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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1152758
審判番号 不服2004-18132  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-02 
確定日 2007-02-22 
事件の表示 平成 8年特許願第182505号「熱処理装置、減圧CVD装置、および薄膜装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月27日出願公開、特開平10- 27759〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年7月11日の出願であって、平成14年12月20日付で手続補正書が提出され、平成15年8月7日付で拒絶理由通知がなされ、平成15年10月14日付で、意見書と手続補正書が提出され、平成16年7月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年9月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年9月28日付で手続補正がなされ、平成16年10月28日付で前置報告がなされたものである。

2.平成16年9月28日付の手続補正の補正却下について

[補正却下の決定についての結論]
平成16年9月28日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明

平成15年10月14日付で補正された特許請求の範囲は次のとおりである。
「 【請求項1】基板に熱処理を施すための熱処理炉と、該熱処理炉の外部に配置され該熱処理炉内に設置された基板を加熱するための加熱手段とを有する熱処理装置であって、
前記熱処理炉と前記加熱手段との間に熱媒通路と、該熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すための熱媒用ガス供給手段とを有し、
前記熱処理炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定され、
前記熱媒用ガス供給手段により前記熱処理炉を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】基板に熱処理を施すための熱処理炉と、該熱処理炉の外部に配置され該熱処理炉内に設置された基板を加熱するための加熱手段とを有する熱処理装置であって、
前記熱処理炉と前記加熱手段との間に熱媒通路と、該熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すための熱媒用ガス供給手段とを有し、
前記熱処理炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定され、
前記熱媒用ガス供給手段により前記加熱手段を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】 前記熱媒用ガスを、1.5?10.5気圧の圧力で流すことを特徴と
する請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項4】熱処理炉内に設置された基板上に薄膜を形成する第一工程と、前記熱処理炉の外部に配置された加熱手段により該薄膜に熱処理を施す第二工程とを少なくとも含む薄膜装置の製造方法において、
前記第二工程では前記基板を熱処理炉内に設置した後に該基板に加熱処理を行い、
該加熱処理の終了後に、前記熱処理炉と前記加熱手段との間に設けられた熱媒通路に対して熱媒用ガスを1.5?10.5気圧の圧力で流すことにより、前記基板に冷却処理を行うことを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項5】 基板に熱処理を施すための熱処理炉を有する熱処理装置であって、
該熱処理炉の外部に隣接して熱交換器が配置され、該熱交換器により前記熱処理炉内に設置された基板を、加熱および冷却する熱交換手段を有することを特徴とする熱処理
【請求項6】 基板上に薄膜を形成する第一工程と、該薄膜に熱処理を施す第二工程
とを少なくとも含む薄膜装置の製造方法において、
前記第二工程では前記基板を熱処理炉内に設置した後に、前記熱処理炉の外部に隣接して配置された熱交換器により前記基板の加熱処理を行い、該加熱処理の終了後に、前記熱交換器により前記基板に冷却処理を行うことを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項7】 基板表面に薄膜を形成するための反応炉と、該反応炉の外部に配置され前記反応炉内に設置された基板を加熱するための加熱手段と、前記反応炉内を減圧するための真空排気手段と、前記反応炉内に反応ガスを供給するための反応ガス供給手段とを有する減圧CVD 装置であって、
前記反応炉と前記加熱手段との間に熱媒通路と、該熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すための熱媒用ガス供給手段とを有し、
前記反応炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定され、
前記熱媒用ガス供給手段により前記反応炉を冷却するための冷却手段とを有することを特徴とする減圧CVD 装置。
【請求項8】基板表面に薄膜を形成するための反応炉と、該反応炉の外部に配置され前記反応炉内に設置された基板を加熱するための加熱手段と、前記反応炉内を減圧するための真空排気手段と、前記反応炉内に反応ガスを供給するための反応ガス供給手段とを有する減圧CVD 装置であって、
前記反応炉と前記加熱手段との間に熱媒通路と、該熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すための熱媒用ガス供給手段とを有し、
前記反応炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定され、
前記熱媒用ガス供給手段により前記加熱手段を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする減圧CVD 装置。
【請求項9】 反応炉内に設置された基板を、前記反応炉の外部に配置された加熱手
段により加熱するとともに、前記反応炉に反応ガスを供給することにより前記基板上に薄膜を形成する薄膜堆積処理を行う工程を少なくとも含む薄膜装置の製造方法において、
前記薄膜堆積処理の終了後に、前記反応炉と前記加熱手段との間に設けられた熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すことにより前記基板を冷却する工程を含み、
前記反応炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定されていることを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項10】 基板表面に薄膜を形成するための反応炉と、該反応炉の外部に隣接
して熱交換器が配置され、該熱交換器により前記反応炉内に設置された基板を加熱および冷却するための熱交換手段と、前記反応炉内を減圧するための真空排気手段と、前記反応炉内に反応ガスを供給するための反応ガス供給手段とを有することを特徴とする減圧CVD 装置。
【請求項11】 基板を反応炉内に設置した後に、前記反応炉の外部に隣接して配置
された熱交換手段により、前記基板を加熱するとともに前記反応炉に反応ガスを供給することにより前記基板上に薄膜を形成する薄膜堆積処理を行い、該薄膜堆積処理の終了後に前記熱交換器により前記基板の冷却処理を行うことを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項12】 基板表面に薄膜を形成するための内側反応炉の外側に、肉厚が20
mm?50mmの石英チャンバーから構成される外側反応炉を設け、基板を前記内側反応炉内に設置した後に該基板を加熱し、かつ、前記内側反応炉内の圧力が前記内側反応炉と前記外側反応炉とによって挟まれた第一熱媒通路内の圧力よりも低い状態となるように前記内側反応炉に反応ガスを供給するとともに第一熱媒通路に熱媒用ガスを供給することにより前記基板上に薄膜を堆積する薄膜堆積処理を行い、該薄膜堆積処理の終了後に前記第一熱媒通路に熱媒用ガスを供給するとともに前記外側反応炉と前記加熱手段との間に位置する第二熱媒通路に熱媒用ガスを供給することにより少なくとも前記外側反応炉に冷却処理を行うことを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項13】前記基板を加熱する工程において、少なくとも前記第一熱媒通路または前記第二熱媒通路のどちらか一方に、加熱した熱媒用ガスを流すことにより、前記基板を加熱することを特徴とする請求項12に記載の薄膜装置の製造方法。」(以下、「補正前発明1?13」という。)

