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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1155130
審判番号 不服2004-2468  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-06 
確定日 2007-04-05 
事件の表示 平成 7年特許願第142872号「洗濯機の洗剤投入装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月17日出願公開、特開平 8-332297号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年6月9日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年10月8日付け、及び平成15年6月5日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明」という)。

「内部に貯留された洗剤を注水により洗濯槽内に排出する洗剤貯留容器と、内部に貯留された仕上げ剤を注水により洗濯槽内に排出する仕上げ剤貯留容器と、前記洗剤貯留容器に上方から注水する第1の注水口および前記仕上げ剤貯留容器に上方から注水する第2の注水口を有する注水部材とを備え、洗濯運転中に前記注水部材の第1および第2の注水口のそれぞれに所定のタイミングで給水制御するようにした洗濯機の洗剤投入装置において、
前記第1の注水口に給水するための第1の給水弁と、
前記第2の注水口に給水するための第2の給水弁と、
前記第1および第2の給水弁を駆動制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第2の給水弁の駆動の開始条件および停止条件を、それぞれ前記第1の給水弁の駆動開始時点以降および駆動停止時点より前としたことを特徴とする洗濯機の洗剤投入装置。」

II.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、特開平05-137888号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が図面とともに記載されている。

1.「10は洗濯機本体1の上部を構成する上部枠体、11は給水から脱水までの一連の洗濯運転を運転プログラムに従って自動的に行うマイクロコンピュータを備えた制御回路である。12は前記上部枠体10に開閉自在に設けせられた蓋、13は水槽2内へ水の給水を制御する給水弁で、第1給水バブル13aと第2給水バブル13bの2つの給水バブルに連通している。
14は前記上部枠体10に出し入れ自由に設けられた洗剤などの投入ケースで、該投入ケース14は、粉末洗剤投入部14a、液体洗剤投入部14b、柔軟仕上剤投入部14cの三つの室から一体的に形成され、前記粉末洗剤投入部14aは、液体洗剤投入部14bと隣接させ、かつ後方リブ14dの両側に溝状の切欠部14eを設けている。」(【0015】段落?【0016】段落)

2.「前記洗剤などの投入ケース14の上方には、図3および図4に示すように複数の水穴15aを設けた注水口15bを配設し、前記第1バブル13a、第2バブル13bと給水ホース19,20を介して連通する給水接続口15cを備えた注水口本体15と注水口15bを収設するように箱体に形成せしめている。前記注水口15bに設けられた複数の水穴15aは、図5のように、単一で、奥行き数ミリの細長い穴15eを設けてもよい。そうすることによって、穴から突出する水は、帯び状のシャワー状となって洗剤に均一に注がれることになる。」(【0018】段落)

3.「脱水槽4に設定水位まで給水されるとパルセータ5が回転し、すすぎ1が開始される。所定時間のすすぎ1が終了すると排水弁9が開となり洗濯水が機外に排水される。排水が終了すると再び中間脱水が行なわれ所定時間の中間脱水が終わると、給水弁13が開となるとともに第1給水バルブ13aと第2給水バルブ13bとも開となる。この時、第1給水バルブ13aの開放はすすぎ2を行なうための給水用で、第2バルブ13bの開放は、柔軟仕上げ剤投入部14cに投入されている柔軟仕上げ剤を脱水槽4内に投入するためで、投入部14cへの給水により給水ホース20を通って給水された水と一緒に柔軟仕上げ剤が混って脱水槽4内に注水されるものである。・・・中略・・・脱水槽4に設定水位給水されると給水弁13が閉じ、パルセータ5が回転してすすぎ2が行なわれ、その後排水、脱水が行なわれて洗濯が終了する。」(【0026】段落?【0027】段落)

4.「洗濯運転がスタートすると給水弁13と第1給水バルブ13aが開となり給水された水は矢印Aのように給水ホース19を通り、注水口15bの水穴15aによってシャワー状に下方に向って洗剤専用投入部14a,14bに噴流される。粉末洗剤は噴流された水によって混流され、後方へ流され、流水ガイド21によって案内され前方へ押し流され、脱水槽4内へ注水する。」(【0031】段落)

