• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1154564
審判番号 不服2004-8666  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-27 
確定日 2007-03-22 
事件の表示 平成11年特許願第302690号「ペダル式人力空圧ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月 8日出願公開、特開2001-123947〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本件出願は、平成11年10月25日に出願されたものであって、平成12年12月25日付けで明細書を補正する手続補正書が提出され、平成15年7月29日付けで拒絶理由が通知され、同年9月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成16年3月23日付けで拒絶査定がなされ、同年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされたものである。


[2]平成16年4月27日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年4月27日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正の内容
平成16年4月27日付けの手続補正以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成15年9月30日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(ロ)に示す請求項1ないし3の記載を、下記の(イ)に示す請求項1と補正するものである。

(イ)補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
自転車に対し着脱可能であって、後輪を浮かせた状態の自転車に装着され、
この自転車のペダルによる回転動作を直線動作に変換するリンク機構と、このリンク機構に連結されたシリンダ装置とを備え、
このシリンダ装置を空圧ジャッキに接続し、
前記リンク機構は、3本のリンク部材を2つの関節で連結したリンク構造であり、一方の端部が前記シリンダ装置内を摺動するピストンに連結され、他方の端部又は中間の1つの関節がペダル又はペダルと連動するプーリに連結されたペダル式人力空圧ポンプであって、
自転車の後輪に係合する回転伝達機構を設け、この回転伝達機構にリンク駆動プーリを連結し、このリンク駆動プーリに2つの前記リンク機構を相互に反対方向の直線動作をするように装着し、これらのリンク機構の各々に前記シリンダ装置を連結し、両シリンダ装置により交互に前記空圧ジャッキに圧縮空気を供給し、
前記リンク機構の3本のリンク部材のうちピストンに最も近いリンク部材は、ピストンと一体であって、ピストンがシリンダ装置内を摺動するときに、ピストンの摺動方向と平行な状態で往復動作することを特徴とするペダル式人力空圧ポンプ。」

(ロ)補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
回転足踏み式ペダルによる回転動作を直線動作に変換するリンク機構と、このリンク機構に連結されたシリンダ装置とを備え、このシリンダ装置を空圧タンクまたは空圧器械に接続し、
前記リンク機構は、3本のリンク部材を2つの関節で連結したリンク構造であり、一方の端部が前記シリンダ装置内を摺動するピストンに連結され、他方の端部又は中間の1つの関節がペダル又はペダルと連動するプーリに連結されたことを特徴とするペダル式人力空圧ポンプ。
【請求項2】
自転車の後輪に係合する回転伝達機構を設け、この回転伝達機構にリンク駆動プーリを連結し、このリンク駆動プーリに2つの前記リンク機構を相互に反対方向の直線動作をするように装着し、これらのリンク機構の各々に前記シリンダ装置を連結し、両シリンダ装置により交互に前記空圧タンクまたは空圧器械に圧縮空気を供給することを特徴とする請求項1に記載のペダル式人力空圧ポンプ。
【請求項3】
前記シリンダ装置を空圧ジャッキに接続したことを特徴とする請求項1または2に記載のペダル式人力空圧ポンプ。」

2.本件補正の適否
(1)本件補正により補正される特許請求の範囲の請求項1
請求項1に関する本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を引用する請求項2に係る発明をさらに引用する請求項3に係る発明の発明を特定するために必要と認める事項についてさらに「自転車に対し着脱可能であって、後輪を浮かせた状態の自転車に装着され、」及び「前記リンク機構の3本のリンク部材のうちピストンに最も近いリンク部材は、ピストンと一体であって、ピストンがシリンダ装置内を摺動するときに、ピストンの摺動方向と平行な状態で往復動作する」という限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、次に、本件補正により補正された請求項1に係る発明(以下、単に「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて検討する。

