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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1154156
審判番号 不服2005-18681  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-28 
確定日 2007-03-12 
事件の表示 特願2001-101221「地図情報提供方法、地図情報提供システム、及びコンピュータ読取可能なプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 9日出願公開、特開2002-296044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年3月30日の出願であって、平成17年8月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、同年10月27日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年10月27日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年10月27日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、補正前の請求項6に対応する補正後の請求項5は、
「地図情報の提供を利用する利用者側に設けられた、表示画面を備えた端末装置(以下、利用者側端末装置)に対しインターネット等の通信網を介して接続される、少なくとも地図データベースを備えた地図情報提供サーバを用い、前記利用者側端末装置に対して地図情報を提供する地図情報提供システムであって、
自身の現在位置を特定するための現在位置特定手段を備える利用者側端末装置により、その現在位置特定手段により特定される現在位置とともに現在位置とは異なる第二位置と関連する形にて地図要求情報が前記地図情報提供サーバに向けて出力されることに基づき、前記地図情報提供サーバは、その地図要求情報を受信するとともにその要求元の利用者側端末装置の現在位置に関連する地図情報を、前記地図データベースの中から検索するとともに読み出す検索・読出手段と、
それら読み出された地図情報をその要求元の利用者側端末装置に向けて出力する出力手段とを備え、
前記利用者側端末装置において、前記地図情報提供サーバから当該利用者側端末装置に向けて送信された前記地図情報を記憶するための端末側地図情報記憶手段が設けられており、前記地図情報を表示するために、前記利用者端末装置から前記地図情報提供サーバに所定地域の前記地図データを要求する際に、前記地図情報提供サーバの記憶手段(以下、サーバ側記憶手段ともいう)に記憶される地図情報(以下、サーバ側地図情報ともいう)と、前記地図情報提供サーバより送信されて前記端末側地図情報記憶手段に既に記憶されている地図情報(以下、端末側地図情報)との両方において、表示されるべき前記所定地域の一部又は全部の地域の地図データを比較し、その比較対象となる地域(以下、比較対象地域ともいう)における前記サーバ側地図情報及び前記端末側地図情報が互いに同一の地図情報を表示するものであるか否かを判断し、同一であると判断した場合には、その比較対象地域については、前記地図情報提供サーバからの前記サーバ側地図情報の読み出しを行なわずに前記端末側地図情報を表示に使用し、同一でない場合又はその比較対象地域の地図情報が端末側地図情報に存在しない場合には、その比較対象地域における前記サーバ側地図情報を表示に使用することを特徴とする地図情報提供システム。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項である「現在位置と関連する」地図要求情報について「現在位置とともに現在位置とは異なる第二位置と関連する」と限定するとともに、「利用者側端末装置に向けて出力する出力手段と、」との記載を、「利用者側端末装置に向けて出力する出力手段とを備え、」と補正するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同条同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項5に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-97716号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
・「【0011】図1は、本発明の実施の形態に係る地図情報更新システムの全体構成を示す図である。同図に示すように、この地図情報更新システム10は、車両に搭載されたナビゲーション装置12とセンタ14とが通信回線16により通信接続されてなる。ここで、センタ14は地図情報記憶部26と経路検索部28と地図情報送信部30とを有しており、地図情報記憶部26には常に最新の地図情報が格納されるようになっている。
