• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1152772
審判番号 不服2004-8467  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-23 
確定日 2007-02-19 
事件の表示 平成6年特許願第20271号「接続部材及びこれを用いた電極の接続構造」拒絶査定不服審判事件〔平成7年8月29日出願公開、特開平7-230840号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年2月17日の出願であって、平成16年3月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年8月22日付け手続補正で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「導電材料とバインダとよりなる加圧方向に導電性を有する導電性シートの片面または両面に、絶縁性の接着剤層を形成してなり、前記バインダ及び絶縁性の接着剤層は、潜在性硬化剤を含有する硬化性材料であり、前記絶縁性の接着剤層の硬化剤を除く配合の接続時の溶融粘度が、前記シート中の前記バインダにおける硬化剤を除く配合の溶融粘度より、少なくとも10ポイズ以上低い接続部材。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-366630号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「導電性粒子を含む接着剤から形成される第1の接着剤層の少なくとも一方の面上に、導電性粒子を含まない絶縁性の接着剤から形成される第2の接着剤層を形成したことを特徴とする異方性導電接着テープ。」(【請求項1】)
(b)「【作用】上記した様に構成した異方性導電接着テープは電気伝導の機能と接合の機能とをそれぞれ第1の接着剤層と第2の接着剤層とへと分担させることができる。すなわち、第1の接着剤層は、電子部品を電気的に接合するのに適した特性を備えるべく、接着剤の材料、導電性粒子の材料、大きさ及び形状が選定される。第2の接着剤層は、接合される電子部品を接着するのに適した特性を備えるべく、接着剤の材料及び厚みが選定される。第2の接着剤層の接着剤の材料としては溶融時の流動性の高い特性を有するものが選定され、かつ厚みは電子部品を接着するのに十分な大きさが選定される。この結果、第1の接着剤層の接着剤の材料としては溶融時の流動性の低い特性を有するものを選定することができる。
従って、本発明による第1の接着剤層の両面又は一方の面上に第2の接着剤層を形成した異方性導電接着テープを電子部品の接合に用いる際、第1の接着剤層の溶融時の流動性が低いために接合加工のための加熱及び加圧によって導電性粒子が流動化して移動しそして異常に凝集することはなくなり、回路端子のピッチが精細な場合でも断線及びショートの発生を抑止することができる。また、各種の電子部品の実装組み合わせに対応して、第2の接着剤層の材料及び厚さを変えることにより最良の接着強度を得ることができ、接着部分の強度を高く保持できるので、確実に電子部品を接合することが可能となり、その結果接合の信頼性を向上させることが可能となる。」(段落【0011】、【0012】)
(c)「本実施例では、第1の接着剤層21を形成する接着剤23はエポキシ系樹脂の接着剤をベースとしてこれに各種材料を混合して形成されている。」(段落【0015】)
(d)「以上のべた実施例においては、第1の接着剤層21の両面上に形成された第2の接着剤層24の接着剤は同じ材料のものを使用したが、第1の接着剤層の上面及び下面上の第2の接着剤層をそれぞれ電子部品25、27に適した材料の接着剤で構成することも可能である。」(段落【0020】)
(e)図2には、異方性導電接着テープを用いて電子部品を接合した時に、第1の接着剤層21に含まれる導電性粒子22によって加圧方向に導電性が確保される様子が図示されている。