(2)原査定の拒絶理由に引用された実願昭51-36786号(実開昭52-128107号)のマイクロフィルム(以下、単に「引用文献1」という。)
(A)引用文献1には、次の事項が図面とともに記載されている。
(イ)「基台(1)上の前面部には操作者用のサドル(2)、ハンドル(3)を金属製フレーム体(4)にて形成し、該フレーム体(4)の下方部には足踏用ペダル(5)を装設せる駆動側スプロケットホイル(6)及び受動側スプロケットホイル(7)……を、それぞれ配設せしめ、伝動チエーン(8)をこれらスプロケットホイル(6)?(7)間に装着させて駆動部(E)を構成すると共に、一方前記受動側スプロケットホイル(7)……の回転軸(9)と一体的に回転するデイスクプレート(10)の相対向せる適所(P1)・(P2)にドライブシヤフト(S1)・(S2)をば、前記デイスクプレート(10)の回転自在なる様に軸支せしめ、基台(1)上の後部に設置された載置台(11)に配設固定のコンプレッサー(C1)・(C2)……のピストンロッド(R1)・(R2)……をスライダー(L1)・(L2)を介して、前記ドライブシヤフト(S1)・(S2)と連結軸支させ、足踏用ペダル(5)を踏む事に依り、パイプライン(l)を経由してレシーバタンク(T)に圧縮空気を充満せしめる如くなした事を特長とせる足踏式軽便型コンプレッサー装置にある。」(明細書第2頁13行?第3頁11行)
(ロ)「今例えば圧縮空気が所望されるとすれば、操作者がサドル(2)に塔乗して(「搭乗して」の誤記)足踏ペダル(5)・(5)を踏み回転させればそれで万事O・Kである。即ちペダル(5)の回転に依りその回転力が駆動側スプロケットホイル(6)を回転せしめる。続いて、スプロケットに装着されたチエーン(8)の伝動力によって受動側スプロケット(7)(「受動側スプロケットホイル(7)」の誤記)が回転する事となり、この回転力が回転軸(9)に伝達され、これと一体的なデイスクプレート(10)が回転することとなり、エヤーコンプレッサー(C1)・(C2)のピストンロッド(R1)・(R2)にドライブシヤフト(S1)・(S2)の運動力がスライダー(L1)・(L2)を介して往復運動を与えて、圧縮空気をレシーバタンク(T)え(「へ」の誤記)引続いて送り込む事となるのである。」(同第4頁2?14行)

(B)上記(A)及び図面から分かること
(イ)ペダルは備えているが後輪を持たない足踏式回転駆動装置に装着されるものであって、エヤーコンプレッサーC1,C2によって「レシーバタンク(T)に圧縮空気を充満せしめる」わけであるから、足踏式空圧ポンプであることが分かる。
(ロ)デイスクプレート10と、ドライブシャフトS1,S2と、ピストンロッドR1,R2とからなる伝動機構は、ペダル5,5による回転動作を直線動作に変換するものであることが分かる。
(ハ)適所P1,P2がデイスクプレート10上に「相対向する」位置に配置されているので、デイスクプレート10と、ドライブシャフトS1,S2と、ピストンロッドR1,R2とからなる伝動機構は、相互に反対方向の直線動作をするように受動側スプロケットホイル7に装着されていることが分かる。
(ニ)前記伝動機構のうちのピストンロッドR1,R2は、ピストンと接続されており、ピストンがエヤーコンプレッサーC1,C2内を摺動するときにスライダーL1,L2とともにピストンの摺動方向と平行な状態で往復動作するように構成されていることが分かる。

(C)引用文献1記載の発明
したがって、引用文献1には、次のような発明(以下、単に「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「後輪を持たない足踏式回転駆動装置に装着され、
この足踏式回転駆動装置のペダル5,5による回転動作を直線動作に変換する伝動機構と、この伝動機構に連結されたエヤーコンプレッサーC1,C2とを備え、
このエヤーコンプレッサーC1,C2をレシーバタンクTに接続し、
前記伝動機構は、デイスクプレート10と、デイスクプレート10の適所P1,P2に軸支されたドライブシャフトS1,S2と、ドライブシャフトS1,S2の他端部にスライダーL1,L2を介して軸支されたピストンロッドR1,R2とからなり、ピストンロッドR1,R2の端部がエヤーコンプレッサーC1,C2内を摺動するピストンに連結され、ディスクプレート10がペダル5,5と連動する受動側スプロケットホイル7に回転軸9を介して連結された足踏式空圧ポンプであって、
前記足踏式回転駆動装置に駆動側スプロケットホイル6及び伝動チエーン8からなる回転伝達機構を設け、この回転伝達機構に受動側スプロケットホイル7を連結し、この受動側スプロケットホイル7に2つの前記伝動機構を相互に反対方向の直線動作をするように装着し、これらの伝動機構の各々にエヤーコンプレッサーC1,C2を連結し、両エヤーコンプレッサーC1,C2により交互にレシーバタンクTに圧縮空気を供給し、
前記伝動機構のうちのピストンロッドR1,R2は、ピストンと接続されており、ピストンがエヤーコンプレッサーC1,C2内を摺動するときにピストンの摺動方向と平行な状態で往復動作するように構成された足踏式空圧ポンプ。」