5.「柔軟仕上投入部14cに給水された水も、前述した液体洗剤投入部14bに給水した水と同様、注水口15bの水穴15aによってシャワー状に下方に向って噴流される。液体柔軟仕上剤はシャワー状に噴流された水によって混流されると同時に、柔軟仕上剤投入部14cの洗剤水は増加し、筒状キャップ22a内の筒状通水穴22の頂部に位置する通水口に到達し、かつ洗剤水は筒体の後方壁14fからオーバーフローする。前記後方壁は後方へ流れやすくするため、他の壁より低くしている。オーバーフローした洗剤水と筒状通水穴に引き込まれた洗剤水は注水口体15の流水ガイド23に案内され、前方へ押し流され、脱水槽4へ注水される。一定時間給水されると第2給水バルブ13bは閉とされる。但し、第1給水バルブ13aは開のままで給水を続行する。
第2給水バルブ13bの給水が止められると、柔軟仕上剤投入部14cに残留した洗剤水はサイフォン現像作用により筒状キャップ22aの底面の水位まで引き込みほとんどの洗剤水を下方へ滴下させる。・・・後略・・・」
(【0035】段落?【0036】段落)

図2には、第1給水バブル13a及び第2給水バブル13bと、それぞれ給水ホース19,20を介して連通する注水口体15、及び粉末洗剤投入部14a、液体洗剤投入部14b、柔軟仕上剤投入部14cの三つの室から一体的に形成された投入ケース14が図示され、図3及び図4には、洗剤などの投入ケース14の上方に、複数の水穴15aを設けた注水口15bが配設されていることが図示されている。

上記記載事項1には、洗濯機について、給水から脱水までの一連の洗濯運転を運転プログラムに従って自動的に行うマイクロコンピュータを備えた制御回路11が記載され、また、上記記載事項1及び図2には、粉末洗剤投入部14a、液体洗剤投入部14b、柔軟仕上剤投入部14cの三つの室から一体的に形成された投入ケース14、第1給水バルブ13aと第2給水バルブ13b等からなる手段(以下、便宜上「洗剤投入手段」と呼ぶ)が記載されている(なお、上記記載中「バブル」とあるのは、「バルブ」の誤記と認め、訂正して示す。以下同様)。
上記記載事項2及び図3,図4には、投入ケース14の上方に、第1バルブ13a、第2バルブ13bと給水ホース19,20を介して連通する注水口15bが配設されていることが記載されている。
上記記載事項3には、中間脱水が終わるタイミングで、第1給水バルブ13aと第2給水バルブ13bがともに開となることが記載され、第2給水バルブ13bが開となることによって、柔軟仕上げ剤投入部14cに給水されることが記載されている(以下、便宜上柔軟仕上げ剤投入部14c側の給水口15bを「柔軟仕上げ剤用注水口15b」と呼ぶ)。
上記記載事項4には、第1給水バルブ13aが開となると、洗剤専用投入部14a,14bに注水口15b(以下、便宜上洗剤専用投入部14a,14b側の注水口15bを「洗剤用注水口15b」と呼ぶ)から注水が行われることが記載されている。
上記記載事項5には、柔軟仕上げ剤用注水口15bへの給水にあたって、一定時間給水されると第2給水バルブ13bは閉とされるが、第1給水バルブ13aは開のままで給水を続行すること、すなわち、第2給水バルブ13bは第1給水バルブ13aが閉じる前に閉じることが記載されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「投入された洗剤を注水により脱水槽4に投入する投入ケース14の粉末洗剤投入部14a及び液体洗剤投入部14bと、投入された柔軟仕上げ剤を注水により洗濯兼脱水槽4に投入する投入ケース14の柔軟仕上げ剤投入部14cと、粉末洗剤投入部14a及び液体洗剤投入部14bに上方から注水する洗剤用注水口15b及び柔軟仕上げ剤投入部14cに上方から注水する柔軟仕上げ剤用注水口15bとを備え、洗濯運転中に注水部材の洗剤用注水口15bおよび柔軟仕上げ剤用注水口15bのそれぞれに所定のタイミングで給水制御するようにした洗濯機の洗剤投入手段において、
洗剤用注水口15bに注水するための第1給水バルブ13aと、
柔軟仕上げ剤用注水口15bに注水するための第2給水バルブ13bと、
第1給水バルブ13aおよび第2給水バルブ13bを開閉制御する制御回路11とを備え、
制御回路11は、第2給水バルブ13bの開条件および閉条件を、それぞれ第1給水バルブ13aの開時点と同時および閉時点より前とした洗濯機の洗剤投入手段。」

