• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680044 審決 特許
無効200680197 審決 特許
無効200680280 審決 特許
無効200680029 審決 特許
無効200680032 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01B
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A01B
管理番号 1155887
審判番号 無効2006-80043  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-03-16 
確定日 2007-03-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3269985号発明「折り畳み農作業機の駆動方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3269985号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件の特許第3269985号に係る出願は、平成9年4月25日に特許出願され、その後の平成14年1月18日に、その請求項1及び2に係る発明につき、特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求人より平成18年3月16日に本件無効審判の請求がなされ、被請求人より平成18年6月19日に答弁書と共に訂正請求書が提出され、請求人より平成18年8月8日に弁駁書が提出された。

2.訂正の適否
(2-1)訂正の内容
平成18年6月19日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、特許第3269985号の明細書及び図面を同上訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである。

(訂正事項1)
特許請求の範囲における請求項1の「農作業機において、」を「農作業機において、上記農作業機は、伝動シャフトを内装した本体フレームに支持されたシールドカバーの後端部に上端部が上下方向に回動自在に枢着されて砕土・代掻きされた土を受けるエプロンを背面側に備え、」と訂正する。
(訂正事項2)
特許請求の範囲における請求項1の「上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにして折り畳み可能とする」を「上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能とする」と訂正する。
(訂正事項3)
明細書の段落【0006】の「農作業機において、」を「農作業機において、上記農作業機は、伝動シャフトを内装した本体フレームに支持されたシールドカバーの後端部に上端部が上下方向に回動自在に枢着されて砕土・代掻きされた土を受けるエプロンを背面側に備え、」と訂正する。
(訂正事項4)
明細書の段落【0006】の「上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにして折り畳み可能とする」を「上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能とする」と訂正する。
(訂正事項5)
図面の【図7】の符号「16」を全て符号「15」に訂正する。
(訂正事項6)
図面の【図9】の符号「16」を全て符号「15」に訂正する。

(2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(訂正事項1について)
上記訂正事項1の「農作業機は、伝動シャフトを内装した本体フレームに支持されたシールドカバーの後端部に上端部が上下方向に回動自在に枢着されて砕土・代掻きされた土を受けるエプロンを背面側に備え」るという事項は、特許明細書の段落【0011】に「上記ギヤボックス3から左右両側に、本体フレームを兼ね、伝動シャフト7,7aを内装した伝動フレーム8,8aが設けられている。この伝動フレーム8,8aから、中央部分4においてはトラクタのタイヤTの後方に位置して、また、作業機部分5L,5Rにおいては外側端に位置して、それぞれチェン伝動ケース9を垂設している。これら各チェン伝動ケース9の下端部と伝動フレーム8,8aからチェン伝動ケース9と対向して垂設した支持フレーム10の下端部との間にロータリ軸11が軸架されている。ロータリ軸11の軸周には多数の砕土・代掻爪12が取付けられて砕土・代掻ロ-タ13を構成している。」(4欄27?38行)との記載が、また段落【0012】に「砕土・代掻ロ-タ13の上方は、本体フレームに支持されたシールドカバー15により覆われており、このシールドカバー15の後端部に、後端位置にレベラー17を枢支したエプロン16の上端部が上下方向に回動自在に枢着されている。」(4欄44?48行)との記載があり、これらの記載事項並びに図面の【図3】,【図5】及び【図6】の図示内容とを勘案すれば、特許明細書及び図面に記載されている事項であるということができ、また、当該事項を訂正前の請求項1に付加することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。

(訂正事項2について)
同様に、上記訂正事項2の「上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能とする」という事項は、特許明細書の段落【0010】に「代掻ハロー1は、中央部分4(長さ=1900mm)と左右の作業機部分5L,5R(長さ=各930mm)とに3分割され、中央部分4の左右の端部と左右の作業機部分5L,5Rの内端部とをそれぞれ回転軸(回転支点)6,6によりほぼ180°回転可能に連結し、上記中央部分4の背面4aと左右の作業機部分5L,5Rの背面5La,5Raとを重ね合わせるようにして折り畳み可能としている。図面でも示すように、中央部分4の長さに対し左右の作業機部分5L,5Rの長さをほぼ2分の1としている。」(4欄15?24行)との記載が、段落【0012】に上記の記載があり、これらの記載事項並びに図面の【図3】及び【図6】の図示内容とを勘案すれば、特許明細書及び図面に記載されている事項であるということができ、また、当該事項を訂正前の請求項1に付加することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。

(訂正事項3及び4について)
上記訂正事項3及び4は、上記訂正事項1及び2による特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(訂正事項5及び6)
上記訂正事項5及び6は、図面中の符号「16」の誤記を「15」と訂正するものであって、特許明細書の段落【0012】に上記「砕土・代掻ロ-タ13の上方は、本体フレームに支持されたシールドカバー15により覆われており、このシールドカバー15の後端部に、後端位置にレベラー17を枢支したエプロン16の上端部が上下方向に回動自在に枢着されている。」との記載があることから、明らかな誤記の訂正を目的とするものである。

そして、上記のとおり、上記訂正事項1?4は本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、上記訂正事項5?6も本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないといえる。

(2-3)むすび
したがって、上記訂正事項1?6は、特許法第134条の2第1項ただし書きに適合し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

3.当事者の主張
(3-1)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、本件の請求項1及び請求項2に係る発明の特許を無効とする理由として、「本件の請求項1及び請求項2に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである」と主張し、次の証拠を提出するとともに、平成18年8月8日付け弁駁書において、訂正後の請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであると主張する。

(証拠)
甲第1号証:特開平8-191611号公報
甲第2号証:特公昭57-1号公報
甲第3号証:特開昭62一248408号公報
甲第4号証:無効2005一80178号の審決書