(3)原査定の拒絶理由に引用された特公昭48-20578号公報(以下、単に「引用文献2」という。なお、平成15年7月29日付け拒絶理由通知、平成15年9月30日付け意見書及び平成16年4月27日付けの審判請求書中の「特開昭48-20578号公報」は、「捩り形ディジタル粘度計」に関するものであって、本願発明とは技術分野を異にすることが明らかである。他方、「特公昭48-20578号公報」は、「自転車車輪の回転エネルギを圧縮空気に変換貯蔵する装置」に関するものであって、本願発明と技術分野を同じにするものであることが明らかであり、しかも、上記意見書及び審判請求書における審判請求人の対応は、「特公昭48-20578号公報」に完全に整合している。したがって、「特開昭48-20578号公報」は、「特公昭48-20578号公報」の誤記と解される。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(イ)「第3図および第4図において10は自転車フレームにおけるバックホーク11に取り付けた取付具12の上向方向に突設した突起部13に回動自在に支持されたピン14に一端を固定され他端は前記ワイヤーケーブル9の他端が掛止された台板15の上面に取り付けられた空気圧縮器で、この空気圧縮器10は容積型を例示したものであり、自転車車輪におけるリム16に対向した外側に設けた駆動輪17の回転により従動するクランク軸18の曲腕にベアリング19,19,……を介して装着されたピストン20を空気室21の内壁22にそつて矢印方向にエキセン回転せしめ、空気吸入口Hより空気室21内に吸入された空気を圧縮して排気管23へ送る。」(公報第1頁第2欄12?25行)
(ロ)「第3図において25は自転車車体における荷物台27の下方の一方もしくは両方に取り付けた空気タンクで、一端には安全弁28と空気取出口29を形成し、他端は前記空気圧縮器10の排気弁23とゴム管30によつて接続されている。」(同第1頁第2欄32?36行)
(ハ)「空気圧縮器10の駆動輪17を回転中の自転車車輪におけるリム16の内側に接触させ駆動輪17は第3図に示す矢印方向に従動回転する。この駆動輪17の回転によりクランク軸18を介してピストン20がエキセン回転を行ない。空気吸入口Hより空気室21内に吸入された空気を5気圧程度に圧縮し、排気弁23よりゴム管30を通つて安全弁28が作動するまで空気タンク25内に圧縮された空気が貯蔵される。」(同第2頁第3欄7?15行)

(4)対比
本願補正発明と引用文献1記載の発明とを対比するに、引用文献1記載の発明における「ペダル5,5」、「エヤーコンプレッサーC1,C2」、「足踏式空圧ポンプ」及び「ピストンロッドR1,R2」は、本願補正発明の「ペダル」、「シリンダ装置」、「ペダル式人力空圧ポンプ」及び「ピストンに最も近いリンク部材」にそれぞれ相当するものと認められる。
また、引用文献1記載の発明における「足踏式回転駆動装置」は、「ペダル式回転駆動装置」という限りにおいて、本願補正発明の「自転車」に相当するものと認められ、さらに、引用文献1記載の発明における「レシーバタンクT」は、「空圧装置」という限りにおいて、本願補正発明における「空圧ジャッキ」に相当するものと認められ、またさらに、引用文献1記載の発明における「伝動機構」は、「運動変換機構」という限りにおいて、本願補正発明における「リンク機構」に相当し、最後に、引用文献1記載の発明における「受動側スプロケットホイル7」は、「回転伝動部材」という限りにおいて、本願補正発明における「リンク駆動プーリ」に相当するものと認められる。
したがって、本願補正発明と引用文献1記載の発明は、
「ペダル式回転駆動装置に装着され、
このペダル式回転駆動装置のペダルによる回転動作を直線動作に変換する運動変換機構と、この運動変換機構に連結されたシリンダ装置とを備え、
このシリンダ装置を空圧装置に接続し、
前記運動変換機構は、一方の端部がシリンダ装置内を摺動するピストンに連結され、他方の端部がペダルと連動する回転伝動部材に連結されたペダル式人力空圧ポンプであって、
前記ペダル式回転駆動装置に回転伝達機構を設け、この回転伝達機構に回転伝動部材を連結し、この回転伝動部材に2つの前記運動変換機構を相互に反対方向の直線動作をするように装着し、これらの運動変換機構の各々に前記シリンダ装置を連結し、両シリンダ装置により交互に前記空圧装置に圧縮空気を供給し、
前記運動変換機構のうちピストンに最も近いリンク部材は、ピストンに連結されており、ピストンがシリンダ装置内を摺動するときにピストンの摺動方向と平行な状態で往復動作するペダル式人力空圧ポンプ。」
である点で一致し、次の〈相違点1〉?〈相違点5〉で相違する。
〈相違点1〉
「ペダル式人力空圧ポンプ」が、本願補正発明においては、「自転車に対し着脱可能であって、後輪を浮かせた状態の自転車に装着され」、かつ、「自転車の後輪に係合する回転伝達機構を設け」ているのに対し、引用文献1記載の発明においては、「後輪を持たない足踏式回転駆動装置に装着され」るものであって、「足踏式回転駆動装置に駆動側スプロケットホイル6及び伝動チエーン8からなる回転伝達機構を設け」ている点。
〈相違点2〉
シリンダ装置に接続される「空圧装置」が、本願補正発明においては、「空圧ジャッキ」であるのに対し、引用文献1記載の発明では、「レシーバタンクT」である点。
〈相違点3〉
「運動変換機構」が、本願補正発明においては、「3本のリンク部材を2つの関節で連結したリンク構造」であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、「デイスクプレート10と、デイスクプレート10の適所P1,P2に軸支されたドライブシャフトS1,S2と、ドライブシャフトS1,S2の他端部にスライダーL1,L2を介して軸支されたピストンロッドR1,R2とからな」るものである点。
〈相違点4〉
「回転伝動部材」が、本願補正発明においては、「リンク駆動プーリ」であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、「受動側スプロケットホイル7」である点。
〈相違点5〉
本願補正発明においては、「ピストンに最も近いリンク部材は、ピストンと一体であ」るのに対し、引用文献1記載の発明では、ピストンに最も近い「ピストンロッドR1,R2」が「ピストン」と一体であるのか定かでない点。

