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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01D
管理番号 1152989
審判番号 不服2005-9733  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-24 
確定日 2007-02-21 
事件の表示 平成 8年特許願第 38770号「ロータリーカッタのコード保持ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月12日出願公開、特開平 9-205846〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯・本願発明
本願は、平成8年2月1日の出願であって、平成17年4月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月17日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

(本願発明)
「筒状のリール内に収容されたコードの両端部が、前記リール外に導出され、前記リールの回転によって、前記リール外に導出されたコードにより草刈を行うロータリカッタ用のコード保持ヘッドであって、前記リールに設けられ前記コードが巻装されるコード巻回部と、前記リールの周縁部に設けられた水平導出部と、該水平導出部に形成され前記コードの両端部が貫通されかつ内周面が前記コードの通過方向に傾斜している複数の導出孔とを有するコード保持ヘッドにおいて、前記リールの外周辺に前記導出孔より導出されたコードが円弧状に曲げられるような曲率を有する弯曲部が当該コード端部を円周方向で両側から挟むような壁体として一体に形成されていることを特徴とするロータリカッタのコード保持ヘッド。」

【2】引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭62-34648号(実開昭63-140825号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、「草刈機のカッターヘッド」に関して、下記の記載がある。
(イ)「・・・第1図及び第2図に示した本考案一実施例のカツターヘツド1は、図示しない草刈機の操作桿の先端部において回転駆動軸2の端部に螺着されて固定されるボス部分3を有し、該ボス部分3は前記駆動軸2と同心状に配置されて軸線方向へ延びていて、その下側部分に横方向に延びる円板部分4を同心状にかつ一体に形成している。更に、カツターヘツド1は前記円板部分4に対しボス部分3と反対側で円板部分4から軸線方向へ延びる比較的小さい外径の、楕円形なと適宜の形状のコード巻回部分5を同心状にかつ一体に形成しており、コード巻回部分5の軸線方向外方端には、該コード巻回部分5より大きい外径のフランジ部分6を同心状にかつ一体に形成している。
前記コード巻回部分5には、カツターとして使用されるナイロンなどのような合成樹脂材料で作られたカツターコード7が適当長さ巻回されており、該コード7の内方端は前記コード巻回部分5に固定されている。・・・
前記円板部分4はその外周縁寄りの一部に軸線方向穴8を形成しており、前記コード巻回部分5に巻回されたコード7の外方端部分が下側から前記穴8に挿通されている。該穴8はコード7が楽に挿通し得るようになつており、かつ、前記穴8の内面にはコード7の損傷を防止するための口金9が取付けられている。更に、前記円板部分4はボス部分3側の面の外周縁部に軸線方向に延びる環状フランジ部分10を一体に形成しており、該環状フランジ部分10は前記穴8に近接する部分に半径方向穴11を形成している。該半径方向穴11はコード7の直径よりも少し大きい内径を有し、かつ、外方向に丸みをもつて開いた湾曲面12を形成している。・・・
カツターヘツド1が回転駆動軸2により回転駆動されると、円板部分4から外方へ延出されたコード7の外方端部分は遠心力の作用によつて緊張されて回転し、コード7の外方端部分はカツターとして作用して草を刈る。・・・」(明細書4頁3行?6頁9行)
(ロ)「・・・また、複数のコードを使用できる様に設けることも設計の自由である。」(明細書7頁16?17行)
(ハ)第1図をみると、半径方向穴11の湾曲面12は、軸線方向穴8より延出されたカツターコード7が円弧状に曲げられるような曲率を有していて、該カツターコード7の外方端部分を円周方向で両側から挟むような環状フランジ部分10として一体に形成されていることが明らかである。

これらの記載事項および特に第1,2図を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。
(引用例1記載の発明)
「カツターコード7の外方端部分が外に延出され、回転によって外に延出されたカツターコード7により草刈を行う回転駆動式のカッターヘッド1であって、前記カツターコード7が巻回されるコード巻回部分5と、円板部分4と、該円板部分4の外周縁寄りに形成され前記カツターコード7の外方端部分が挿通される軸線方向穴8とを有するカッターヘッド1において、前記円板部分4の外周縁部に、前記軸線方向穴8より延出されたカツターコード7が円弧状に曲げられるような曲率を有する半径方向穴11の湾曲面12が当該カツターコード7外方端部分を円周方向で両側から挟むような環状フランジ部分10として一体に形成されている回転駆動式のカッターヘッド1。」

