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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1154710
審判番号 不服2004-19965  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-27 
確定日 2007-03-22 
事件の表示 平成7年特許願第504798号「遊泳/水掻き用具」拒絶査定不服審判事件〔平成7年2月2日国際公開、WO95/03095、平成9年1月14日国内公表、特表平9-500302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年6月7日(パリ条約による優先権主張1993年7月20日、オーストラリア)を国際出願日とする出願であって、平成16年6月18日付の拒絶査定に対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に、同年10月22日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年10月22日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「水中又は水面での水掻きを補助するために遊泳者、サーファ、その他の人が装着する用具であって、前記人の腕の周囲に装着される軟質カバーと、前記軟質カバーの外側に、前記人の腕が第一の所定の方向に水中を移動するときに前記方向に対して反対の方向に水の抵抗を受けて開口するカップ形に取り付けられ、前記第一の所定の方向と逆の方向に移動するときに閉じるように構成された、少なくとも一つのフラップと、前記フラップに配設され、薄いシート状で、且つ、該フラップより硬質な材料からなるインサートとを備え、前記軟質カバーには、前記腕の周方向上に位置するとともに、開口する向きが周方向反対向きとなるように、二つのフラップが形成されていることを特徴とする用具。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である米国特許第3286287号明細書(以下、「引用例」という。)には、「BODY FINS FOR SWIMMERS(遊泳者のための身体用ひれ)」に関して、図面と共に次の事項が記載されている(括弧内の翻訳は当審合議体による。)。
(イ)「This invention relates to swimming aids and more speciffically it relates to construction features on fins or flippers for attaching to members of the human body, such as, the arm or leg.(本発明は水泳補助具に関するものであって、より詳細には、腕や脚などの人体に取り付けられる部材用のひれや水掻きの構造的特徴に関する。)」(1頁1欄8?11行:行数は公報に示された表示による。)
(ロ)「FIGURES 1-4 depict the basic nature of a body fin constructed in accordance with the teachings of this invention. The fin may be constructed of a soft, elastic, rubber-like material which is stretched about a central aperture 13 to form a bodice section 14 to fit upon the forearm of the swimmer in the fashion shown in FIGURE 1. At one extremity, there is a semi-glovelike hand-grasp portion 15 which permits the thumb and fingers to extend freely through the end to leave them free for grasping any desired object.(図1-4には、本発明により教示される構造の身体用ひれの基本的性質が示されている。ひれは、図1に示されるように、遊泳者の前腕にフィットする胴体部14を形作る中央の孔13の周りに広がる柔軟で伸縮性のあるゴム状の素材から成っている。先端には、半ばグローブのような形状を成し、親指とその他の指を自由に伸ばして所望の目的物を掴むことが可能とされた把持部15が設けられている。)」(1頁2欄28?37行)