【0012】一方、ナビゲーション装置12は検索条件入力部18と検索条件情報送信部20と地図情報更新部22と地図情報記憶部24とを含んで構成されている。検索条件入力部18は図示しないGPS受信機とディスプレイ上に貼設されたタッチパネルとを含んで構成されており、現在位置、経由位置及び目的位置を含む検索条件を入力することができるようになっている。そして、検索条件情報送信部20は検索条件入力部から出力される検索条件情報を通信回線16を介してセンタ14に送信するようになっている。なお、ナビゲーション装置12とセンタ14とは自動車電話や衛星サブバンド通信を用いてデータの送受信が行えるようになっている。
【0013】センタ14ではナビゲーション装置12から検索条件情報が送信されると、その検索条件情報と地図情報記憶部26に記憶された最新の地図情報とに基づいて経路検索処理が行われる。そして、地図情報送信部30では経路検索部28で検索された1以上の経路に沿った地図情報を地図情報記憶部26から読み出し、それを通信回線16を介してナビゲーション装置12に送信する。そして、ナビゲーション装置12では地図情報更新部22がセンタ14から送信された地図情報に基づき、該ナビゲーション装置12の地図情報記憶部24に格納された地図情報を更新する。
【0014】図2は、以上の構成を有する地図情報更新システムの動作を説明するフロー図である。同図に示すように、本地図情報更新システム10ではナビゲーション装置12のユーザが地図の更新を指示して、現在地、経由地点及び目的地等の種々の検索条件を入力すると(S101)、検索条件情報送信部20からセンタ14にそれらの情報が送信される(S102)。その後、センタ14では受信したデータを基に地図情報記憶部26に記憶された最新の地図情報に基づく経路計算を行う(S103)。
【0015】次に、地図情報送信部30は検索された経路を含む2次メッシュデータ(地図情報)をナビゲーション装置12に送信する。そして、ナビゲーション装置12では地図情報更新部22が受信した2次メッシュデータを用いて地図情報記憶部24に格納された地図情報を更新する(S105)。
【0016】以上説明した地図情報更新システム10によれば、経路計算がセンタ14にて最新の地図情報に基づいてなされるので正確な経路計算を行うことができる。また、センタ14からナビゲーション装置12に送信される地図情報が経路上のものだけであるため、センタ14からナビゲーション装置12に送信するデータ量を削減することができる。この結果、地図情報の更新の際に必要な通信コストや通信時間を削減することができる。
【0017】なお、以上説明した地図情報更新システム10は種々の変形実施が可能である。たとえば、地図情報送信部30は、経路検索部28で検索された経路上のすべての地図情報をナビゲーション装置12に送信する代わりに、それら地図情報の作成日時とナビゲーション装置12の地図情報記憶部24に格納された地図情報の作成日時とを予め比較し、ナビゲーション装置12側で未だ記憶されていない最新の地図情報のみを送信するようにしてもよい。こうすれば、更にセンタ14からナビゲーション装置12に送信するデータ量を削減することができる。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。
「地図情報を受信して更新するユーザ側に設けられた、ディスプレイを備えた車両搭載ナビゲーション装置12(以下、ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置)に対し通信回線16を介して接続される、少なくとも地図情報記憶部26を備えたセンタ14を用い、前記ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置に対して地図情報を送信する地図情報更新システムであって、
GPS受信機を含んで構成された検索条件入力部18を備えるユーザ側車両搭載ナビゲーション装置により、その検索条件入力部18から入力される現在位置、経由位置及び目的位置を含む検索条件の情報である検索条件情報が前記センタ14に向けて送信されることに基づき、前記センタ14は、その検索条件情報を受信するとともにそのユーザ側車両搭載ナビゲーション装置の現在位置、経由位置及び目的位置を含む地図情報を、前記地図情報記憶部26の中から検索するとともに読み出す経路検索部28と、
それら読み出された地図情報をそのユーザ側車両搭載ナビゲーション装置に向けて送信する地図情報送信部30とを備え、
