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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580341 審決 特許
無効200580033 審決 特許
無効200680198 審決 特許
無効200680168 審決 特許
無効2007800031 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A47K
管理番号 1152517
審判番号 無効2006-80114  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-06-19 
確定日 2007-02-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第2703202号発明「手乾燥装置のドレインタンク、その交換方法及び該ドレインタンク用吸水体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2703202号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第2703202号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成7年8月16日に出願され、平成9年10月3日に特許登録の設定がなされたものであって、その後の平成18年6月19日に、菊井俊一より無効審判が請求されたものであり、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

(本件発明)
「高速空気流により手の水分を吹き飛ばすことによって乾燥する手乾燥装置に着脱自在に装備され、吹き飛ばされた水を収容するための、手乾燥装置のドレインタンクにおいて、
ドレインタンク内に、前記高速空気流によって吹き飛ばされ、該ドレインタンク内に流入した水を吸収するための吸水性樹脂を含む吸水体を配置してなることを特徴とする手乾燥装置のドレインタンク。」

2.請求人の主張
請求人は、「特許第2703202号発明の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その証拠として下記の甲第1?6号証を提出するとともに、次の理由を主張している。

(無効理由)
本件発明は、その出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲第2号証に「高速空気流により手の水分を吹き飛ばすことによって乾燥する手乾燥装置に着脱自在に装備され、吹き飛ばされた水を収容するための手乾燥装置のドレンタンク40。」という発明が記載されており、同じく甲第3?6号証に示すとおり「容器内に流入する水を吸収するために、該容器内に吸収性樹脂を含む吸収体を配置しておくことは周知である」ことから、甲第2?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明は、同法123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。


甲第1号証:特許第2703202号公報(本件特許公報)
甲第2号証:特開平6-209879号公報
甲第3号証:特開昭61-175468号公報
甲第4号証:実願平5-71439号(実開平6-75151号)のCD-ROM
甲第5号証:実願昭61-120576号(実開昭63-26577号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開平5-10559号公報

3.被請求人の主張
これに対して、被請求人は、答弁書において、以下の理由から、本件発明が甲第2?6号証の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものではない旨を主張している。

(本件発明が無効ではないとする理由)
請求人が甲第3?6号証を提示して「容器内に流入する水を吸収するために、該容器内に吸収性樹脂を含む吸収体を配置しておくことは周知である」と主張している点について、甲第3号証におけるカウンタタイプの冷凍装置における「カートリッジ」、甲第4号証におけるペット用トイレの「溜め室」、甲第5号証における魚肉等を入れる「パック」、甲第6号証における加湿器における「ドレンパン」というように、各刊行物毎に技術分野が大きく異なっているものをひとくくりに上位概念を用いて「容器」としている点は失当であるとともに、各刊行物毎に「容器」内に吸収体を配置する目的が大きく異なっていることから、「容器内に流入する水を吸収するために、該容器内に吸収性樹脂を含む吸収体を配置しておくこと」は周知であるとはいえない。加えて、甲第2号証に記載された発明と、それぞれ甲第3?甲第6号証に記載された技術とを組み合わせて本件発明を想到することも、当業者が容易になし得ることではない。

4.請求人が提出した各証拠の記載について
(1)甲第2号証として提出された刊行物(以下、「甲2刊行物」という。)には、「手乾燥装置」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 正面に正面側と側面側の開放したチャンネル状の手挿入部を有する外殻をなす箱体と、前記手挿入部の上下面部にそれぞれ配設された吹出ノズルと、前記吹出ノズルに高圧空気を送る高圧空気発生部とを備え、前記手挿入部の奥底面の横端には手挿入部の外に水を排水するための排水口を有することを特徴とする手乾燥装置。」
(ロ)「【0010】
【作用】この発明における手乾燥装置においては、手挿入部に濡れた手を入れることにより、手の水分を手挿入部内に形成される高速の風により手挿入部の奥側へ吹き飛ばし、手を目視可能の状態で迅速に乾燥処理することができる。乾燥処理により手挿入部の奥側へ吹き飛んだ水分は、乾燥処理のための高速の風による手挿入部内の空気流により奥底面の横端に押しやられ、残留することなく奥底面の排水口から手挿入部の外に円滑に排水されることになる。」
(ハ)「【0026】吹き飛ばされた水滴は、自重と風の力の双方により手挿入部5の奥側底部の端に押しやられ、この部分に形成された各排水口18から各ドレンホース44に流下し、手挿入部5内から逐次円滑に排水される。各ドレンホース44を流下した水はドレン皿37において集められ、最下部のドレンタンク40に受容される。・・・なお、ドレンタンク40に水が沢山溜ったときには、適宜ドレンタンク40をフレーム14の脚部35間から手前に抜き取り、水を処分してから再度装着し使用する。」
これら(イ)?(ハ)の記載を総合すれば、甲2刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。
「高速空気流により手の水分を吹き飛ばすことによって乾燥する手乾燥装置に着脱自在に装備され、吹き飛ばされた水を収容するための、手乾燥装置のドレンタンク40。」(以下、「甲2刊行物記載の発明」という。)

