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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1155206
審判番号 不服2003-4073  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-13 
確定日 2007-04-02 
事件の表示 特願2001-223153「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 4日出願公開、特開2003- 33552〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一、手続きの経緯
本願は、平成13年7月24日の出願であって、平成14年3月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年5月24日付けで手続補正がなされ、平成15年2月5日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月11日付け手続補正によって明細書の一部が補正されたものである。

第二、平成15年4月11日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月11日付の手続き補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1乃至5のうちの請求項1は、「遊技領域に向けて連続的に遊技球を発射する発射装置と、前記発射装置による遊技球の弾発力を調節する弾発力調節手段と、前記弾発力調節手段の調節によって前記連続的遊技球発射をほぼ一定の弾発力を保ちながら停止制御可能な発射停止制御手段と、前記発射装置により前記遊技領域に発射された遊技球が前記遊技領域にある駆動入球口に入球することにより遊技者に遊技上の価値を付与する遊技価値付与手段と、前記遊技領域にある起因入球口への入球に起因して前記駆動入球口を拡開駆動又は縮小閉鎖駆動させる指示を行う駆動制御手段とを備えた弾球遊技機において、
前記駆動制御手段の指示による前記駆動入球口の拡開中に該駆動入球口に到達しやすいように遊技者に前記発射装置による遊技球の発射タイミングを報知する発射タイミング報知手段と、
前記駆動制御手段の指示により前記駆動入球口が拡開駆動する場合において前記発射タイミング報知を行う第1の遊技状態と前記駆動制御手段の指示により前記駆動入球口が拡開駆動する場合においても該発射タイミング報知を行わない第2の遊技状態とを選択制御する選択制御手段とを備え、
前記駆動入球口と前記起因入球口の双方を、前記弾発力調節手段による発射装置の弾発力の調整を一つの調節段階に維持した状態で発射遊技球が通過可能な位置に配置したことを特徴とする弾球遊技機。」と補正された。

上記補正は
補正前(平成14年5月24日付手続補正により補正された特許請求の範囲)の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「拡開駆動又は縮小閉鎖駆動する駆動制御手段」を「拡開駆動又は縮小閉鎖駆動させる指示を行う駆動制御手段」に限定し、「駆動入球口の拡開」を「駆動制御手段の指示による駆動入球口の拡開」に限定するものであり、また「発射タイミング報知を行う第1の遊技状態と発射タイミング報知を行わない第2の遊技状態」について「駆動制御手段の指示により駆動入球口が拡開駆動する場合において」と限定するものであり、さらに、「一つの調節段階における弾発力で発射遊技球が通過可能な位置に配置」を「発射装置の弾発力の調整を一つの調節段階に維持した状態で発射遊技球が通過可能な位置に配置」に補正するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同条同項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(あ)刊行物に記載された発明
刊行物1;特開2001-170265号公報(平成13年6月26日公開)
刊行物2;特開2000-312750号公報
刊行物3;特開平11-342245号公報

