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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1153128
審判番号 不服2004-6340  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-31 
確定日 2007-02-28 
事件の表示 平成10年特許願第229516号「照光式キー」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月22日出願公開、特開平11-167835号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年9月29日(優先権主張平成9年2月18日)に出願した特願平9-279321号の一部を平成10年7月31日に新たな特許出願(特願平10-229516号)としたものであって、平成15年10月3日付けで拒絶の理由が通知され、平成15年12月12日受付で意見書、及び手続補正書が提出され、平成16年2月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年3月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、平成15年12月12日受付の手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「透光性樹脂製キートップの裏面を除く上面及び側面に文字等のパターン印刷層を形成し、前記キートップ裏面を、透光性接着剤を介して透光性のゴム又は熱可塑性エラストマー製キーパッドのキー作動部上面に固着した照光式キーであって、
上記パターン印刷層は、文字、記号、図形等のパターン部分を除いてキートップの上面及び側面を被覆する遮光膜で形成し、
該遮光膜の上面及び側面並びに前記パターン部分に透明な保護膜を形成したことを特徴とする照光式キー。」

3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-83347号公報(以下、「引用刊行物1」という。)、実用新案登録第3036503号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が図面とともにに記載されている。
(1)引用刊行物1
ア「【産業上の利用分野】本発明は携帯電話や自動車電話等の各種移動通信用キ-あるいはその他の各種端末キ-として夜間や暗い場所等において使用するときに便利なコンパクト型の照光式キ-に関する。」(段落【0001】)
イ「【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基いて説明する。図1は本発明の一実施例を示すキ-の拡大断面図である。図1において、1は非作動部1aと作動部1bを透明なシリコンゴムなどの軟質ゴム又は軟質樹脂の透光性の材料で一体に形成したパッドである。作動部1bは本例では上部が上面平坦状に膨出した膨出部1cと下部が下方に突出した突出部1dにて形成されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、後述する如く、非作動部1aの側面の上部もしくは途中部分または下部から上方に向けて膨出する薄肉のスカ-ト部と該スカ-ト部の上部に連接するキ-トップ部とにより形成してもよい。また、作動部1bの膨出部1cの平坦状上面1eを除く残余の作動部1bと非作動部1aの各表面に非透光性の被覆層2を形成する。該被覆層2の形成により外部への光の漏洩が防止される。3は透明材等の透光性硬質樹脂で形成したキ-トップで、指により直接叩打される部分である。このキ-トップ3の裏面には、数字、記号等の抜き文字印刷層4を形成する。したがって、抜き文字印刷層4の抜き文字部分4aのみに光が透過するようになり、その他の印刷部分では光が透過せず、遮蔽される。5は抜き文字印刷層4の裏面に形成した有色透光性印刷層で、抜き文字部分4aが所定の色に写し出されるようにするものである。6は有色透光性印刷層5の裏面と、透光性の材料で形成した軟質ゴム又は軟質樹脂の作動部1bの膨出部1cの平坦状上面1eとを接着する透光性接着剤である。このように透光性硬質樹脂で形成したキ-トップ3をこれと異種材料の軟質ゴム又は軟質樹脂の透光性の材料で形成した作動部上面1eに接着することによりキ-トップ3の叩打時に該キ-トップ3裏面と作動部1bの膨出部1cの平坦状上面1eとの間にずれがなく確実にオン・オフ動作が行われる。また、キ-トップ3を保持するためのフレ-ムも不要となり全体としてコンパクトな設計が可能となる。そして接着剤は透光性のものを使用しているために、この接着剤により照光用の光源からの光が遮られることがなく、キートップ側に着色された文字等の光が送られる。また本実施例で使用する透光性接着剤とは、軟質ゴム又は軟質樹脂と化学的に活性化する下地処理剤を単独使用する場合を意味する他、該下地処理剤と接着剤を併用して使用する場合、あるいは接着剤を単独使用する場合のいずれの場合も含まれる。」(段落【0008】)

上記ア、イの記載事項及び図示内容からみて、引用刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「透光性樹脂製キートップ3の裏面に、数字、記号等の抜き文字印刷層4を形成し、前記透光性樹脂製キートップ3の裏面を、透光性接着剤6を介して透光性の材料で形成した軟質ゴム又は軟質樹脂製キーパッド1の作動部1b上面に固着した照光式キー。」

(2)引用刊行物2
ア「【考案の属する技術分野】
本考案は携帯電話や自動車電話等の各種移動通信用照光式キーパットあるいは電子式手帳その他の各種端末照光式キーパット等として夜間や暗い場所等において使用に便利で、かつ文字、記号、図形等のパターン形成を各種の色分けで表示できる照光式キーパットに関する。」(段落【0001】)
イ「【従来の技術】
従来の照光式キーパットは、透光性のシリコンゴムを成形して得た板状の非作動部と、該非作動部と連接し該非作動部から膨出するキー作動部とを一体成形してキーパットを形成していた。そしてこのキーパット上面全体に白色塗膜を形成し、その白色塗膜の上にさらに黒色等の光遮蔽膜を形成し、前記キー作動部のキートップ天頂部に文字、記号、図形等のパターンを形成するためにレーザー光線照射により黒色部分を除去して白色の文字等のパターンが現れるように形成していた。」(段落【0002】)
ウ「…(略)…さらに必要に応じて、パターン形成したキートップ天頂部1cの全体又はキートップ天頂部1cの全体及びその側面並びに非作動部1a上をプラスチック又はガラス等の硬質又は軟質透明材6で被覆形成する。」(段落【0012】)
エ「…(略)…またパターン形成したキートップ天頂部の全体又はキートップ天頂部の全体及びその側面並びに非作動部上をプラスチック又はガラス等の硬質又は軟質透明材で被覆形成することにより、キートップ天頂部の透光性ベタ色印刷層やポジ又はネガパターン印刷層の確実な保護がなされ、かつ光遮蔽膜も保護されることとなる。」(段落【0014】)

