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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680169 審決 特許
無効2009800076 審決 特許
無効200480218 審決 特許
無効200335239 審決 特許
無効2008800249 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1152673
審判番号 無効2006-80021  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-02-17 
確定日 2007-02-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第3545372号発明「皮膚洗浄剤組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3545372号の請求項に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許3545372号に係る発明は,平成13年9月4日出願,平成16年4月16日に特許権の設定の登録がされたものであって,その請求項1ないし6に係る発明は,その特許請求の範囲1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」ともいう。)

【請求項1】
下記(A)?(D)を含有する皮膚洗浄剤組成物。
(A)高級脂肪酸塩
(B)硫酸基を有するアニオン性界面活性剤
(C)両性ポリマー
(D)カチオン性ポリマー
【請求項2】
(A)高級脂肪酸塩として,炭素数13以下の脂肪酸の塩の総質量が炭素数14以上の脂肪酸の塩の総質量より少なく,かつ,ミリスチン酸塩,パルミチン酸塩及びステアリン酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上と,ラウリン酸塩とを,合計で洗浄剤組成物全量に対し15?50質量%含有する請求項1に記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
(C)両性ポリマーとして,アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体を含有する請求項1又は2に記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
(D)カチオン性ポリマーとして,塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体を含有する請求項1?3いずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項5】
さらに,(E)両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を含有する請求項1?4いずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項6】
高級脂肪酸ジエタノールアミドを実質的に含有しない請求項1?5いずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物。

2.請求人の主張
これに対して,請求人は,本特許の請求項1?6 にかかる発明は,いずれも甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易になし得た発明であるから,特許法第29条第2項の規定に該当し,上記各発明に係る本特許は同法第123条第1項第2号の規定により無効となるべきものである旨の主張をしている。

そして,証拠方法として,下記の甲第1号証?甲第6号証を提出している。
(1)甲第1号証:特開2001-64678号公報
(2)甲第2号証:南山堂 新化粧品学
(3)甲第3号証:発明協会公開技報 公技番号99-2881
(4)甲第4号証:特許第2628003号公報
(5)甲第5号証:ユニリーバ・ジャパン株式会社 Dove試供品に関する資料
(6)甲第6号証:実験成績証明書(証拠説明書付)

3.被請求人の主張
被請求人は,特許法134条第1項の規定による答弁書を指定された期間内に提出しなかった。

4.甲第1?4号証
請求人の提出した甲第1?4号証は本件出願日前に頒布された以下の刊行物であって,それぞれ,以下の事項が記載されている。

(1)甲第1号証(特開2001-64678 2001年3月13日公開)
(1-1)「【0047】
実施例6 洗顔フォーム
ステアリン酸 10.0重量%
パルミチン酸 10.0
ミリスチン酸 12.0
ラウリン酸 4.0
・・・
水酸化カリウム 6.0
ラウリン酸カリウム 1.0
・・・
ヤシ脂肪酸-N-メチルタウリンナトリウム 3.0
アクリル酸/塩化ジメチルジアリル
アンモニウム/アクリルアミド共重合体 1.0
(10%溶液;マーコートプラス 3330)
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム 0.5
(40%溶液;マーコート100)
・・・ 」
(1-2)「特許請求の範囲【請求項2】
カチオン性高分子は,ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム,…ジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体である請求項1記載の洗浄剤組成物。」
(1-3)「【0024】本発明で用いられるジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体として市販されているものとしては,例えば,マーコート550(カルゴン社製商品名)等が挙げられる。」
(1-4)「【0026】本発明においては,上記必須成分に加えて,さらに下記の式(2)で示されるアシルアルキルタウリンを含ませることが望ましい。アシルアルキルタウリンを配合させることにより,より速泡性に優れた洗浄剤組成物が得られる。」

(2)甲第2号証(南山堂「新化粧品学」1993年1月12日発行)
(2-1)「液体ボディ洗浄料に用いる起泡洗浄剤は全身を洗浄するのに必要な泡立ち,泡持続性,泡量,クリーミィな泡質を有し,かつ,刺激が少ないことが望まれる。従来から用いられてきた起泡洗浄剤としてはアニオン界面活性剤である脂肪酸石けん,アルキル硫酸塩,アルキルエーテル硫酸塩,α-オレフィンスルホン酸塩が一般的で,またより安全性,有用性を重視したものとしてはN-アシルメチルタウリンの塩…などが挙げられる。…日本においては,すすぎにくい,ヌメルといった問題が指摘されることが多く,脂肪酸石けん主体あるいは脂肪酸石けんと石けん以外の界面活性剤が組み合わされることが多い。」(第471頁中段 1)起泡洗浄剤の項)
(2-2) 「非イオン界面活性剤や両性界面活性剤は,適量を主剤として組み合わせて配合することで,主剤の泡立ち,泡質を改善するとともに,使用感の調整,耐硬水性の向上に効果を発揮する。…両性界面活性剤としてはアルキルベタイン型およびイミダゾリニウムベタイン型が用いられる。」(第471頁 2)助剤の項)

