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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1154147
審判番号 不服2004-11580  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-07 
確定日 2007-03-12 
事件の表示 特願2000-167943号「窓ガラスの洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月11日出願公開、特開2001-340266号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成12年6月5日の出願であって,平成16年4月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成16年6月7日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年6月7日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は,平成15年12月9日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「ビルや家屋の窓ガラスの上部に配設されて窓ガラスに洗浄水を放水する放水部と、放水部から放水された洗浄水がその前面を流下する窓ガラスに高速振動を付与する振動付与手段とを備えたことを特徴とする窓ガラスの洗浄装置。」を
「ビルや家屋の窓ガラスの上部に配設されて窓ガラスに洗浄水を放水する放水部と、放水部から放水された洗浄水がその前面を流下する窓ガラスに高速振動を付与する振動付与手段とを備え、この振動付与手段を窓ガラスに装着したことを特徴とする窓ガラスの洗浄装置。」(下線は補正箇所を示す。)とする補正を含むものである。

2.補正の目的の適否
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1に記載した発明特定事項である「振動付与手段」について,「この振動付与手段を窓ガラスに装着し」と限定するものであり,本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)引用例及びその記載事項
ア.原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-105731号公報(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。
(ア)「ビルなどに設置される窓ガラスの外面を水などの液体で濡らして液体膜で被う一方,前記窓ガラスの内面に超音波振動体を接触させて窓ガラスに超音波振動を伝えることにより窓ガラスの外面を洗浄することを特徴とするビルなどに設置される窓ガラスの洗浄方法。」(第1ページ左欄5-10行)
(イ)「窓ガラス(1)の上方に散水管(2)を配し,窓掃除時に散水管(3)のノズルより水が窓ガラス外面(4)に向け噴出されるようにしている。窓ガラス(1)の内部には超音波振動子(5)を内蔵した超音波振動体(6)を把持する作業者が,この超音波振動体(6)の振動伝達面(7)を窓ガラス内面(8)に接触させて窓ガラス洗浄作業を行つている。」(第1ページ右欄13-20行)
(ウ)「前記散水管(2)より窓ガラス外面(4)に水を噴出させ,水膜(液体膜)(16)で前記外面(4)の全面を被う。」(第2ページ左上欄11-13行)
(エ)「窓ガラス外面(4)に被着する水膜(16)が,ガラスを伝達媒体として伝えられた超音波振動により上記同様キヤビテイシヨン現象を生じ,これにより窓ガラス外面(4)を洗浄するからである。」(第2ページ右上欄5-9行)
(オ)「上記実施例では窓ガラス外面(4)と同時に窓ガラス内面(8)をも,超音波洗浄により洗浄できるようにしているが,窓ガラス外面(4)のみを超音波洗浄により洗浄するようにしてもよい。この場合には,前記液体含浸板(12)は不要で,前記振動板(10)を直接窓ガラス内面(8)に当てがう構成とすることができる。」(第2ページ左下欄2-8行)

上記記載事項(ア)ないし(オ)によれば,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ビルなどの窓ガラス(1)の上方に配されて窓ガラス(1)に水を噴出する散水管(2)と,散水管(2)から噴出した水が窓ガラス外面(4)を被う窓ガラス(1)に超音波振動を伝える超音波振動体(6)とを備え,振動板(10)を直接窓ガラス内面(8)に当てがう窓ガラスの洗浄装置。」

イ.原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-140898号公報(以下,「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
(カ)「ガラス表面に超音波振動子を用いて弾性表面波を発生させ、その波の振動エネルギーにより、ガラス表面に吸着する水滴の物理吸着力を低下させると同時に水滴の凝集力を高める。」(段落【0005】)
(キ)「フロントガラス14、あるいはリアウインドガラス15は自動車本体枠20とゴム21により固定される。超音波振動子4はガラスの外側に固定し、その上に保護のための囲い22を設置する。」(段落【0006】)
(ク)「(5) 建物の窓ガラスなど広い面積でも水滴除去が可能である。」(段落【0007】)

上記記載事項(カ)ないし(ク)によれば,引用例2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「建物の窓ガラスに弾性表面波を発生させるため,該窓ガラスの表面に超音波振動子4を固定する装置。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明1を対比するに,後者の「ビルなど」は,その機能及び作用からみて,前者の「ビルや家屋」に相当し,以下同様に,後者の「上方に配されて」は前者の「上部に配設されて」に,後者の「水」は前者の「洗浄水」に,後者の「噴出する」は前者の「放水する」に,後者の「散水管(2)」は前者の「放水部」に,後者の「窓ガラス外面(4)」は前者の「その前面」に,後者の「被う」は前者の「流下する」に,後者の「超音波振動を伝える」は前者の「高速振動を付与する」に,後者の「超音波振動体(6)」は前者の「振動付与手段」に,それぞれ相当する。

してみれば,本願補正発明と引用発明1とは,
「ビルや家屋の窓ガラスの上部に配設されて窓ガラスに洗浄水を放水する放水部と、放水部から放水された洗浄水がその前面を流下する窓ガラスに高速振動を付与する振動付与手段とを備えた窓ガラスの洗浄装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点)
振動付与手段について,本願補正発明においては,窓ガラスに装着したものであるのに対し,引用発明1においては,振動板(10)を直接窓ガラス内面(8)に当てがうものである点。

(3)判断
相違点について検討する。
引用発明1において,窓ガラスを超音波振動させるため,引用発明2のように,窓ガラスに振動付与手段を固定,すなわち,装着するようにし,上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,窓ガラスを超音波振動させるという同一技術分野に属する代替手段を採用したに過ぎないので,当業者が容易になし得ることである。

よって,上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は,引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易になし得るものである。

また,上記相違点によって,本願補正発明が奏する作用・効果も,引用発明1及び引用発明2から予測される範囲のものであって,格別なものとは認められない。

4.むすび
以上のとおり,本願補正発明は,引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明についての判断
1.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成15年12月9日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「ビルや家屋の窓ガラスの上部に配設されて窓ガラスに洗浄水を放水する放水部と、放水部から放水された洗浄水がその前面を流下する窓ガラスに高速振動を付与する振動付与手段とを備えたことを特徴とする窓ガラスの洗浄装置。」

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は,前記「第2[理由]3.(1)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,本願補正発明から,「振動付与手段」について,「この振動付与手段を窓ガラスに装着し」との限定を省いたものであり,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに,他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2[理由]3.(2),(3)」で検討したとおり,引用発明1及び引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様に,引用発明1及び引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-19 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-22 
出願番号 特願2000-167943(P2000-167943)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47L)
P 1 8・ 121- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武井 健浩金丸 治之  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 増沢 誠一
芦原 康裕
発明の名称 窓ガラスの洗浄装置  
代理人 高松 利行  

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