同、実願平1-152440号(実開平3-91722号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、コード式草刈り機におけるコード保持装置に関して、第1?3図とともに下記の記載がある。
(イ)「リール(1)は、平板状の上側水平部(10)と、皿状の下側水平部(2)と、上下水平部(10)(2)を連結する中央連結部(11)・・・とを主たる構成要素とし、中央に軸挿通孔(12)が設けられている。
リール(1)の下側水平部(2)には、その外縁全周に沿って傾斜状の立上り壁(3)が設けられている。そして、立上り壁(3)にはコード挿通用の4つの透孔(4)が等間隔で設けられている。
リール(1)の底部付近に1対の貫通孔で構成されたコード掛け止め部(5)が設けられている。そして、これらの貫通孔にコード(6)の各先端がそれぞれ外向きに通されて中間部でコード掛け止め部(5)に掛け止められている。
・・・ついで、コード(6)を各半分ずつリール(1)の・・・中央連結部(11)に巻き付け、各先端部(6a)が草刈りに必要な長さ分だけ、対向位置にある一対の透孔(4)から外方へ突出させられる。」(明細書5頁4行?6頁11行)
(ロ)第2,3図をみると、透孔4は、内周面がコード6の通過方向に傾斜していることが明らかである。

【3】対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「カツターコード7」、「延出」、「(回転駆動式の)カッターヘッド1」、「巻回」、「コード巻回部分5」、「円板部分4の外周縁寄り」、「軸線方向穴8」、「外周縁部」、「半径方向穴11の湾曲面12」、「環状フランジ部分10」は、それぞれ、本願発明の「コード」、「導出」、「(ロータリカッタ用の)コード保持ヘッド」、「巻装」、「コード巻回部」、「周縁部に設けられた水平導出部」、「導出孔」、「外周辺」、「弯曲部」、「壁体」に相当し、引用例1記載の発明の「カツターコード7の外方端部分」と、本願発明の「コードの両端部」とは、「コードの端部」で共通している。

してみると、両者は、
「コードの端部が、外に導出され、回転によって、外に導出されたコードにより草刈を行うロータリカッタ用のコード保持ヘッドであって、コードが巻装されるコード巻回部と、周縁部に設けられた水平導出部と、該水平導出部に形成される導出孔とを有するコード保持ヘッドにおいて、外周辺に前記導出孔より導出されたコードが円弧状に曲げられるような曲率を有する弯曲部が当該コード端部を円周方向で両側から挟むような壁体として一体に形成されているロータリカッタのコード保持ヘッド。」
の点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)
コード保持ヘッドの水平導出部に形成される導出孔が、本願発明では複数形成されているのに対して、引用発明では複数あるのか明らかではない点。
(相違点2)
本願発明では、コードが筒状のリール内に収容されていて、コードの両端部がリール外に導出されており、導出孔の内周面がコードの通過方向に傾斜しているのに対し、引用例1記載の発明では、そのようになっていない点。

(相違点1について)
引用例1には「・・・また、複数のコードを使用できる様に設けることも設計の自由である。」と記載されている(上記【2】引用例1の記載事項(ロ)参照)ように、複数のコードを使用できるようにすることが当業者が適宜採用し得るような設計的事項であるとともに、その際に、例えば、引用例2に示されているように、導出孔(引用例2記載の発明の「透孔4」に相当。)を複数形成することも、当業者にとって想到容易な事項であるということができる。

(相違点2について)
引用例2には、本願発明の「コード保持ヘッド」に相当する、コード式草刈り機におけるコード保持装置に関して、コードが筒状のリール内に収容されている点、コードの両端部がリール外に導出されている点、さらに、導出孔(引用例2記載の発明の「透孔4」が相当。)の内周面がコードの通過方向に傾斜している点の各事項が記載されており、これらの各技術を、引用例1記載の発明に採用することは、当業者にとって想到容易な事項であるということができる。
なお、引用例1には、引用例1記載の発明の「半径方向穴11の湾曲面12」の作用効果として、「コードは、壁体の曲率半径の大きな弯曲部に沿って延長配設され、コードに局部的に曲げられて大きな応力が印加されてコードが早期に折損することが防止され」(本願の明細書段落【0014】参照。)との記載はないが、引用例1記載の発明においても、カツターコード7は、半径方向穴11の湾曲面12に沿って延長配設されていることから、同等の作用効果を奏するものと解される。

【4】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-22 
結審通知日 2006-12-27 
審決日 2007-01-10 
出願番号 特願平8-38770
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 圭伸  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 ロータリーカッタのコード保持ヘッド  
代理人 押田 良輝  

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