原査定の拒絶理由通知に引用された特開2001-170265号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、以下の記載がある。
「(57)【要約】
【目的】・・・
【構成】 特別可変入賞球装置9の1回のラウンドの開放期間のうち予め定めたV有効時間中に入賞玉検出器13の検出出力のあることを条件として継続制御するための条件を成立させると共に、玉発射報知LED35a及びスピーカ26によってV有効時間中に打玉が特別可変入賞球装置9内に入賞し易いように打玉の発射を遊技者に促す。これにより、V有効時間中に打玉が入賞するように打玉の発射タイミングが報知されるので、・・・」
「【0007】
【発明の実施の形態】・・・先ず、図1を参照して実施形態に係る弾球遊技機の遊技盤1の構成について説明する。図1は、遊技盤1を示す正面図である。図1において、遊技盤1の表面には、発射された打玉を誘導するための誘導レール2がほぼ円状に植立され、該誘導レール2で区画された領域が遊技領域3を構成している。遊技領域3のほぼ中央には、後述する画像表示部60での識別情報(以下、特別図柄という)の可変表示(以下、変動ともいう)を可能にする特別可変表示装置30が配置されている。・・・
【0008】特別可変表示装置30の下方には、始動入賞口5及び特別可変入賞球装置9等の各種構成部材を遊技盤1に取り付けるための取付基板4が設けられている。取付基板4の中央上端部には、始動入賞口5が配置されており、該始動入賞口5には、入賞した打玉を検出する始動玉検出器8が設けられている。また、始動入賞口5への入賞に基づく特別図柄の変動は、変動中を除いて所定回数(本実施形態では、4回)記憶され、その旨が後述の特別図柄記憶表示LED36によって表示されるようになっている。
【0009】前記取付基板4の中央部には、特別可変入賞球装置9が配置されており、該特別可変入賞球装置9は、入賞領域14を開閉制御する開閉板11を備えている。即ち、開閉板11は、遊技盤1の裏面に配されたソレノイド10の駆動に基づいて傾動位置と垂直位置との間で変動自在となっており、ソレノイド10がONされたときには入賞領域14を開放する傾動状態となる一方、ソレノイド10がOFFされたときには入賞領域14を閉鎖する垂直状態となる。また、入賞領域14内には、入賞玉を検出する入賞玉検出器13が設けられている。なお、入賞玉検出器13は、後で詳述するV有効時間中に入賞玉を検出すると、これをV入賞として特定遊技状態の継続権の成立を許容するようになっている。即ち、入賞玉検出器13は、V有効時間以外では入賞領域14内に入った入賞玉の数を検出するだけの機能であるが、V有効時間ではその入賞玉数の検出機能に加えて継続権の成立(繰返し継続制御)機能をも合わせ持つようになっている。・・・
【0010】しかして、上記のように構成される特別可変入賞球装置9は、以下のように作動する。即ち、打玉が始動入賞口5に入賞して始動玉検出器8をONさせると、特別可変表示装置30が変動を開始し、一定時間が経過すると、例えば左・右・中の順で特別図柄が確定され、その確定された図柄の組み合せが所定の大当り組合せ(同一図柄のゾロ目)となったときに特定遊技状態となる。そして、この特定遊技状態においては、特別可変入賞球装置9の開閉板11が所定期間(例えば、30秒)あるいは所定個数(例えば、10個)の入賞玉が発生するまで開放(開放サイクル)するように設定され、その開放している間遊技盤1の表面を落下する打玉を受け止めるようになっている。そして、受け止められた打玉がV有効時間中に入賞玉検出器13をONすると、再度上記した開放サイクルを繰り返し、V有効時間中に入賞玉検出器13がONする毎に継続権が成立して開放サイクルを最高16回繰り返すことができるようになっている。」
「【0014】・・・また、玉発射報知LED35aは、その赤色点灯によって打玉の発射タイミングを遊技者に報知する一方、玉発射停止報知LED35bは、その緑色点灯によって打玉の発射停止タイミングを遊技者に報知するようになっている。より具体的には、発射した打玉がV有効時間中に特別可変入賞球装置9(入賞領域14)内に入賞してV入賞する(繰返し継続制御が行われる)可能性のある場合は、玉発射報知LED35aが赤色点灯すると共に玉発射停止報知LED35bが消灯することで、遊技者に打玉の発射を促すようになっている。一方、発射した打玉がV有効時間中に特別可変入賞球装置9(入賞領域14)内に入賞してV入賞する(繰返し継続制御が行われる)可能性のない場合は、玉発射報知LED35aが消灯すると共に玉発射停止報知LED35bが緑色点灯することで、遊技者に打玉の発射停止を促すようになっている。