(3-2)被請求人の主張
被請求人は、平成18年6月19日付け訂正請求書を提出するとともに、同日付け答弁書において、訂正後の請求項1及び請求項2に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないと主張する。
なお、被請求人は、答弁書9頁5行?10頁9行において、甲第1号証に記載のものは、支持ピン19を跨いで中央フレーム16と左右フレーム17,18間に油圧シリンダ30,31を介在させて折り畳みを行うから、左右フレーム17,18を180°回転させる折り畳みが構造上不可能なものであり、また、支持ピン19の位置を中央作業部8の両端より中央寄りにすることが必要不可欠であるから、甲第2号証に記載された枢支軸24のように、支持ピン19の位置を中央作業部8の両端に位置することに対して技術的な阻害要因があると言え、甲第1号証と甲第2号証との組み合わせを考える上で、甲第1号証の「支持ピン19」の位置を甲第2号証の「枢支軸24」と同様にすることは、技術的な内容を無視した適用であって当業者の技術常識からは想起できない旨を主張する。

4.本件発明
本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、上記したとおり本件訂正が認められることから、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して農作業機の長さ方向中央部分を昇降可能に装着し、上記トラクタから農作業機の中央部分に動力を伝達すると共に、上記中央部分に対し、該中央部分から左右両側に延出している作業機部分を、それぞれ中央部分側に折り畳み可能とした農作業機において、
上記作業機は、伝動シャフトを内装した本体フレームに支持されたシールドカバーの後端部に上端部が上下方向に回動自在に枢着されて砕土・代掻きされた土を受けるエプロンを背面側に備え、 上記農作業機を中央部分と左右の作業機部分とに3分割し、該中央部分の左右の端部と左右の作業機部分の内端部とをそれぞれ回転支点によりほぼ180°回転可能に連結し、上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能とすると共に、上記分割した中央部分及び左右の作業機部分のそれぞれにチェン伝動ケースを設けて作業部を駆動するようにしたことを特徴とする折り畳み農作業機の駆動方法。」(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項2】 上記中央部分の長さに対し左右の作業機部分の長さをほぼ2分の1とすると共に、上記左右の作業機部分のチェン伝動ケースを、それぞれ外側端に設けたことを特徴とする請求項1記載の折り畳み農作業機の駆動方法。」(以下、「本件発明2」という。)