前記ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置において、前記センタ14から当該ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置に向けて送信された前記地図情報を記憶するための地図情報記憶部24が設けられており、前記ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置から前記センタ14に検索条件情報を送信する際に、地図情報送信部30が、前記センタ14の地図情報記憶部26に記憶される地図情報(以下、センタ側地図情報ともいう)と、前記センタ14より送信されて前記地図情報記憶部24に格納されている地図情報(以下、ユーザ側地図情報)との両方において、検索された経路を含む地図情報の作成日時を予め比較し、その比較対象となる地図情報(以下、比較対象地域ともいう)における前記センタ側地図情報及び前記ユーザ側地図情報のいずれが最新のものかを判断し、前記ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置で未だ記憶されていない最新の地図情報のみを前記センタ14から送信することにより地図情報更新部22が前記地図情報記憶部24に格納された地図情報を更新する地図情報更新システム。」

(2-2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-65436号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地図データ選択支援装置、特に、地図データ群から所望の地図データを選択するユーザの作業を容易にする装置に関する。
【0002】この支援装置は、地図データ処理システムに設けられる。本発明の地図データ処理システムは通信手段により接続された端末装置および情報センタを有する。情報センタから端末装置へ最新の地図データが送られ、端末装置が記憶している地図データが更新される。
【0003】特に、本発明は、移動体に搭載された端末装置を含む地図データ処理システムに適している。以下の説明では、移動体の例として、車両を取り上げる。」

・「【0026】
【発明の実施の形態】
「実施形態1」以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)について、図面を参照し説明する。図1は、本実施形態の地図データ処理システムの構成を示すブロック図である。地図データ処理システムは、車両に搭載された端末装置1と、情報センタ20とを有する。情報センタ20は、多数の車両との間で個別にデータ通信を行う。本発明の地図データ選択支援装置は、端末装置1と一体に設けられている。また、端末装置1は、通常は、地図データを利用するナビゲーション装置として機能する。
【0027】端末装置1には、装置全体を制御する制御部3が設けられている。制御部3には、地図データを記憶する記憶媒体5が接続されている。本実施形態では、記憶媒体5は、読み書き可能なハードディスク装置である。ただし、ハードディスク装置以外の読み書き可能な任意の記憶装置を適用してもよいことはもちろんである。制御部3は、記憶媒体5に記憶された地図データのメンテナンス処理を行う。メンテナンス処理には、後述するように、「地図データの確認」「地図データの更新」「地図データの整理」が含まれる。
【0028】また、制御部3には、通信回路7が接続されている。制御部3は、通信回路7を用いて情報センタ20との間でデータ通信を行う。通信されるデータには、メンテナンスに関連する各種の情報や、更新用の地図データが含まれる。制御部3は、通信により取得された地図データを記憶媒体5に書き込むことにより、記憶媒体5内の地図データの更新処理を行う。」

・「【0033】次に、情報センタ20について説明する。センタ制御部22は、センタ全体を制御している。センタ制御部22は、センタ通信回路24を用いて車載端末装置1との間でデータ通信を行う。センタ制御部22にはセンタ地図記憶装置26が接続されており、センタ地図記憶装置26は、車両側の記憶媒体5の地図データと同様の構造の地図データを記憶している。センタ制御部22は、常に最新の地図データを入手してセンタ地図記憶装置26に記憶させる。最新の地図データは、インターネット28やその他の手段を用いて外部から入手される。
【0034】センタ制御部22は、端末装置1から要求された地図データをセンタ地図記憶装置26から読み出し、センタ通信回路24を用いて車両へ送る。また、センタ制御部22は、必要に応じ、センタ地図記憶装置26から地図データのヘッダ情報のみを読み出して、端末装置1へ送る。この処理に利用するため、予め、ヘッダ情報のみを抽出したファイルを別途作成しておくことも好適である。ヘッダ情報の通信は、実際の地図データの通信ではないので、短時間で行える。車両側では、ヘッダ情報を参照して、地図データの更新日付やデータ量に関する判断ができる。」

