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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B |
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管理番号 | 1154661 |
審判番号 | 不服2005-18848 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-29 |
確定日 | 2007-03-22 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第241957号「高齢者安否確認システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月10日出願公開,特開平10- 91879〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成8年9月12日の出願であって,その請求項1ないし4に係る発明は,平成16年11月15日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1には次のとおり記載されている。 「家屋の各部屋に取り付けられ居住者の動きを検出するヒトセンサー(1)と、該ヒトセンサー(1)の出力を取り込みその出力から居住者の健康状況を推定し遠隔看護者への送信するレポートを作成する制御装置(2)と、該制御装置(2)が作成したレポートを電話回線(3)に出力するモデム部(4)を具備し、 前記制御装置(2)に、前記ヒトセンサー(1)の出力によるデータから居住者の通常の生活パターンの目安たる動作マニュアルを構築・修正するパターン形成部(6)と、該動作マニュアルと一定期間における実際の生活パターンとを比較しその結果に基づいてレポートを作成する判定部(7)を具備することを特徴とする高齢者安否確認システム。」(以下「本願発明」という。) 2.引用刊行物 (1) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-324372号公報(以下「引用刊行物1」という。)には,「生活パターン分析報知システム」と題し,図面とともに以下の事項が記載されている。 ・ 「【0004】今後、高齢化社会が進行するにともない高齢者の一人暮らしが激増すると考えられるが、高齢者や独居人など社会との接触が不十分になる可能性のある人は生活の変化や異常を自己チェックすることが難しい。 また、これらの人々を保護するための緊急時の対応システムが必要になってくると予測される。したがって、これらの人々の生活パターンや生活状況の把握が重要な課題になってくると考えられる。」 ・ 「【0014】図2に示すように分析装置3は電気配線4の電流を検出する電流検出部31と、電流検出部31で検出した電流信号43の前処理を行う前処理部32と、それぞれの機器の標準的な消費電流量やそのパターンを記憶するパターン記憶部33と、判別した使用機器の使用日時・使用時間を記録する記録部34と、外部からのコマンドやデータを入力する入力部35と、結果を呈示するモニタなどの出力部36と、通信回線37を介して他の家庭101や病院102・消防署103などに信号を送出する通信インターフェース38と、各部の制御とデータ処理をおこなうプロセッサ39からなる。」 ・ 「【0020】・・・また、機器使用データ48は各機器毎に一日のうち使用されていた時間を出力部36に呈示したり通信回線37を介して他の家庭101や病院102・消防署103などに伝送してもよいが、プロセッサ39により定期的に各種機器使用の日時、時間、頻度、相関などに関して各種の統計的処理を行い個人の生活パターンを把握したり機器の異常を検出して出力部36に警告表示することもできる。例えば生活パターンに関しては、朝最初に機器(冷蔵庫などの連続運転の機器を除く)を使用した時間を起床時間とし照明器具の消灯時間を就寝時間として睡眠(休息)パターンをとらえ、過去の一定期間にわたり記録した睡眠パターンから標準的な睡眠パターン(一定期間にわたる平均睡眠時間や平均的な起床・就寝時間さらにそれらの標準偏差や週・月・年を通した睡眠パターンの周期的変化などのデータ)を求め、その標準睡眠パターンに比較して短い時期が一定期間続いたときや就寝(起床)時間の変動が大きい場合に図4に例示するように出力部36に『先週の平均睡眠時間は…時間です。』や、『就寝(起床)時間が不規則です。』などのコメントを付けて睡眠パターンのトレンド図367や各機器の使用状況表368を表示するような学習判断を含んだ動作を行うこととしてもよい。また、一人暮らしの高齢者のために、上述のような生活データを通信回線37により病院102に送り、これを医師やカウンセラーなどが分析してもよい。」 ・ 「【0031】 【発明の効果】本発明によれば、電灯の点灯・消灯の時間を検出記録し起床就寝の時間を把握できる。これを、定期的に過去のデータと比較することにより起床就寝時間に対応する生活リズムの変化を検知できる。また、掃除器や洗濯器の使用頻度・時間から衛生状態を推測できる。