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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680092 審決 特許
無効200680032 審決 特許
無効200680280 審決 特許
無効200680043 審決 特許
無効200680077 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C02F
管理番号 1154528
審判番号 無効2006-80004  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-01-13 
確定日 2007-03-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第3613376号発明「純水製造装置及び純水製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3613376号の請求項1乃至3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I 手続の経緯・本件発明

本件特許第3613376号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成9年12月1日に出願され、平成16年11月5日にそれらの発明についての特許権の設定登録がなされたものであって、本件請求項1乃至3に係る発明(以下、「本件発明1乃至3」という。)は、特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(ここで、本件発明1乃至3については、特定事項を(A-1)から(A-11)までに分節して記載することとする。)

「【請求項1】
(A-1):陽イオン交換樹脂塔および陰イオン交換樹脂塔を前記順に被処理水の脱塩のために設けられた脱塩装置と、
(A-2):前記脱塩装置の後段に設けられたアニオン性膜を用いる逆浸透膜装置と、
(A-3):を有する純水製造装置において、
(A-4):前記脱塩装置と前記逆浸透膜装置の間に、陽イオン交換樹脂塔を設けたことを特徴とする、
(A-5):純水製造装置。
【請求項2】
(A-6):前記後段の陽イオン交換樹脂塔の再生方式が、向流再生方式である、
(A-5):請求項1記載の純水製造装置。
【請求項3】
(A-7):被処理水を陽イオン交換樹脂塔および陰イオン交換樹脂塔に通水し、
(A-8):該流出水を該陽イオン交換樹脂塔および陰イオン交換樹脂塔の後段に位置する陽イオン交換樹脂塔に通水して、
(A-9):該流出水中に含まれる正に帯電している有機物を除去し、
(A-10):次いで該陽イオン交換樹脂塔の流出水をアニオン性膜を用いる逆浸透膜装置に通水することを特徴とする、
(A-11):純水の製造方法。

II 当事者の主張および証拠方法

1 請求人の主張の概要

理由1
甲第2号証には、2床3塔式純水製造装置(2B3T)の後段に逆浸透膜装置を設けた純水製造装置において、正に荷電した有機物が逆浸透膜装置の目詰まりの原因となり透過水量を低下させることが記載されており、本件特許発明が解決しようとする課題と同一の課題が示されている。そして、2B3Tの後段において、アニオン交換樹脂から溶出する正の家電を有する有機物を除去するのにカチオン塔を設置することは、甲第4号証により公知である。
したがって、甲第2号証に記載の2B3Tの後段に逆浸透膜装置を設けた純水製造装置において、逆浸透膜装置の透過水量を低下させる原因物質が特定され、その原因物質を除去しようとして、2B3Tと逆浸透膜装置の間にカチオン塔を設置することは、純水の製造分野における当業者であれば容易に想到しうる事項である。
甲第4号証には、カチオン交換樹脂の再生方式としては、向流再生方式が再生水が少なくて済み、通水時に高純度水が得られることが記載されており、請求項1記載の純水製造装置において、再生方式を向流再生方式とすることは、甲第4号証の記載に基づいて当業者が容易に推考し得た程度のことである。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の純水製造装置を、周知の方法で使用して純水を製造するようにした発明であって、請求項1の発明に対して単なるカテゴリーの異なる発明に過ぎないから、請求項1の発明に関して説明した理由と同じ理由により当業者が容易に推考し得た程度のことである。
以上のように、本件発明1乃至3は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件発明に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2 請求人の証拠方法

甲第1号証 :平成2年9月11日株式会社リアライズ社発行「超純水の科学」
甲第2号証 :特開平2-207888号公報
甲第3号証 :特開平5-309237号公報
甲第4号証 :福田他1名著、「デュオライト=粒径調整(均一粒径)イオン交換樹脂=」日本工業出版発行「新素材」1997.3,第6?9頁(Vol.8,NO.3)

