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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02P
管理番号 1154608
審判番号 不服2004-8182  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-22 
確定日 2007-03-23 
事件の表示 特願2001-255185「ステッピングモータのマイクロステップ駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 7日出願公開、特開2003- 70295〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯・本願発明
本願は,平成13年8月24日の出願であって,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成18年5月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「ステッピングモータのマイクロステップ駆動を行うステッピングモータのマイクロステップ駆動装置において、フルステップの1ステップ期間を1周期としてパルス幅が最大レベルから最小レベルに又は最小レベルから最大レベルにマイクロステップ角単位で推移変化する1種のパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成部と、フルステップのステップを繰り返し計数する相励磁カウンタと、フルステップ期間中信号変化のないHIGHレベル信号、LOW レベル信号を生成するとともに相励磁カウンタが示すステップに応じてHIGHレベル信号、LOW レベル信号、前記パルス幅変調信号のいずれかを各相に分配する相分配回路部と、相分配回路部により相分配された信号に基づいて相電流を各相毎に生成する駆動回路部とを具備しており、前記相分配回路部は、ステッピングモータにおいて回転磁界が得られるように、フルステップの各々について全相のうち一相に前記パルス幅変調信号を分配する一方、他の相にはHIGHレベル信号又はLOW レベル信号を分配するとともに、ステップが進むに従って、当該パルス幅変調信号の分配相を相回転方向に順次移行させる構成となっていることを特徴とするステッピングモータのマイクロステップ駆動装置。」

2. 引用刊行物
(1) 当審の拒絶の理由(平成18年8月1日付け)で引用した特開平10-94291号公報(以下「引用刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が示されている。

・ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は5相ステッピングモータの駆動方法及び駆動回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】5相ステッピングモータの駆動方法として、スタードライブと称する駆動方法がある。このスタードライブによる5相ステッピングモータの駆動方法は、特公平6-9440号公報に示されている。図14は、特公平6-9440号公報に示されているスタードライブにより駆動するための5相ステッピングモータの駆動回路図である。A相コイル1、C相コイル3、E相コイル5のグループと、B相コイル2、D相コイル4のグループとを互いに逆相にして、各相コイル1、2、3、4、5の一端が共通接続されている。トランジスタ11、13、15、17、19の各エミッタは、トランジスタ12、14、16、18、20の各コレクタに各別に接続されていて、トランジスタ11及び12、トランジスタ13及び14、トランジスタ15及び16、トランジスタ17及び18、トランジスタ19及び20は夫々直列接続されており、トランジスタ11、13、15、17、19のコレクタは電源7の正極+に、トランジスタ12、14、16、18、20のエミッタは電源7の負極-に接続されている。A、B、C、D、E相の相コイル1、2、3、4、5の各他端はトランジスタ11及び12、トランジスタ13及び14、トランジスタ15及び16、トランジスタ17及び18、トランジスタ19及び20の各接続中間点に各別に接続されている。
【0003】図15はこの5相ステッピングモータの模式的構成図であり、移動子21は50個の歯からなり、固定子22は10個の主極からなり、歯は隣同士の極同士が移動子の歯のピッチの 1/10づつずれるように配列されている。各相の相コイルは、対向した2つの主極が同じ磁極になるように巻回された相コイルを、直列接続して構成されている。」
・ 「【0007】
【課題を解決するための手段】第1発明に係る5相ステッピングモータの駆動方法は、A相、B相、C相、D相、E相の相コイルを有し、A相、C相、E相の相コイルと、B相、D相の相コイルとを互いに逆相にしており、各相コイルの一端を共通接続し、各相コイルの他端を電源に接続、非接続の状態になして、5個の相コイルに通電して、所定ステップ数で回転駆動する5相ステッピングモータの駆動方法において、3個の相コイルの並列回路からなる第1の相コイルグループ及び該第1の相コイルグループの相コイル以外の2個の相コイルの並列回路からなる第2の相コイルグループの直列接続状態を、相コイルの組み合せを異にしてステップ毎に繰り返して、5個の相コイルに通電を行い、3個並列接続した相コイルのうちの1個の相コイルの電流をデューティ制御して、各相コイルにより発生したトルクを合成した合成トルクの方向を順次変化させることを特徴とする。」
・ 「【0014】
【発明の実施の形態】以下本発明を、発明の実施の形態を示す図面により詳述する。図1は本発明に係る5相ステッピングモータの駆動方法の実施に使用する5相ステッピングモータの駆動回路図である。A相コイル1、C相コイル3、E相コイル5のグループと、B相コイル2、D相コイル4のグループとが互いに逆相になるよう各相コイルの一端が共通接続される。各相コイル1、2、3、4、5に付した・印は極性を示している。A相コイル1の他端は直列接続されたトランジスタTAP とトランジスタTAN との接続中間点と接続され、D相コイル4の他端は直列接続されたトランジスタTDP とトランジスタTDN との接続中間点と接続される。B相コイル2の他端は直列接続されたトランジスタTBP とトランジスタTBN との接続中間点と接続され、E相コイル5の他端は直列接続されたトランジスタTEP とトランジスタTEN との接続中間点と接続される。C相コイル3の他端は直列接続されたトランジスタTCP とトランジスタTCN との接続中間点と接続される。トランジスタTAP 、TDP 、TBP 、TEP、TCP 夫々のコレクタは共通に電源7の正極+と接続される。トランジスタTAN、TDN 、TBN 、TEN 、TCN 夫々のエミッタは共通に電源7の負極-と接続される。
【0015】A相、B相、C相、D相、E相の各相コイル1、2、3、4、5は図15に示した各相コイルと同様に配列される。トランジスタTAP,TAN 、TBP,TBN 、TCP,TCN、TDP,TDN 、TEP,TEN 夫々はトランジスタ駆動制御部CTR により駆動制御されるようになしている。」
・ 「【0020】そして、表1に示すようにトランジスタTAP,TAN 、TBP,TBN 、TCP,TCN 、TDP,TDN 、TEP,TEN をオン、オフ駆動すると図2, 図3, 図4に示す各相コイルの接続状態が得られる。表1に表示したkはトランジスタに流す電流を制御するデューティ比を示しており、オンの比率をk(ただし0<k<1)、オフの比率を(1-k)としている。なお表1における空欄はトランジスタがオフであることを示す。」
・ また,表1,図1及び図7ないし9には,2ステップ期間を1周期としてデューティ比が最大レベルから最小レベルに又は最小レベルから最大レベルに1ステップ単位で推移変化する1種のデューティ信号によりデューティ制御する点,2ステップ期間中信号変化のないトランジスタTAP,TBP,TCP,TDP,TEPへのオン信号、トランジスタTAN,TBN,TCN,TDN,TENへのオン信号,デューティ信号のいずれかをステップに応じて各相に分配すること,及び,2ステップの各々について全相のうち一相にデューティ信号を配分する一方,他の相にはHIGHレベル信号,LOWレベル信号を分配するとともに,ステップが進むに従って,デューティ信号の分配相を回転方向に順次移行させること,が示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用刊行物1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「5相ステッピングモータのステップ駆動を行うステッピングモータの駆動回路において,2ステップ期間を1周期としてデューティ比が最大レベルから最小レベルに又は最小レベルから最大レベルに1ステップ単位で推移変化する1種のデューティ信号を生成し,2ステップ期間中信号変化のないトランジスタTAP,TBP,TCP,TDP,TEPへのオン信号,トランジスタTAN,TBN,TCN,TDN,TENへのオン信号を生成するとともに,ステップに応じて前記トランジスタTAP,TBP,TCP,TDP,TEPへのオン信号,前記トランジスタTAN,TBN,TCN,TDN,TENへのオン信号,前記デューティ信号のいずれかを各相に分配するトランジスタ駆動制御部と,相分配された信号に基づいて相電流を各相毎に生成するトランジスタTAP,TAN,TBP,TBN,TCP,TCN,TDP,TDN,TEP,TENを具備しており,トランジスタ駆動制御部は,ステッピングモータにおいて回転磁界が得られるように,2ステップの各々について全相のうち一相に前記デューティ信号を分配する一方,他の相には前記トランジスタTAP,TBP,TCP,TDP,TEPへのオン信号又は前記トランジスタTAN,TBN,TCN,TDN,TENへのオン信号を分配するとともに,ステップが進むに従って,当該デューティ信号の分配相を相回転方向に順次移行させる構成となっている5相ステッピングモータの駆動回路。」