(5)判断
〈相違点1〉について
空気圧縮器を自転車に取付けて、自転車のペダル操作によって前記空気圧縮器を作動させて圧縮空気を得て、その圧縮空気を空気タンクに貯蔵する技術手段、さらに、空気圧縮器を自転車に対して装着しあるいは搭載するために、着脱可能なボルト・ナット等の取付け手段を採用する技術手段は引用文献2(及び昭和11年実用新案出願公告第5677号公報)に記載されている。
ところで、引用文献2には、「自転車の走行時に、すなわち自転車を自転車として使用しているときに、後輪の回転エネルギを圧縮空気に変換して空気タンクに貯蔵する」旨の記載はあるものの、「後輪を浮かせた状態」で使用する点については記載がない。しかしながら、引用文献2に記載されたものが「後輪を浮かせた状態」で使用できないということはない。しかも、圧縮機を、三角スタンドを立てて後輪を浮かせた状態の自転車に固定して取付け搭載する技術手段は周知である(例えば、実願昭53?118948号(実開昭55-36939号)のマイクロフィルム〈明細書第5頁6?10行〉参照。なお、この文献には、圧縮機を自転車の走行中に使用する点も記載されている〈明細書第4頁15行?第5頁6行〉。)。
そして、これら引用文献2に記載された技術手段を引用文献1記載の発明に適用し、その適用に際して、上記周知の技術手段を考慮することにより、前記〈相違点1〉に係る本願補正発明のような構成とする程度のことは、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し発明しうる程度のものである。
〈相違点2〉について
引用文献1記載の発明のように、エヤーコンプレッサーC1,C2をレシーバタンクTに接続して、圧縮空気をレシーバタンクTに一旦貯留した後に、そのレシーバタンクTに貯留した圧縮空気を空圧器械に供給するようにするか、あるいは、本願補正発明のように、シリンダ装置を空圧ジャッキに接続して空圧ジャッキに圧縮空気を供給するようにするかは、当業者が必要に応じて適宜設定しうる程度の事項である(なお、本願の図6,8,9,10,11には、「シリンダ装置」を「空圧タンク11」又は「エアタンク11」に接続することが記載されている。)。しかも、圧縮機を空圧器械に接続して空圧器械に圧縮空気を供給するようにすることは、周知の技術である(必要ならば、例えば、上述した実願昭53?118948号(実開昭55-36939号)のマイクロフィルム〈明細書第4頁9?14行や同第4頁15行?第5頁10行〉や昭和11年実用新案出願公告第5677号公報参照)。また、空圧ジャッキは、空圧器械の一つとして本願出願前に周知の技術手段であり、しかも、この種の空圧ジャッキは震災等の非常時において救助活動等に有用であることもまた本願出願前に周知の事項である(必要ならば、例えば、原査定の拒絶理由において周知技術を例示するものとして引用された特開平11-5197号公報(平成11年1月12日公開)参照のこと)。そして、ペダル式人力空圧ポンプのシリンダ装置を本願出願前に周知の空圧ジャッキに接続するように構成することは、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易になし得る程度の事項と認められる。
よって、前記〈相違点2〉に係る本願補正発明のような構成とすることは、引用文献1記載の発明や前述した周知の技術事項を勘案すれば、当業者が容易に想到し発明しうる程度のものである。
〈相違点3〉について
まず、引用文献1記載の発明において、デイスクプレート10は、中心軸を中心として回転可能であり、その半径方向に偏心した位置である適所P1,P2にドライブシャフトS1,S2が軸支されており、中心軸と適所P1,P2を結ぶデイスクプレート10上の直線部分は受動側スプロケットホイル7及び回転軸9の回転運動をドライブシャフトS1,S2に伝達する一部材とみなすことができるものであるから、機能上この直線部分は一つのリンク部材を構成するものといいうるものである。そして、デイスクプレート10上の回転中心軸と適所P1,P2を結ぶ直線部分を1つの「リンク部材」に置換する程度のことは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
〈相違点4〉について
「運動変換機構」の「他方の端部」が連結される「回転伝動部材」を、本願補正発明のように「リンク駆動プーリ」とするか、引用文献1記載の発明のように「受動側スプロケットホイル」とするかは、そもそも「回転伝達機構」として、(タイミング)ベルト伝動方式を採用するか、チェーン伝動方式を採用するかに起因しているものであるが、(タイミング)ベルト伝動方式及びチェーン伝動方式は共に巻掛伝動方式として周知のものであり、どちらを選択するかは設計事項にすぎないものと認められる。
〈相違点5〉について
引用文献1記載の発明において、ピストンに接続されたピストンロッドR1,R2は、スライダーL1,L2とともに直線的に往復運動するように構成されており、かつ、ピストンがエヤーコンプレッサーC1,C2内を摺動するときに、ピストンの摺動方向と平行な状態で往復動作するものといえる。したがって、引用文献1記載の発明において、ピストンに最も近いリンク部材であるピストンロッドR1,R2が仮にピストンと一体でなかったとしても、本願補正発明との間に機能や作用効果になんら差異は認められず、前記〈相違点5〉は単なる設計上の微差にすぎないものと認められる。

