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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G03B
管理番号 1155879
審判番号 無効2004-80073  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-06-09 
確定日 2007-03-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2599945号発明「透過形スクリーン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2599945号の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

(1)本件特許である第2599945号特許は、昭和62年12月29日に出願され、平成9年1月29日に特許権の設定登録がなされたが、平成9年10月16日付けで申立人株式会社クラレより特許異議申立がなされ、平成10年1月14日付けで、特許第2599945号の特許を維持する、との決定がなされた。

(2)これに対し、平成16年6月9日に請求人凸版印刷株式会社より本件特許無効審判の請求がなされ、証拠方法として本件特許公報および甲第1号証?甲第8号証を提出し、本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第1号(昭和60年法律第41号によって改正された特許法)に該当し、無効とすべきである旨、主張している。

(3)これに対し、被請求人は、平成16年9月24日に答弁書とともに訂正請求書を提出し、答弁書により、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。

(4)これにつき、当審が被請求人の上記訂正請求書および答弁書を請求人に送付したところ、請求人は平成16年12月15日付けで弁駁書を提出した。

2.訂正請求について

(1)平成16年9月24日付けの訂正請求書において、被請求人が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(a)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「観察側に配置される光拡散作用をもつ」を、「フレネルレンズ基板より観察側に配置され光拡散作用をもつ」と訂正する。
(b)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の「フレネルレンズ形状をもつフレネルレンズ基板と」を、「フレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズ基板と」と訂正する。
(c)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項1から請求項4の「光拡散性基板」を、「レンチキュラーレンズ基板」と訂正する。
(d)訂正事項d
特許請求の範囲の請求項1から請求項4の「透過形スクリーン」を、「プロジェクションTV用透過形スクリーン」と訂正する。
(e)訂正事項e
特許掲載公報第4欄第43行から第44行の「光拡散性基板」を、「レンチキュラーレンズ基板」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(a)訂正事項a
訂正事項aは請求項1に「フレネルレンズ基板より」との限定事項を付加することにより、特許請求の範囲の減縮に相当する。
当該限定事項は特許公報の図面第1図および第2図より導き出すことができる。
また、訂正前の請求項1は「光拡散性基板」と「フレネルレンズ基板」の2つのみにより「透過形スクリーン」が構成されているため、訂正前の「観察側に配置される」なる文言で構成を特定できるが、訂正事項aは「フレネルレンズ基板より」と限定することにより、「フレネルレンズ基板」に対して観察側であることを明確にするものであって、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
(b)訂正事項b
訂正事項bは、訂正事項aで訂正加入した「フレネルレンズ基板」と同じものを指す「フレネルレンズ基板」であることを明示するために「前記」なる文言を加入するものであり、特許請求の範囲の記載を明りょうにするものであり、明りょうでない記載の釈明に相当する。
(c)訂正事項c
特許公報第4列第30行?第31行には実施例に関する「光拡散性基板11としては、厚さ1.4mmのレンチキュラーレンズ基板を用いた。」なる記載があり、訂正事項cは「光拡散性基板」を「レンチキュラーレンズ基板」に限定するものであり特許請求の範囲の減縮に相当する。
(d)訂正事項d
特許公報第4列第14行?第18行に「第1図は、本発明による透過系スクリーンの実施例を示した断面図、第2図は、前記実施例スクリーンを用いたプロジェクションTVシステムを示した図、第3図は、本発明による透過形スクリーンの実施例の紫外線の透過率の説明するための図である。」なる記載があることから、記載事項dは「透過形スクリーン」を、「プロジェクションTV用透過形スクリーン」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に相当する。
(e)訂正事項e
訂正事項eは訂正事項cにより必要となった訂正であり、明りょうでない記載の釈明に相当する。また、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項の適否のむすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号(以下、「平成6年法」という。)による改正前の特許法第134条第2項ただし書き、及び特許法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件特許発明について