【0015】以上、特別可変表示装置30を含む遊技機の遊技盤1の構成について説明してきたが、それらの遊技装置は、図2及び図3に示す遊技制御回路によって制御される。図2及び図3は、遊技制御回路をブロック構成で示す回路図であり、MPU42a及び図示しないROM、RAM、入出力回路を含んだ基本回路42によって制御されている。・・・
【0016】一方、基本回路42からは、以下の装置及び回路に制御信号が与えられる。即ち、LCD回路47を介して特別可変表示装置30(図2中には、LCD表示装置と記載)に表示制御信号が与えられ、LED回路48を介してV有効時間表示器34、特別図柄記憶表示LED36、玉発射報知LED35a、玉発射停止報知LED35b、V入賞表示LED19、及び各飾りLED17・37?41に表示駆動信号が与えられ、ソレノイド回路49を介してソレノイド10に駆動信号が与えられ、・・・音声合成回路51及び音量増幅回路52を介してスピーカ26に音声信号が与えられる。・・・」
「【0018】・・・これにより、玉発射報知LED35a及びスピーカ26による報知時間中に打玉を発射すれば、おおよそV有効時間中に特別可変入賞球装置9内に入賞(入賞玉検出器13で玉検出)してV入賞する(繰返し継続制御が行われる)ようになっている。・・・」
「【0020】以上のように、本実施形態の構成によれば、遊技領域3に設けられて遊技者にとって有利となる開放状態(第1の状態)と遊技者にとって不利となる閉鎖状態(第2の状態)とに変化可能な可変入賞球装置としての特別可変入賞球装置9と、該特別可変入賞球装置9内に入賞した入賞玉を検出する入賞玉検出手段としての入賞玉検出器13と、特別可変入賞球装置9を開放状態に変化させる特定遊技状態を、予め定めた特定時間(V有効時間)中に前記入賞玉検出器13の検出出力のあることを条件として継続制御する制御手段としての基本回路42と、前記特定時間中に打玉が前記入賞玉検出器13に検出され易いように打玉の発射を遊技者に促す打玉発射タイミング示唆報知手段としての玉発射報知LED35a及びスピーカ26と、を備えたことを特徴とする。このように構成することにより、V有効時間中に打玉が入賞するように打玉の発射タイミングが報知されるので、ちょっとした不慮により特定遊技状態の終了条件(V入賞する前に第2の状態に変化させる条件)が成立してしまうのを極力回避でき、然も特定遊技状態が継続するか否かの緊張感及び期待感を半減させることがない。」
「【0024】なお、上記した実施形態では、打玉発射タイミング示唆報知手段として玉発射報知LED35aを設ける一方、玉発射停止示唆報知手段として玉発射停止報知LED35bを設けることで、打玉の発射及び発射停止の表示による報知手段を別途設けているが、これに限らず、1つの表示器で打玉の発射及び発射停止を報知するようにしてもよい。また、表示による報知手段として特別に表示器を設けるのではなく、既存の表示器に報知機能を持たせるようにしてもよい。例えば、図6に示すように、特別可変表示装置30を構成するLCD表示器33(画像表示部60)によって玉の発射タイミング及び発射停止タイミングを遊技者に報知するようにしてもよい。具体的には、大当りが確定すると、図6(A)に示すように、大当り図柄70(同図中には、「7・7・7」を例示)と「大当り」の文字71に加えて、「準備OK」の文字72を画像表示部60に表示する。そして、図6(B)乃至図6(D)に示すような当り図柄73、ラウンド表示74、及び入賞玉のカウント表示75を表示する画像表示部60でのラウンド表示において、玉の発射タイミング時には、「発射!!」の文字76を表示する(図6(B)参照)。なお、「発射!!」の文字が表示されるタイミングは、前述した実施形態のようにV有効時間となる(特別可変入賞球装置9が開放する)前に表示される。一方、玉の発射停止タイミング時には、「発射停止」の文字77を表示する(図6(C)参照)し、V入賞した時点からは、「V」の文字78を表示する(図6(D)参照)。なお、1回目のV有効時間内にV入賞しなかった(入賞玉検出器13がONしなかった)場合は、次のV有効時間となる前に「発射!!」の文字を表示する。また、このように特別可変表示装置30(LCD表示器33)を打玉発射タイミング示唆報知手段、打玉次発射タイミング示唆報知手段、及び玉発射停止示唆報知手段として兼用した場合には、前述した効果に加えてコストの削減が招来できる。」
「【0027】・・・また、打玉発射タイミング示唆報知手段、打玉次発射タイミング示唆報知手段、及び玉発射停止示唆報知手段のいずれも報知するが、これらの報知をいずれか1つの示唆報知手段でのみ報知するようにしてもよい。また、1ラウンド目だけ示唆報知を行うものでもよい。また、ラウンド数については特に限定せず、複数回(1回以上継続する)であればよい。」