3 被請求人の主張の概要

理由1に対して
甲第1号証には、性能低下した膜の機能回復を洗浄手段で行うことと、その場合に用いる界面活性剤の選択について述べられるにとどまり、膜を汚染する物質を積極的に除去する技術思想は示されておらず、かかる物質を如何なる技術的手段で除去するかということについては触れるところもなく、同号証には、「逆浸透膜として負に帯電しているものが用いられた場合、正に帯電している物質が膜に付着して透過水量を低下させる原因となることが記載されている。」という主張は誤りである。
甲第2号証の特許請求の範囲の記載においてpHを調節する理由として逆浸透膜に有機物が吸着されて目詰まりの原因となり、この有機物が官能基としてアミンを有するものであり、逆浸透膜が有する官能基のカルボン酸基とイオン交換して目詰まりを起こしていることから、イオン交換しないようにpHを調節した純水を逆浸透膜に通すことにより目詰まりが起こらない操作条件下で逆浸透操作を行おうとするものであり、リークする物質を除くというものでなく、吸着されないようにする異なる技術思想に基づく方法に関するものである。
甲第3号証は、直列に連結した複数台の膜モジュールにより液体を処理する方法において、少なくとも1台の膜モジュールに正電荷を持つ重合体が架橋され、そして、他の膜モジュールには負電荷性のものが用いられる多段式逆浸透システムの記載があるだけで、直接関連するものではない。
甲第4号証には、特定のイオン交換樹脂の性能と用途について記載があり、2B3Tの後段にカチオン塔を設置する塔構成が知られていたことは認められるが、処理塔の数を重ねれば処理水の純度が向上するのは当然のことで、この事実を単に示したものにすぎない。本件特許発明の脱塩装置の後段にアニオン性膜を用いる逆浸透膜装置を設置した場合の透過水量の減少防止を目的に脱塩装置と逆浸透膜装置の間に陽イオン交換塔を設置するもので、甲第4号証でカチオン塔を用いる目的とは異なる目的で陽イオン交換塔を設けており技術思想において異なるものである。また、同号証の第7頁中欄の(3)向流再生についての説明は、向流再生について普通に知られたメリットを説明するものに過ぎず本発明の請求項2を示唆するものではない。
甲第2号証に記載の方法で用いる装置の発明と、甲第4号証に記載の装置の発明とは、それぞれ異なった技術思想に立脚し、異なった目的を達成するためになされた発明であって、両者の組み合わせの動機付けが無いまま、本件特許発明が両証拠を単に組み合わせることによって容易に発明をすることができたものであるとする請求人の主張は受け入れることができない。そして、このような装置の構成によって明細書に記載の顕著な効果を奏したものであることから、各号証に記載された発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項1の装置の発明が特許性を有する以上、請求項3のこの装置を使用して純水を製造する方法の発明に特許性があるのは当然である。
請求項2の陽イオン交換樹脂塔の再生方式を向流再生方式と規定する装置の発明は、向流再生方式がより優れるものであったことから記載したものである。
したがって、本件発明1乃至3は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1乃至3に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものではない。

