• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1152965
審判番号 不服2003-10738  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-12 
確定日 2007-02-21 
事件の表示 特願2000-94400「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月9日出願公開、特開2001-276328〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年3月30日の出願であって、平成15年1月28日付の拒絶理由通知が通知され、平成15年4月1日付で意見および手続補正がなされ、平成15年5月7日付の拒絶査定がなされるとともに、平成15年6月12日に審判請求がなされ、平成15年7月7日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年7月7日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年7月7日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成15年7月7日付の手続補正における請求項1?3は、平成15年4月1日付の手続補正により補正された請求項1?3に記載された発明を特定するための事項の限定に相当するものであるから、平成15年7月7日付の手続補正における請求項1?3は、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第1号および第2号の規定に適合している。

そして、平成15年7月7日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、その請求項1?3に記載されたとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。

「遊技盤と、遊技者の発射操作に応じて遊技球を遊技盤の遊技領域に向けて発射する発射装置とを有するパチンコ遊技機において、遊技領域に発射された遊技球を検出するための発射球検出手段と、前記発射球検出手段により検出された発射球の数を累積し計数する発射球数計数手段と、所定の第1判定時間を計時する第1計時手段と、前記第1判定時間内に前記発射球数計数手段により計数された発射球の数が予め定めた所定数以上である場合に異常と判定する異常判定手段と、前記異常判定手段により異常と判定された場合に異常状態を報知する異常報知手段と、前記発射装置により遊技球が連続的に発射されているか否かを監視するために前記発射球検出手段により遊技領域に発射された発射球が検出された時点から前記第1判定時間とは異なる所定の第2判定時間を計時する第2計時手段を有する発射球監視手段と、前記発射球監視手段により前記第2判定時間内に後続の発射球の検出が無かった場合に前記第1計時手段と前記発射球数計数手段とを初期化する初期化手段とを備えたことを特徴とするパチンコ遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)

そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-144579号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の技術事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「[産業上の利用分野] 本発明はパチンコ遊技機の打球発射制御装置に関し、特に一定時間当たりの打球発射個数を所定値以下に制限するパチンコ遊技機の打球発射制御装置に関する。」(公報1頁左下欄14行?18行)

・記載事項2
「[発明が解決しようとする課題] このように、一定時間当たりに発射される遊技球の個数は、発射モータの回転数が速い程多くなるため、遊技店側は、遊技機が設置された島設備の電源の周波数を変更して発射モータの回転数を高めたり、或いは遊技盤の打球発射装置自体を改造して発射モータの回転数を高めるなどして、一定時間当たりに遊技者が使用する遊技球数を規定値以上にする等の不正を行なう虞れがあった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたもので、遊技機の打球発射装置による一定時間当たりの発射個数を、所定値以上に変更することができないようにしたパチンコ遊技機の打撃発射制御装置を提供することをその目的とする。」(公報1頁右下欄15行?2頁左上欄8行)

・記載事項3
「第1図は、本発明に係る打球発射制御装置によってその作動が制御される、パチンコ遊技機1の打球発射装置400の斜視図である。」(公報2頁右上欄9行?11行)

・記載事項4
「より具体的には、制御基板610には、後述のモータセンサ490からの出力信号に基いて発射モータ439の一定時間当たりの回転数(一定時間当たりの発射個数に相当する。)を検出する発射個数検出回路602(計数手段701)、タッチセンサ340a(後述)からの出力信号の内容に基いて、操作ハンドル100が遊技者によって握られているか否かを判断するタッチ検出回路651、該タッチ検出回路651からの出力信号、遊技機の裏機構盤(図示省略)に設置されたオーバーフロースイッチ220(第7図)からの出力信号、図示省略の裏機構盤に設置されたリセットスイッチ210(第7図)、更には後述の発射(単発)スイッチ160(第8図)からの出力信号等各種センサ(スイッチ)からの出力信号に基いて発射モータ439の作動制御を行なう発射モータ駆動制御回路654(第7図)等が配設されている。」(公報3頁左上欄16行?右上欄13行)

・記載事項5
「発射個数検出回路602(計数手段701)は、後述のタイマ手段(水晶発振器を含んでなる)が一定時間(例えば1分間)を計数する間に発生したパルス信号の数を計数し、これを発射モータ439の回転数としてその後の処理に適用するものである。」(公報3頁左下欄20行?右下欄5行)