・「【0040】図7は、「地図データ確認」の処理のフローチャートである。図5で「地図データ確認」が選択されると、この処理が行われる。また、「お任せ」が選択されたときも、この処理が行われる。制御部3は、地図データの比較対象をユーザに問い合わせる(S11)。ユーザは、情報センタと、媒体のどちらかを選択する。
【0041】情報センタが選択されると、制御部3は、通信回路7を用いて情報センタ20とデータ通信を行う。制御部3は、情報センタ20に対し、センタで保有している地図データの更新日付に関する情報を要求する。ヘッダ情報に必要な日付情報が含まれており、実際にはヘッダ情報の要求が送られる。この要求に応え、センタ制御部22は、センタ地図記憶装置26に記憶されている地図データのヘッダ情報を読み出し、センタ通信回路24を用いて車両へ送る(S12)。
【0042】次に、制御部3は、記憶媒体5に記憶されている地図データのヘッダ情報を読み出す。そして、読み出したヘッダ情報と、S12で取得したヘッダ情報とを比較する。ここで、同じ地図データについて、ヘッダ情報の更新日付が比較される(S15)。同じ地図データとは、スケールと領域が同じ地図データを意味する。これにより、記憶媒体5内の各地図データのバージョンが、情報センタ20が保有している最新地図データのバージョンと同じか否かが判断される。」

・「【0057】図10は、更新対象データの設定処理を示すフローチャートである。まず、更新対象候補が仮設定される(S41)。更新対象候補は、S21、S22、S23での指定条件に適合する地図データである。制御部3は、更新対象候補の地図データの日付情報を情報センタ20から受信する(S42)。図7のS12と同様にして、制御部3が情報センタ20にヘッダ情報を要求する。情報センタ20のセンタ制御部22は、ヘッダ情報をセンタ地図記憶装置26から読み出して送信する。ただし、候補の地図データのヘッダ情報のみが要求され、送信される。
【0058】次に、候補の地図データの一つに関し、車両側データのヘッダ情報とセンタ側データのヘッダ情報とが比較される。特にヘッダ情報内の更新日付が比較され、そして、センタ側の地図データの更新日付の方が新しいか否かが判断される(S43)。YESの場合、着目している候補の地図データが、更新対象に登録される(S44)。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「地図情報を受信して更新する」が前者における「地図情報の提供を利用する」に相当し、以下同様に、「ユーザ側」が「利用者側」に、「ディスプレイ」が「表示画面」に、「車両搭載ナビゲーション装置12」が「端末装置」に、「ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置」が「利用者側端末装置」、「利用者端末装置」及び「要求元の利用者側端末装置」に、「通信回線16」が「インターネット等の通信網」に、「地図情報記憶部26」が「地図データベース」及び「(地図情報提供サーバの)記憶手段」に、「センタ14」が「地図情報提供サーバ」に、「送信」が「提供」に、「地図情報更新システム」が「地図情報提供システム」に、「GPS受信機を含んで構成された検索条件入力部18」が「自身の現在位置を特定するための現在位置特定手段」に、「検索条件入力部18から入力される」が「現在位置特定手段により特定される」に、「現在位置、経由位置及び目的位置を含む検索条件の情報である検索条件情報がセンタ14に向けて送信される」が「現在位置とともに現在位置とは異なる第二位置と関連する形にて地図要求情報が地図情報提供サーバに向けて出力される」に、「現在位置、経由位置及び目的位置を含む地図情報」が「現在位置に関連する地図情報」に、「経路検索部28」が「検索・読出手段」に、「送信する地図情報送信部30」が「出力する出力手段」に、「地図情報記憶部24」が「端末側地図情報記憶手段」に、「検索条件情報を送信する際」が「所定地域の地図データを要求する際」に、「センタ側地図情報」が「サーバ側地図情報」に、「格納されている」が「既に記憶されている」に、「ユーザ側地図情報」が「端末側地図情報」に、それぞれ相当している。
また、後者において、ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置からの検索条件情報の送信は、「地図情報を表示するために」なされるものであることは明らかである。
そして、後者の「検索された経路を含む地図情報の作成日時」については、「検索された経路を含む地図情報」が「表示されるべき所定地域」であり、「作成日時」が「地図データ」の一種であるといえることから、前者の「表示されるべき所定地域の一部又は全部の地域の地図データ」に相当し、後者の「比較対象となる地図情報」は前者の「比較対象となる地域」に相当する。