5.甲第1号証?甲第3号証の記載事項
(1)甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、折畳機構を備えた農作業機に関するものである。」、
(ロ)「【0002】
【従来の技術】トラクター等の後部に連結される農作業機、特に進行方向と直交する方向に機幅を有するハローや耕耘機においては、機体の両側の部分を中央側に折り畳む構造としたものが知られている。例えば実開平1-163907号公報のものは、左右に延びた作業機を本体フレームに設けた垂直な或いは傾斜した連結ピン回りに回動させることで機幅を実質的に縮小させ、路上走行や格納の便宜を図るようになっている。また特開昭61-282001号公報に開示された耕耘装置は、図11に示すように、トラクター101の後部に連結した中央耕耘装置102と、その両側に設けた側部耕耘装置103 ,104 とで構成されており、必要に応じて水平方向の軸105,106回りに回動されるようになっている。」
(ハ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで前記提案においては、作業姿勢になったときに、手動操作によって左右作業部を中央作業部に固定する構成を開示している。しかしながら作業者の負担を考えると、油圧シリンダ等のアクチュエータによって、自動的に固定或いは固定解除できる構成とするほうがよい。また固定及び固定解除は、折り畳み動作に関連して行われるので、折畳機構と連動する構成であることが好ましい。」
(ニ)「【0006】そこで本発明は、自動的に左右作業部の固定ができる農作業機を、また固定及び固定解除を折畳機構に連動して行うことのできる農作業機を提供すべく創案されたものである。」
(ホ)「【0010】図1乃至図3は、本発明に係わる農作業機の一実施例を示したものである。この農作業機は、砕土機構1の後方に設けられ中央及び左右に分割された鎮圧用部材2と、左右の鎮圧用部材2を中央側に折り畳む折畳機構3とを有した砕土作業機であって、アクチュエータたる油圧シリンダ116によって動作する固定装置111を備えて構成されている。また本実施例の砕土作業機は、鎮圧用部材2を互いに所定の位置に保持するための保持手段4と、中央の鎮圧用部材2を折畳み時において折畳機構3の枢軸と略平行に支持するための調節手段5とを備えて構成されている。
【0011】まず本実施例の砕土作業機の全体構成を説明する。砕土機構1は、機幅方向に延びる作業軸6と、作業軸6の軸方向に所定の間隔で且つ放射状に取り付けられた多数の作業爪7で成り、鎮圧用部材2と同様に中央及び左右に分割されている。すなわちこれら分割された砕土機構1及び鎮圧用部材2によって、砕土作業機1の中央作業部8及び左右作業部9,10が構成されている。鎮圧用部材2は、作業爪7の上方に設けられたロータカバー11にピン12を介して軸支された均平板13と、均平板13にピン14を介して軸支された整地板15とで構成されている。これらピン12,14は、作業軸6(機幅方向)と平行に延びており、均平板13及び整地板15は、それぞれ上下ないし前後方向に揺動自在となっている。ロータカバー11は、砕土機構1に相応して中央及び左右に分割され、それぞれが砕土作業機の機枠となる中央フレーム16及び左右フレーム17,18に固定されている。この中央フレーム16と左右フレーム17,18とが、枢軸たる支軸ピン19を介して連結されている。
【0012】中央フレーム16及び左右フレーム17,18は、作業軸6と並行な中空の主杆20及び左右連結杆21,22により実質的に構成されている。主杆20の中間位置(機幅方向中央)にはミッション23が設けられ、トラクター等の駆動源から回転駆動力を得るための入力軸24が収容されている。ミッション23の頂部及び主杆20には、三点リンク25と連結するためのトップアーム26及びロワーアーム27が設けられている。主杆20の両外端には径方向に張り出した連結部材28が形成され、左右連結杆21,22の端部に形成された断面矩形の筒状の連結部材29と対向している。そしてこれら連結部材29の先端が適宜重ね合わされて、その上端位置に支軸ピン19が挿通されている。本実施例にあっては、支軸ピン19は平面視で進行方向に延び、且つ前方が高くなるように僅かに傾斜している。すなわち左右フレーム17,18が上方に且つ斜め後方に折り畳まれるようになっている。また支軸ピン19の位置は、中央作業部8の両側端よりも中央寄りに位置されている。言い換えると、主杆20の長さは、中央作業部8の幅よりも短くなるように形成されている。さらに本実施例にあっては、左右フレーム17,18を90度以上展開移動させるものとし、そのときの左右作業部9,10の外端が中央作業部8の両端位置からはみださないようになっている。すなわち、中央作業部8の幅が折り畳み姿勢時の機幅となるように、主杆20及び左右連結杆21,22の長さが設定されているものである。」
(ヘ)「【0017】次に砕土作業機の回転伝達系を説明する。この回転伝達系は、主杆20の左側内部に設けられ、入力軸24とはベベルギヤ61,62により連結された第一出力軸63と、左連結杆21の内部に設けられ、左作業軸6bとは伝動装置64で連結された第二出力軸65とを備えて構成されている。そして第一出力軸63と第二出力軸65とは、図7に示す第一のクラッチ機構66により、また左作業軸6bと中央作業軸6a、及び中央作業軸と右作業軸6cとは第二のクラッチ機構67により、それぞれ接合・離反されるようになっている。
【0018】図7に示すように、第一出力軸63の他端は主杆20に軸受68を介して支持され、連結部材28の内方に突出した軸端部に爪クラッチ部材69がスプライン結合されている。第二出力軸65は、左連結杆21の両端に軸受68を介して支持され、一端が連結部材29の内方に突出して、第一出力軸63の爪クラッチ部材69に噛合する爪クラッチ部材70がスプライン結合されている。この爪クラッチ部材70の基端と軸受69との間には圧縮ばね71が設けられ、爪クラッチ部材70を突出させる方向に付勢している。第二出力軸65の一端の軸端面には爪クラッチ部材70を係止する抜止板72が取り付けられている。第二出力軸65の他端は、図1に示したように左連結杆21から突出し、伝動装置64となるスプロケット73が取り付けられている。左作業軸6bの一端は、左連結杆21のフランジに取り付けられた左側板74に軸支され、第二出力軸65のスプロケット73にチェーン75で連結するスプロケット76が取り付けられている。これらスプロケット73,76及びチェーン75は、左側板74に取り付けられたチェーンケース77により密閉状に覆われている。」
(ト)「【0026】水田等で作業を行うに際しては、…左右フレーム17,18を機幅方向に延ばして主フレーム16と一直線状に揃える。…作業爪7が回転駆動され、トラクターの走行に伴って砕土・すき込み等を行う。…
【0027】そして砕土作業機を運搬する、或いは倉庫等に格納するに際しては、…左右フレーム17,18を支軸ピン19を中心にして上方に展開させ、中央側に折り畳む。…左右作業部9,10は中央作業部8の両側端から出ない状態で、斜め上方且つ後方に保持される。」

以上の記載事項並びに図面の図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲第1号証記載の発明)
「トラクタの後部に三点リンク25を介して農作業機の長さ方向中央作業部8を昇降可能に装着し、上記トラクタから農作業機の中央作業部8に動力を伝達すると共に、上記中央作業部8に対し、該中央作業部8から左右両側に延出している左右の作業部9,10を、それぞれ中央作業部8側に折り畳み可能とした農作業機において、
上記作業機は、第一出力軸63と第二出力軸65を内装した中央フレーム16と左右フレーム17,18に支持されたロータカバー11の後端部に上端部が上下方向に回動自在に枢着された均平板13を背面側に備え、
上記農作業機を中央作業部8と左右作業部9,10とに3分割し、該中央作業部8と左右の作業部9,10の内端部とをそれぞれ支持ピン19により90°以上回転可能に連結すると共に、上記分割した左作業部9の外側端に設けたチェーンケース77により中央作業部8及び左右の作業部9,10を駆動するようにされた農作業機の駆動方法。」

(2)甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
(イ)「本発明は、通常の主ロータリ耕耘装置の横方向外方に延長ロータリ耕耘装置を設けた延長型のロータリ耕耘装置に関し、…」(2欄4?6行)、
(ロ)「第1図において、1はトラクタ機体後方に三点リンク機構を介して装着される主ロータリ耕耘装置であって、中央上部に配置されたギヤーケース2と、該ギヤーケース2の両側に装着された一対のサポートアーム3,4と、サポートアーム3の横方向外端に垂設されたチェーンケース5と、サポートアーム4の横方向外端に垂設されたサイドフレーム6と、チェーンケース5及びサイドフレーム6の下端部間に軸受ケース7,8、端部軸9,10等を介して回転自在に支架された爪軸11と、この爪軸11に植設された多数の耕耘爪12と、ロータリカバー13等を備えて成り」(3欄9?20行)
(ハ)「15は主ロータリ耕耘装置1の横方向外方に設けられた延長ロータリ耕耘装置であって、延長サポートアーム16と、その両端に垂設された一対の延長サイドフレーム17,18と、この両者延長サイドフレームl7,18間に支架された傾斜爪軸19及び延長爪軸20と、これら爪軸19,20に付設された傾斜耕耘爪21及び耕耘爪22と、延長ロータリカバー23とを備え、その延長サイドフレーム17の上端は、第2図及び第3図に示す如く前後方向の枢支軸24によりサイドフレーム6上端に軸支されており、従って延長ロータリ耕耘装置15は、主ロータリ耕耘装置1の横方向外方の延長位置(第1図の実線位置)と、該主ロータリ耕耘装置1の上方の収納位置(第1図の仮想線位置)との間で回動自在であり、」(3欄31行?4欄2行)
(ニ)「上記構成において道路走行等の運搬に際しては、延長ロータリ耕耘装置15を枢支軸24廻りに回動させて主ロータリ耕耘装置1上方の収納位置に位置させ、その延長サポートアーム16をサポートアーム4上の固定具35の固縛具37により固縛して固定すれば、延長ロータリ耕耘装置15を主ロータリ耕耘装置1と一体に運搬でき、しかも全体としての横幅は主ロータリ耕耘装置1の横幅内に収めることができるので、規定幅を超えることもなく非常に安全である。」(4欄29?38行)。