本件請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、上記被請求人による訂正請求が認められたので、以下のとおりのものである。
「【請求項1】フレネルレンズ基板より観察側に配置され光拡散作用をもつレンチキュラーレンズ基板と、
前記レンチキュラーレンズ基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズ基板と
からなるプロジェクションTV用透過形スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており、
前記レンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせたこと
を特徴とするプロジェクションTV用透過形スクリーン。」

4.請求人の主張

(1)本件特許発明は、以下の甲第1号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第1号(昭和60年法律第41号によって改正された特許法)に該当し、無効とすべきである。
甲第1号証:特開昭61-164807号公報
甲第2号証:特開昭61-219610号公報
甲第3号証:特開昭61-219611号公報
甲第4号証:特開昭51-51346号公報
甲第5号証:特開昭51-89419号公報
甲第6号証:特開昭58-33429号公報
甲第7号証:特開昭53-45345号公報
甲第8号証:特開昭58-89609号公報

(2)本件特許発明が無効であると主張する理由

本件特許発明の訂正請求が認められたので、以下、訂正後の特許請求の範囲に対するものとする。
本件特許発明の請求項2?4は請求項1の従属項であり、請求項1に係る発明が無効理由を有すれば本件特許は全体として無効となるべきものであるから、請求項1に係る発明が無効理由を有することを述べる。

(a)甲第1号証には、記載(a1)および第2図を参照すると、「フレネルレンズ2より観察側に配置され光拡散作用をもつレンチキュラーレンズ4と、前記レンチキュラーレンズ4より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズ2とからなる透過形ビデオプロジェクターのスクリーン」が記載され、記載(a2)にはレンチキュラーレンズ4が光拡散性物質5を混練して成形されることが記載されているのでレンチキュラーレンズ4は光拡散作用をもつということができる、記載(a3)には、フレネルレンズ2を紫外線硬化性樹脂を使用して成形する方法が記載されている。
したがって、甲第1号証には、
「フレネルレンズより観察側に配置され光拡散作用をもつレンチキュラーレンズと、
前記レンチキュラーレンズより光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズと
からなる透過形ビデオプロジェクターのスクリーンにおいて、
前記フレネルレンズが紫外線硬化樹脂により成形されていること
を特徴とする透過形ビデオプロジェクターのスクリーン。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
引用発明1における「フレネルレンズ」は本件発明1における「フレネルレンズ基板」に相当し、以下同様に「レンチキュラーレンズ」は「レンチキュラーレンズ基板」に、「透過形ビデオプロジェクターのスクリーン」は「プロジェクションTV用透過形スクリーン」にそれぞれ相当するので、
引用発明1と本件特許発明は、
「フレネルレンズ基板より観察側に配置され光拡散作用をもつレンチキュラーレンズ基板と、
前記レンチキュラーレンズ基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズ基板と
からなるプロジェクションTV用透過形スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されていること
を特徴とするプロジェクションTV用透過形スクリーン。」
である点で一致し、
本件特許発明では、レンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせているが、引用発明1では、その点のついての記載がない点で相違する。 また、甲第2号証、甲第3号証に記載された発明についても、本件特許発明との一致点及び相違点は引用発明1と本件特許発明との一致点及び相違点と同様である。

