走行ベルト(27)」に、「駆動軸(9)」は「刈取駆動軸(33)」に、「入力プーリ(24)」は「刈取入力プーリ(37)」に、「プーリ(25)」は「刈取プーリ(38)」に、「第3ベルト伝動機構(26)」は「刈取ベルト(40)」にそれぞれ相当する。また、引用例1発明の「刈取フレーム(8)」がミッションケースの進行方向左側に配設されていることは明らかであり、第1テンションプーリはローラ状のものであるから、出力プーリ(24)と入力プーリ(25)との間において、走行ベルトにテンションローラを介した点で共通する。
そうすると、両者は、
「刈取部をメインビームを介して昇降支点筒軸に回転自在に軸支させて、同刈取部を昇降支点筒軸を中心に昇降させたコンバインにおいて、
運転台に備えた運転席の下方にエンジンを設け、同エンジンの前方にミッションケースを配置し、エンジンの出力プーリとミッションケースの入力プーリとの間にテンションローラを介して走行駆動力を伝える走行ベルトを張設して走行駆動力を走行ベルトによってミッションケースに伝えるものであり、ミッションケースの側方に刈取駆動軸を内挿させるメインビームを配設して、昇降支点筒軸の右側に設ける刈取入力プーリとミッションケースに設けた刈取プーリとの間に刈取ベルトを張設して、上記刈取入力プーリからメインビーム内の刈取駆動軸を介して刈取部各部に駆動力を伝えるようにし、ミッションケースよりも後方に昇降支点筒軸を設置したコンバイン」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
相違点1:本願発明では、水平支点軸を中心に刈取部を略水平に回転させ、同刈取部を機体側方に水平回転させて脱穀部の前側並びに運転台の左側を開放することができるようにしているのに対して、引用例1発明では、前者のような構成を具備していない点。
相違点2:左右走行クローラが張架される駆動スプロケットが、本願発明ではミッションケースの両側に配置されているのに対して、引用例1発明では、ミッションケースの両側に配置されているかどうか明らかではない点。
相違点3:走行駆動力を走行ベルトによってミッションケースに伝えるため、エンジンの出力プーリとミッションケースの入力プーリとの間に走行駆動力を伝える走行ベルトを張設するに際し、本願発明では、エンジンの出力プーリとミッションケースの入力プーリをそれぞれエンジンおよびミッションケースの左側に位置させているのに対して、引用例1発明では、エンジンの出力プーリとミッションケースの入力プーリが、前者のように位置させていない点。
相違点4:本願発明では、エンジンの出力プーリとミッションケースの入力プーリとの間に走行テンションローラクラッチを介するとともに、前記走行テンションローラクラッチは、コンバインの機台に立設させる支柱を介して張設されるテンションバネによって走行ベルトに弾圧して緊張されるようになっているのに対して、引用例1発明では、エンジンの出力プーリとミッションケースの入力プーリとの間にテンションローラが介されている点。
相違点5:本願発明では、走行ベルトを挟んでミッションケースと反対側に刈取駆動軸を内装させる前記メインビームを配設させているのに対して、引用例1発明では、前者のようにメインビームを配設させていない点。
相違点6:エンジンとミッションケースは、本願発明では、前後方向の直線上に配設すると共に、機体中央よりに設けているのに対して、引用例1発明では、前者のように配設させていない点。

(2)判断
相違点1について、
水平支点軸を中心に刈取部を略水平に回転させ、同刈取部を機体側方に水平回転させて脱穀部の前側並びに運転台の左側を開放することができるようにすることは、引用例2に記載されている。なお、このような技術は実願平2-77377号(実開平4-35729号)のマイクロフィルム、実願昭58-162819号(実開昭60-68942号)のマイクロフィルム等に記載されているように従来周知の技術である。
そして、引用例1発明に、引用例2に記載の事項を適用し、相違点1に係る本願発明のようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
相違点2について、
ミッションケースの左右両側にクローラタイプの走行装置が配置され、当該走行装置に動力を伝達できる技術は引用例3に記載されており、またコンバインの左右走行クローラが張架される駆動スプロケットをミッションケースの両側に配置した技術は、実願平3-1641号(実開平4-97526号)のマイクロフィルム、特開平3-231078号公報等に記載されているように周知の技術である。
そして、引用例1発明に、上記周知の技術を適用し、相違点2に係る本願発明のようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。
相違点3について、
エンジンとミッションケースの進行方向左側にエンジンからミッションケースに走行駆動力を伝える伝動体を張設することは引用例3のほか、実願平2-77377号(実開平4-35729号)のマイクロフィルムにも記載されているとおり従来周知であるから、本願発明のように走行ベルトを配置することは、当業者であれば適宜なし得ることである。
相違点4について、
エンジンとミッションケースとの間に設けた走行ベルトに走行テンションローラクラッチを介し、テンションバネによって走行ベルトに弾圧して緊張させたものは、実願平2-77377号(実開平4-35729号)のマイクロフィルム、実願平2-68367号(実開平4-27246号)のマイクロフィルム等に記載されているように従来周知であるから、引用例1発明のエンジンの出力プーリとミッションケースの入力プーリとの間に走行テンションローラクラッチを介し、テンションバネによって走行ベルトを弾圧して緊張させることは格別困難なことではなく、またテンションバネを設ける場合に、本願発明のようにコンバインの機台に立設させる支柱を介して張設させた点は、適宜なし得る設計事項に過ぎない。
相違点5について、
ベルト等の伝動体をミッションケースの進行方向左側に配置することは、引用例3のほか実願平2-77377号(実開平4-35729号)のマイクロフィルム(特に第5図、第6図参照)にも記載されているとおり従来周知の技術であるから、引用例1発明の走行ベルトを、ミッションケースの進行方向左側に配置することは格別困難なことではなく、またこのように配置する際に、本願発明のように走行ベルトを挟んでミッションケースと反対側に刈取駆動軸を内装させるメインビームを配設させることは適宜なし得る事項である。
相違点6について、
バランス等を考慮して、エンジンとミッションケースを本願発明のように前後方向の直線上に配設すると共に、機体中央よりに設けることは当業者であれば適宜なし得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1発明、引用例2に記載の事項、引用例3に記載の事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例1発明、引用例2に記載の事項、引用例3に記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、引用例2に記載の事項、引用例3に記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-29 
結審通知日 2006-12-05 
審決日 2006-12-19 
出願番号 特願2004-235534(P2004-235534)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 恭  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
発明の名称 コンバイン  
代理人 松尾 憲一郎  

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