(3)甲第3号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
(イ)「発明の詳細な説明
(産業上の利用分野)
本発明は、ロータリ耕耘装置による耕耘作業方法に関する。」(2頁左上欄7?10行)、
(ロ)「15F,15Rは前側・後側ロータリ耕耘装置で、トラクタTの前・後輪に2点リンク等の連結装置16F,16Rを介して昇降自在に装着されて、リフトシリンダ17又は作業機昇降用油圧装置18により昇降せしめられ、これにより、各耕耘装置15F,15Rは、作業位置と、その上方側の非作業位置とに位置変更自在とされている。
各耕耘装置15F,15Rは、第3図及び第4図にも示すように、トラクタ車体1の後方側を耕耘する中央部耕耘機構19と、各側の前・後輪2,3の前方又は後方側を耕耘する左右一対の側部耕耘機構20,21とから成る。そして、中央部耕耘機構19と、側部耕耘機構20.21の一方とにより、第1耕耘機構が構成され、側部耕耘機構20,21の他方により、第2耕耘機構が構成される。
中央部耕耘機構19は、入力軸22を有する入力ケース23と、入力ケース23から左右両側方に突設された左右一対のサポートアーム24と、各サポートアーム24の外側端部から夫々下設された支持部材として例示する伝動ケース25及びサイドプレート26と、伝動ケース25及びサイドプレート26の下端部間に横設された耕耘軸27と、耕耘軸27に備えられた耕耘爪28と、耕耘カバー53等から構成されている。尚、耕耘軸27と耕耘爪28とにより耕耘部51が構成されている。
入力軸22はトラクタTの前・後PTO軸29F,29Rに自在継手軸31を介して連動連結されると共に、伝動軸32にベベルギヤー機構33を介して連動連結され、伝動軸32は入力ケース23及び両サポートアーム24に配設されている。
伝動ケース25には、伝動軸32と耕耘軸27とを連動連結するチェーン伝動機構34が内蔵されている。
側部耕耘機構20,21は、左右方向に横設されたサポートアーム35と、サポートアーム35の各端部から下設された伝動ケース36及びサイドプレート37と、伝動ケース36及びサイドプレート37の下端部間に横設された耕耘軸38と、耕耘軸38に備えられた耕耘爪39と、耕耘カバー54等から構成されている。尚、耕耘軸38と耕耘爪39とにより耕耘部52が構成されている。
サポートアーム35の内側端部は、中央部耕耘機構19の伝動ケース25又はサイドプレート26上部に球継手40を介して、前後方向の横軸廻りに回動操作可能に備えられ、中央部耕耘機構19と各側部耕耘機構20,21の両サポートアーム24,35間に介装された油圧シリンダ41により、各側部耕耘機構20,21は、第3図の左側部耕耘機構20の姿勢で示すような水平姿勢と、第3図及び第4図の右側部耕耘機構21の姿勢で示すような傾斜姿勢とに姿勢変更自在とされている。
サポートアーム35内には伝動軸42が配設され、伝動軸42は、中央部耕耘機構19の伝動軸32の各端部に自在継手43を介して連動連結されている。
伝動ケース36には、伝動軸42と耕耘軸38とを連動連結するチェーン伝動機構44が内蔵されている。」(3頁右下欄7行?4頁左下欄1行)
(ハ)「尚、耕耘作業時において、各耕耘装置15F,15Rの各側部耕耘機構20,21を、水平姿勢とするか、第3図の右側部耕耘機構21の姿勢で示すような耕耘作業を行わない傾斜姿勢とするかにより、耕耘幅を変更したり、耕耘装置15F,15Rをオフセット状態にしたりすることができる。」(5頁右下欄11?16行)。

6.対比・判断
(6-1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「三点リンク25」は、本件発明1の「3点リンクヒッチ機構」に相当し、以下同様に、「中央作業部8」は「中央部分」に、「左右の作業部9,10」は「左右両側に延出している作業機部分」に、「第一出力軸63と第二出力軸65」は「伝動シャフト」に、「中央フレーム16と左右フレーム17,18」は「本体フレーム」に、「ロータカバー11」は「シールドカバー」に、「支持ピン19」は「回転支点」に、「チェンケース77」は「チェン伝動ケース」に、「折畳機構を備えた農作業機」は「折り畳み作業機」に、それぞれ相当する。
また、甲第1号証記載の発明の「均平板13」は、砕土・代掻きされた土を受ける機能を奏することが自明であるから、本件発明1の「砕土・代掻きされた土を受けるエプロン」に相当する。

