• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1152577
審判番号 不服2004-16253  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-05 
確定日 2007-02-15 
事件の表示 平成9年特許願第156538号「海苔の作業船およびこれを用いた海苔の養殖方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年1月6日出願公開、特開平11-70〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年6月13日の出願であって、平成16年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年9月6日に手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 特許請求の範囲の減縮を目的として次のように補正された。
「船体の上方に、この船体の前後方向に延在し海面に展張保持された海苔網をすくい上げて船体の後方に案内する案内部材を配設し、前記案内部材により案内される海苔網に対して所定の作業を行なう海苔の作業船において、
前記案内部材の中途部、船体に配置された作業装置および操舵室に、
前記海苔網に装着された伸子棒が海苔網の展張方向と作業船の進行方向とがずれてしまうことにより前記案内部材、この案内部材による案内経路、前記作業装置および前記操舵室に引っ掛かってしまうことを防止する伸子棒引掛かり防止部材を配設したことを特徴とする海苔の作業船。」
(以下、「補正発明」という。)

そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である特開平8-187038号公報(以下、「引用例1」という。)には、「海苔養殖作業用船」に関して、下記の事項が記載されている。
(イ)「【0010】これらの図において、符号1はこの実施例による海苔養殖作業用船である。この海苔養殖作業用船1は、海苔の刈り取りと、海苔を刈り取った後の海苔網の酸処理とを連続して行うことができるように構成されている。2はこの海苔養殖作業用船1の船体、3はブリッジ、4は海苔網を船上に導くための海苔網用ガイドである。」
(ロ)「【0017】前記海苔網用ガイド4はステンレス製鋼管を組合わせて形成され、図1および図2に示すように、船体2の左右上縁のトップレール11に前後に間隔をおいて複数本立設された支柱12と、これらの支柱12の上縁に溶接され、船体前部からブリッジ3より上側を通って船体後部より後方へまで延びる左右一対の海苔網用レール13と、最前部の支柱12の下部からブリッジ3前方まで後下がりに延びて後端部が船体2のデッキ14に固定された左右一対のガイドレール15と、このガイドレール15に後端部が摺動管16(図3)を介して連結されて前後に平行移動自在に構成された移動式レール17等から形成されている。」
(ハ)「【0020】前記摺動管16は、その内方にガイドレール15が貫通されてガイドレール15に長手方向に沿って摺動自在に支持されており、移動式レール17の後端部が連結されている。移動式レール17は図2に示すように、摺動管16に連結されて前後に延びるメインパイプ17aと、左右に延びるクロスパイプ17bと、このクロスパイプ17bから前方へ延びるサブパイプ17cとから形成されており、左右の海苔網用レール13,13の間に位置づけられている。そして、この移動式レール17の前端部は平面視において前方へ向かうにしたがって次第に幅狭になり、先端が尖るように形成されている。また、この移動式レール17は図1および図3に示すように側面視において略へ字状となるように湾曲形成されている。」
(ニ)「【0021】このように構成された海苔網用ガイド4を用いて海面上に漂う海苔網を船上へ導くには、先ず、移動式レール17を図1および図2に示した収納位置から船体前側へ移動させて海苔網持ち上げ位置に位置づける。このときには、摺動管16をガイドレール15に対して前側へ摺動させる。」
(ホ)「【0025】このように移動式レール17を海苔網持ち上げ位置に位置づけた後、図3に示す状態からこの海苔養殖作業用船1を前進させる。これにより海苔網Nは移動式レール17に乗り上げ、さらに海苔養殖作業用船1が前進することによって、移動式レール17が位置する前部から海苔網用ガイド4に乗るようになって船上を後方へ移動し、しかる後、図5に示すように、海苔網用ガイド4の後端から船外機7の上方を通って海面に下りることになる。なお、図2に示したように、海苔網Nの左右幅が海苔網用ガイド4の左右幅より狭く、これが海苔網用レール13に支承されない場合には、左右の海苔網用レール13どうしを連結するクロスパイプや後述する刈り取り装置、酸処理槽等に支承されながら後方へ移動することになる。このように、本発明に係る海苔養殖作業用船1では海苔網Nが船上を移動するときに海苔の刈り取りと海苔網の酸処理を行う。」