(b)甲第4号証には、スクリーンに用いる光拡散部材において、紫外線による劣化が生じるのを防ぐために添加剤として紫外線吸収剤を含むことが記載され、甲第5号証には、レンチキュラーレンズと拡散板で構成される後面投射型スクリーンにおいて、経時性を改良するため拡散板に紫外線吸収剤を添加することが記載されている。
また、甲第7号証には「光硬化触媒で硬化した樹脂組成物は耐光性が劣り、長時間光に曝露されると黄変を呈してくる欠点」があること、甲第8号証には「硬化樹脂物の特性面での経時変化により、硬化樹脂物がもろくなったりひびわれたり等の耐光性が悪いこと」が記載され、紫外線硬化樹脂により成形されたフレネルレンズを紫外線から保護し劣化を防止しなければならないという課題は当業者にとって自明であった。
さらに、甲第1号証記載のレンチキュラーレンズとフレネルレンズとを重ね合わせて配置した透過形スクリーンにおいて、レンチキュラーレンズに代えて、甲第4号証又は甲第5号証にしめされたような紫外線吸収剤を含有する光拡散部材又はスクリーンを採用すれば、フレネルレンズに到達する可能性があった外光中の紫外線を吸収するから、フレネルレンズの紫外線による劣化を防止できることになるのは必然の結果であり、この効果は当業者において予測可能な効果にすぎない。
よって、甲第1号証のレンチキュラーレンズを甲第4号証又は甲第5号証に記載の光拡散部材又はスクリーンに置換することは当業者にとって容易になしえることであり、これを妨げる特段の事情もない。
また、甲第4号証には光拡散部材の劣化の問題を解決するために、光拡散部材に紫外線吸収剤を含有させることが、甲第5号証には拡散板の経時性を改良する目的で拡散板に紫外線吸収剤を含有させることが記載されているので、本件特許発明と課題が同一でないとしても、光拡散性を有するレンチキュラーレンズの紫外線劣化の防止を図るためにレンチキュラーレンズに紫外線吸収剤を含有させ、紫外線吸収作用を持たせる構成とすることは、極めて容易に想到し得ることに過ぎない。
そして、このようにして想到された構成は、本件特許発明の構成要件を全て充足するので、本件特許発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第1号(昭和60年法律第41号によって改正された特許法)に該当し、無効とすべきである。

5.被請求人の主張

被請求人は、平成16年9月24日付けの答弁書において以下の内容の主張を行った。
(1)本件特許発明は平成9年10月16日提出の特許異議申立に対し、平成10年1月14日に特許を維持するとの決定がなされたものであり、本件審判請求書で請求人が提示した主要な引用文献(甲1、甲2、甲6)は、該異議申立事件において引用されたものであって、これらの引用文献を基礎とした本件特許発明の進歩性についての審理は既に終了しているし、該異議決定においては、本件特許発明の特徴が「フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており、光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせた」点であるとされている。
(2)進歩性判断の基本的な考え方は、多くの判例に基づいて作成された特許庁における審査基準に「課題が共通することは、当業者が引用発明1を提供したり結び付けて請求項に係る発明に導かれたことの有力な根拠となる。」と記載され、課題が共通しない場合には「その課題が自明な課題であるか、容易に想到しうる課題であるかどうかについて、さらに技術水準に基づく検討を要する。」とされている。