(3)甲第3号証(発明協会公開技報 公技番号99-2881)
(3-1)「まとめ:マーコート単品の比較では,3330が滑りも良く,滑らかであることが分かった。以下,550,280,100の順となっており,いずれも無添加より大きく改良されていることがわかる。また,3330と他のマーコートとを組み合わせて配合した時相乗効果が得られている。特にマーコート550との配合が優れている。このことは,製品のボディシャンプー及びハンドソープでも同じ傾向になっている。」(第2頁右欄最下部)

(4)甲第4号証(特許第2628003号公報 1997年7月9日発行)
(4-1)「従来から,これらの欠点を改善するために種々の石灰石けん分散剤を配合した石けん組成物(製品)が製造されている。…具体的な石灰石けん分散剤としてはヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(以下,DEAという),…等がある。
しかしながら,これらの石灰石けん分散剤は…(3)ぬるつき感など物性の問題を持ち,その配合によって製品にぬるつき感が生じる,…特に,DEAを配合した製品はぬるつき感が大きく,すすぎ時においてもなかなかぬるつきをなくすことが困難であるという欠点がある。…」(第2頁【0004】乃至【0005】)

5.対比・判断
ア.本件特許発明1について
甲第1号証は,洗浄剤組成物に関するものであり, その実施例6(上記の記載事項(1-1))には
『実施例6 洗顔フォーム
ステアリン酸 10.0重量%
パルミチン酸 10.0
ミリスチン酸 12.0
ラウリン酸 4.0
・・・
水酸化カリウム 6.0
ラウリン酸カリウム 1.0
・・・
ヤシ脂肪酸-N-メチルタウリンナトリウム 3.0
アクリル酸/塩化ジメチルジアリル
アンモニウム/アクリルアミド共重合体 1.0
(10%溶液;マーコートプラス 3330)
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム 0.5
(40%溶液;マーコート100)
・・・ 』
が開示されている(以下,「引用発明」ともいう。)。
本件特許発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の組成物では,ステアリン酸,パルミチン酸,ミリスチン酸,ラウリン酸は水酸化カリウム及びラウリン酸カリウムで中和されているから,これらの酸は,本特許発明1の構成要件(A)「高級脂肪酸塩」に,「アクリル酸/塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体(マーコートプラス 3330)」は両性ポリマーであり,本件特許発明1の構成要件(C)「両性ポリマー」に,「ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(マーコート100)」はカチオン性ポリマーであり,本特許発明1の構成要件(D)「カチオン性ポリマー」にそれぞれ相当する。そして,洗顔フォームは皮膚洗浄剤組成物の一つであるから,両者は,
(A)高級脂肪酸塩
(C)両性ポリマー
(D)カチオン性ポリマー
を含有する皮膚洗浄剤組成物という点で共通する。
そして,本件特許発明1では(B)で規定するアニオン性界面活性剤が硫酸基を有することが特定事項となっているのに対し,引用発明の組成物では,アニオン性界面活性剤として,硫酸基を有していないヤシ脂肪酸-N-メチルタウリンナトリウムを使用している点で相違する。