(ハ)「Attached to the bodies section 14 is the major fin-like surface 16 which has a ribbed outer edge 17 and which over the greater part of the surface is substantially a flexible membrane member which will droop about the arm on an upward movement in a feathered condition or return stroke in the manner shown in FIGURE 4. The outer rim 17 is attached at the handgrasp section 15 near the curved filet 19 so that the hand when arched to provide a downward power-swimming stroke as depicted in FIGURE 3 will stretch the outer rim 17 into a taut position and cause the entire rib protrusion to become rigid with the remainder of the flexible membrane 16 forming a cup-like interior surface 18 for scooping the water on a power-stroke. Thus, it may be seen that the hand when attaining a normal downward swimming power-stroke will selectively manipulate the rib portion by stretching it to cause the fin to become rigid, and when the arms is relaxed in the return stroke it will permit the fin member to droop and pass through the water with little resistance.(胴体部14には、リブ状の外側縁17を備えたひれ状の表面を有する部材16が取り付けられており、その表面の大部分は、腕を水平にして上方へ返す際、即ち、図4に示される態様で水掻きの戻り動作が行われる際に、垂れ下がり状態となる柔軟薄膜部材とされている。外側縁17は、把持部15の湾曲した部分の近くに結びつけられているため、図3に示されるように、下方向への強力な水掻き動作を与えるように弓形に曲げられた手が外側縁17を緊張した状態となるように強く張り、それによって、リブ状部分の隆起部全体が堅くなり、柔軟部材16のその他の部分は、強力な動作で水をすくえるようにカップ状の内表面18を形作る。かくして、通常の下方向への水掻き動作に際して、手は、リブ状部分を張ることによって、ひれが堅くなるようにリブ状部分を選択的に操作し、水掻きの戻り動作時に腕の緊張が緩められた際には、ひれ部材が垂れ下がることを許容し、殆ど抵抗なく水が通過できるようになる。)」(1頁2欄38?56行)
これらの記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、引用例には、
「遊泳者の腕や脚などの人体に取り付けられる水泳補助具であって、中央の孔13の周りに広がる柔軟で伸縮性のあるゴム状の素材から成る遊泳者の前腕にフィットする胴体部14と、リブ状の外側縁17を備えたひれ状の表面を有する該胴体部14に取り付けられた柔軟薄膜部材とを備え、外側縁17は把持部15の湾曲した部分の近くに結びつけられ、下方向への強力な水掻き動作を与えるように弓形に曲げられた手が外側縁17を緊張した状態となるように強く張り、それによって、リブ状部分の隆起部全体が堅くなり、柔軟部材16のその他の部分は、強力な動作で水をすくえるようにカップ状の内表面18を形作り、通常の下方向への水掻き動作に際して、手は、リブ状部分を張ることによって、ひれが堅くなるようにリブ状部分を選択的に操作し、水掻きの戻り動作時に腕の緊張が緩められた際には、ひれ部材が垂れ下がることを許容し、殆ど抵抗なく水が通過できるようにされた水泳補助具」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
(i)本願発明の構成について
ところで、請求項1には、「フラップ」につき、「軟質カバーの外側に、…取り付けられ、…ように構成された、少なくとも一つのフラップ」という記載と「軟質カバーには、…二つのフラップが形成されている」という記載の二つの記載がある。そこで、明細書の記載を参酌すると、発明の詳細な説明には、実施例を説明するものとして、「軟質カバー11には、同様にネオプレンゴム等の軟質材料或いはより薄いナイロン織物等から形成されて横方向に対向した一対のフラップ12が、縫い付けられるか或いは他の方法で接着されている。」との記載があるが、一対のフラップ12以外には、他にフラップについての記載や図示は存在しないし、また、請求項1において、「少なくとも一つのフラップ」と「二つのフラップ」とは、共に、軟質カバーに対して、取り付けられ、ないしは、形成されていることに鑑みても、少なくとも一つのフラップとは、二つのフラップを意味するものと解釈するのが妥当である。
(ii)対比
上記(i)で説示した理解に基づいて、以下、本願発明と引用発明とを対比することとする。