請求人は、本件特許発明の進歩性に関して、「本件特許発明と課題が同一でない」ことを認めた上で、東京高等裁判所のいくつかの判例を引用して、「出願発明の構成に至る動機となる課題が何であるかは問題になり得ない」という抽象的判示部分に依拠した主張を行っているが、上記判示部分は、「発明の進歩性の検討において問題とされるべきは、従来技術(引用例)を出発点にして、これと出願発明との構成上の相違点を克服して、出願発明に至ることが、当業者にとって容易であったかどうかということであって、これが容易とされるのであれば、」という前提で上記の判示部分につなげているのであり、さらに、「本件においても、引用発明1を出発点にして、これに引用発明2及び周知事項を適用して本願発明と同一の構成に至る動機・課題の有無は問題となり得る」と続けている。
請求人は、本件特許発明の進歩性を否定するために、上記判決の抽象的な判示部分を取り出し、趣旨を違えて自己に有利に援用したものである。
(3)本件特許発明は、外光に含まれる紫外線によるフレネルレンズ基板の劣化を防止するという課題を解決するために、フレネルレンズ基板ではなく、フレネルレンズ基板よりも観察側に配置されるレンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせたことに特徴がある。また、レンチキュラーレンズ基板とフレネルレンズ基板との2枚の基板から構成される二枚型透過形スクリーンは、例えば甲第5号証の第4図に示されるような単一のスクリーンではフレネルレンズの周辺部で光量損失が大きいという問題点を改善したものである。
(4)甲第1号証ないし甲第3号証には、外光に含まれる紫外線が紫外線硬化性樹脂により成形されるフレネルレンズ基板に悪影響を与えるのでこれを防止するという課題は全く記載されておらず、その示唆も与えられていず、紫外線硬化性樹脂により成形されたフレネルレンズ基板ではなく、その観察側に配置されるレンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせることは全く記載されていない。
(5)甲第4号証ないし甲第6号証には、光拡散部材、スクリーンまたはプラスチックレンズはいずれも単一のものであり、それ自体の紫外線、熱線耐性、経時性、耐候性を改善するために、それ自体に紫外線吸収剤を混入させるという技術思想しか教示されていない。
(6)甲第7号証、甲第8号証には、光硬化性樹脂組成物は耐光性が劣ることの解決法が記載されているが、甲第7号証では、その解決は紫外線吸収剤の添加ではなく、黄変防止効果を持つ別の化合物を含有させることであり、甲第8号証では、重合開始剤を含まないことで解決するものであり、いずれも組成物の構成により解決するものであり、本件特許発明の進歩性を否定するための動機づけを与えるものではない。
(7)そして、甲第1号証記載の発明に対して、甲第7号証および甲第8号証により紫外線による劣化という課題が知られているので、甲第4号証および甲第5号証記載の発明を適用するにしても、観察側のレンチキュラーレンズ基板と光源側のフレネルレンズ基板という2枚の別体の基板から構成されるプロジェクションTV用スクリーンにおいて、外光に含まれる紫外線が、観察側でなく、光源側に配置され紫外線硬化樹脂で成形されたフレネルレンズ基板を劣化させるという本件特許発明の課題を提示するものではないから、甲第4号証、甲第5号証の光拡散部材またはスクリーンを甲第1号証に記載のスクリーンに結びつける動議づけにはならない。