4 甲第1号証乃至甲第4号証の記載事項

本件発明との関連から甲第1号証乃至甲第4号証の記載の一部を摘示又は記載を要約すると次のようになる。
・甲第1号証には次のような記載がある。
(ア) 「なお、最近広く用いられるようになってきた合成高分子系のRO膜については、膜が“正”または“負”に帯電しているものが多く、界面活性剤を用いて洗浄する場合には十分注意を要する。たとえば“正”に帯電している膜にアニオン系の界面活性剤を用いると、界面活性剤が膜に付着して著しい透過水量の低下を招く場合がある(逆の組合せの場合も同様である)。」(第274頁下から1行?第277頁第3行)と記載されている。
・甲第2号証には次のような記載がある。
(イ) 「従来より、様々な分野において純度の高い純水が求められ、特に近時においては、・・・電気伝導率やシリカの基準を満足することは勿論のこと、TOC(全有機炭素)、生菌の除去等についても高度に要求されるようになってきている。
このためにイオン交換樹脂、逆浸透膜等を用いた膜処理装置、紫外線殺菌、紫外線有機物分解器等の多岐にわたるユニットを組合せた超純水製造のシステムが使用されている。
このシステムの一例概要は次のように説明される。すなわち・・・適当な前処理を行なった原水を、イオン交換樹脂を用いた例えば2床3塔式純水製造装置(2B3T)や混床式純水製造装置(MB)で処理し、これにより得られた純水(以下便宜的に[-次純水」と称する)を逆浸透膜装置に通して有機物等を除去し、更に・・・超純水を製造する。」(第2頁左上欄下から3行?同頁左下欄第1行)と記載されている。
(ウ) 「この透過水量の経時的な低下は逆浸透膜が何らかの物質により目詰りするためと考えられ、その原因としてはイオン交換樹脂からのその製造時に用いられている未反応物質等の溶出、半導体洗浄工程の回収水を再利用する場合の該洗浄水に含まれる界面活性剤等の混入、プロセスを構成する管、槽内面からの微量物質の溶出等々が考えられる。」(第2頁右下欄第4?11行)と記載されている。
(エ) 「そこで本発明者は、これらの問題について鋭意研究を重ねたところ、上記透過水量の低下の問題は、逆浸透膜中に有機物が吸着されてこれが目詰りの原因となることに由来することが分った。分析によればこの有機物は主に官能基としてアミンを有するものであり、これが逆浸透膜が有する官能基のカルボン酸基とイオン交換して目詰りが起こると考えられる。」(第3頁左上欄第9?16行)と記載されている。
(オ) 「第1図は本発明により構成した超純水製造装置の構成概要一例をフローで示したものである。
この図において、2は純水製造装置を示し、図示しない凝集沈澱装置を通して処理した原水を濾過器F、陽イオン交換塔K、脱炭酸塔D、陰イオン交換塔Aの順に通して純水処理し、得られた一次純水を一次純水貯槽ST1に溜める。
次にこれをポンプPにより精密濾過器MFを介して逆浸透膜装置ROに通す。
本例のこの逆浸透膜装置ROは、例えばカルボン酸基をイオン交換基として有するアニオン極性膜を有するものであり」(第4頁左下欄第15行?同頁右下欄第8行)と記載されている。
・甲第3号証には次のような記載がある。
(カ) 「ここで用いる負荷電性の複合半透膜とは、例えばポリスルホンなどからなる微多孔性支持層上に負荷電性を有する活性層が形成されたものである。 かかる活性層とは、負固定荷電基としてカルボン酸、スルホン酸、リン酸、硫酸などの基を有する架橋有機重合体からなり、特に脱塩性能、透水性の点から、界面重縮合によって合成された架橋ポリアミド系重合体が好ましい。 」(段落【0010】)と記載されている。
・甲第4号証には次のような記載がある。
(キ) 「2B3T(復床)+カチオン塔
上記2B3T処理水はもはや純水レベルであるが、微量のNa+が含まれている。これを除去するために2B3Tの後段にカチオン塔を設置すると処理水の純度が飛躍的に上昇する。また、イオン交換樹脂から溶出する有機物は、主としてアニオン交換樹脂からでるプラス荷電のものであるが、これも吸着除去できる。このシステムは、原水塩濃度が中から高濃度でも常時15MΩ・cm以上の処理水が得られる。
図6は、通常の2B3Tと2B3T+カチオン塔再生後の洗浄性を示しているが、短時間で高純度の処理水が得られる。」(第8頁右欄第18?32行)と記載されている。
(ク) 「(3)向流再生について
デュオライトフローを説明する前にまず向流再生のメリットについて以下に述べる。
イオン交換システムの再生方法は大きく分けると、通水方向と通薬方向(再生剤が流れる方向)が同じ方向である場合を並流再生、逆方向である場合を向流再生と呼ぶ。・・・これらの理由により向流再生は並流再生に比較して再生剤が少なくて済み、通水時に高純度水が得られる。」 (第7頁中欄第2行?第8頁左欄第8行)と記載されている。