そうすると、両者は、
「トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して農作業機の長さ方向中央部分を昇降可能に装着し、上記トラクタから農作業機の中央部分に動力を伝達すると共に、上記中央部分に対し、該中央部分から左右両側に延出している作業機部分を、それぞれ中央部分側に折り畳み可能とした農作業機において、
上記作業機は、伝動シャフトを内装した本体フレームに支持されたシールドカバーの後端部に上端部が上下方向に回動自在に枢着されて砕土・代掻きされた土を受けるエプロンを背面側に備え、
上記農作業機を中央部分と左右の作業機部分とに3分割し、中央部分と左右の作業機部分とをそれぞれ回転支点により回転可能に連結した折り畳み農作業機の駆動方法。」の点で一致し(以下、「一致点」という。)、次の各点で相違するといえる。
(なお、以下の記載中の[ ]内には、対応する各甲号証の用語を表記した。)

(相違点1)
中央部分と左右の作業機部分とを回転支点により回転可能に連結した構成に関して、本件発明1が「中央部分の左右の端部と左右の作業機部分の内端部とをそれぞれ回転支点によりほぼ180°回転可能に連結」したものであるのに対し、甲第1号証記載の発明は、中央部分[中央作業部8]と左右の作業機部分[左右作業部9,10]とをそれぞれ回転支点により90°以上回転可能に連結したものである点。
(相違点2)
本件発明1が「中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能と」したものであるのに対し、甲第1号証記載の発明は、このような両エプロンとが対面するような折り畳み可能な構成を備えていない点。
(相違点3)
本件発明1が「分割した中央部分及び左右の作業機部分のそれぞれにチェン伝動ケースを設けて作業部を駆動するようにした」ものであるのに対し、甲第1号証記載の発明は、分割した左の作業部分[左作業部9]に設けたチェン伝動ケース[チェーンケース77]によりすべての作業部を駆動するようにした点。

そこで、上記相違点1?3につき、以下検討する。

(相違点1について)
甲第2号証には、甲第1号証記載の発明と同様の折り畳み農作業機[ロータリ耕耘装置]において、中央部分[主ロータリ耕耘装置1]の右側端部とこれより右側に延設した作業機部分[延長ロータリ耕耘装置15]の内端部とを回転支点[枢支軸24]として、ほぼ180°回転可能に連結した構成を採用したものが記載されている。
そうすると、甲第1号証記載の発明の中央部分と左右の作業機部分とを回転支点により回転可能に連結した構成に代えて、甲第2号証に記載された上記構成を適用して、中央部分の右の端部と右の作業機部分の内端部とを回転支点によりほぼ180°回転可能に連結するとともに、これと同様に、中央部分の左の端部と左の作業機部分の内端部とを回転支点によりほぼ180°回転可能に連結するように構成することは、当業者が容易に想到し得た設計上の変更であるといえる。

なお、被請求人は、答弁書9頁5行?10頁9行において、甲第1号証に記載のものは、支持ピン19を跨いで中央フレーム16と左右フレーム17,18間に油圧シリンダ30,31を介在させて折り畳みを行うから左右フレーム17,18を180°回転させる折り畳みが構造上不可能なものであり、また、支持ピン9の位置を中央作業部8の両端より中央寄りにすることが必要不可欠であるから、甲第2号証に記載された枢支軸24のように、支持ピン19の位置を中央作業部8の両端に位置することに対して技術的な阻害要因があると言え、甲第1号証と甲第2号証との組み合わせを考える上で、甲第1号証の「支持ピン19」の位置を甲第2号証の「枢支軸24」と同様にすることは、技術的な内容を無視した適用であって当業者の技術常識からは想起できない旨、主張する。
確かに、被請求人が主張するように、甲第1号証の実施例には、支持ピン19を跨いで中央フレーム16と左右フレーム17,18間に油圧シリンダ30,31を介在させて折り畳みを行ない、その支持ピン9の位置を中央作業部8の両端より中央寄りに設置したものが記載されているものの、当該甲第1号証には、中央部分[中央作業部8]と左右の作業機部分[左右作業部9,10]の内端部とをそれぞれ回転支点により90°以上回転可能に連結したという上位概念の発明も、当業者が把握できるものとして記載されているということができる。そして、甲第1号証の【図11】や段落【0002】?【0005】に、従来の技術として挙げられているように、(油圧シリンダを使うことなく手動により)中央部分の左右の端部と左右の作業機部分の内端部とをそれぞれ回転支点により回転可能に連結する態様も、従来より周知の技術であったといえるのであるから、上述した上位概念の発明であるところの甲第1号証記載の発明の連結態様として、従来より周知の連結態様と同様の甲第2号証に記載の連結態様を採用することも、当業者が容易に想到し得た設計的事項であるといわざるを得ない。