・記載事項6
「尚、パチンコ遊技機1の前面側上部にはガイドレール6によって囲まれた状態で遊技領域4が形成された遊技盤3が設置されている。この遊技盤3のガイドレール6の外周には、打球発射制御が不正に行なわれたときにこれを遊技者等に報知するランプ698(報知手段)が設置されている。又、遊技盤3の遊技領域4の外側で且つ右下側には7セグメント型の3つの数字表示器よりなる発射数表示装置2oが設置されている。この発射数表示装置20は、後述の如く上記発射制御装置600の発射個数検出回路602によって検出された発射モータの一定時間当たりの回転数(発射個数)を遊技者等が視認できるように表示するものである。」(公報5頁左上欄6行?19行)

・記載事項7
「より具体的には、前記ロジック部650は、タッチセンサ250からのON信号、フィルタ653を介して送られてくるリセット信号、オーバーフロー信号及びパルス信号に基いて、即ちタッチセンサ250からのON信号が入力され、且つオーバーフロー信号が発生していないことを条件として発射モータ439の駆動を行なうと共に、該モータ439の駆動によって発生するモータセンサ490からのパルス信号が前記水晶発振器652からのクロックパルスに基づいて一定時間(例えば1分間)がカウントされる間に幾つ発生したか、即ち発射モータ439の一定時間当りの回転数を計測するようになっている。」(公報7頁左下欄11行?右下欄3行)

・記載事項8
「更に当該ロジック部650は、該検知した回転数(発射個数に相当)が所定回数以下であるか否かを判別し、検出回転数が所定回転数以上であると判別したときに不正を表わす不正信号を後述の如く第1、第2の駆動回路654,655及びアンプ696に出力するようになっている。又、第1の駆動回路654は、定電圧回路657から駆動電圧を受けているという条件の下で、更にタッチセンサ250がON信号を出力し、且つ、オーバーフロースイッチ696がON信号を出力していないときに、発射モータ439を駆動するようになっている。そして、前記ロジック部650によって発射モータ439の一定時間当たりの回転数が所定回数(100回転/min)を超えたと判別されたとき、該第1の駆動回路654はロジック部650からの上記不正信号を受けて発射モータ439の駆動を停止する。」(公報7頁右下欄3行?20行)

・記載事項9
「上記制御ブロックにおいて、タイマ手段702(水晶発振器とロジック部に相当)が所定時間(1分間)をカウントする間に、モ-タセンサ490から発生するパルス発生数を計数手段701(ロジック部に相当)が計数して一定時間(1分間)当たりの回転数を得るようになっている。このようにして得られた一定時間当たりの回転数は、発射数表示手段(発射数表示装置)20、比較手段703 (ロジツク部に相当)に送られる。このうち発射数表示手段20は、上記計数手段701からの信号に基づいて上記得られた一定時間当りの回転数を数値表示部にて表示するようになっている。又、比較手段703は、その内部に記憶されている所定回数(100回)と、上記回転数とを比較するようになっている。この比較の結果、該比較手段703によって一定時間当たりの回転数(発射数)が所定回数(100/min)以上となっていると判断されたときには、該比較手段703より報知信号出力手段704(第2駆動回路、アンプに相当)にON信号が出力され、該ON信号を受けた報知信号出力手段704は報知手段たるランプ698及びスピーカ695に不正信号を送って発射モータ439の不正な駆動がなされていることをこれら報知手段により遊技者等に報知するようになっている。」(公報8頁左下欄1行?右下欄5行)

・記載事項10
「尚、この報知信号出力手段704にはりセットスイッチ210が接続されており、該リセットスイッチ210が押圧されてON信号が報知信号手段704に出力されたとき上記報知手段(ランプ、スピーカ)による不正発生の報知が停止されるようになっている。」(公報8頁右下欄6行?11行)

・記載事項11
「又、この発射モータ翻動制御手段705には前記タイマ手段702が接続されており、タイマ手段702は発射モータ駐動制御手段705より発射モータ439を駆動する駆動信号が出力されていることを検知して発射モータ439が回転中であると判断し、この条件下でのみ一定時間を計測するようになっている。そして、計数を開始したとき及び該一定時間の計数が終了したときに、前記計数手段701に発射モータ439の回転数(発射数)を計数すべき時間間隔(単位時間)が経過したことを示す信号を出力するようになっている。」(公報9頁左上欄16行?右上欄7行)