そして、これらの記載を「図6に示すように、特別可変表示装置30を構成するLCD表示器33(画像表示部60)によって玉の発射タイミング及び発射停止タイミングを遊技者に報知する(上記【0024】に記載)」場合についてまとめると、
引用刊行物1には、
「発射された打玉が始動入賞口5に入賞すると特別可変表示装置30が変動を開始し、一定時間が経過後、確定された特別図柄の組み合せが所定の大当り組合せとなったときには、遊技領域3に設けられた特別可変入賞球装置9の開閉板11が所定期間(例えば、30秒)あるいは所定個数(例えば、10個)の入賞玉が発生するまで開放(開放サイクル)する特定遊技状態となり、特別可変入賞球装置9の開放期間のうち予め定めた特定時間(V有効時間)中に打玉が特別可変入賞球装置9内に入賞すると特定遊技状態の継続権が成立して開放サイクルを最高16回繰り返すことができるようになっており、
前記特別可変入賞球装置9の開閉板11は、基本回路42からソレノイド回路49を介してソレノイド10に与えられる駆動信号に基づいて、入賞領域14を開放する傾動状態と入賞領域14を閉鎖する垂直状態との間で変動自在となっている、弾球遊技機において、
前記開放期間のうち予め定めた特定時間中に打玉が前記特別可変入賞球装置9内に入賞し易いように打玉の発射タイミングを遊技者に報知する打玉発射タイミング示唆報知手段を備え、
前記特別可変入賞球装置9が開放する前に前記発射タイミングを報知する前記打玉発射タイミング示唆報知手段は1ラウンド目だけ示唆報知を行うものであり、
遊技領域3のほぼ中央に配置された特別可変表示装置30の下方には取付基板4が設けられ、取付基板4の中央上端部には始動入賞口5が配置され、前記取付基板4の中央部には特別可変入賞球装置9が配置されている、弾球遊技機」の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。