上記記載事項を総合すると、刊行物1には、
「導電性粒子を含む接着剤から形成される加圧方向に導電性を有する第1の接着剤層の少なくとも一方の面上に、導電性粒子を含まない絶縁性の接着剤から形成される第2の接着剤層を形成してなり、第1の接着剤層を形成する接着剤と第2の接着剤層は、エポキシ系樹脂の接着剤をベースとしており、前記第2の接着剤層は溶融時の流動性の高い特性を有する材料であり、前記第1の接着剤層は溶融時の流動性の低い特性を有する材料である異方性導電接着テープ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「導電性粒子を含む接着剤から形成される」が、その機能・構造等からみて前者における「導電材料とバインダとよりなる」に相当し、以下同様に、「第1の接着剤層」が「導電性シート」に、「少なくとも一方の面上」が「片面または両面」に、「導電性粒子を含まない絶縁性の接着剤から形成される第2の接着剤層」が「絶縁性の接着剤層」に、「第1の接着剤層を形成する接着剤」が「バインダ」に、「異方性導電接着テープ」が「接続部材」に、それぞれ相当している。
また、後者の「前記第2の接着剤層は溶融時の流動性の高い特性を有する材料であり、前記第1の接着剤層は溶融時の流動性の低い特性を有する材料である」ことと前者の「前記絶縁性の接着剤層の硬化剤を除く配合の接続時の溶融粘度が、前記シート中の前記バインダにおける硬化剤を除く配合の溶融粘度より、少なくとも10ポイズ以上低い」こととは「前記絶縁性の接着剤層の接続時の溶融粘度が、前記シート中の前記バインダにおける溶融粘度より、低い」点で共通しているといえる。

したがって、両者は、
「導電材料とバインダとよりなる加圧方向に導電性を有する導電性シートの片面または両面に、絶縁性の接着剤層を形成してなり、前記バインダ及び絶縁性の接着剤層は、前記絶縁性の接着剤層の接続時の溶融粘度が、前記シート中の前記バインダにおける溶融粘度より、低い接続部材。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:バインダ及び絶縁性の接着剤層が、本願発明では、潜在性硬化剤を含有する硬化性材料であり、絶縁性の接着剤層の硬化剤を除く配合の接続時の溶融粘度が、シート中のバインダにおける硬化剤を除く配合の溶融粘度より、少なくとも10ポイズ以上低いものであるのに対し、引用発明では、接着剤はエポキシ系樹脂の接着剤をベースとしたものであるが、潜在性硬化剤を含有する硬化性材料であるか否かが明確でなく、また、絶縁性の接着剤層の接続時の溶融粘度が、シート中のバインダにおける溶融粘度より、低いものではあるが、硬化剤を除く配合の溶融粘度の差が少なくとも10ポイズ以上であるか否かが明確でない点。

4.当審の判断
そこで上記相違点について検討する。
電子部品等の接続部材として、潜在性硬化剤を含有する硬化性材料(エポキシ系樹脂の接着剤)を用いることは、例えば特開平5-206208号公報、特開平4-169080号公報、特開平5-21094号公報等に記載されているように周知の事項であるから、引用発明のバインダ及び絶縁性接着層として構成されているエポキシ系樹脂の接着剤をベースとするものに代えて該周知の潜在性硬化剤を含有する硬化性材料を採用する程度のことは当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、引用発明のバインダと絶縁性の接着剤層は、絶縁性の接着剤層の接続時の溶融粘度が、シート中のバインダにおける溶融粘度より、低いものであるから、上記周知の潜在性硬化剤を含有する硬化性材料を採用した場合にもバインダと絶縁性の接着剤層の溶融粘度は同様の関係となるようにすることは当然のことである。そして、その溶融粘度としてどの程度の溶融粘度が好ましいかを実験的に求めることは当業者の通常の創作能力の発揮というべきであり、その好ましい溶融粘度を求める際に、硬化剤を配合すると硬化反応が起こって溶融粘度を測定しにくいようであれば、硬化剤を配合しない状態で溶融粘度を測定する程度のことは当業者が適宜なし得ることである。そして、その溶融粘度の差を10ポイズ以上とした点に臨界的意義があること示すデータは本願の明細書中には何等記載されていないから、溶融粘度の差を10ポイズ以上とした点は単なる設計的事項にすぎないといわざるをえない。

また、本願発明の効果も引用発明及び周知の事項から予測される程度のものにすぎない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-08 
結審通知日 2006-12-14 
審決日 2007-01-04 
出願番号 特願平6-20271
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 孝明  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 和泉 等
中田 誠二郎
発明の名称 接続部材及びこれを用いた電極の接続構造  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