上記は電気機器使用に関して得られる情報のほんの一例である。電気機器の使用形態は機器特有で、また機器自体人間生活に密着し、その全般にわたり関連しているので、これにより個人の生活状況・リズムを的確に把握できる。したがって、高齢者や一人暮らしなど社会との接触が不十分になる可能性のある人が使用すれば生活の変化や異常を自己チェックすることができる。また、必要最小限の生活情報を本人の縁者や保険・医療機関や消防署などに通信回線などを通じて伝送することによりコミュニケーションの不足の解消や緊急時の対応が有効に行える。また、老人ホームなどのように高齢者が集団生活している場合、世話をする人が個々の高齢者の生活パターンを効率的に把握でき個別のきめ細かな対応が可能になる。」 上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用刊行物1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「家屋内の各電気機器の使用を判別するために消費電流を検出する電流検出部と,該電流検出部の出力を取り込みその出力から一人暮らしの高齢者の睡眠パターンの変動を学習判断し病院の医師への送信するコメントを作成するプロセッサと,該プロセッサが作成したコメントを通信回線に出力する通信インターフェースを具備し, 前記プロセッサに,前記検出手段により判別した過去の一定期間にわたり記録した睡眠パターンから一人暮らしの高齢者の標準的な睡眠パターン(平均睡眠時間,平均的な起床・就寝時間とそれらの標準偏差,週・月・年を通した睡眠パターンの周期的変化などのデータ)を学習し求め,標準的な睡眠パターンと一定期間における睡眠パターンとを比較してその判断に基づいてコメントを作成させる生活パターン分析報知システム。」 (2) 同じく,原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-279221号公報(以下「引用刊行物2」という。)には,「ライフセキュリティシステム」と題して,次の事項が記載されている。 ・ 「(2).人間の存在の判断に人体から発する特有の波長を検出する赤外線センサーを検出手段として用いた装置であって、上記赤外線センサーからの検出結果を記憶する第1記憶手段と、予め設定された住人の日常生活のタイムスケジュールのパターンを記憶する第2記憶手段と、上記赤外線センサーからの検出結果を読込み住人の動きがないときにはその時刻を記憶しその時刻から所定設定時間内に住人の動きが検出されない場合にはその所定設定時間が属する時刻に人間の動きがあるべきか否か上記記憶された住人の日常生活のタイムスケジュールのパターンに照らして判断し、住人の動きがあるべきときに動きが検知されない場合には住人に健康上の異常事態が生じたものとして警報手段へ警報するよう指示する演算手段を有することを特徴とするライフセキュリティシステムの装置。」(1頁左下欄19?右下欄16行) ・ 「本システムは、上述のように赤外線センサーで人間の動きを間接的に観察するため、住人のプライバシーを侵すことなく住人の健康上の異常事態の発生を察知することができる。」(5頁右上欄11?14行) 2.対比 本願発明と引用発明とを比較すると,以下の点が明らかである。 ・ 引用発明の「家屋内の各電気機器の使用を判別するために消費電流を検出する電流検出部」と,本願発明の「家屋の各部屋に取り付けられ居住者の動きを検出するヒトセンサー(1)」とは,少なくとも「家屋内のセンサー」の概念で共通する。 ・ 引用発明の「電流検出部の出力を取り込みその出力から一人暮らしの高齢者の睡眠パターンの変動を学習判断し病院の医師への送信するコメントを作成するプロセッサ」において,「一人暮らしの高齢者」,「睡眠パターンの変動を学習判断し」,「病院の医師」,「コメント」及び「プロセッサ」は,本願発明の「居住者」,「健康状況を推定し」,「遠隔看護者」,「レポート」及び「制御装置」にそれぞれ相当するから,前記引用発明の構成と本願発明の「ヒトセンサー(1)の出力を取り込みその出力から居住者の健康状況を推定し遠隔看護者への送信するレポートを作成する制御装置(2)」とは,「センサーの出力を取り込みその出力から居住者の健康状況を推定し遠隔看護者への送信するレポートを作成する制御装置」の概念で共通する。 ・ 引用発明の「プロセッサが作成したコメントを通信回線に出力する通信インターフェース」と,本願発明の「制御装置(2)が作成したレポートを電話回線(3)に出力するモデム部(4)」とは,「制御装置が作成したレポートを通信回線に出力する出力部」の概念で共通する。 ・ 引用発明のプロセッサの「検出手段により判別した過去の一定期間にわたり記録した睡眠パターンから一人暮らしの高齢者の標準的な睡眠パターン(平均睡眠時間,平均的な起床・就寝時間とそれらの標準偏差,週・月・年を通した睡眠パターンの周期的変化などのデータ)を学習により求め」る部分において,「検出手段により判別した過去の一定期間にわたり記録した睡眠パターン」は本願発明の「ヒトセンサー(1)の出力によるデータ」と「センサーの出力によるデータ」の概念で共通し,また「標準的な睡眠パターン(平均睡眠時間,平均的な起床・就寝時間とそれらの標準偏差,週・月・年を通した睡眠パターンの周期的変化などのデータ)を学習し求め」ることは,動作マニュアルに関する本願明細書の【0012】の記載を参酌すると,その作用・機能からみて,本願発明の「通常の生活パターンの目安たる動作マニュアルを構築・修正」することに相当するから,これらを総合すると,前記引用発明の構成と本願発明の「ヒトセンサー(1)の出力によるデータから居住者の通常の生活パターンの目安たる動作マニュアルを構築・修正するパターン形成部(6)」とは,「センサーの出力によるデータから居住者の通常の生活パターンの目安たる動作マニュアルを構築・修正するパターン形成部」の概念で共通するということができる。 ・ 引用発明において,プロセッサの「標準的な睡眠パターンと一定期間における睡眠パターンとを比較してその判断に基づいてコメントを作成」する部分は,本願発明の「動作マニュアルと一定期間における実際の生活パターンとを比較しその結果に基づいてレポートを作成する判定部」に相当するといえる。 ・ 引用発明の「生活パターン分析報知システム」は,上記【0004】及び【0031】をみると,高齢者の安否を確認するものであるから,このシステムを「高齢者安否確認システム」と称することができる。 すると,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりとなる。 (1) 一致点 「家屋内のセンサーと,該センサーの出力を取り込みその出力から居住者の健康状況を推定し遠隔看護者への送信するレポートを作成する制御装置と,該制御装置が作成したレポートを通信回線に出力する出力部とを具備し, 前記制御装置に,前記センサーの出力によるデータから居住者の通常の生活パターンの目安たる動作マニュアルを構築・修正するパターン形成部と,該動作マニュアルと一定期間における実際の生活パターンとを比較しその結果に基づいてレポートを作成する判定部を具備する高齢者安否確認システム。」 (2) 相違点 (ア) 相違点1 家屋内のセンサーに関して,本願発明が「各部屋に取り付けられ居住者の動きを検出するヒトセンサー」であり,そして「ヒトセンサー」の出力に基づき,居住者の健康状況を推定し,また動作マニュアルを構築・修正しているのに対し,引用発明のものは,間接的に居住者の動きを検出するためのものではあるが,各電気機器の使用を検出する電流検出部であり,そしてこの出力に基づき居住者の健康状況の推定等を行っている点。 (イ) 相違点2 通信回線及び出力部に関して,本願発明が「電話回線」及び「モデム部」であるのに対し,引用発明は,通信回線と通信インターフェースである点。 3.判断 上記相違点について以下検討する。 (1) 相違点1について 引用刊行物2には,住居内の各所に配設された赤外線センサーで住人の動きを検出し,その検出結果と,住人の日常生活のタイムスケジュールパターンとの比較により,住人の健康上の異常事態の発生を察知し,管理人に通報するライフセキュリティシステムが記載されており,また赤外線センサーの利用により,住人のプライバシーを侵すことなく住人の健康上の異常事態の発生を察知することができるという本願発明と同様の効果を奏することが示されている。 そして,引用発明も間接的ではあるが,機器の検出電流に基づき,住人の日常生活の動きを検出しているものであるから,住人の動きの検出手段として,引用刊行物2に記載された発明に基づき,赤外線センサーを採用し,上記相違点1に係る本願発明の構成を想到することは,当業者であれば容易になし得たことということができる。 (2) 相違点2について 一般に,遠隔監視システムにおいて,監視装置の通信に電話回線を用いることは,例えば,平成16年9月8日付けの拒絶の理由で提示した特開平6-46160号公報等にも示されているように,出願前周知の技術である。 すると,上記周知の技術に基づけば,引用発明の通信回線を電話回線とし,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者であれば適宜なし得たことというべきである。 (3) そして,本願発明の全体構成により奏される効果は,引用刊行物1,2に記載された発明及び周知の技術から予測し得る範囲内のものである。 したがって,本願発明は,引用刊行物1,2に記載された発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.まとめ 以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり決定する。 |
審理終結日 | 2007-01-17 |
結審通知日 | 2007-01-23 |
審決日 | 2007-02-05 |
出願番号 | 特願平8-241957 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G08B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 恭司 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 高橋 学 |
発明の名称 | 高齢者安否確認システム |
代理人 | 宮田 信道 |
代理人 | 宮田 信道 |
代理人 | 宮田 信道 |