平成16年9月28日付の本件補正により、特許請求の範囲の請求項は、次のように補正された。
「【請求項1】 基板に熱処理を施すための熱処理炉と、該熱処理炉の外部に配置され該熱処理炉内に設置された基板を加熱するための加熱手段とを有する熱処理装置であって、 前記熱処理炉と前記加熱手段との間に熱媒通路と、該熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すための熱媒用ガス供給手段とを有し、
前記熱処理炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定され、
前記熱媒用ガス供給手段は熱媒用ガス供給経路と、該熱媒用ガス供給経路の途中位置に設けられ、熱媒用ガスを加熱および冷却する熱交換器を有し、該熱交換器により熱媒用ガスを加熱および冷却して前記熱媒通路に供給することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】 前記熱媒用ガスを、1.5?10.5気圧の圧力で流すことを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】 熱処理炉内に設置された基板上に薄膜を形成する第一工程と、前記熱処理炉の外部に設置された加熱手段により該薄膜に熱処理を施す第二工程とを少なくとも含む薄膜装置の製造方法において、
前記第二工程では前記基板を熱処理炉内に設置した後に、前記熱処理炉と前記加熱手段との間に設けられた熱媒通路に対して加熱された熱媒用ガスを流し、該基板に加熱処理を行い、
該加熱処理の終了後に前記熱処理炉と前記加熱手段との間に設けられた熱媒通路に対して熱媒用ガスを1.5?10.5気圧の圧力で流すことにより、前記基板に冷却処理を行うことを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項4】 基板に熱処理を施すための熱処理炉を有する熱処理装置であって、 該熱処理装置には、該熱処理炉の外部に隣接して配置された熱源を有する熱交換器と、該熱交換器の熱流を制御する制御装置が設けられ、前記熱処理炉内に設置された基板を加熱する場合には、前記制御装置により、前記熱源から前記熱処理炉側に熱流が生じるように制御し、前記熱処理炉内に設置された基板を冷却する場合には、前記制御装置により、前記熱処理炉側から前記熱源に熱流が生じるように制御することにより、前記熱処理炉内に設置された基板を加熱および冷却することを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】 基板上に薄膜を形成する第一工程と、該薄膜に熱処理を施す第二工程とを少なくとも含む薄膜装置の製造方法において、
前記第二工程では前記基板を熱処理炉内に設置した後に、前記熱処理炉の外部に隣接して配置された熱源を有する熱交換器の熱源から前記熱処理炉側に熱流が生じるように制御して、前記熱交換器により前記基板に加熱処理を行い、該加熱処理の終了後に、前記熱処理炉側から前記熱源に熱流が生じるように前記熱交換器を制御して前記基板に冷却処理を行うことを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項6】 基板表面に薄膜を形成するための反応炉と、該反応炉の外部に配置され前記反応炉内に設置された基板を加熱するための加熱手段と、前記反応炉内を減圧するための真空排気手段と、前記反応炉内に反応ガスを供給するための反応ガス供給手段とを有する減圧CVD装置であって、