(相違点2について)
本件発明1の「中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能と」した点は、特許請求の範囲の記載事項からは、その技術的意義が必ずしも明確ではない。
そこで、本件特許明細書の記載を参照すると、本件特許明細書の段落【0010】に「…中央部分4の左右の端部と左右の作業機部分5L,5Rの内端部とをそれぞれ回転軸(回転支点)6,6によりほぼ180°回転可能に連結し、上記中央部分4の背面4aと左右の作業機部分5L,5Rの背面5La,5Raとを重ね合わせるようにして折り畳み可能としている。…」との記載が、また、段落【0012】に「…砕土・代掻ロ-タ13の上方は、本体フレームに支持されたシールドカバー15により覆われており、このシールドカバー15の後端部に、後端位置にレベラー17を枢支したエプロン16の上端部が上下方向に回動自在に枢着されている。レベラー17の折り畳み対向部分は、上記回転軸6の軸心とほぼ等しい軸心で回動するヒンジ18により連結されている。また、レベラー17は、土壌を均平する均平位置と土壌を掻き寄せる土寄せ位置とに変位可能である。」との記載があるとともに、「代掻ハローを折り畳んだ状態の概略側面図」である図面の図3を見ると、その左上方から右下に向かって傾斜させて配置した態様の「回転軸6」が示されている。
また、被請求人は、答弁書によれば、「…中央部分の背面側空間を効果的に活用してコンパクトな折り畳み状態が可能になる。これによると、下記参考図に示すように、折り畳み状態での農作業機後方のオーバハングHを抑えることができ、折り畳み状態での農作業機の機高V1を抑えることができるので、折り畳み状態での作業を安定化させることができると共に、折り畳み状態での後方視界を確保することができる。また、畦際作業も視認し易く容易に行うことができる。」(第3頁最下行?第4頁6行)と主張するとともに、その第4頁に「〈参考図〉」として、上記図3と同様の回転支点を傾斜させて配置した態様のものを提示している。
以上のことからすると、本件発明1の上記した点の技術的意義は、中央部分の左右の端部と左右の作業機部分の内端部とをそれぞれ回転可能にする回転支点の配置態様を、前後方向で前方が高くなるように傾斜させて配置した構成とすることにより、中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能となることを意味するものと解することができる。
ところで、甲第1号証には、その段落【0012】に「…支軸ピン19は平面視で進行方向に延び、且つ前方が高くなるように僅かに傾斜している。…」との記載があるとともに、【従来の技術】として、段落【0002】に「例えば実開平1-163907号公報のものは、左右に延びた作業機を本体フレームに設けた垂直な或いは傾斜した連結ピン回りに回動させることで機幅を実質的に縮小させ、路上走行や格納の便宜を図るようになっている。」(実願昭63-53924号(実開平1-163907号)のマイクロフィルムの明細書22頁4?17行参照)との記載が、また、同段落【0002】に「特開昭61-282001号公報に開示された耕耘装置は、図11に示すように、トラクター101の後部に連結した中央耕耘装置102と、その両側に設けた側部耕耘装置103,104とで構成されており、必要に応じて水平方向の軸105,106 回りに回動されるようになっている。」との記載があるように、その回転軸ないし回転支点の配置態様を、垂直、傾斜、水平の何れかの配置態様のものとして構成することは、いずれも従来より周知の技術であったといえる。
さらに、甲第1号証の段落【0003】に「ただしこれら従来の農作業機においては、相当の重量を有した左右の作業機を展開することで、重心が上方或いは後方に大きく移動し、折り畳み姿勢における操縦性及び安定性が低下するという問題があった。」との記載がある。
してみると、上記相違点1で説示したところの設計上の変更をするに際して、その回転支点の配置態様を、前後方向で前方が高くなるように傾斜させて配置した構成のものと設定することは、折り畳み状態の重心位置や前後方向の突出具合等を適宜考慮して、当業者が適宜選択し得た設計的事項であるといえる。
そして、本件発明1の「中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能」という作用も、上述の当業者により容易に得られると説示した構成が、結果として、奏するものであることも明らかである。

(相違点3について)
甲第3号証には、甲第1号証記載の発明と同様の折り畳み農作業機[ロータリ耕耘装置]において、分割した中央部分[中央部耕耘機構19]及び左右の作業機部分[左右一対の側部耕耘機構20,21]のそれぞれにチェン伝動ケース[伝動ケース25,36,36]を設けて作業部を駆動するようにしたことが記載されている。
そうすると、甲第1号証記載の発明の分割した中央部分及び左右の作業機部分を駆動する構成として、甲第3号証に記載のものを適用して、分割した中央部分及び左右の作業機部分のそれぞれにチェン伝動ケースを設けて作業部を駆動するものと構成することは、当業者が容易に想到し得た設計的事項であるといえる。

(6-2)本件発明2について
同様に、本件発明2は本件発明1を引用する発明であるから、本件発明2と甲第1号証記載の発明とを対比すると、上記一致点で一致し、上記相違点1?3で相違するとともに、さらに、次の点で相違する。
(相違点4)
中央部分と左右の作業機部分の長さ関係に関して、本件発明2が「中央部分の長さに対し左右の作業機部分の長さをほぼ2分の1とする」のに対し、甲第1号証記載の発明は、このような長さ関係に構成されているかが明らかでない点。
(相違点5)
チェン伝動ケースの配置に関して、本件発明2が「左右の作業機部分のチェン伝動ケースを、それぞれ外側端に設けた」のに対し、甲第1号証記載の発明は、左の作業部分[左作業部9]の外側端に設けたチェン伝動ケース[チェーンケース77]により、中央部分及び左右の作業部分[中央作業部8及び左右の作業部9,10]を駆動するようにした点。

そこで、上記相違点4及び5につき、以下検討する。

(相違点4について)
上記「(相違点1について)」で説示したところの中央部分の左右の各端部と左右の作業機部分の各内端部とを回転支点によりほぼ180°回転可能に連結するに際して、折り畳み状態を考慮すれば、当該「ほぼ180°回転」される左右の作業機部分の長さが中央部分長さに対してほぼ2分の1程度(正確には2分の1未満)である必要性があることは自明な事項であるから、両者の長さを、このような長さ関係に設定することも当業者が当然に配慮して採用する設計的事項であるといえる。

(相違点5について)
上記「(相違点3について)」で説示したように、甲第3号証には、甲第1号証記載の発明と同様の折り畳み農作業機[ロータリ耕耘装置]において、分割した中央部分[中央部耕耘機構19]及び左右の作業機部分[左右一対の側部耕耘機構20,21]のそれぞれにチェン伝動ケース[伝動ケース25,36,36]を設けて作業部を駆動するようにしたことが記載されているとともに、その左右の作業機部分[左右一対の側部耕耘機構20,21]のチェン伝動ケース[伝動ケース36,36]を、それぞれ外側端に設けたことが併せて記載されている。
そうすると、相違点5に係る本件発明2の構成は、甲第1号証記載の発明の分割した中央部分及び左右の作業機部分を駆動する構成として、甲第3号証に記載のものを適用することにより、当業者が容易に想到し得たものといえる。