以下,この相違点について検討する。
甲第1号証には,「本発明においては,上記必須成分に加えて,さらに下記の式(2)で示されるアシルアルキルタウリンを含ませることが望ましい。アシルアルキルタウリンを配合させることにより,より速泡性に優れた洗浄剤組成物が得られる。」と記載されている(上記記載事項(1-4))とおり,引用発明において,ヤシ脂肪酸-N-メチルタウリンナトリウムは速泡性に優れた洗浄剤組成物を得るとの目的で配合されている。
一方,甲第2号証に,皮膚洗浄用組成物の起泡剤として,アルキル硫酸塩,アルキルエーテル硫酸塩,α-オレフィンスルホン酸塩が一般的で,またより安全性,有用性を重視したものとしてはN-アシルメチルタウリン塩等が挙げられると記載されている(上記記載事項(2-1))とおり,アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸基を有するアニオン性界面活性剤はN-アシルメチルタウリン塩に比べより一般的な皮膚洗浄用組成物の起泡剤である。
したがって、引用発明において、ヤシ脂肪酸-N-メチルタウリンナトリウムに代えてより一般的な皮膚洗浄用組成物の起泡剤であるアルキルエーテル硫酸塩等の硫酸基を有するアニオン性界面活性剤を用いてみることは,当業者が容易に想到し得ることである。そして,本件特許発明1の効果は当業者の予想を超えるものでもない。
したがって,本件特許発明1は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.本件特許発明2について
本件特許発明2は,本件特許発明1において,(A)高級脂肪酸塩として,炭素数13以下の脂肪酸塩の総質量が炭素数14以上の脂肪酸の塩の総質量より少なく,かつ,ミリスチン酸塩,パルミチン酸塩及びステアリン酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上と,ラウリン酸塩とを,合計で洗浄剤組成物全量に対し15?50質量%含有するものである。
そこで,甲第1号証実施例6記載の組成物について高級脂肪酸塩の組成比に関して検討する。実施例6の組成物では,ステアリン酸,パルミチン酸,ミリスチン酸,ラウリン酸,及び水酸化カリウムとラウリン酸カリウムの合計量,すなわち高級脂肪酸塩量は43.0%であり,炭素数が13以下である脂肪酸(ラウリン酸(C=12))の配合量は4.0%,炭素数が14以上の脂肪酸(ステアリン酸(C=18),パルミチン酸(C=16)及びミリスチン酸(C=14))の配合量は32.0%であり,本件特許発明2により特定される(A)高級脂肪酸塩についての要件を満たすものである。
したがって,上記ア.のとおり甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができた本件特許発明1において,(A)高級脂肪酸塩として,甲第1号証実施例6に記載された組成物の高級脂肪酸塩の組成比を含む条件を特定したものである本件特許発明2は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.本件特許発明3について
本件特許請求項3記載の発明は,本件特許発明1又は2において,(C)両性ポリマーとして,アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体を含有するものである。
そこで,甲第1号証実施例6記載の組成物について両性ポリマー成分に関して検討する。実施例6記載の組成物はアクリル酸/塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体(10%溶液;マーコートプラス3330)を含有しているから,本件特許発明3により特定される(C)両性ポリマーについての要件を満たすものである。
したがって,上記ア.イ.のとおり甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができた本件特許発明1又は2において,(C)両性ポリマーを,甲第1号証実施例6に記載された組成物の両性ポリマー成分に特定したものである本件特許発明3も,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ.本件特許発明4について
本件特許発明4は,本件特許発明1ないし3において(D)カチオン性ポリマーとして,塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体を含有するものである。
そこで,甲第1号証実施例6記載の組成物についてカチオン性ポリマー成分に関して検討する。実施例6記載の組成物は,カチオン性ポリマーとしてポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(マーコート100)を含有している。
一方,甲第3号証には,マーコート550(塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体)がマーコート100に比して滑りがよいことマーコ-ト3330をマーコート550、280,100と配合した時相乗効果が得られていおり、特にマーコート550との配合が優れていることが示されている(上記記載事項(3-1))。
したがって,甲第1号証実施例6に記載された組成物のカチオン性ポリマー成分をマーコート100に代えて塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体であるマーコート550を使用することは甲第3号証の記載に基づき当業者が容易に想到し得るものであり,上記ア.ないしウ.のとおり甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができた本件特許発明1ないし3において,(D)カチオン性ポリマーを,塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体を含有するものに特定したものである本件特許発明4は,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ.本件特許発明5について
本件特許発明5は,本件特許発明1ないし4において,さらに,(E)両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を含有するものである。
そこで,甲第1号証実施例6及び7記載の組成物について検討する。実施例6(洗顔フォーム)には両性界面活性剤は含まれていないが,同証記載の別の実施例である実施例7(シャンプー)には両性界面活性剤であるヤシ脂肪酸アミドプロピルベタインが配合されている。また,甲第2号証には,両性界面活性剤(アルキルベタイン型およびイミダゾリニウムベタイン型)適量をアニオン性界面活性剤に組み合わせて配合することで,主剤の泡立ち,泡質を改善するとともに,使用感の調整,耐硬水性の向上に効果を発揮することが開示されている。
したがって,上記ア.ないしエ.のとおり甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができた本件特許発明1ないし4において,さらに,(E)両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を含有するものである本件特許発明5は,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ.本件特許発明6について
本件特許発明6は,本件特許発明1ないし5において,高級脂肪酸ジエタノールアミドを実質的に含有しないものである。
そこで,甲第1号証実施例6記載の組成物について検討する。実施例6に記載の組成物には高級脂肪酸ジエタノールアミドに相当する成分は配合されていない。
また,甲第4号証は「石灰石けん分散剤,石けん組成物および液体石けん組成物」に関するものであり,ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドを配合するとぬるつき感が生じるという欠点があることが記載されている。
したがって,上記ア.ないしオ.のとおり甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができた本件特許発明1ないし5において,高級脂肪酸ジエタノールアミドを実質的に含有しないものである本件特許発明6は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本件請求項1ないし6に係る発明は,本願出願日前に頒布された甲第1ないし4号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから,本件請求項1ないし6に係る発明についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当する。
したがって,本件請求項1ないし6に係る発明についての特許は,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担するものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-25 
結審通知日 2006-12-26 
審決日 2007-01-09 
出願番号 特願2001-266806(P2001-266806)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大宅 郁治  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
内田 俊生
登録日 2004-04-16 
登録番号 特許第3545372号(P3545372)
発明の名称 皮膚洗浄剤組成物  
代理人 岩橋 祐司  

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