前記反応炉と前記加熱手段との間に熱媒通路と、該熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すための熱媒用ガス供給手段とを有し、
前記反応炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定され、
前記熱媒用ガス供給手段は熱媒用ガス供給経路と、該熱媒用ガス供給経路の途中位置に設けられた熱媒用ガスを加熱および冷却する熱交換器を有し、該熱交換器により熱媒用ガスを加熱および冷却して前記熱媒通路に供給することを特徴とする減圧CVD装置。
【請求項7】 反応炉内に設置された基板を、前記反応炉の外部に配置された加熱手段により加熱するとともに、前記反応炉に反応ガスを供給することにより前記基板上に薄膜を形成する薄膜堆積処理を行う工程を少なくとも含む薄膜装置の製造方法において、
前記加熱工程においては、前記反応炉と前記加熱手段との間に設けられた熱媒通路に対して加熱された熱媒用ガスが通されて基板の加熱が行われ、
前記薄膜堆積処理の終了後に、前記反応炉と前記加熱手段との間に設けられた熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すことにより前記基板を冷却する工程を含み、
前記反応炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定されていることを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項8】 基板表面に薄膜を形成するための反応炉と、該反応炉の外部に隣接して配置された熱源を有する熱交換器と、該熱交換器の熱流を制御する制御手段と、前記反応炉内を減圧するための真空排気手段と、前記反応炉内に反応ガスを供給するための反応ガス供給手段とを有し、前記制御手段は、前記反応炉内に設置された基板を加熱する場合には、前記熱源から前記反応炉側に熱流が生じるように制御し、前記反応炉内に設置された基板を冷却する場合には、前記反応炉側から前記熱源に熱流が生じるように制御することにより、前記反応炉内に設置された基板を加熱および冷却することを特徴とする減圧CVD装置。
【請求項9】 基板を反応炉内に設置した後に、前記反応炉の外部に隣接して配置され熱源を有する熱交換器を前記熱源から前記反応炉側に熱流が生じるように制御して、前記熱交換器により前記基板を加熱するとともに、前記反応炉に反応ガスを供給することにより前記基板上に薄膜を形成する薄膜堆積処理を行い、該薄膜堆積処理の終了後、前記反応炉側から前記熱源に熱流が生じるように前記熱交換器を制御して、前記熱交換器により前記基板の冷却処理を行うことを特徴とする薄膜装置の製造方法。
【請求項10】 基板表面に薄膜を形成するための内側反応炉の外側に、肉厚が20mm?50mmの石英チャンバーから構成される外側反応炉を設け、基板を前記内側反応炉内に設置した後に該基板を加熱し、かつ、前記内側反応炉内の圧力が前記内側反応炉と前記外側反応炉とによって挟まれた第一熱媒通路内の圧力よりも低い状態となるように前記内側反応炉に反応ガスを供給するとともに第一熱媒通路に熱媒用ガスを供給し、前記第一熱媒通路および前記外側反応炉と前記外側反応炉の外部に配置された加熱手段との間に位置する第二熱媒通路に、加熱した熱媒用ガスを供給することにより前記基板の加熱を行いつつ、前記基板上に薄膜を堆積する薄膜堆積処理を行い、該薄膜堆積処理の終了後に前記第一熱媒通路に熱媒用ガスを供給するとともに前記第二熱媒通路に熱媒用ガスを供給することにより少なくとも前記外側反応炉に冷却処理を行うことを特徴とする薄膜装置の製造方法。」(以下、「本願補正発明1?10」という。)