6.当審の判断

(A)本件特許発明について
本件特許の出願日は昭和62年12月29日であることから、本件特許発明は請求人のいうように、請求項1に係る発明が無効理由を有すれば本件特許は全体として無効となるべきものである。
本件特許発明は、[3.本件特許発明について]の請求項1の記載のとおりであり、分節すれば、
A(a1)フレネルレンズ基板より観察側に配置され光拡散作用をもつレンチキュラーレンズ基板と、
(a2)前記レンチキュラーレンズ基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズ基板と
(a3)からなるプロジェクションTV用透過形スクリーンにおいて、
B 前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており、
C 前記レンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせてことを特徴とする
D プロジェクションTV用透過形スクリーン。
である。

(B)甲第1号証記載の発明
請求人が甲第1号証として提示した特開昭61-164807号公報には、従来技術として第2図が示され、
「一般的な透過形ビデオプロジェクターのスクリーンは第2図に示されるように構成され、図において、1は光源、2は光源1よりの光線を平行にするためのフレネルレンズ、3はそのレンズ面、4は視角を広くするためのレンチキュラーレンズ、5はレンチキュラーレンズ4を構成する光拡散性物質を示している。」(第1頁左下欄第19行?同頁右下欄第5行、および第2図参照)と記載されるとともに、
「次に、フレネルレンズ2の製造方法であるが、最も一般的な方法としては、熱可塑性のアクリル樹脂等を加熱プレスして製造する方法である。この方法はフレネルレンズ用金型を加熱した後、充分に変形可能なまでに加熱された透明なアクリル板を金型に挿入して加圧成形を行ない、定時間経過後金型温度が約70℃前後まで冷却した時点で脱型するものであった。しかし、この冷却については、冷却の際に歪を発生させない為に徐冷が必要で一工程に30分?60分以上要していた。この結果、金型の専有時間が長く、生産性が悪いという欠点があった。更に、加熱プレスによる宿命である冷却時の樹脂の収縮に起因する脱型不良(収縮によって金型に樹脂型が喰いつく現象)が生ずるという問題が多発していた。
そこで、加熱収縮あるいは徐冷等の問題点を解決する方法として紫外線硬化性樹脂を使用して成型する方法が提案されている。」(第1頁右下第20行?第2頁左上欄第17行)と記載されている。
したがって、これらの記載および第2図を参照すると、甲第1号証には、
「フレネルレンズより光源の反対側に配置され光拡散性物質で構成されたレンチキュラーレンズと、
前記レンチキュラーレンズより光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズと、
からなる透過形ビデオプロジェクターのスクリーンにおいて、
前記フレネルレンズが紫外線硬化性樹脂により成型されたことを特徴とする
透過形ビデオプロジェクターのスクリーン。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
(C)本件特許発明と引用発明1との一致点および相違点
引用発明1における「フレネルレンズ」、「光源の反対側」、「光拡散性物質で構成された」、「レンチキュラーレンズ」、「紫外線硬化性樹脂」、「成型」、「透過形ビデオプロジェクターのスクリーン」はそれぞれ、本件発明1における「フレネルレンズ基板」、「観察側」、「光拡散作用をもつ」、「レンチキュラーレンズ基板」、「紫外線硬化樹脂」、「成形」、「プロジェクションTV用透過形スクリーン」にそれぞれ相当するので、引用発明1と本件特許発明は、
「フレネルレンズ基板より観察側に配置され光拡散作用をもつレンチキュラーレンズ基板と、前記レンチキュラーレンズ基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズ基板とからなるプロジェクションTV用透過形スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されたことを特徴とするプロジェクションTV用透過形スクリーン。」の点で一致し、本件特許発明が「レンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせた」構成を有するのに対して、引用発明1はそのような構成を有しない点で相違する。

本件特許発明と引用発明1との一致点および相違点について、請求人は平成16年6月9日付けの審判請求書第15頁「(a-2)甲第1号証発明と本件特許発明との一致点と相違点」の項において、上記一致点および相違点を認めているし、被請求人は平成16年9月24日付けの審判事件答弁書第12?13頁「(5)甲1?甲3の記載」において、本件特許発明を特許請求の範囲に記載されたものとは異なった表現でα?δと分節した上で、α(構成要件A、Dに相当)、β(構成要件Aの(a1)、(a2)に相当)、γ(構成要件Bに相当)までは甲第1?3号証には記載されていることを認めており、上記一致点および相違点について両者の間で異なった主張は見いだせない。

(D)相違点について
甲第5号証には、
「ワックスと結晶性ポリマーから選ばれる光散乱物質の少なくとも一つを含有する拡散板の、少なくとも一つの面に直接凹凸を生ぜしめることを特徴とする後面投影型スクリーン」(特許請求の範囲)
なる記載とともに、その第2図に、投影光学系1からの光を受けるレンチキュラーレンズ8の面を有する拡散板3が示され、
「第2図は、円筒レンズを多数個並べたレンチキュラーレンズ8より成る構造をマイクロ光学素子構造として用いたものである。第2図の場合、微細なレンチキュラーレンズ8の1個1個が光を広げる作用を持ち、これに拡散板3の拡散作用が重なり合って、スクリーン全体としての拡散特性が向上せしめられる。」(第10頁左下欄第5行?第11行、および第2図参照)
「例えば、ワックス或いは結晶性ポリマーの経時性を改良する目的で、酸化防止剤および紫外線吸収剤を添加することができる。」(第8頁右上欄第5行?第7行)
なる記載があり、拡散作用をもつレンチキュラーレンズの経時性を改良するために紫外線吸収剤を添加した後面投影型スクリーンに使用するレンチキュラーレンズの発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