IV 対比・判断

(1)甲第2号証記載の発明

請求人が提出した甲第2号証には、
記載事項(イ)に「原水を、イオン交換樹脂を用いた例えば2床3塔式純水製造装置(2B3T)で処理し、これにより得られた純水を逆浸透膜装置に通して有機物等を除去」することが記載され、
記載事項(エ)に「原水を濾過器F、陽イオン交換塔K、脱炭酸塔D、陰イオン交換塔Aの順に通して純水処理し・・・次にこれをポンプPにより精密濾過器MFを介して逆浸透膜装置ROに通す。・・・本例のこの逆浸透膜装置ROは、例えばカルボン酸基をイオン交換基として有するアニオン極性膜を有する」ことが記載されており、上記甲第2号証の記載事項を本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、
「(B-1):原水を陽イオン交換塔K、陰イオン交換塔Aの順に通して純水処理し、
(B-2):次にカルボン酸基をイオン交換基として有するアニオン極性膜を有する逆浸透膜装置ROに通し有機物等を除去した、
(B-3):純水製造方法。 」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。(ここで、引用発明については、特定事項を(B-1)から(B-3)までに分節して記載する。)

(2)証拠との対比

当審での甲号証との対比においては、甲第2号証に記載された引用発明と本件発明3とをまず、対比する。

(2-1)本件発明3について

(a)対比

引用発明の(B-1)の「純水処理」は陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の順に通水するものであるから本件発明3の(A-7)に相当し、(B-2)の「逆浸透膜装置RO」は「アニオン極性膜を有する」ものであるから、本件発明3の(A-10)に相当し、引用発明の(B-3)は、本件発明3の(A-11)の特定事項の「純水の製造方法。」に相当する。
以上のとおりでありから、両者は、
「 (A-7):被処理水を陽イオン交換樹脂塔および陰イオン交換樹脂塔に通水し、
(A-10):次いで該陽イオン交換樹脂塔の流出水をアニオン性膜を用いる逆浸透膜装置に通水することを特徴とする
(A-11):純水の製造方法。」
である点で一致し、

本件発明3では、(A-8):該流出水を該陽イオン交換樹脂塔および陰イオン交換樹脂塔の後段に位置する陽イオン交換樹脂塔に通水して、流出水中に含まれる正に帯電している有機物を除去しているのに対して、引用発明では逆浸透膜で有機物を除去することが記載されるものの、陽イオン交換樹脂塔および陰イオン交換樹脂塔の後段に位置する陽イオン交換樹脂塔に通水して流出水中に含まれる正に帯電している有機物を除去することについて記載されていない点(以下、「相違点1」という。)、