原査定の拒絶理由通知に周知技術として引用された特開2000-312750号公報(以下、「引用刊行物2」という)には、以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、図柄を変動表示する図柄表示装置を備えた遊技機に係り、特に、特定入賞口への入賞を契機として行われる抽選の抽選結果を図柄表示装置で予告報知するとともに、特定入賞口への入賞数を図柄表示装置で報知する遊技機に関する。」
「【0067】このようにして、本実施の形態では、始動入賞口111への入賞があったときは、特別図柄表示装置104で抽選用図柄の変動表示を開始するとともに特賞状態または確率変動状態を生起させるための抽選を行い、その抽選結果に基づいてその変動表示を停止させたときに表示する停止図柄の態様を決定するようになっており、さらに、その抽選結果を特別図柄表示装置104で予告報知するにあたって、始動入賞口111への入賞数である保留玉数Mおよびその抽選結果であるリーチか否かに応じて態様が変化するキャラクタを、特別図柄表示装置104に表示するようにした。
【0068】これにより、現在の図柄変動ゲームにおいてその抽選結果であるリーチか否かが特別図柄表示装置104で予告報知されるので、その報知により遊技者が現在の図柄変動ゲームの抽選結果を比較的容易に把握することができる。・・・」
「【0078】また、上記実施の形態においては、リーチであるときおよび特賞状態を生起させるときは、いずれも常に予告報知を行うように構成したが、これに限らず、リーチであるときまたは特賞状態を生起させるときは、乱数等を用いて予告報知を行うように構成してもよい。すなわち、常に予告報知を行うのではなく、乱数等の如何によっては、このような場合に予告報知を行わないこともある。このような構成であれば、予告報知がなくてもリーチまたは特賞状態が生起されることで、遊技者に意外性を抱かせることができる。」

したがって、引用刊行物2には、
「特定入賞口への入賞を契機として行われる抽選の抽選結果を図柄表示装置で予告報知する遊技機において、予告報知を乱数等を用いて行うことにより、リーチであるときまたは特賞状態を生起させるときは、常に予告報知を行うのではなく、乱数等の如何によっては、予告報知を行わないこともある遊技機」の発明(以下、「引用刊行物2に記載された発明」という)が記載されていると認められる。