・記載事項12
「又、本実施例では、一定時間当たりの発射モータ439の回転数を検出して、これを一定時間当たりの打球発射数と看做したが発射された遊技球の通路にセンサを設置し、実際に発射された遊技球を直接検出して、一定時間当たりの発射数を求めるようにしてもよい。」(公報9頁右上欄15行?20行)

・記載事項13
「又、本実施例では、タイマ手段を遊技店の島設備に供給される電源電圧の変化(周波数の変化)の影響を受けない水晶発振器とし、これによって一定時間(例えば、1分)を常に正確に計測するようにしているが、島設備の電源電圧の変化の影響を受けないようにしたタイマ手段としては、固有の電源を具えたクロックパルス発振器等いろいろなタイマ手段を用いることが可能である。」(公報9頁左下欄1行?8行)

以上の記載事項1?記載事項13及び第1図?第8図の記載によれば、引用例には次の発明が記載されていると認められる。

「遊技盤3と、遊技者の発射操作に応じて遊技球を遊技盤3の遊技領域4に向けて発射する打球発射装置400とを有するパチンコ遊技機1において、発射モータの一定時間当たりの回転数を検出し、その検出された回転数から求めた発射球の数を累積し計数する発射個数検出回路602と、タイマ手段702と、一定時間当たりの回転数(発射数)が所定回数以上となっていると判断したときに、不正な駆動がなされたと判断する比較手段703と、比較手段703により不正な駆動がなされたと判断された場合に不正な駆動がなされていることを報知するランプ698(報知手段)と、ランプ698(報知手段)による不正発生の報知状態を停止するリセット手段とを備えたことを特徴とするパチンコ遊技機1。」(以下、「引用例に記載された発明」という。)

(3)対比
引用例に記載された発明と本願補正発明を対比すると、引用例に記載された発明の「遊技盤3」は本願補正発明の「遊技盤」に相当している。以下同様に、「遊技領域4」は「遊技領域」、「打球発射装置400」は「発射装置」、「パチンコ遊技機1」は「パチンコ遊技機」、「不正な駆動がなされたと判断する」は「異常と判定する」、「比較手段703」は「異常判定手段」、「不正な駆動がなされていること」は「異常状態」、「ランプ698(報知手段)」は「異常報知手段」に相当している。

そして、引用例に記載された発明は、以下の技術事項を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項1
引用例の記載事項5の「発射個数検出回路602(計数手段701)は、後述のタイマ手段(水晶発振器を含んでなる)が一定時間(例えば1分間)を計数する間に発生したパルス信号の数を計数し、これを発射モータ439の回転数としてその後の処理に適用するものである。」、同記載事項9の「上記制御ブロックにおいて、タイマ手段702(水晶発振器とロジック部に相当)が所定時間(1分間)をカウントする間に、モ-タセンサ490から発生するパルス発生数を計数手段701(ロジック部に相当)が計数して一定時間(1分間)当たりの回転数を得るようになっている。・・・」、および同記載事項11の「・・・タイマ手段702は・・・この条件下でのみ一定時間を計測するようになっている。そして、計数を開始したとき及び該一定時間の計数が終了したときに、前記計数手段701に発射モータ439の回転数(発射数)を計数すべき時間間隔(単位時間)が経過したことを示す信号を出力するようになっている。」なる記載に基づけば、発射球数の計数するために、タイマ手段702は一定時間間隔に基づいて計時しているものであるから、タイマ手段702は、一定時間(1分間)を所定の判定時間として計時するものであり、かつ、タイマ手段702を第1計時手段といい換えることができることも明らかなことである。
そうすると、引用例に記載された発明は、所定の第1判定時間を計時する第1計時手段を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項2
引用例の記載事項10の「尚、この報知信号出力手段704にはリセットスイッチ210が接続されており、該リセットスイッチ210が押圧されてON信号が報知信号手段704に出力されたとき上記報知手段(ランプ、スピーカ)による不正発生の報知が停止されるようになっている。」なる記載に基づけば、リセットスイッチ210は、報知手段(ランプ、スピーカ)による不正発生の報知状態を停止させるものであるから、リセットスイッチ210は、不正行為への対処やトラブルの解消が為された場合に、不正発生の報知状態にある報知手段を初期化する手段といい換えることができる。
そして、引用例に記載された発明の「ランプ698(報知手段)」は本願補正発明の「異常報知手段」に相当していることは上記(3)対比柱書きに示したとおりであり、引用例に記載された発明の「不正発生の報知状態を停止させるリセット手段」は、その機能から見て、本願補正発明の「異常状態を報知する異常報知手段を初期化する初期化手段」に実質的に相当していることも明らかである。
そうすると、引用例に記載された発明は、異常状態を報知する異常報知手段を初期化する初期化手段を実質的に具備しているということができる。