さらに、後者の「センタ側地図情報及びユーザ側地図情報のいずれが最新のものかを判断し、ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置で未だ記憶されていない最新の地図情報のみをセンタ14から送信することにより地図情報更新部22が地図情報記憶部24に格納された地図情報を更新する」態様は前者の「サーバ側地図情報及び端末側地図情報が互いに同一の地図情報を表示するものであるか否かを判断し、同一であると判断した場合には、その比較対象地域については、地図情報提供サーバからの前記サーバ側地図情報の読み出しを行なわずに前記端末側地図情報を表示に使用し、同一でない場合又はその比較対象地域の地図情報が端末側地図情報に存在しない場合には、その比較対象地域における前記サーバ側地図情報を表示に使用する」態様に相当するといえる。

したがって、両者は、
「地図情報の提供を利用する利用者側に設けられた、表示画面を備えた端末装置(以下、利用者側端末装置)に対しインターネット等の通信網を介して接続される、少なくとも地図データベースを備えた地図情報提供サーバを用い、前記利用者側端末装置に対して地図情報を提供する地図情報提供システムであって、
自身の現在位置を特定するための現在位置特定手段を備える利用者側端末装置により、その現在位置特定手段により特定される現在位置とともに現在位置とは異なる第二位置と関連する形にて地図要求情報が前記地図情報提供サーバに向けて出力されることに基づき、前記地図情報提供サーバは、その地図要求情報を受信するとともにその要求元の利用者側端末装置の現在位置に関連する地図情報を、前記地図データベースの中から検索するとともに読み出す検索・読出手段と、
それら読み出された地図情報をその要求元の利用者側端末装置に向けて出力する出力手段とを備え、
前記地図情報提供サーバから当該利用者側端末装置に向けて送信された前記地図情報を記憶するための端末側地図情報記憶手段が設けられており、前記地図情報を表示するために、前記利用者端末装置から前記地図情報提供サーバに所定地域の前記地図データを要求する際に、前記地図情報提供サーバの記憶手段に記憶される地図情報(以下、サーバ側地図情報ともいう)と、前記地図情報提供サーバより送信されて前記端末側地図情報記憶手段に既に記憶されている地図情報(以下、端末側地図情報)との両方において、表示されるべき前記所定地域の一部又は全部の地域の地図データを比較し、その比較対象となる地域(以下、比較対象地域ともいう)における前記サーバ側地図情報及び前記端末側地図情報が互いに同一の地図情報を表示するものであるか否かを判断し、同一であると判断した場合には、その比較対象地域については、前記地図情報提供サーバからの前記サーバ側地図情報の読み出しを行なわずに前記端末側地図情報を表示に使用し、同一でない場合又はその比較対象地域の地図情報が端末側地図情報に存在しない場合には、その比較対象地域における前記サーバ側地図情報を表示に使用する地図情報提供システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
本願補正発明のものは、「地図情報提供サーバから当該利用者側端末装置に向けて送信された地図情報を記憶するための端末側地図情報記憶手段が設けられており、前記地図情報を表示するために、前記利用者端末装置から前記地図情報提供サーバに所定地域の地図データを要求する際に、前記地図情報提供サーバの記憶手段に記憶される地図情報(以下、サーバ側地図情報ともいう)と、前記地図情報提供サーバより送信されて前記端末側地図情報記憶手段に既に記憶されている地図情報(以下、端末側地図情報)との両方において、表示されるべき前記所定地域の一部又は全部の地域の地図データを比較し、その比較対象となる地域(以下、比較対象地域ともいう)における前記サーバ側地図情報及び前記端末側地図情報が互いに同一の地図情報を表示するものであるか否かを判断し、同一であると判断した場合には、その比較対象地域については、前記地図情報提供サーバからの前記サーバ側地図情報の読み出しを行なわずに前記端末側地図情報を表示に使用し、同一でない場合又はその比較対象地域の地図情報が端末側地図情報に存在しない場合には、その比較対象地域における前記サーバ側地図情報を表示に使用する」行為が「利用者側端末装置において」なされるのに対し、引用発明1のものは、上記行為の中の、「地図情報提供サーバの記憶手段に記憶される地図情報(以下、サーバ側地図情報ともいう)と、前記地図情報提供サーバより送信されて前記端末側地図情報記憶手段に既に記憶されている地図情報(以下、端末側地図情報)との両方において、表示されるべき前記所定地域の一部又は全部の地域の地図データを比較し、その比較対象となる地域(以下、比較対象地域ともいう)における前記サーバ側地図情報及び前記端末側地図情報が互いに同一の地図情報を表示するものであるか否かを判断し」ている行為は「地図情報提供サーバ(センタ14の地図情報送信部30)」が行い、それ以外の行為が「利用者側端末装置(ユーザ側車両搭載ナビゲーション装置)において」なされるものである点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