(2) 同じく,当審の拒絶の理由(平成18年8月1日付け)で引用した特開2001-103793号公報(以下「引用刊行物2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、5相ステッピングモータの1ステップ角を、多分割化する5相ステッピングモータのマイクロステップ駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のステッピングモータは、一般に基本ステップ角θs、またはその1/2で運転されるが、巻線電流を制御することにより、さらに細かく分割することも可能である。このような電流制御による多分割化を、一般にマイクロステップ駆動と呼んでいる。」
・ 「【0010】図1において、1は、電気角で72゜ずつ位相のシフトした各相巻線を、順番に接続して環状に形成した5相ステッピングモータ、2は、該5相ステッピングモータ1の各相巻線の接続点に、それぞれ接続された5相のハーフブリッジインバータ回路部、3は、前記インバータ回路部3に流れる電流を検出抵抗器4によって検出し、該インバータ回路部2に流れる電流を、常に一定に制御する定電流制御回路部、5は、パルス幅変調信号発生回路部で、各相電流が、所定の台形波状歪波交流で、隣接する相巻線に流れる電流の位相差が電気角で72゜となるように、前記インバータ回路部2に、PWM(パルス幅変調)方式でゲート信号を供給する信号発生回路部である。」
・ 「【0013】図3は、前記各相巻線Aφ,Bφ,……,Eφに流す相電流Iab,Ibc,Icd,Ide,Ieaの波形の一例で、上および下に凸な曲線を含むほぼ台形波形と、その位相関係を示すものであり、図4は、前記相電流の例えば、Ibcの波形の1/2周期における複数の直線で構成された、上に凸な折れ線部の拡大図(ただし、後の1/2周期における下に凸な折れ線部は図示省略)を示す。図3および図4において、T0,T1,T2,T3,………,T10は、前記相電流の1周期を10等分した時間軸の目盛である。図3から前記各相電流Iab,Ibc,………,Ieaは、互いに電気角で、2π/5、すなわち72゜ずつ位相がシフトしている。
【0014】今、ここで任意の相電流、例えば、図3および図4に示す、Ibcに着目してみると、相電流Ibcの1周期分の波形は、台形波状の歪波交流電流であり、その最大値をIとすると、T0からT1の1区間では、電流は0からIに増加する、上に凸な(凸形状に)折れ線で形成され、T1からT4までの3区間ではI一定であり、T4からT5の1区間ではIから0に減少する、上に凸な折れ線で形成され、T5からT6の1区間は0から-Iに減少する、下に凸な折れ線で形成され、T6からT9までの3区間は-I一定であり、T9からT10の1区間は-Iから0に増加する、下に凸な折れ線で形成されている。図4に、前記折れ線は、T0,T1間およびT4,T5間を4等分する3点(0.43I,0.74I,0.94Iの各点)を結ぶ4本の直線で構成されている例を、ここでは示しているが、前記折れ線は、1区間を等分割する必要はなく、任意に設定することが可能である。」
・ また,図1ないし図4には,フルステップの2ステップ期間を1周期として電流値は最大レベル(I)から最小レベル(-I)に又は最小レベルから最大レベルにマイクロステップ角単位で推移させることが示されている。
3. 対比
本願発明と引用発明とを対比すると,以下の点が明らかである。