(6-3)まとめ
そして、本件発明1及び本件発明2の奏する効果も、甲第1号証?甲第3号証記載の事項から当業者が予測できるものであって、格別なものということができない。
したがって、本件発明1及び本件発明2は、甲第1号証?甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7.むすび
以上のとおり、本件発明1及び本件発明2は、甲第1号証?甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、本件発明1及び本件発明2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号により、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
折り畳み農作業機の駆動方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して農作業機の長さ方向中央部分を昇降可能に装着し、上記トラクタから農作業機の中央部分に動力を伝達すると共に、上記中央部分に対し、該中央部分から左右両側に延出している作業機部分を、それぞれ中央部分側に折り畳み可能とした農作業機において、
上記農作業機は、伝動シャフトを内装した本体フレームに支持されたシールドカバーの後端部に上端部が上下方向に回動自在に枢着されて砕土・代掻きされた土を受けるエプロンを背面側に備え、
上記農作業機を中央部分と左右の作業機部分とに3分割し、該中央部分の左右の端部と左右の作業機部分の内端部とをそれぞれ回転支点によりほぼ180°回転可能に連結し、上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能とすると共に、上記分割した中央部分及び左右の作業機部分のそれぞれにチェン伝動ケースを設けて作業部を駆動するようにしたことを特徴とする折り畳み農作業機の駆動方法。
【請求項2】上記中央部分の長さに対し左右の作業機部分の長さをほぼ2分の1とすると共に、上記左右の作業機部分のチェン伝動ケースを、それぞれ外側端に設けたことを特徴とする請求項1記載の折り畳み農作業機の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して長さ方向中央部分を昇降可能に装着し、該中央部分に対し左右両側に延出している作業機部分をそれぞれ中央部分側に折り畳み可能とした折り畳み農作業機の駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して農作業機の長さ方向中央部分を昇降可能に装着し、上記トラクタから農作業機の中央部分に動力を伝達すると共に、上記中央部分に対し、該中央部分から左右両側に延出している作業機部分を、機体の横方向の長さを短くするためにそれぞれ中央部分側に折り畳み可能とした農作業機が周知である。
【0003】
そして、その中央部分及び左右の作業機部分の駆動方法として、左右の作業機部分の片側端部1箇所にチェン伝動ケースを設け、左右の作業機部分を作業状態にしたときに、チェン伝動ケースで駆動される下部の作業軸によって中央部分及び左右の作業機部分の全部の作業軸を駆動するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来農作業機の場合、クラッチを備えた作業軸連結部が土中に入ることにより、耐久性が悪くなる。また、作業部端部の1個のチェン伝動ケースによって全ての作業部を駆動するので、強度的バランスをとるのが難しい、という問題点があった。
【0005】
本発明は、3分割された各作業部分をそれぞれのチェン伝動ケースにより駆動することによって、連結部(折り畳み部)の耐久性を向上させ、また、作業部の駆動が均等に行えるようにした折り畳み農作業機の駆動方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、
A.トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して農作業機の長さ方向中央部分を昇降可能に装着し、上記トラクタから農作業機の中央部分に動力を伝達すると共に、上記中央部分に対し、該中央部分から左右両側に延出している作業機部分を、それぞれ中央部分側に折り畳み可能とした農作業機において、上記農作業機は、伝動シャフトを内装した本体フレームに支持されたシールドカバーの後端部に上端部が上下方向に回動自在に枢着されて砕土・代掻きされた土を受けるエプロンを背面側に備え、上記農作業機を中央部分と左右の作業機部分とに3分割し、該中央部分の左右の端部と左右の作業機部分の内端部とをそれぞれ回転支点によりほぼ180°回転可能に連結し、上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにすることで上記中央部分のエプロンと上記左右の作業機部分のエプロンとが対面するように折り畳み可能とすると共に、上記分割した中央部分及び左右の作業機部分のそれぞれにチェン伝動ケースを設けて作業部を駆動するようにしたことを特徴としている。
【0007】
B.上記中央部分の長さに対し左右の作業機部分の長さをほぼ2分の1とすると共に、上記左右の作業機部分のチェン伝動ケースを、それぞれ外側端に設けたことを特徴としている。
【0008】
【作用】
上記の手段により本発明の折り畳み農作業機の駆動方法は、中央部分及び左右の作業機部分の駆動連結部に土が入り込むことがなく、クラッチ等の耐久性が向上する。また、中央部分及び左右の作業機部分の各駆動連結部、作業軸等の強度か均等となり、それぞれの部材強度を軽減させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を参照して具体的に説明する。図において、符号1は左右方向の長さが長く(この実施例では3770mm)砕土・代掻機能を持つ代掻ハローである。この代掻ハロー1の前部には、図示しないが、トラクタのトップリンクとロアーリンクとからなる周知の3点リンクヒッチ機構に連結される,トラクタへの連結部2が設けられ、代掻ハロー1はトラクタの後部に昇降可能に装着される。また、トラクタのPTO軸から、ユニバーサルジョイント、伝動シャフト等を介して、代掻ハロー1の前側中央部に設けられた変速ギヤボックス3に、入力軸3aを介して動力が伝達される。
【0010】