とするならば、引用発明2に係る後面投影型スクリーンもプロジェクションTV用透過形スクリーンの概念に属するものであり、引用発明1と技術分野を同じくするものであるので、引用発明1における「光拡散性物質で構成されたレンチキュラーレンズ」の経時性を改良する目的で引用発明2のレンチキュラーレンズを使用することは当業者が容易になし得たものである。

なお、紫外線硬化樹脂により成形された樹脂製品が紫外線により劣化することは本件出願時に当業者において知られていた課題であり、引用発明1におけるレンチキュラーレンズに引用発明2の紫外線吸収剤を添加したレンチキュラーレンズを適用して得た構成によって、紫外線硬化樹脂で成形されたフレネルレンズへの紫外線も減少して劣化が防止されることも、当業者が容易に予測できたものである。

(E)被請求人の主張について
(1)本件特許発明については異議申立事件において既に審理が終了していると主張するが、特許異議申立と無効審判請求とは異なる事件であり、両者の間に一事不再理はないので、被請求人の主張は採用できない。
なお、本件審判事件での証拠方法として提示された文献は、被請求人の主張する異議申立事件において提示されていない新たな文献を含むものであり、上記相違点の検討は異議申立事件においては提示されていなかったものである。
(2)進歩性判断について請求人が引用した東京高判平15.2.27(平成14(行ケ)58特許権行政訴訟事件)の判示内容について、「趣旨を違えて自己に有利に援用」(答弁書第9頁第12行)しているものであるとの主張をするが、該判示内容では、「本件においても、引用発明1を出発点にして、これに引用発明2及び周知事項を適用して本願発明と同一の構成に至る動機・課題の有無は問題となり得るものの、その動機・課題が本願発明におけるものと同一であるか否かは、問題となり得ないのである。」(下線部分は被請求人の引用箇所)とされており、引用発明1に対する引用発明2及び周知事項の適用において動機・課題の有無を問題とするものであって、本願発明との動機・課題の有無を問題とするものではなく、被請求人の主張は判示内容の一部を取出しての主張であるので、採用できない。
(3)本件特許発明は、フレネルレンズ基板の劣化を防止する課題を解決するものであり、甲第1号証ないし甲第3号証には、外光に含まれる紫外線が紫外線硬化性樹脂により成形されるフレネルレンズ基板に悪影響を与えるのでこれを防止するという課題は全く記載されていないし、甲第5号証には、それ自体の紫外線、熱線耐性、経時性、耐候性を改善するために、それ自体に紫外線吸収剤を混入させるという技術思想しか教示されていないので、甲第1号証記載の発明に対して、外光に含まれる紫外線がフレネルレンズを劣化させるのを防止するために甲第5号証記載の発明を適用する動機づけがない、と主張する。
しかしながら、課題・動機が本件特許発明と異なるとしても、引用発明1における「光拡散性物質で構成されたレンチキュラーレンズ」の劣化という課題解決のため、引用発明1と同じ後面投影型スクリーンに使用する引用発明2の「紫外線吸収剤を添加した拡散作用をもつレンチキュラーレンズ」に代えることには何ら困難性はなく、その結果として同一の構成にいたるものであるので、被請求人の主張は採用できない。
なお、被請求人は、平成16年9月24日付けの答弁書第13?14頁において、甲第1?3号証記載の(第1図の)レンチキュラーレンズはその製造方法からして紫外線吸収作用を持たせることができないので、レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用を持たせるとする技術思想に至るのを阻害している、と主張するが、引用発明1は甲第1号証の第2図に従来例として記載された発明であるので被請求人の主張は無意味な主張である。