原査定の拒絶理由通知に周知技術として引用された特開平11-342245号公報(以下、「引用刊行物3」という)には、以下の記載がある。
「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
実施の形態1.まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機の全体の構成について説明する。・・・」
「【0040】・・・
(8)大当り予告判定用乱数:大当り予告を行うか否か決定するために使用される」
「【0058】ここで、大当り予告を行うか否か決定する。大当り予告は、特別図柄の変動開始時に、飾り図柄表示装置にキャラクタおよび吹き出しを表示し、飾りランプ・LEDおよび効果音によって演出を行うことをいう。この実施の形態では、大当りとなるときに1/3、大当りとならないときに1/253の確率で大当り予告が行われる。すなわち、抽出された特別図柄判定用乱数が「7」で大当りとなるときに、0?2の値をとる大当り予告判定用乱数の値が「0」であれば、基本回路101は、大当り予告カウンタに始動入賞記憶カウンタの値を設定する(ステップS725,S726,S728)。また、特別図柄判定用乱数の値が「7」以外の時には、0?252の値をとる特殊変動用乱数の値が「0」であれば、大当り予告カウンタに始動入賞記憶カウンタの値を設定する(ステップS725,S727,S728)。・・・」

したがって、引用刊行物3には、
「特別図柄の変動開始時に、飾り図柄表示装置にキャラクタおよび吹き出しを表示して、大当り予告を行うパチンコ遊技機において、大当りとなるときに、0?2の値をとる大当り予告判定用乱数の値が「0」であれば大当り予告が行われ「1又は2」であれば大当り予告が行われない、パチンコ遊技機」の発明(以下、「引用刊行物3に記載された発明」という)が記載されていると認められる。

(い)本願補正発明と引用発明1との比較・検討
引用発明1の「発射された打玉」は、本願補正発明の「発射された遊技球」に相当し、以下同様に、「始動入賞口5」は「起因入球口」に、「入賞」は「入球」に、「遊技領域3」は「遊技領域」に、「特別可変入賞球装置9」は「駆動入球口」に、「弾球遊技機」は「弾球遊技機」に、「開放期間」は「拡開中」に、「特別可変入賞球装置9内に入賞し易い」は「駆動入球口に到達しやすい」に、「打玉発射タイミング示唆報知手段」は「発射タイミング報知手段」に、それぞれ相当する。そして、弾球遊技機が、「遊技領域に向けて連続的に遊技球を発射する発射装置と、前記発射装置による遊技球の弾発力を調節する弾発力調節手段」とを備え、「遊技領域に起因入球口」を備えることは遊技を行うための構成上、明らかな事項である。また、引用発明1の「特定遊技状態の継続権が成立して開放サイクルを最高16回繰り返す」という技術事項は、遊技者にとって有利な状態であるから、本願補正発明の「遊技上の価値を付与する遊技価値付与手段を備え」という技術事項に相当する。さらに、引用発明1の「打玉が始動入賞口5に入賞すると特別可変表示装置30が変動を開始し、一定時間が経過後、確定された特別図柄の組み合せが所定の大当り組合せとなったときには、遊技領域3に設けられた特別可変入賞球装置9の開閉板11が所定期間(例えば、30秒)あるいは所定個数(例えば、10個)の入賞玉が発生するまで開放(開放サイクル)する特定遊技状態となり」という技術事項及び「特別可変入賞球装置9の開閉板11は、基本回路42からソレノイド回路49を介してソレノイド10に与えられる駆動信号に基づいて、入賞領域14を開放する傾動状態と入賞領域14を閉鎖する垂直状態との間で変動自在となっている」という技術事項は、打玉が始動入賞口5に入賞し、所定の条件が成立すると、特別可変入賞球装置9の開閉板11が基本回路42からの駆動信号に基づいて、入賞領域14を開放する傾動状態と閉鎖する垂直状態とに変動するのであるから、本願補正発明の「起因入球口への入球に起因して前記駆動入球口を拡開駆動又は縮小閉鎖駆動させる指示を行う駆動制御手段とを備え」という技術事項を示していると解釈できる。そして、引用発明1の「開放期間のうち予め定めた特定時間中」は、本願補正発明の「拡開中」と比較して「開口中」において一致している。次に、引用発明1の「特別可変入賞球装置9が開放する前に発射タイミングを報知する」という技術事項は、本願補正発明の「駆動入球口が拡開駆動する場合において発射タイミング報知を行う」という技術事項に相当する。次に、引用発明1の「遊技領域3のほぼ中央に配置された特別可変表示装置30の下方には取付基板4が設けられ、取付基板4の中央上端部には始動入賞口5が配置され、前記取付基板4の中央部には特別可変入賞球装置9が配置され」という技術事項は、遊技領域3を打玉が落下する弾球遊技機の構成からみて、本願補正発明の「駆動入球口と起因入球口の双方を、発射遊技球が通過可能な位置に配置した」という技術事項を示していると解釈できる。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