これらの記載事項並びに特に図1?3に示された内容を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。かっこ内は対応する引用例1における構成・用語である。
「船体(船体2)の上方に、この船体の前後方向に延在し海面に展張保持された海苔網(海苔網N)をすくい上げて船体の後方に案内する、案内部材(移動式レール17、ガイドレール15および海苔網用レール13等から形成されている海苔網用ガイド4)を配設し、前記案内部材により案内される海苔網に対して、所定の作業(海苔の刈り取りと、海苔を刈り取った後の海苔網Nの酸処理)を行なう海苔の作業船(海苔養殖作業用船1)。」
(以下、「引用例1発明」という。)

(3)対比
補正発明と引用例1発明とを比較すると、両者は、
「船体の上方に、この船体の前後方向に延在し海面に展張保持された海苔網をすくい上げて船体の後方に案内する案内部材を配設し、前記案内部材により案内される海苔網に対して所定の作業を行なう海苔の作業船。」
の点で一致し、次の点で相違している。

相違点:補正発明では、案内部材の中途部、船体に配置された作業装置および操舵室に、海苔網に装着された伸子棒が海苔網の展張方向と作業船の進行方向とがずれてしまうことにより前記案内部材、この案内部材による案内経路、前記作業装置および前記操舵室に引っ掛かってしまうことを防止する伸子棒引掛かり防止部材を配設したのに対して、引用例1発明では、そのようにしていない点。

(4)判断
相違点について検討するに、明記されてはいないが、引用例1における、海苔網用ガイド4の前部を構成している移動式レール17のサブパイプ17cは、海苔網Nに装着された伸子棒が海苔網Nの展張方向と海苔養殖作業用船1の進行方向とがずれてしまった場合、海苔網用ガイド4を構成している移動式レール17に引っ掛かってしまうことを防止する伸子棒引掛かり防止部材として働くであろうことは自明であり、
また、養殖海苔の採取船等において、作業装置である海苔刈り取り装置に、海苔網に付設の竹等のフロートのためのガード部材を配設することは周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に周知例として引用された、特開昭60-262525号公報、実公昭40-26851号公報、実願昭60-86043号(実開昭61-201530号)のマイクロフィルム等参照。)にすぎない。
そして、前部案内部材や作業装置の個所のみならず、補正発明のように、案内部材の中途部や操舵室等の、海苔網に装着された伸子棒が引っ掛かってしまう恐れのある個所に、それを防止する伸子棒引掛かり防止部材を配設することは、必要に応じてなしうる事項にすぎないといえる。

したがって、補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)むすび
以上、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年9月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成16年4月26日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】船体の上方に、この船体の前後方向に延在し海面に展張保持された海苔網をすくい上げて船体の後方に案内する案内部材を配設し、前記案内部材により案内される海苔網に対して所定の作業を行なう海苔の作業船において、
前記案内部材の中途部および船体に配置された作業装置に、
前記海苔網に装着された伸子棒が海苔網の展張方向と作業船の進行方向とがずれてしまうことにより前記案内部材やこの案内部材による案内経路や前記作業装置に引っ掛かってしまうことを防止する伸子棒引掛かり防止部材を配設したことを特徴とする海苔の作業船。
【請求項2】?【請求項5】(記載を省略)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した補正発明から限定事項を削除したものであり、本願発明に限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-06 
結審通知日 2006-12-12 
審決日 2006-12-25 
出願番号 特願平9-156538
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
P 1 8・ 575- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 佳代子  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 柴田 和雄
西田 秀彦
発明の名称 海苔の作業船およびこれを用いた海苔の養殖方法  
代理人 伊藤 高英  
代理人 中尾 俊輔  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