III.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「投入された洗剤を注水により脱水槽4に投入する投入ケース14の粉末洗剤投入部14a及び液体洗剤投入部14b」は、本願発明の「内部に貯留された洗剤を注水により洗濯槽内に排出する洗剤貯留容器」に相当し、以下同様に、「柔軟仕上げ剤投入部14c」は「仕上げ剤貯留容器」に、「洗剤用注水口15b」は「第1の注水口」に、「柔軟仕上げ剤用注水口15b」は「第2の注水口」に、「第1給水バルブ13a」は「第1の給水弁」に、「第2給水バルブ13b」は「第2の給水弁」に、「制御回路11」は「制御手段」に、「洗剤投入手段」は「洗剤投入装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「開条件」、「閉条件」、「開時点」、「閉時点」は、それぞれ本願発明の「駆動の開始条件」、「駆動の停止条件」、「駆動開始時点」、「駆動停止時点」と同義である。
したがって、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
(一致点)
「内部に貯留された洗剤を注水により洗濯槽内に排出する洗剤貯留容器と、内部に貯留された仕上げ剤を注水により洗濯槽内に排出する仕上げ剤貯留容器と、前記洗剤貯留容器に上方から注水する第1の注水口および前記仕上げ剤貯留容器に上方から注水する第2の注水口を有する注水部材とを備え、洗濯運転中に前記注水部材の第1および第2の注水口のそれぞれに所定のタイミングで給水制御するようにした洗濯機の洗剤投入装置において、
前記第1の注水口に給水するための第1の給水弁と、
前記第2の注水口に給水するための第2の給水弁と、
前記第1および第2の給水弁を駆動制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第2の給水弁の駆動の停止条件を、前記第1の給水弁の駆動停止時点より前とした洗濯機の洗剤投入装置。」

そして、両者は、次の点で相違する(対応する引用例記載の用語を( )内に示す)。
(相違点)
制御手段(制御回路11)の制御内容について、本願発明は、第2の給水弁の駆動の開始条件が、第1の給水弁の駆動開始時点以降となっているのに対し、引用発明は、第2の給水弁(第2給水バルブ13b)の駆動の開始条件が、第1の給水弁(第1給水バルブ13a)の駆動開始時点と同時となっている点。

IV.判断
上記相違点について検討する。
第2の給水弁(第2給水バルブ13b)と第1の給水弁(第1給水バルブ13a)とが同時に開くことにより、第2の給水経路にかかる水圧は、第2の給水弁(第2給水バルブ13b)が単独で開く場合に比べ低下するといえるから、引用発明は、本願発明の課題を解決したものといえる。
一方、引用例の記載事項3及び5から、柔軟仕上げ剤を投入するために必要な第2の給水弁(第2給水バルブ13b)の開時間は、洗濯槽(脱水槽4)内の水位が設定水位に達するまで給水するために必要な第1の給水弁(第1給水バルブ13a)の開時間より十分短いことが明らかであり、柔軟仕上げ剤の投入は、すすぎ運転のための給水中に行われれば良いのであるから、第2の給水弁(第2給水バルブ13b)の開動作が第1の給水弁(第1給水バルブ13a)の開動作より遅れて行われてもなんら差し支えないので、相違点に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項であるといえる。

V.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-05 
結審通知日 2007-02-06 
審決日 2007-02-19 
出願番号 特願平7-142872
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武井 健浩  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 川本 真裕
芦原 康裕
発明の名称 洗濯機の洗剤投入装置  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  

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