本願補正発明1は、補正前発明1の、
「前記熱媒用ガス供給手段により前記熱処理炉を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする熱処理装置。」を
「前記熱媒用ガス供給手段は熱媒用ガス供給経路と、該熱媒用ガス供給経路の途中位置に設けられ、熱媒用ガスを加熱および冷却する熱交換器を有し、該熱交換器により熱媒用ガスを加熱および冷却して前記熱媒通路に供給することを特徴とする熱処理装置。」
と補正するものであるが、熱媒用ガス供給手段により前記熱処理炉を冷却する構成を、
熱交換器により熱媒用ガスを加熱および冷却する構成に補正することは、加熱する構成が新たに増加しており、特許請求の範囲の減縮とは認められない。また。新たに、熱交換器の構成を付加することは、請求の範囲の限定的減縮とも認められない。さらに、この補正は誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものにも該当しない。同様の理由により、本願補正発明6、7、8、10についても、特許請求の範囲の減縮とも、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものとも認められない。
よって、この補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年9月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?13に係る発明は、平成15年10月14日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものである(以下、「本願発明1?13」という。)ところ、請求項2に記載の発明は、以下のとおりのものである。

「 【請求項2】基板に熱処理を施すための熱処理炉と、該熱処理炉の外部に配置され該熱処理炉内に設置された基板を加熱するための加熱手段とを有する熱処理装置であって、
前記熱処理炉と前記加熱手段との間に熱媒通路と、該熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すための熱媒用ガス供給手段とを有し、
前記熱処理炉と前記加熱手段との間の間隙で規定される前記熱媒通路の幅は1?50mmに設定され、
前記熱媒用ガス供給手段により前記加熱手段を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする熱処理装置。」