・ 後者の「5相ステッピングモータ」は,その作用・機能からみて,前者の「ステッピングモータ」に相当し,以下同様に,「デューティ信号」は「パルス幅変調信号」に,「トランジスタTAP,TBP,TCP,TDP,TEPへのオン信号」は「HIGHレベル信号」に,「トランジスタTAN,TBN,TCN,TDN,TENへのオン信号」は「LOWレベル信号」に,「トランジスタTAP,TAN,TBP,TBN,TCP,TCN,TDP,TDN,TEP,TEN」は「駆動回路部」に,それぞれ相当する。

・ 後者の「5相ステッピングモータのステップ駆動を行うステッピングモータの駆動回路」と前者の「ステッピングモータのマイクロステップ駆動を行うステッピングモータのマイクロステップ駆動装置」とは,「ステッピングモータの駆動を行うステッピングモータの駆動装置」の点で共通する。

・ 後者の「1ステップ」は,5相ステッピングモータの構造及び20ステップで1回転していること(表1を参照)等を踏まえると,5相ステッピングモータ駆動における「ハーフステップ」に相当するといえ,そして「2ステップ」は,ハーフステップ二つ分,即ち,「フルステップ」に相当し,また「2ステップ期間」は「フルステップの1ステップ期間」に相当するといえる。

・ 後者のトランジスタ駆動制御部の「2ステップ期間を1周期としてデューティ比が最大レベルから最小レベルに又は最小レベルから最大レベルにハーフステップ単位で推移変化する1種のデューティ信号を生成」する部分と,前者の「フルステップの1ステップ期間を1周期としてパルス幅が最大レベルから最小レベルに又は最小レベルから最大レベルにマイクロステップ角単位で推移変化する1種のパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成部」とは,その作用・機能からみて,「フルステップの1ステップ期間を1周期としてパルス幅が最大レベルから最小レベルに又は最小レベルから最大レベルに所定ステップ角単位で推移変化する1種のパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成部」の点で共通する。

・ 後者のトランジスタ駆動制御部の「2ステップ期間中信号変化のないトランジスタTAP,TBP,TCP,TDP,TEPへのオン信号,トランジスタTAN,TBN,TCN,TDN,TENへのオン信号を生成するとともに,ステップに応じてトランジスタTAP,TBP,TCP,TDP,TEPへのオン信号,トランジスタTAN,TBN,TCN,TDN,TENへのオン信号,前記デューティ信号のいずれかを各相に分配」する部分と,前者の「フルステップ期間中信号変化のないHIGHレベル信号、LOW レベル信号を生成するとともに相励磁カウンタが示すステップに応じてHIGHレベル信号、LOW レベル信号、前記パルス幅変調信号のいずれかを各相に分配する相分配回路部」とは,「フルステップ期間中信号変化のないHIGHレベル信号,LOW レベル信号を生成するとともにステップに応じて前記HIGHレベル信号,前記LOW レベル信号、前記パルス幅変調信号のいずれかを各相に分配する相分配回路部」の点で共通する。

・ 後者の「相分配された信号に基づいて相電流を各相毎に生成するトランジスタTAP,TAN,TBP,TBN,TCP,TCN,TDP,TDN,TEP,TEN」は,上記共通関係を踏まえると,前者の「相分配回路部により相分配された信号に基づいて相電流を各相毎に生成する駆動回路部」に相当するといえる。

・ 後者の「トランジスタ駆動制御部は,ステッピングモータにおいて回転磁界が得られるように,2ステップの各々について全相のうち一相に前記デューティ信号を分配する一方,他の相にはトランジスタTAP,TBP,TCP,TDP,TEPへのオン信号又はトランジスタTAN,TBN,TCN,TDN,TENへのオン信号を分配するとともに,ステップが進むに従って,当該パルス幅変調信号の分配相を相回転方向に順次移行させる構成」は,前者の「相分配回路部は、ステッピングモータにおいて回転磁界が得られるように、フルステップの各々について全相のうち一相に前記パルス幅変調信号を分配する一方、他の相にはHIGHレベル信号又はLOW レベル信号を分配するとともに、ステップが進むに従って、当該パルス幅変調信号の分配相を相回転方向に順次移行させる構成」に相当する。