7.むすび

以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1号証、甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許第2599945号の特許請求項に記載された発明についての特許を無効とする。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
透過形スクリーン
(57)【特許請求の範囲】
(1)フレネルレンズ基板より観察側に配置され光拡散作用をもつレンチキュラーレンズ基板と、
前記レンチキュラーレンズ基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつ前記フレネルレンズ基板と
からなるプロジェクションTV用透過形スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており、
前記レンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせたこと
を特徴とするプロジェクションTV用透過形スクリーン。
(2)前記レンチキュラーレンズ基板は、紫外線吸収作用のある樹脂で成形したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のプロジェクションTV用透過形スクリーン。
(3)前記レンチキュラーレンズ基板は、紫外線吸収剤を混練した樹脂基板であることを特徴とする特許請求の範囲第1項または第2項記載のプロジェクションTV用透過形スクリーン。
(4)前記レンチキュラーレンズ基板は、紫外線吸収剤が含まれている紫外線吸収インキを塗布したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のプロジェクションTV用透過形スクリーン。
【発明の詳細な説明】
〔技術分野〕
本発明は、背面透過形のプロジェクションTVに使用される透過形スクリーンに関し、特に、光拡散性基板に紫外線の吸収作用をもたせた透過形スクリーンに関する。
〔背景技術〕
従来、この種の透過形スクリーンとして、観察側にレンチキュラーレンズ基板等の光拡散性基板を、光源側にフレネルレンズ基板を重ねあわせて配置したものが知られている。
フレネルレンズシートは、金型と透明樹脂基板との間に紫外線(UV)硬化樹脂を流し込み、紫外線を照射することにより、その樹脂を硬化させて重合するUV硬化法により製造したものの開発がさかんになされている。
しかし、前記UV硬化樹脂には、重合の際に、その反応を開始させるために、増感剤あるいはUVと相互作用をする官能基を含む分子、その他これに類する反応性基を含む物質が含有されている。このため、長時間使用すると、外光等に含まれている紫外線により、フレネルレンズ基板が劣化するという問題点があった。
また、このフレネルレンズ基板は、形状が複雑で、製造コストが高い。さらに、構造的にも内側に取り付けられるので、交換しずらい。
本発明は、簡単かつ安価な方法で、長時間使用しても、UV樹脂で成形したフレネルレンズ基板が劣化しない透過形スクリーンを提供することを目的としている。
〔発明の開示〕
本件発明者は、種々研究の結果、光拡散性基板に紫外線、特に、光分解に強い影響をもつ波長である300nm?400nmの紫外線の吸収作用をもたせることにより、前記目的を達成できることを見出して、本発明をするに至った。
すなわち、本発明による透過形スクリーンは、観察側に配置される光拡散作用をもつ光拡散性基板と、前記光拡散性基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつフレネルレンズ基板とからなる透過形スクリーンにおいて、前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており、前記光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせたことを特徴とする。
前記フレネルレンズ基板は、透明基板としてポリカーボネイト(PC)板,アクリル板(PMMA)等を使用し、UV硬化樹脂としてN-ビニルピロリドンエポキシ系,ウレタン系,ポリエステル系,アクリレート系等の樹脂を使用して成形したものを用いることができる。
前記光拡散性基板は、通常,レンチキュラーレンズシート,プリズムレンズシート,拡散剤を含ませた樹脂シート等が使用できる。
この光拡散性基板に、紫外線吸収作用をもたせる手段としては、紫外線を吸収しやすい樹脂で成形したり、紫外線を吸収しにくい樹脂に紫外線吸収剤を混練したものを用いることができる。例えば、アクリル酸エステル系の樹脂板等を用いたり、紫外線を吸収しにくい樹脂に、ベンゾフェノン系,ベンゾトリアゾール系,アクリレート系,サリチレート系等の紫外線吸収剤を混入させたものを用いることができる。この光拡散性基板の板厚としては、紫外線吸収効果を十分に発揮できるように、0.1mm以上のものを全体のサイズに対応させて適宜選択できる。