そうすると、本願補正発明と引用例に記載された発明は、

「遊技盤と、遊技者の発射操作に応じて遊技球を遊技盤の遊技領域に向けて発射する発射装置とを有するパチンコ遊技機において、所定の第1判定時間を計時する第1計時手段と、異常を判定する異常判定手段と、異常判定手段により異常と判定された場合に異常状態を報知する異常報知手段と、その異常報知手段を初期化する初期化手段とを備えたことを特徴とするパチンコ遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

・相違点1
発射された遊技球の検出を行う手段が、本願補正発明においては、遊技領域に発射された遊技球を検出する発射球検出手段であるのに対して、引用例に記載された発明においては、発射モータの一定時間当たりの回転数を検出するものである点。

・相違点2
発射球の数を累積し計数する発射球数計数手段が、本願補正発明においては、遊技領域に発射された遊技球を検出する発射球検出手段により検出された発射球の数に基づくものであるのに対して、引用例に記載された発明においては、発射個数検出回路602により検出された一定時間当たりの回転数から求めた発射個数に基づくものである点。

・相違点3
本願補正発明が、第1判定時間内に発射球数計数手段により計数された発射球の数が予め定めた所定数以上である場合に異常判定手段が異常と判定するのに対して、引用例に記載された発明は、一定時間当たりの回転数が所定回数以上である場合に異常判定手段が異常と判定する点。

・相違点4
本願補正発明が、発射装置により遊技球が連続的に発射されているか否かを監視するために発射球検出手段により遊技領域に発射された発射球が検出された時点から第1判定時間とは異なる所定の第2判定時間を計時する第2計時手段を有する発射球監視手段を設けるとともに、発射球監視手段により第2判定時間内に後続の発射球の検出が無かった場合に第1計時手段と発射球数計数手段と初期化する初期化手段を設けているのに対して、引用例に記載された発明は、そのような発射監視手段を有しておらず、不正行為への対処やトラブルの解消がなされた場合に、異常の報知状態にある異常報知手段を初期化する初期化手段を有する点。

(4)判断
上記相違点について、検討する。

<相違点1について>
パチンコ機技術分野において、遊技領域に発射された遊技球を検出する二つのセンサやタイマからなる発射球検出手段を備え、その検出された発射球を累積して計数する発射球数計数手段を備え、その計数が設定時間内に行なわれたかどうかをタイマにより計時し、不正行為や異常の有無を判断し、異常がある場合には異常状態を報知する異常状態報知手段を備え、不正行為や異常状態が解消したり、タイマがタイムアップした場合には、異常報知手段、発射球数計数手段やタイマをリセットする初期化手段を設けることは周知技術にすぎない(以下、「周知技術A」という。必要であれば、特開平11-4932号公報、特開平10-249033号公報等参照されたい。)
また、引用例の記載事項12の「又、本実施例では、一定時間当たりの発射モータ439の回転数を検出して、これを一定時間当たりの打球発射数と看做したが、発射された遊技球の通路にセンサを設置し、実際に発射された遊技球を直接検出して、一定時間当たりの発射数を求めるようにしてもよい。」なる記載に基づけば、発射個数の検出は、直接、遊技球の通路にセンサを設置して実際に発射された発射個数を検出するようにしてもよいことが示されている。
さらに、回転数に基づいて発射の有無を検出するか、センサに基づいて発射の有無を検出するかは、共に発射の有無の検知をなし得る機能において相違がないのであるから、発射有無を検出するためにどちらを用いるかは、その各手段の得失を考慮することにより、当業者が適宜選択できる程度の設計事項にすぎない。
そして、引用例に記載された発明と上記周知技術Aは、パチンコ機技術分野において遊技盤に発射された遊技球の計数に関する技術において共通するものであるから、相互に利用することに困難な理由を見い出せない。
そうすると、引用例に記載された発明の発射モータの一定時間当たりの回転数を検出することにより遊技球を検出するものに代えて、周知技術Aを採用することにより、発射球検出手段により遊技領域に発射された遊技球を検出すること、すなわち上記相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易に想到できる程度の技術事項にすぎないということができる。