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「下方向への強力な水掻き動作を与えるよう」に「遊泳者の腕や脚などの人体に取り付けられる水泳補助具」は、本願発明の「水中又は水面での水掻きを補助するために遊泳者が装着する用具」に相当し、同様に、引用発明の「中央の孔13の周りに広がる柔軟で伸縮性のあるゴム状の素材から成る遊泳者の前腕にフィットする胴体部14」は、本願発明の「人の腕の周囲に装着される軟質カバー」に相当する。また、引用発明の「ひれ」と本願発明の「フラップ」とは、共に、水掻き用のひれである点で共通するものであり、さらに、引用発明において、「下方向への水掻き動作」時に「強力な動作で水をすくえるようにカップ状の内表面18を形作」ることは、実質的にみて、本願発明において、「人の腕が第一の所定の方向に水中を移動するときに前記方向に対して反対の方向に水の抵抗を受け」ることに相当するから、本願発明と引用発明は、共に、「軟質カバーの外側に、人の腕が第一の所定の方向に水中を移動するときに前記方向に対して反対の方向に水の抵抗を受け、前記第一の所定の方向と逆の方向に移動するときには抵抗を受けないように構成されたひれを備える」点において、共通する。
そうすると、両者は、
「水中又は水面での水掻きを補助するために遊泳者が装着する用具であって、前記人の腕の周囲に装着される軟質カバーと、前記軟質カバーの外側に取り付けられ、前記人の腕が第一の所定の方向に水中を移動するときに前記方向に対して反対の方向に水の抵抗を受け、前記第一の所定の方向と逆の方向に移動するときには抵抗を受けないにように構成されたひれを備えた用具」である点で一致し、次の各点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、軟質カバーの外側に取り付けられるひれが、人の腕が第一の所定の方向に水中を移動するときに前記方向に対して反対の方向に水の抵抗を受けて開口するカップ形に取り付けられ、前記第一の所定の方向と逆の方向に移動するときに閉じるように構成された二つのフラップであって、腕の周方向上に位置するとともに、開口する向きが周方向反対向きとなるようにされているのに対して、引用発明では、人の腕が第一の所定の方向に水中を移動するときに、弓形に曲げられた手が外側縁17を緊張した状態となるように強く張り、リブ状部分の隆起部全体が堅くなり、柔軟部材16のその他の部分は、前記方向に対して反対の方向に水の抵抗を受けて開口するカップ状の内表面18を形作り、前記第一の所定の方向と逆の方向に移動するときに腕の緊張が緩められて、垂れ下がることを許容し、殆ど抵抗なく水が通過できるようにされているひれである点。
[相違点2]
本願発明が、フラップに配設され、薄いシート状で、且つ、該フラップより硬質な材料からなるインサートを備えているのに対して、引用発明が、そのような構成を具備しない点。

5.判断
[相違点1]について
人の腕が第一の所定の方向に水中を移動するときに前記方向に対して反対の方向に水の抵抗を受けて開くように取り付けられ、前記第一の所定の方向と逆の方向に移動するときに閉じるように構成された二つのフラップであって、腕の周方向上に位置するとともに、開口する向きが周方向反対向きとなるようにされている二つのフラップを備えた遊泳者が装着する用具は、例えば、実公昭51-35759号公報や米国特許第4756699号公報にみられるように周知技術である。また、遊泳者が装着する用具において、手を曲げる等の動作を伴うことなく、単に、手足の動く向きによって開閉することのできるフラップをカップ状にすることも、例えば、特開昭52-2995号公報や実願昭46-50147号(実開昭48-8896号)のマイクロフィルムにみられるように周知技術である。
したがって、これらの周知技術を寄せ集めて引用発明に適用することによって、引用発明におけるひれとして、カップ状のフラップを採用して、相違点1に係る本願発明の如く構成することは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。
[相違点2]について
薄いシート状で硬質な材料からなるインサート、換言すれば、板状の芯材を内部に埋設した遊泳者が装着する用具におけるひれは、例えば、実公昭51-35759号公報や実願昭53-53518号(実開昭54-156399号)のマイクロフィルムにみられるように周知技術である。
したがって、引用発明に当該周知技術を適用することによって、相違点2に係る本願発明の如く構成することは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。
そして、本願発明全体の効果も、引用発明、相違点1で説示した2つの周知技術及び相違点2で説示した周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-20 
結審通知日 2006-10-25 
審決日 2006-11-08 
出願番号 特願平7-504798
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 柴田 和雄
西田 秀彦
発明の名称 遊泳/水掻き用具  
代理人 本多 弘徳  
代理人 萩野 平  
代理人 添田 全一  
代理人 本多 弘徳  
代理人 濱田 百合子  
代理人 添田 全一  
代理人 濱田 百合子  
代理人 萩野 平  

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