すると,両者の一致点,相違点は以下のとおりとなる。

(1) 一致点
「ステッピングモータの駆動を行うステッピングモータの駆動装置において,フルステップの1ステップ期間を1周期としてパルス幅が最大レベルから最小レベルに又は最小レベルから最大レベルに所定ステップ角単位で推移変化する1種のパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成部と,フルステップ期間中信号変化のないHIGHレベル信号,LOW レベル信号を生成するとともにステップに応じて前記HIGHレベル信号,前記LOW レベル信号,前記パルス幅変調信号のいずれかを各相に分配する相分配回路部と,相分配回路部により相分配された信号に基づいて相電流を各相毎に生成する駆動回路部とを具備しており,前記相分配回路部は,ステッピングモータにおいて回転磁界が得られるように,フルステップの各々について全相のうち一相に前記パルス幅変調信号を分配する一方,他の相に前記HIGHレベル信号又は前記LOW レベル信号を分配するとともに,ステップが進むに従って,当該パルス幅変調信号の分配相を相回転方向に順次移行させる構成となっているステッピングモータの駆動装置。」

(2) 相違点1
駆動装置と所定ステップ角単位に関して,本願発明は「マイクロステップ駆動」をする「マイクロステップ駆動装置」であって「マイクロステップ角単位」でパルス幅変調信号を推移させるのに対し,引用発明の駆動回路はハーフステップ駆動で,ハーフステップ単位で推移させている点。

(3) 相違点2
本願発明が「フルステップのステップを繰り返し計数する相励磁カウンタ」を有し,相分配回路部が「相励磁カウンタが示す」ステップに応じて信号を各相に分配するのに対し,引用発明はステップに応じて信号を各相に分配するものの,そのための具体的な構成が明確でない点。

4. 判断
以下,上記相違点について検討する。
(1) 相違点1について
引用刊行物2には,5相ステッピングモータにおいて,トルク変動を少なくするために,マイクロステップ角単位でパルス幅変調信号を推移させているステッピングモータの駆動装置が記載されている。
ここで引用発明は,5相ステッピングモータにおいて,トルクリップルが生じて円滑な回転力が得られないという課題を解決するためのものであるから,引用発明及び引用刊行物2に記載されたものは,いずれも5相ステッピングモータのトルク変動の抑制という共通の目的を有するものといえる。
すると,引用発明の5相ステッピングモータの駆動装置において,ハーフステップ単位でのパルス幅変調信号による駆動に代えて,引用刊行物2に記載されたものに基づき,マイクロステップ角単位でのパルス幅変調信号による駆動として,上記相違点に係る本願発明の構成を想到することは,当業者であれば容易になし得たことというべきである。

(2) 相違点2について
ステッピングモータにおいて,スイッチングパターンを記憶しておき,かかるスイッチングパターンを順次読み出して各相に分配することは,当審拒絶理由(平成18年8月1日付け)でも示したとおり,例えば,実願昭55-77839号(実開昭57-3391号)のマイクロフィルム,特開昭58-179175号公報,実願昭62-99290号(実開昭64-6795号)のマイクロフィルムに記載されているように出願前周知の技術といえる。
すると、引用発明において,上記周知技術に基づき、上記相違点に係る本願発明の構成を想到することは,当業者であれば容易になし得たことということというべきである。

(3) そして、本願発明により奏される効果は、引用刊行物1,2に記載された発明及び上記周知技術から,当業者であれば予測し得る範囲内のものである。

よって,本願発明は,上記引用刊行物1,2に記載された発明及び出願前周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2006-12-27 
結審通知日 2007-01-16 
審決日 2007-01-30 
出願番号 特願2001-255185(P2001-255185)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 訓尾家 英樹  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 丸山 英行
渋谷 善弘
発明の名称 ステッピングモータのマイクロステップ駆動装置  
代理人 大西 正夫  
代理人 大西 孝治  

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