引用例2に記載された発明(以下、「引用発明2」という。)は、利用者側端末装置(「車両に搭載された端末装置1」が相当)において、地図情報提供サーバ(「情報センタ20」が相当)の保有している地図データの更新日付と利用者側端末装置の保有している地図データの更新日付を比較し、利用者側端末装置が地図データを保有していない領域及び地図情報提供サーバの地図データの更新日付の方が新しい領域についてのみ、地図データの更新対象と判断する地図情報提供システム(「地図データ選択支援装置」が相当)に関するものである。
引用発明1のものも、引用発明2のものも、地図情報提供サーバと利用者側端末装置とのデータの更新日時に着目して更新対象を選択する点で共通するものであるから、引用発明1に引用発明2の技術思想を適用し、地図データを要求する際の比較・判断を利用者側端末装置側で行うことにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明1及び2から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
平成17年10月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項6に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年8月26日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「地図情報の提供を利用する利用者側に設けられた、表示画面を備えた端末装置(以下、利用者側端末装置)に対しインターネット等の通信網を介して接続される、少なくとも地図データベースを備えた地図情報提供サーバを用い、前記利用者側端末装置に対して地図情報を提供する地図情報提供システムであって、
自身の現在位置を特定するための現在位置特定手段を備える利用者側端末装置により、その現在位置特定手段により特定される現在位置と関連する形にて地図要求情報が前記地図情報提供サーバに向けて出力されることに基づき、前記地図情報提供サーバは、その地図要求情報を受信するとともにその要求元の利用者側端末装置の現在位置に関連する地図情報を、前記地図データベースの中から検索するとともに読み出す検索・読出手段と、
それら読み出された地図情報をその要求元の利用者側端末装置に向けて出力する出力手段と、
前記利用者側端末装置において、前記地図情報提供サーバから当該利用者側端末装置に向けて送信された前記地図情報を記憶するための端末側地図情報記憶手段が設けられており、前記地図情報を表示するために、前記利用者端末装置から前記地図情報提供サーバに所定地域の前記地図データを要求する際に、前記地図情報提供サーバの記憶手段(以下、サーバ側記憶手段ともいう)に記憶される地図情報(以下、サーバ側地図情報ともいう)と、前記地図情報提供サーバより送信されて前記端末側地図情報記憶手段に既に記憶されている地図情報(以下、端末側地図情報)との両方において、表示されるべき前記所定地域の一部又は全部の地域の地図データを比較し、その比較対象となる地域(以下、比較対象地域ともいう)における前記サーバ側地図情報及び前記端末側地図情報が互いに同一の地図情報を表示するものであるか否かを判断し、同一であると判断した場合には、その比較対象地域については、前記地図情報提供サーバからの前記サーバ側地図情報の読み出しを行なわずに前記端末側地図情報を表示に使用し、同一でない場合又はその比較対象地域の地図情報が端末側地図情報に存在しない場合には、その比較対象地域における前記サーバ側地図情報を表示に使用することを特徴とする地図情報提供システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から、実質的に、「現在位置と関連する」地図要求情報について、「現在位置とともに現在位置とは異なる第二位置と関連する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-17 
結審通知日 2007-01-19 
審決日 2007-01-30 
出願番号 特願2001-101221(P2001-101221)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 晋司片岡 弘之  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 渋谷 善弘
高木 進
発明の名称 地図情報提供方法、地図情報提供システム、及びコンピュータ読取可能なプログラム  
代理人 菅原 正倫  

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