さらに、紫外線吸収作用を有する樹脂基板中に、前記紫外線吸収剤を混入することにより、より一層長波長側の紫外線を吸収することができるようになる。
また、前記紫外線吸収剤を含む紫外線吸収インキを光拡散性基板にコーティングすることにより、紫外線の透過率を低下させることもできる。
このように、本発明は、光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせることにより、UV樹脂によって成形されたフレネルレンズ基板の劣化を防ぐ作用をする。
なお、UV硬化樹脂で成形したフレネルレンズでなくとも、紫外線を吸収しやすい樹脂で成形したレンズの劣化も有効に防止できる。
〔実施例〕
以下、図面等を参照して実施例につき、本発明を詳細に説明する。
第1図は、本発明による透過系スクリーンの実施例を示した断面図、第2図は、前記実施例スクリーンを用いたプロジョクションTVシステムを示した図、第3図は、本発明による透過形スクリーンの実施例の紫外線の透過率の説明するための図である。
本発明による透過形スクリーン1は、第1図に示すように、光拡散性基板11とフレネルレンズ基板12とからなり、画面サイズが50インチのものを用い、第2図に示すように、TVセットボックス2に収納された光源3からの映像を、反射鏡4で反射し、透過形スクリーン1の背面から投写した。このとき、透過形スクリーン1は、光拡散性基板11側がTVセットボックス2の外側に向くように取付けられ、外光にさらされている。
この実施例では、フレネルレンズ基板12として、PMMA樹脂からなる透明基板12aに、エポキシ系のUV硬化樹脂でフレネルレンズ部12bを成形したものを使用した。
光拡散性基板11としては、厚さ1.4mmのレンチキュラーレンズ基板を用た。この基板としては、アクリル酸エステル系の樹脂基板に、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を混入させたものを使用した。
このようにして作製した光拡散性基板11に、種々の波長における透過率を分光光度計を使用して測定した。その結果、本実施例の基板では、第3図のA曲線に示すように、約380nmより短波長側の紫外線を吸収していることがわかる。
この実施例の透過形スクリーンを、通常の状態で長時間使用したが、フレネルレンズ基板の劣下はほとんどなかった。
〔発明の効果〕
以上詳しく説明したように、本発明によれば、レンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせたので、UV硬化樹脂で成形したフレネルレンズ基板の劣化を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明による透過形スクリーンの実施例を示した断面図、第2図は、前記実施例スクリーンを用いたプロジェクションTVシステムを示した図、第3図は、本発明による透過形スクリーンの実施例の紫外線の透過率を説明するための図である。
1……透過形スクリーン
11……光拡散性基板
12……フレネルレンズ基板
2……TVセットボックス
3……光源
4……反射鏡
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-03-31 
結審通知日 2005-04-05 
審決日 2005-04-19 
出願番号 特願昭62-333089
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (G03B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 町田 光信越河 勉  
特許庁審判長 上野 信
特許庁審判官 鹿股 俊雄
峰 祐治
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2599945号(P2599945)
発明の名称 透過形スクリーン  
代理人 井上 正  
代理人 赤尾 太郎  
代理人 吉田 正夫  
代理人 川田 篤  
代理人 松田 美和  
代理人 高城 貞晶  
代理人 竹田 稔  
代理人 椙山 敬士  
代理人 赤尾 太郎  
代理人 吉田 正夫  
代理人 市川 穣  
代理人 高城 貞晶  
代理人 志賀 正武  
代理人 井上 正  
代理人 松田 美和  
代理人 市川 穣  
代理人 後藤 直樹  
代理人 椙山 敬士  
代理人 青山 正和  
代理人 小栗 久典  
代理人 柳井 則子  
代理人 船山 武  
代理人 牛久 健司  
代理人 服部 誠  
代理人 牛久 健司  
代理人 後藤 直樹  
代理人 金山 聡  
代理人 金山 聡  
代理人 高橋 詔男  
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