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-115066号公報(以下、刊行物1という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【0005】本発明は、上記した従来の欠点を解消する目的で成されたもので、熱処理後の高温に加熱された被処理体の降温を均一、且つ高速に行うことができ、またスペース効率の良い半導体熱処理装置を提供するものである。」
「【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1乃至図9を参照して説明する。まず、図1を用いて装置全体の構成について説明する。本半導体熱処理装置は、ヒータ部100、ヒータ保持部120、反応炉芯管130、反応炉芯管保持部140、反応炉芯管炉口開口部の蓋をするキャップ部150、ボートへ多段に半導体ウェハーを収納した被処理体160、ヒータの温度を監視制御する温度コントローラ部200、ヒータの降温時に第1の冷却媒体の強制循環を行ってヒータに蓄積された熱エネルギを除去する強制循環手段としての強制冷却部300、強制冷却部300を制御する強制冷却コントローラ部400により構成されている。」
「【0021】・・・処理を完了した被処理体160の装置よりの取り出しに際し、被処理体160を取出し可能な温度まで降温するためには強制冷却コントローラ部400のコントローラ401からの制御信号402,403により強制冷却部300を駆動させる。すなわち制御信号403によりアクチェータ181,182,183を介して弁171,172,173を開き、制御信号402によりブロア301を駆動させ、冷却用空気を第1の冷却媒体Aとして上部吸気ダクト210、下部吸気ダクト220へ供給する。上部吸気ダクト210、下部吸気ダクト220へ供給された第1の冷却媒体Aは反応炉芯管130の外周とヒータ105の間隙131をそれぞれ上下方向から移動し、間隙131部の熱エネルギを均等に、効率よく、かつ短時間で吸収し、通気孔106、間隙108、熱交換器500および600の通過間隙口510,610を経て熱交換器500,600の間隙経路511,611へ至る。・・・」
よって、刊行物1には、
「ヒータ部100、反応炉芯管130、ボートへ多段に半導体ウェハーを収納した被処理体160、ヒータの降温時に第1の冷却媒体の強制循環を行ってヒータに蓄積された熱エネルギを除去する強制循環手段としての強制冷却部300を有し、制御信号403によりアクチェータ181,182,183を介して弁171,172,173を開き、制御信号402によりブロア301を駆動させ、冷却用空気を第1の冷却媒体Aとして上部吸気ダクト210、下部吸気ダクト220へ供給し、上部吸気ダクト210、下部吸気ダクト220へ供給された第1の冷却媒体Aは反応炉芯管130の外周とヒータ105の間隙131をそれぞれ上下方向から移動し、間隙131部の熱エネルギを均等に、効率よく、かつ短時間で吸収する半導体熱処理装置」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。

(3)対比
そこで、本願発明2と刊行物1発明とを比較すると、
刊行物1発明の「半導体ウェハー」、「反応炉芯管」、「ヒータ部」、「半導体熱処理装置」、「反応炉芯管の外周とヒータの間隙131」、「冷却媒体」、「弁171,172,173、ブロア301、及び、上部吸気ダクト210、下部吸気ダクト220」、「ヒータに蓄積された熱エネルギを除去する強制循環手段としての強制冷却部」は、それぞれ、
本願発明2の、「基板」、「熱処理炉」、「加熱手段」、「熱処理装置」、「熱媒通路」、「熱媒用ガス」、「熱媒用ガス供給手段」、「冷却手段」に相当するから、両者は、
「基板に熱処理を施すための熱処理炉と、該熱処理炉の外部に配置され該熱処理炉内に設置された基板を加熱するための加熱手段とを有する熱処理装置であって、
前記熱処理炉と前記加熱手段との間に熱媒通路と、該熱媒通路に対して熱媒用ガスを通すための熱媒用ガス供給手段とを有し、
前記熱媒用ガス供給手段により前記加熱手段を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする熱処理装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]熱処理炉と加熱手段との間の間隙で規定される熱媒通路において、本願発明2では、その幅を1?50mmに設定しているのに対し、刊行物1発明では明確な寸法の記載のない点。

(4)判断
[相違点1]について
刊行物1発明においても、本願発明2と同様に、熱処理炉と前記加熱手段との間の間隙に、冷却媒体を流して速やかに冷却し、処理時間を短縮することを目的としており、速やかに冷却するために、熱処理炉と前記加熱手段との間の間隙を適宜設定することは、設計事項と認められる。また、その際に、間隙(幅)の寸法を1?50mmに設定することに、何らの阻害要件も認められず、間隙(幅)を1?50mmに設定することによる格別な、臨界的効果も認められないから、この値は、当業者が容易になしえたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明2は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-13 
結審通知日 2006-12-19 
審決日 2007-01-09 
出願番号 特願平8-182505
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 綿谷 晶廣
正山 旭
発明の名称 熱処理装置、減圧CVD装置、および薄膜装置の製造方法  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  
代理人 藤綱 英吉  

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