代掻ハロー1は、中央部分4(長さ=1900mm)と左右の作業機部分5L,5R(長さ=各930mm)とに3分割され、中央部分4の左右の端部と左右の作業機部分5L,5Rの内端部とをそれぞれ回転軸(回転支点)6,6によりほぼ180°回転可能に連結し、上記中央部分4の背面4aと左右の作業機部分5L,5Rの背面5La,5Raとを重ね合わせるようにして折り畳み可能としている。図面でも示すように、中央部分4の長さに対し左右の作業機部分5L,5Rの長さをほぼ2分の1としている。作業機部分5L,5Rは左右対称であり、同じ構成であるので一方の作業機部分5Lについて説明する。
【0011】
上記ギヤボックス3から左右両側に、本体フレームを兼ね、伝動シャフト7,7aを内装した伝動フレーム8,8aが設けられている。この伝動フレーム8,8aから、中央部分4においてはトラクタのタイヤTの後方に位置して、また、作業機部分5L,5Rにおいては外側端に位置して、それぞれチェン伝動ケース9を垂設している。これら各チェン伝動ケース9の下端部と伝動フレーム8,8aからチェン伝動ケース9と対向して垂設した支持フレーム10の下端部との間にロータリ軸11が軸架されている。ロータリ軸11の軸周には多数の砕土・代掻爪12が取付けられて砕土・代掻ロータ13を構成している。
【0012】
上記伝動シャフト7と7aの軸端が対向する部分にはドッグクラッチ14が設けられていて、図1に示す代掻ハロー1全体が作業状態のときはドッグクラッチ14が接続され、左右の作業機部分5L,5Rを回転軸6を中心に回動して中央部分4上に折り畳むときにドッグクラッチ14が切断される。砕土・代掻ロータ13の上方は、本体フレームに支持されたシールドカバー15により覆われており、このシールドカバー15の後端部に、後端位置にレベラー17を枢支したエプロン16の上端部が上下方向に回動自在に枢着されている。レベラー17の折り畳み対向部分は、上記回転軸6の軸心とほぼ等しい軸心で回動するヒンジ18により連結されている。また、レベラー17は、土壌を均平する均平位置と土壌を掻き寄せる土寄せ位置とに変位可能である。
【0013】
上記作業機部分5Lの折り畳み回動部分にはガイド溝19aを有するガイド板19が固設され、このガイド板19の上側に、一端に上記ガイド溝19aに嵌挿されるガイドピン20aを有し、他端を中央部分4側に軸20bにより左右方向に回転可能に軸支され、く字状に屈曲した回転アーム20を設け、この回転アーム20の中間部と伝動フレーム8との間に油圧シリンダ21を介装し、この油圧シリンダ21の伸縮作動により作業機部分5Lを作業位置と折り畳み位置とに回動させる。作業機部分5Lを作業位置にしたときにはロック装置22によりロックされる。
【0014】
上記左右の作業機部分5L,5Rを中央部分4上に折り畳んだとき、中央部分4の左右両端の支持フレーム10には、車輪付スタンド23が着脱可能に設けられる。また、上記各各チェン伝動ケース9の下方には残耕処理装置が設けられている。
【0015】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の折り畳み農作業機の駆動方法によれば、上記の手段により以下の効果を奏することができる。
【0016】
農作業機を中央部分と左右の作業機部分とに3分割し、該中央部分の左右の端部と左右の作業機部分の内端部とをそれぞれ回転支点によりほぼ180°回転可能に連結し、上記中央部分の背面と左右の作業機部分の背面とを重ね合わせるようにして折り畳み可能とすると共に、上記分割した中央部分及び左右の作業機部分のそれぞれにチェン伝動ケースを設けて作業部を駆動するようにしたので、中央部分及び左右の作業機部分の駆動連結部に土が入り込むことがなく、クラッチ等の耐久性を向上させることができる。また、中央部分及び左右の作業機部分の各駆動連結部、作業軸等の強度か均等となり、それぞれの部材強度を軽減させることができる。
【0017】
中央部分の長さに対し左右の作業機部分の長さをほぼ2分の1とすると共に、上記左右の作業機部分のチェン伝動ケースを、それぞれ外側端に設けたので、左右の作業機部分を中央部分上に折り畳んだときの機体バランスが良好となり、安定して走行・移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による折り畳み式代掻ハロー全体の概略背面図である。
【図2】図1のA方向からの概略側面図である。
【図3】代掻ハローを折り畳んだ状態の概略側面図である。
【図4】図3のB方向からの概略平面図である。
【図5】本発明による代掻ハローの部分平面図である。
【図6】代掻ハローを折り畳んだ状態の側面図である。
【図7】代掻ハローの部分平面図である。
【図8】折り畳み機構の部分平面図である。
【図9】折り畳んだ状態の部分平面図である。
【符号の説明】
1 代掻ハロー
2 トラクタへの連結部
3 変速ギヤボックス 3a 入力軸
4 代掻ハローの中央部分 4a 中央部分の背面
5L 左作業機部分 5R 右作業機部分 5La 左作業機部分の背面 5Ra 右作業機部分の背面
6 回転軸(回転支点)
7,7a 伝動シャフト
8 伝動フレーム
9 チェン伝動ケース
10 支持フレーム
11 ロータリ軸
12 砕土・代掻爪
13 砕土・代掻ロ-タ
14 ドッグクラッチ
15 シールドカバー
16 エプロン
17 レベラー
18 ヒンジ
19 ガイド板 19a ガイド溝
20 回転アーム 20a ガイドピン 20b 軸
21 油圧シリンダ
22 ロック装置
23 車輪付スタンド
T トラクタのタイヤ
【図面】









 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-01-17 
結審通知日 2007-01-19 
審決日 2007-01-30 
出願番号 特願平9-109450
審決分類 P 1 113・ 832- ZA (A01B)
P 1 113・ 121- ZA (A01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
柴田 和雄
登録日 2002-01-18 
登録番号 特許第3269985号(P3269985)
発明の名称 折り畳み農作業機の駆動方法  
代理人 特許業務法人エビス国際特許事務所  
代理人 樺澤 聡  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 襄  
代理人 特許業務法人エビス国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