一致点
遊技領域に向けて連続的に遊技球を発射する発射装置と、前記発射装置による遊技球の弾発力を調節する弾発力調節手段と、前記発射装置により前記遊技領域に発射された遊技球が前記遊技領域にある駆動入球口に入球することにより遊技者に遊技上の価値を付与する遊技価値付与手段と、前記遊技領域にある起因入球口への入球に起因して前記駆動入球口を拡開駆動又は縮小閉鎖駆動させる指示を行う駆動制御手段とを備えた弾球遊技機において、
前記駆動制御手段の指示による前記駆動入球口の開口中に該駆動入球口に到達しやすいように遊技者に前記発射装置による遊技球の発射タイミングを報知する発射タイミング報知手段を備え、
前記駆動制御手段の指示により前記駆動入球口が拡開駆動する場合において前記発射タイミング報知を行い、
前記駆動入球口と前記起因入球口の双方を、発射遊技球が通過可能な位置に配置した弾球遊技機。

相違点
(A)本願補正発明では、弾発力調節手段の調節によって連続的遊技球発射をほぼ一定の弾発力を保ちながら停止制御可能な発射停止制御手段を備えるのに対し、引用発明1ではそのような手段を備えているかどうか明らかでない点。
(B)開口中の駆動入球口に到達しやすいように報知する発射タイミング報知手段の対象が、本願補正発明では駆動入球口の拡開中であるのに対し、引用発明1では、駆動入球口(特別可変入賞球装置9)の拡開中(開放期間)のうちの予め定めた特定時間である点。
(C)駆動入球口が拡開駆動する場合における発射タイミング報知について、本願補正発明では、報知を行う第1の遊技状態と報知を行わない第2の遊技状態とを選択制御する選択制御手段を備えるのに対し、引用発明1では1ラウンド目だけ行い2ラウンド目以降は行わない点。
(D)駆動入球口と前記起因入球口の双方の配置を、本願補正発明では弾発力調節手段による発射装置の弾発力の調整を一つの調節段階に維持した状態で発射遊技球が通過可能な位置に配置したのに対し、引用発明1ではそのように配置されているかどうか明らかでない点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点(A)について
弾発力調節手段の調節によって連続的遊技球発射をほぼ一定の弾発力を保ちながら停止制御可能な発射停止制御手段は、例えば特開平7-328183号公報に示された「打球の強さを調整するハンドル2と、打球発射動作中であっても強制的に打球発射動作を中断させ、再度同じ強さで打ち出しを開始したい場合に使用するウェイトレバー3及びウェイトボタン4」(【0002】、【0003】、【図5】参照)及び特開昭62-144676号公報に示された「打球強さの調整レバー24と調整レバーの位置を変えないで打球動作を一時停止するための一時停止スイッチとして使用される押し釦スイッチ38」(公報第2頁右下欄第2行乃至第3行、第4頁左上欄第3行乃至第12行、第4図参照)並びに実公平5-32148号公報に示された「操作レバー3を回動させて打槌の戻りの強さを調節し、操作レバー3の回動位置を戻すことなく打球発射を中断したい場合に手前に引き寄せる操作レバー3」(公報第1頁第1欄第14行乃至第17行、第3頁第5欄第26行乃至第33行、第3頁第6欄第10行乃至第23行参照)のように周知技術であるから、弾球遊技機において共通する当該技術を引用発明1に適用し相違点(A)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
相違点(B)について
引用発明1の「予め定めた特定時間」は駆動入球口の拡開中のうちの予め定めた特定時間なのであるから、「駆動入球口の拡開中」であることに誤りはない。そして、遊技者にどのような情報をどのように報知するかは、遊技機の種々のルールの相違や入賞形態の相違に応じて当業者が適宜決定できる設計上の事項であり、しかも、引用発明1の発射タイミング報知手段(打玉発射タイミング示唆報知手段)が遊技者にとって有利な状態を報知するものである点においても本願補正発明と一致しているのであるから、発射タイミング報知手段の対象を駆動入球口の拡開中として、相違点(B)に係る本願補正発明の発明を特定する事項とすることは、引用発明1に基づいて当業者が容易になし得たものである。
相違点(C)について
報知を行う場合と報知を行わない場合とを選択する手段を備える遊技機は、引用刊行物2(特開2000-312750号公報)に記載された発明及び引用刊行物3(特開平11-342245号公報)に記載された発明に示されたように、当該技術分野においては周知技術であるから、報知を行う場合と報知を行わない場合とが生ずる引用発明1に当該技術を適用し相違点(C)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
相違点(D)について
引用刊行物1の、遊技盤を示す正面図である【図1】には、遊技盤の下方ほぼ中央に起因入球口(始動入賞口5)が配置され、その下方に駆動入球口(特別可変入賞球装置9)が配置されていることが示されている。そして、当業者の技術常識によれば、当該図面から、駆動入球口の拡開時の開口部分は、起因入球口の直近の下方であって当該起因入球口の開口部より左右に各々充分に広い幅に開口していること、即ち起因入球口への入球を目標として発射装置の弾発力を調整して発射すれば、発射された遊技球は起因入球口へ入球するか又は起因入球口の近傍を通過したのち駆動入球口へ入球することが容易に理解できると認められる。そうすると、引用刊行物1に記載された発明に基づいて、相違点(D)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、効果においても、本願補正発明が格別の効果を奏するものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(う)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三、本願発明について
平成15年4月11日付けの手続き補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至5に係る発明は、上記平成14年5月24日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。
「遊技領域に向けて連続的に遊技球を発射する発射装置と、前記発射装置による遊技球の弾発力を調節する弾発力調節手段と、前記弾発力調節手段の調節によって前記連続的遊技球発射をほぼ一定の弾発力を保ちながら停止制御可能な発射停止制御手段と、前記発射装置により前記遊技領域に発射された遊技球が前記遊技領域にある駆動入球口に入球することにより遊技者に遊技上の価値を付与する遊技価値付与手段と、前記遊技領域にある起因入球口への入球に起因して前記駆動入球口が拡開駆動又は縮小閉鎖駆動する駆動制御手段とを備えた弾球遊技機において、
前記駆動入球口の拡開中に該駆動入球口に到達しやすいように遊技者に前記発射装置による遊技球の発射タイミングを報知する発射タイミング報知手段と、
前記発射タイミング報知を行う第1の遊技状態と該発射タイミング報知を行わない第2の遊技状態とを選択制御する選択制御手段とを備え、
前記駆動入球口と前記起因入球口の双方を、前記弾発力調節手段による一つの調節段階における弾発力で発射遊技球が通過可能な位置に配置したことを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願発明」という)

(あ)引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由通知に引用された刊行物及びその記載事項は前記「第二、(2)(あ)」に記載したとおりである。

(い)本願発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明は、本願発明を特定するために必要な事項である、「拡開駆動又は縮小閉鎖駆動する駆動制御手段」を「拡開駆動又は縮小閉鎖駆動させる指示を行う駆動制御手段」に限定し、「駆動入球口の拡開」を「駆動制御手段の指示による駆動入球口の拡開」に限定するものであり、また「発射タイミング報知を行う第1の遊技状態と発射タイミング報知を行わない第2の遊技状態」について「駆動制御手段の指示により駆動入球口が拡開駆動する場合において」と限定するものであり、さらに、「一つの調節段階における弾発力で発射遊技球が通過可能な位置に配置」を「発射装置の弾発力の調整を一つの調節段階に維持した状態で発射遊技球が通過可能な位置に配置」に補正したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二、(2)(い)」に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(う)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

〔審決分類〕P18.121 Z (A63F)
575
 
審理終結日 2007-01-23 
結審通知日 2007-01-30 
審決日 2007-02-13 
出願番号 特願2001-223153(P2001-223153)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 川島 陵司
藤田 年彦
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 後藤 憲秋  

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