<相違点2について>
パチンコ機技術分野において、遊技領域に発射された遊技球を検出する二つのセンサやタイマからなる発射球検出手段を備え、その検出された発射球を累積して計数する発射球数計数手段を備え、その計数が設定時間内に行なわれたかどうかをタイマにより計時し、不正行為や異常の有無を判断し、異常がある場合には異常状態を報知する異常状態報知手段を備え、不正行為や異常状態が解消したり、タイマがタイムアップした場合には、異常報知手段、発射球数計数手段やタイマをリセットする初期化手段を設けることは、上記相違点1の周知技術Aとして示したとおりである。
そうすると、上記相違点1と同じ理由により、引用例に記載された発明の発射個数検出回路602に代えて、上記周知技術Aを採用することにより、遊技領域に発射された遊技球を検出する発射球検出手段により検出された発射球の数に基づいて発射された遊技球の数を累積し計数する発射球数計数手段とすること、すなわち上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易に想到できる程度の技術事項にすぎないということができる。

<相違点3について>
パチンコ機技術分野において、遊技領域に発射された遊技球を検出する二つのセンサやタイマからなる発射球検出手段を備え、その検出された発射球を累積して計数する発射球数計数手段を備え、その計数が設定時間内に行なわれたかどうかをタイマにより計時し、不正行為や異常の有無を判断し、異常がある場合には異常状態を報知する異常状態報知手段を備え、不正行為や異常状態が解消したり、タイマがタイムアップした場合には、異常報知手段、発射球数計数手段やタイマをリセットする初期化手段を設けることは上記相違点1の周知技術Aとして示したとおりである。
そうすると、上記相違点1と同じ理由により、引用例に記載された発明の異常判定手段に代えて、上記周知技術Aを採用することにより、第1判定時間内に発射球数計数手段により計数された発射球の数が予め定めた所定数以上である場合に異常と判定するようにすること、すなわち上記相違点3に係る構成となすことは、当業者が容易に想到できる程度の技術事項にすぎないということができる。