(b)相違点1についての判断
引用発明は、記載事項(エ)にあるように「逆浸透膜中に有機物が吸着されてこれが目詰りの原因となることに由来することが分った。分析によればこの有機物は主に官能基としてアミンを有するものであり、これが逆浸透膜が有する官能基のカルボン酸基とイオン交換して目詰りが起こると考えられる。」という課題を有するものであり、一方、本件発明3において逆浸透膜装置がアニオン性膜を用いる理由は、「天然水などの被処理水中の微粒子や有機物は負に帯電したものが多く、これらが逆浸透膜装置の膜面へ蓄積するのを防止するため、上記の逆浸透膜装置に多く用いられる逆浸透膜にはこれらと電気的に反発する荷電を持つアニオン性膜が用いられている。」(本件特許明細書段落【0004】)のであって、それゆえ課題を解決するための手段として「 かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、上記逆浸透膜装置の早期の透過水量の減少は、被処理水中に含まれる特定の有機物が逆浸透膜面に蓄積するためであること、この特定の有機物は2床3塔式イオン交換装置の強塩基性陰イオン交換樹脂が分解して溶出した有機物や2床3塔式イオン交換装置の被処理水中に含まれ、いったん陽イオン交換樹脂に吸着され、その後徐々に脱離してきた有機物であり、これらはそれぞれ正に帯電しているため極微量であっても逆浸透膜装置のアニオン性の膜面に吸着しやすく、洗浄を繰り返しても脱離しにくいものであること、従って、脱塩装置と逆浸透膜装置の間に陽イオン交換樹脂塔を設置すれば、正に帯電した有機物を該陽イオン交換樹脂で吸着除去でき、逆浸透膜装置の膜面への蓄積を防止できることなどを見出し、本発明を完成するに至った。 」(本件特許明細書段落【0007】)のであるから、引用発明は、本件発明3と同一の課題を有していたというべきであり、その解決手段において相違するものと認められる。
しかしながら、かかる相違点については、甲第4号証の記載事項(キ)に「2B3Tの後段にカチオン塔を設置すると処理水の純度が飛躍的に上昇する。また、イオン交換樹脂から溶出する有機物は、主としてアニオン交換樹脂からでるプラス荷電のものであるが、これも吸着除去できる。」と明記されるように、本件発明が属する純水製造方法の技術分野において脱塩装置から溶出する不純物への対処手段として普通に用いられた慣用手段に過ぎず、技術分野の共通性と不純物の除去というありふれた課題から当業者であれば何らの創意無く採用し得る程度の手段にすぎず、その採用によって得られる効果も相乗的な効果は認められず総和的であって、格別顕著であるということができない。
してみると、本件発明3は、引用発明に甲第4号証に記載された慣用手段を単に付加したにすぎないもので当業者が、容易に想到し得ることであると認められる。

(2-2)本件発明1について

次に、本件発明1について検討する。
本件発明1は、本件発明3の純水製造方法を装置として記載したものであって、その装置要素の配置は本件発明3によって検討済みということができる。
したがって、本件発明1の構成は、引用発明および甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。

(2-3)本件発明2について

本件発明2は、本件発明1において、(A-6):「前記後段の陽イオン交換樹脂塔の再生方式が、向流再生方式である」と限定した発明である。
しかし、甲第4号証の記載事項(ク)に「これらの理由により向流再生は並流再生に比較して再生剤が少なくて済み、通水時に高純度水が得られる。」と記載されており、かかる特定事項を採用することが一般的な記載とはいえ十分示唆されていると認められる。
したがって、本件発明2は、引用発明および甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

V 被請求人の口頭審理における主張について

平成19年1月12日付け口頭審理調書に記載されるように、被請求人は、甲第4号証記載の2床3塔処理装置で15MΩ・cm以上の処理水が得られており、その後段には、必ずしも逆浸透膜装置が必要であるとはいえないと陳述した。
しかしながら、甲第4号証は、イオン交換樹脂に関するものであって、それを利用した2床3塔処理装置から得られる処理水がもはや純水レベルであるとしても、15MΩ・cm以上との数値は脱塩による処理水抵抗値のみからみた評価であって、さらに、TOC(全有機炭素)、生菌等を除去することを不要にする記載とまではいえず、純水製造において2床3塔処理+RO膜処理を用いることが甲第2号証にも記載されているように慣用されていることから、結局、甲第4号証記載の2床3塔処理装置においてその後段に逆浸透膜装置の設置を阻害する要因があるとすることはできない。

VI むすび

以上のとおりであるから、本件発明1乃至3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1乃至3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-22 
結審通知日 2007-01-24 
審決日 2007-02-06 
出願番号 特願平9-345838
審決分類 P 1 113・ 121- Z (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 光子  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 松本 貢
斉藤 信人
登録日 2004-11-05 
登録番号 特許第3613376号(P3613376)
発明の名称 純水製造装置及び純水製造方法  
代理人 須山 佐一  
復代理人 山下 聡  
代理人 高木 千嘉  
代理人 三輪 昭次  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  

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