(2)甲第3号証として提出された刊行物(以下、「甲3刊行物」という。)には、「冷凍装置」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(イ)「2.特許請求の範囲
(1)荷重を支承する構造体内に、除霜水を収集する集水室と、この集水室と流体が連通する除霜水収集器を有するすくなくとも1の冷凍室を具備した冷凍装置に於いて、前記集水室内に予め設定した量の親水基格子を有する不溶性ポリマー系の保水性材料を具備したことを特徴とする冷凍装置。」(公報第1頁左欄第4?10行)
(ロ)「除霜水は、通常、冷凍室の底部に置かれている収集器内に収容される。そこから特に移動可能に設けられた容器に移される。
除霜水の収集器を移動して空にしたりすることは、中身が容易にこぼれ、またそれが頻繁に起こることだから不便な作業である。それで、-日数回以上その作業を繰り返えさなければならない。」(公報第2頁左上欄第4?10行)
(ハ)「本発明の目的は、上述した先行技術に於ける欠点を克服するように構成された冷凍装置を提供するものである。
大まかには、その課題の解決方法は、収集室内に排出される除霜水を吸収することがそのひとつである。
その解決方法は、前述のタイプの冷凍装置によって具現化される。その冷凍装置は、前記集水室内に予め設定した量の親水基格子を有する不容性ポリマー系の保水性材料を具備したことを特徴とする。
このようなタイプの保水性材料は、USP.No.s4115332、4076663、または3670731に充分に記載されている。」(公報第2頁右上欄第6?19行)
(ニ)「基部2b内には、前面が開くように構成された集水室7がある。集水室7は、排水管8によって冷凍室3の底部5と連結している。そして集水室7は、盆を構成するために傾斜が設けられている。これは冷凍室3からの除霜水を一時的に収容することを意味する。
予め定めた量の親水基格子を有する不溶性ポリマー系の保水性材料が、集水室7内に移動可能に装着されている。そして水性材料は、例えば“ウォーター.リテンティブ.ポリマー(保水性ポリマー)”(登録商標)の名称で販売されている材料である。またUSP.4115332、407663、または3670731に記載されている。」(公報第2頁左下欄第16行?右下欄第9行)

(3)甲第4号証には、「ペット用トイレ」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(イ)「【0033】
また、図1に示すように、溜め室7の底部には、便を吸収する吸収部材6が設けられている。図3は、図1の吸収部材6の詳細な構成を示す図である。図3に示すように、吸収部材6は、表面が不織布6aにより覆われている。さらに、内部には、吸水性を有する高吸収性ポリマ6b,沸石6cと、脱臭性を有する消臭パルプ6dの混合体により構成されている。また、図3に示すように、不織布6aの一端部には、吸収部材6の交換時に把持する紐6eが取り付けられている。」
(ロ)「【0034】
次に、上述したトイレ1の作用について説明する。
先ず、ペットが排便室5に便を排出すると、排出された便は、撥水部材4に滴下する。この便は、撥水部材4の撥水作用により、撥水部材4にほとんど吸収されず、かつ、付着せずに排便室5の底部に流下する。便が排便室5の底部に流下すると、底部に形成された下り勾配の作用により、便は、底部に設けられた排便口8へ誘導される。これにより、便は、排便口8から溜め室7に流下する。
【0035】
溜め室7に流下した便は、溜め室7の底部に備えられた吸収部材6により吸収される。・・・」

(5)甲第5号証には、「パック用水切り」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(イ)「2.実用新案登録請求の範囲
高分子吸水剤を吸水性素材の内部に包み込み、水浸透性素材で被覆したパック用水切り。」(明細書第1頁第4?6行)
(ロ)「従来、パック販売の鮮魚や解凍魚を加工した刺身や半加工の切り身、及び冷凍魚、肉など水分が流れて視覚悪く、味も変わる等の難点があった。
本考案は、上記の難点を除くよう余分の水分を除いて美感を損こなわず、魚肉の身がしまって味のよくなる水切りを提供することにある。」(明細書第1頁第11?16行)
(ハ)「第1図に示されるよう、1の高分子吸水剤、例えばアクリロニトリルグラフトデンプン加水分解物、ポリアクリロニトリル誘導体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアクリル酸系重合体、酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体けん化物などの粉末状、細粒状、繊維状、フィルム状、発泡体状を、2の水浸性素材、例えば吸水性繊維紙や布の中に包み込み、好ましくは更に3の樹脂系網袋で被覆したものである。
第3図の使用例のごとく使用法は簡単で、パック容器の底に入れて置くだけで流れ出た水分を吸い取り、還元しないようにするものである。」