上記イの記載事項からみて、引用刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2-1」という。)が記載されているものと認められる。
「透光性のシリコンゴムを成形して得た板状の非作動部と、該非作動部と連接し該非作動部から膨出するキー作動部とを一体成形したキーパットであって、このキーパット上面全体に白色塗膜を形成し、その白色塗膜の上にさらに黒色等の光遮蔽膜を形成し、前記キー作動部のキートップ天頂部に文字、記号、図形等のパターンを形成するために黒色部分を除去して白色の文字等のパターンが現れるようにした照光式キーパット。」
また、上記ウ、エの記載事項及び図示内容からみて、引用刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2-2」という。)が記載されているものと認められる。
「パターン形成したキートップ天頂部1cの全体及びその側面並びに非作動部1a上をプラスチック又はガラス等の硬質又は軟質透明材6で被覆形成して、キートップ天頂部の透光性ベタ色印刷層やポジ又はネガパターン印刷層の確実な保護がなされ、かつ光遮蔽膜も保護される照光式キーパット。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを比較する。
引用発明1の「数字、記号等の抜き文字印刷層4」は、その機能、構造からみて、本願発明の「文字等のパターン印刷層」に相当し、以下同様に、「透光性の材料で形成した軟質ゴム又は軟質樹脂製キーパッド1」は「透光性のゴム又は熱可塑性エラストマー製キーパッド」に、「作動部1b」は「キー作動部」に各々相当する。
また、引用発明1の「透光性樹脂製キートップ3の裏面に、数字、記号等の抜き文字印刷層4を形成した」と本願発明の「透光性樹脂製キートップの裏面を除く上面及び側面に文字等のパターン印刷層を形成し」とは、透光性樹脂製キートップに文字等のパターン印刷層を形成している点で共通している。
したがって、両者は、
「透光性樹脂製キートップに文字等のパターン印刷層を形成し、前記透光性樹脂製キートップの裏面を、透光性接着剤を介して透光性のゴム又は熱可塑性エラストマー製キーパッドのキー作動部上面に固着した照光式キー。」で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
文字等のパターン印刷層の形成場所に関し、本願発明においては、透光性樹脂製キートップの裏面を除く上面及び側面に形成しているのに対して、引用発明1においては、透光性樹脂製キートップの裏面に形成している点。
〈相違点2〉
文字等のパターン印刷層の形成手段に関し、本願発明においては、パターン印刷層は、文字、記号、図形等のパターン部分を除いてキートップの上面及び側面を被覆する遮光膜で形成しているのに対して、引用発明1においては、数字、記号等の抜き文字で形成しているが、キートップの上面及び側面を被覆する遮光膜で形成しているとは云えない点。
〈相違点3〉
本願発明においては、遮光膜の上面及び側面並びに文字、記号、図形等のパターン部分に透明な保護膜を形成しているのに対して、引用発明1においては、そのような保護膜を有していない点。

5.当審の判断
上記相違点1ないし3について以下検討する。
(1)相違点1について
文字等のパターン印刷層を、キートップの上面に形成することは周知の技術であり(例えば、実願昭63-72154号(実開平1-174820号)のマイクロフィルム、引用刊行物2参照)、また、この文字等のパターン層を、キートップの上面だけではなく、側面にも形成することは、当業者が必要に応じて適宜に採用し得る設計事項である。
したがって、パターン印刷層を、透光性樹脂製キートップの裏面を除く上面及び側面に形成するすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
引用発明2-1は、キーパット上面全体に、黒色等の光遮蔽膜を形成し、キートップ天頂部に文字、記号、図形等のパターンを形成するために、黒色部分を除去して、文字等のパターンが現れるようにした照光式キーの発明であるから、引用発明2-1においては、文字、記号、図形等のパターンは、文字、記号、図形等のパターン部分を除いた、キートップの上面を被覆する遮光膜で形成されているといえる。
また、キートップの側面を遮光膜で被覆することは当業者が必要に応じてなし得る設計的事項である。
したがって、文字等のパターン印刷層の形成手段として、引用発明2-1を採用し、本願発明の相違点2に係る発明とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)相違点3について
引用発明2-2の「プラスチック又はガラス等の硬質又は軟質透明材6」は、その機能、構造からして、本願発明の「透明な保護膜」に相当するから、引用発明2-2は、キートップ天頂部の透光性ベタ色印刷層やポジ又はネガパターン印刷層の部分に透明な保護膜を形成している発明であるといえる。
したがって、パターン部分を保護するために、遮光膜の上面及び側面並びに文字、記号、図形等のパターン部分に透明な保護膜を形成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、本願発明の奏する作用、効果は、引用発明1、引用発明2-1、2-2、及び上記周知の技術から予測できる範囲のものであって、格別なものではない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2-1、2-2、及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-01 
結審通知日 2006-12-12 
審決日 2007-01-04 
出願番号 特願平10-229516
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 信之  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 和泉 等
山本 信平
発明の名称 照光式キー  
代理人 鴇田 將  

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