以上のように、本願補正発明のような構成とすることは、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知の技術事項に基いて、当業者が格別な困難性を伴うことなく容易に想到し発明をすることができたものと認められ、しかも、本願補正発明は、全体構成でみても、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知の技術事項から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。
よって、本願補正発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


[3]本願発明について
1.本願発明の内容
平成16年4月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし3に係る発明は、平成12年12月25日付けで提出された手続補正書及び平成15年9月30日付けで提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は上前記[2]の〔理 由〕の1の(ロ)の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.引用文献
原査定の拒絶理由に引用された実願昭51-36786号(実開昭52-128107号)のマイクロフィルム及び特公昭48-20578号公報の記載事項は、上記[2]の〔理 由〕の2の(2)及び(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、実質的に、上記[2]で検討した本願補正発明における発明を特定するために必要と認める事項である「自転車に対し着脱可能であって、後輪を浮かせた状態の自転車に装着され、」、「このシリンダ装置を空圧ジャッキに接続し、」、「自転車の後輪に係合する回転伝達機構を設け、この回転伝達機構にリンク駆動プーリを連結し、このリンク駆動プーリに2つの前記リンク機構を相互に反対方向の直線動作をするように装着し、これらのリンク機構の各々に前記シリンダ装置を連結し、両シリンダ装置により交互に前記空圧タンクまたは空圧器械に圧縮空気を供給し、」及び「前記リンク機構の3本のリンク部材のうちピストンに最も近いリンク部材は、ピストンと一体であって、ピストンがシリンダ装置内を摺動するときに、ピストンの摺動方向と平行な状態で往復動作する」を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明を特定するために必要と認める事項を全て含む本願補正発明が、上記[2]の〔理 由〕の2に記載したとおり、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-16 
結審通知日 2007-01-23 
審決日 2007-02-05 
出願番号 特願平11-302690
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志中野 宏和上田 真誠  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 長馬 望
飯塚 直樹
発明の名称 ペダル式人力空圧ポンプ  
代理人 島田 哲郎  
代理人 廣瀬 繁樹  
代理人 青木 篤  
代理人 鶴田 準一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