<相違点4について>
本願補正発明は、発射球検出手段により遊技領域に発射された発射球が検出された時点から第1判定時間とは異なる所定の第2判定時間を計時する第2計時手段を有する発射球監視手段により発射装置により遊技球が連続的に発射されているか否かを監視している。しかしながら、発射装置により遊技球が連続的に発射されているかどうかを監視するための発射監視手段なる表現を用いているものの、前に発射された遊技球を検出した時間から次ぎに発射された遊技球を検知するまでの時間である時間を検出し、予め設定された一定時間である第2判定時間と比較して、連続して遊技球が発射されているか否かを判断して、連続的に発射していない場合には異常でないと判断するものであって、その場合に第1計時手段と発射球数計数手段とを初期化する初期化手段を設けるものであり、処理の効率化と異常判定の精度の向上を図るものである。
一方、上記周知技術Aは、パチンコ遊技機の設定時間(例えば1分間)当たりに計測された発射球数が設定値(例えば100個)以上である場合に異常もしくは不正が行われていると判断する異常判定手段を有しており、異常の判断は上記のように任意に設定された発射球数と時間の関係で一義的に定まるものに他ならない。したがって、一定時間を超える時点で計数された発射数の累積値と所定数と比較することにより判断を行うのか、計数された発射数の累積値が所定値を超える時点で累積値に至までの時間と設定時間を比較することにより判断するかは、異常を判断し得る点において両者の間に実質的な差がないということができる。
上記のように、本願補正発明の発射監視手段とは、異常の判断を発射監視という表現に変えた異常判定手段であるから、上記周知技術Aの異常判定手段は、異常を判断するに当たって、タイマにより設定時間等の時間間隔を計測して、発射された遊技球数を計数しているので、実質的に発射監視手段としての機能を果たしていると解される。
また、引用例に記載された発明においては、不正な駆動が検出された場合に異常を報知しているランプやスピーカ等の異常報知手段を、不正行為への対処やトラブルが解消したときに、初期化手段を押圧して初期化することが示され、さらに、引用例以外の特開平9-10389公報、特開平11-267335号公報、特開2000-84199号公報(公開日:2000.3.28)においても、不正行為への対処やトラブルが解消したときに異常報知手段を初期化手段により初期化することが記載されている上、例示するまでもなく、自動車のオイル不足表示警告、扉の不完全閉止表示警告、シートベルトの未装着表示警告等は異常状態が解除されると表示警告手段も解除されることは当業者でなくともよく知体験することであるから、異常状態でない場合又は異常でなくなった場合に、異常報知手段を初期化手段を用いて、自動、手動を問わず初期状態に戻すことは、よく知られている周知技術B(以下、「周知技術B」という。)にすぎない。
そして、引用例に記載された発明、上記周知技術Aおよび周知技術Bは、機器等が異常状態でない場合に、異常報知手段を初期状態に戻す機能において関連するものであるから、相互に利用することに困難な理由はない。
そうすると、周知技術A並びに周知技術Bを参酌しつつ、引用例に記載された発明の異常報知手段を押圧して初期化する初期化手段に代えて、異常の判定のために発射装置により遊技球が連続的に発射されているか否かを監視するべく、発射球検出手段により遊技領域に発射された発射球が検出された時点から第1判定時間とは異なる所定の第2判定時間を計時する第2計時手段を有する発射球監視手段を設けるとともに、発射球監視手段により第2判定時間内に後続の発射球の検出が無かった場合に第1計時手段と発射球数計数手段とを初期化する初期化手段を設けて異常報知状態を解除すること、すなわち上記相違点4に係る構成となすことは、当業者が容易に想到できる程度の技術事項にすぎないということができる。

(5)作用効果
本願補正発明によって奏する効果も、引用例に記載された発明、上記周知技術Aおよび上記周知技術Bに基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められない。

(6)むすび
よって、本願補正発明は、引用例に記載された発明、上記周知技術Aおよび上記周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない。

(7)補正却下の判断
以上のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるので、平成15年7月7日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年7月7日付の手続補正は上記のとおり却下されているので、平成15年4月1日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、その請求項1?3に記載されたとおりのものと認められ、本願発明は、その請求項1において特定される以下のものである。

「遊技盤と、遊技者の発射操作に応じて遊技球を遊技盤の遊技領域に向けて発射する発射装置とを有するパチンコ遊技機において、遊技領域に発射された遊技球を検出するための発射球検出手段と、前記発射球検出手段により検出された発射球の数を累積し計数する発射球数計数手段と、所定の第1判定時間を計時する第1計時手段と、前記第1判定時間内に前記発射球数計数手段により計数された発射球の数が予め定めた所定数以上である場合に異常と判定する異常判定手段と、前記異常判定手段により異常と判定された場合に異常状態を報知する異常報知手段と、前記発射装置により遊技球が連続的に発射されているか否かを監視するために前記発射球検出手段により発射球が検出された時点から前記第1判定時間とは異なる所定の第2判定時間を計時する第2計時手段を有する発射球監視手段と、前記発射球監視手段により前記第2判定時間内に後続の発射球の検出が無かった場合に前記第1計時手段と前記発射球数計数手段とを初期化する初期化手段とを備えたことを特徴とするパチンコ遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例について
引用例の記載およびそれら記載事項は、上記2.(2)引用例についてに記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記2.(4)判断で検討した本願補正発明の発射球監視手段において「遊技領域に発射された」なる構成を削除して縮減したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記に記載したとおり、引用例に記載された発明、上記周知技術Aおよび上記周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明、上記周知技術Aおよび上記周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、上記周知技術Aおよび上記周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-07 
結審通知日 2006-12-12 
審決日 2006-12-27 
出願番号 特願2000-94400(P2000-94400)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦池谷 香次郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 渡部 葉子
土屋 保光
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 後藤 憲秋  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