(6)甲第6号証には、「加湿器」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 水蒸気に対しては透過性を有し、水に対しては不透過性を有する多孔性素材からなる多数の中空管(11),(11)・・を水容器(12)内に平行に配設し、前記中空管(11),(11)・・内を空気通路となした加湿器であって、前記水容器(12)の下方には、漏水収容用のドレンパン(16)を配設するとともに、該ドレンパン(16)内には、高吸水性ゲルからなる吸水部材(17)を配設したことを特徴とする加湿器。」
(ロ)「【0031】そこで、本実施例においては、前記水容器12の下方には、漏水収容用のドレンパン16が配設されており、該ドレンパン16内には、高吸水性ゲルからなる吸水部材17が配設されている。該吸水部材17は、自身の体積の数百倍の水を吸水して膨潤することが可能なものとされている。」
(ハ)「【0037】ところが、上記残留漏水は、ドレンパン16内に配設された吸水部材17に吸水される。吸水部材17に吸水された水は二度と流出しないところから、残留漏水の加湿器A周辺への流出は完全に防止される。」

5.当審の判断
(1)本件発明と甲2刊行物記載の発明との対比
本件発明と甲2刊行物記載の発明との対比すると、甲2刊行物記載の発明における「手乾燥装置」、「ドレンタンク40」は、本件発明の「手乾燥装置」、「ドレインタンク」にそれぞれ相当する。
したがって、本件発明と甲2刊行物記載の発明とは、
「高速空気流により手の水分を吹き飛ばすことによって乾燥する手乾燥装置に着脱自在に装備され、吹き飛ばされた水を収容するための、手乾燥装置のドレインタンク。」
である点で一致し、次の点で相違しているということができる。
[相違点]
本件発明が、ドレインタンク内に、高速空気流によって吹き飛ばされ、該ドレインタンク内に流入した水を吸収するための吸水性樹脂を含む吸水体を配置しているのに対して、甲2刊行物記載の発明は、ドレインタンク内にそのような吸水体を配置していない点。

(2)相違点の判断
[相違点について]
水溜タンク、残液受皿等の水や廃液等の不要な液体を溜めるための容器内に、例えば、容器に溜まった不要な液体を廃棄する際に、容器を移動するような作業に伴って容器内に溜まった液体がこぼれないようにする目的で、吸水性樹脂などからなる吸水体を配置することは、各種の製品分野において普通に採用されている従来より周知の技術(例えば、実願昭62-151289号(実開昭64-55864号)のマイクロフィルムの明細書第3頁第2?6行または第5頁第11?16行、実願平4-55839号(実開平6-10201号)のCD-ROMの段落【0011】、甲3刊行物における上記4.(2)(ロ)(ハ)参照)であり、このような周知ないし慣用の技術を、甲2刊行物記載の発明において、ドレインタンクを取り外す際にドレインタンクから水がこぼれ落ちないようにするために適用することは、当業者が容易に想到し得た事項であるといわざるを得ない。
そして、ドレインタンク内に吸水材を配置することで長期間使用してもドレインタンクの内壁に水垢、カビが付着しないといった作用効果も、その内部に吸水材を配置したドレインタンクに水が流れ込んだ際に、吸水材が率先して水を吸収する機能を果たすことも自明な事項であることから、本件発明の奏する効果も、甲2刊行物記載の発明及び周知の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであり、格別のものということはできない。

6.むすび
以上のとおり、本件発明は、甲2刊行物記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-15 
結審通知日 2006-12-25 
審決日 2007-01-05 
出願番号 特願平7-208859
審決分類 P 1 123・ 121- Z (A47K)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
登録日 1997-10-03 
登録番号 特許第2703202号(P2703202)
発明の名称 手乾燥装置のドレインタンク、その交換方法及び該ドレインタンク用吸水体  
代理人 窪田 英一郎  
代理人 乾 裕介  
代理人 平井 正司  
代理人 平井 正司  
代理人 窪田 英一郎  
代理人 乾 裕介  

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