• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61G
管理番号 1155926
審判番号 不服2004-10740  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-21 
確定日 2007-04-11 
事件の表示 特願2000-222131号「ベッド等におけるキャスタ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 5日出願公開、特開2002- 35053号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年7月24日の出願であって、平成16年5月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年5月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日受付で手続補正がなされたものである。

第2 平成16年5月21日受付の手続補正についての補正却下の決定
【結論】
平成16年5月21日受付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1 補正の内容
本件補正は、平成15年1月31日受付の手続補正書により補正された請求項1の、
「ベッド等のメインフレームおよび床部を支える基部フレーム両端に、キャスタ取付本体と、このキャスタ取付本体に旋回手段を介して旋回可能に連結した、車輪を保持するヨークとを有し、前記キャスタ取付本体を、前記メインフレームおよび床部を支える基部フレームに、キャスタ取付本体と一体的に構成した支持腕を介して取り付けるようにし、この支持腕を上に凸状の湾曲形状として、前記基部フレームとの取り付け箇所の位置が、少なくとも前記キャスタ取付本体の高さ位置より低くなるようにしたことを特徴とするベッド等におけるキャスタ取付手段。」を、
「キャップ形状のキャスタ取付本体と、このキャスタ取付本体下部に旋回可能に連結した、車輪を保持するヨークとを有し、前記キャスタ取付本体側部側に一体構成した取付部材を、前記車輪の位置まで車輪に沿って下降湾曲形成し、前記取付部材の一端側には、ベッド等のメインフレームおよび床部を支える基部フレームを装着するようにしたことを特徴とするベッド等におけるキャスタ装置。」
と補正するものである。

2 補正の目的の適否
上記本件補正は、補正事項として、「この支持腕を上に凸状の湾曲形状として、前記基部フレームとの取り付け箇所の位置が、少なくとも前記キャスタ取付本体の高さ位置より低くなるようにした」を「取付部材を、前記車輪の位置まで車輪に沿って下降湾曲形成し、前記取付部材の一端側には、ベッド等のメインフレームおよび床部を支える基部フレームを装着するようにした」と補正することを含むものである。
ところで、この補正事項において、本件補正前の発明特定事項は、支持腕の基部フレームとの取り付け箇所の位置がキャスタ取付本体の高さ位置より低くなるようにするものであるが、本件補正後の発明特定事項は、取付部材(支持腕)を、車輪の位置まで下降湾曲形成し、その取付部材(支持腕)の一端に基部フレームを装着するものであり、取付部材(支持腕)の基部フレームとの取り付け箇所の位置が車輪の位置となるようにするものである。そして、車輪の位置は、キャスタ取付本体の長さ、及び車輪の大きさによってはキャスタ取付本体の高さ位置と同じになる場合もあり、「取付部材を、前記車輪の位置まで車輪に沿って下降湾曲形成し、前記取付部材の一端側には、…基部フレームを装着するようにした」は、取付部材(支持腕)の基部フレームとの取り付け箇所の位置がキャスタ取付本体の高さ位置と同じになるものも含むことになる。
したがって、上記本件補正の補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
また、本件補正後の「キャスタ装置」は、本件補正前の「基部フレーム両端に」の「両端に」、及び「旋回手段を介して旋回可能に連結した」の「旋回手段を介して」に相当する発明特定事項を欠いている。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月31日受付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ベッド等のメインフレームおよび床部を支える基部フレーム両端に、キャスタ取付本体と、このキャスタ取付本体に旋回手段を介して旋回可能に連結した、車輪を保持するヨークとを有し、前記キャスタ取付本体を、前記メインフレームおよび床部を支える基部フレームに、キャスタ取付本体と一体的に構成した支持腕を介して取り付けるようにし、この支持腕を上に凸状の湾曲形状として、前記基部フレームとの取り付け箇所の位置が、少なくとも前記キャスタ取付本体の高さ位置より低くなるようにしたことを特徴とするベッド等におけるキャスタ取付手段。」

第4 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-240204号公報(以下、「引用刊行物」という。)には次の事項が図面とともに記載されている。

1 「水平に延びて先端が開口する筒状の脚台部を有するキャスタ被取付体の脚部と、
上記脚台部に嵌合され、この嵌合位置で着脱可能に脚台部に固定される取付ボックスと、
該取付ボックスの先端に連接すると共に下向きに垂下する柱状部と、
該柱状部に旋回自在に取り付けられた支持ヨークと、該支持ヨークに軸支された車輪とからなることを特徴とする脚部のキャスタ構造。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
2 「【発明の属する技術分野】この発明は、ベッド等の寝具や、家具などのキャスタ被取付体の脚部から水平に延びた筒状の脚台部に嵌め込んで一体にキャスタを形成するようにした脚部のキャスター構造に関する。」(段落【0001】)
3 「【発明の実施の形態】以下に、この発明の脚部のキャスタ構造の好適実施例について図面を参照しつつ説明する。ここで、図1ないし図3は第1の実施態様を示すものであって、図1は要部を断面で示す一部切欠側面図、図2はその平面図、図3はその斜視図である。この第1の実施態様に係わるこの発明のキャスタ1は、大略的にキャスタ本体2と、柱状のキャスタ本体取付部3と、取付ボックス4とから構成されている。(段落【0005】)
4 「キャスタ本体2は主として支持ヨーク5の先端に回転自在に軸支された車輪6と、支持ヨーク5の基端に固定された取付軸7とからなっている。図示例で支持ヨークはカバー状からなって車輪6の側面を覆うサイドプレート部9を有している。なお、取付軸7は上部に環状溝7aが設けられていて、これにより後述のようにキャスタ本体取付部3に軸心に設けられた円筒状軸受部10からの抜け防止が図られている。」(段落【0006】)
5 「柱状部の一例として示すキャスタ本体取付部3は下端部が円筒状をなし、その中心に円筒状軸受部10が上方に向けて突設されている。この円筒状軸受部10の周壁面には放射状に複数の補強リブ10aが突出している。」(段落【0007】)
6 「この円筒状軸受部10はキャスタ本体2の取付軸7を回転自在に嵌挿させる円筒内壁面を有するとともに、取付軸7の環状溝7aと合致する部分に張出し部(図示しない)が形成されていて、これが取付軸7の環状溝7aと合致することにより、取付軸7の抜け防止が図られている。さらに円筒状軸受部10の円筒内部天井にはボール12が回転自在に遊嵌されていて、取付軸7の頭部上面と当接し取付軸7の円滑な自転を図っている。」(段落【0008】)
7 「このキャスタ本体取付部3の一側は円筒状軸受部10と平行に壁面11が形成されていて、その中心部はウェブ(図示せず)を介す等して円筒状軸受部10を形成している。取付ボックス4は有底の箱状をなし、キャスタ本体取付部3の一側に形成された壁面11から垂直に直交し(円筒状軸受部10の長手方向に対し垂直方向に)延出している。」(段落【0009】)
8 「取付ボックス4の底面には内壁面にネジ溝を有する固定用筒状体15が一対、上向きに突設されている。この固定用筒状体15は被取着部材、すなわち脚柱から水平に延びた脚台部先端14の開口に取付ボックス4を固定するためのもので、取付ボックス4を脚部先端14に嵌挿させたのち、脚台部先端14の底面に穿設された一対の孔部14Aと整合し連通させ、ボルトなどをネジ止めして脚部先端14に締付け固定されるようになっている。なお、図中16は円筒状軸受部10部分を覆って脚台部14と一連に連接され下方へ延出する柱状部である。」(段落【0010】)
9 「この構成からなるキャスタによれば、円筒状軸受部10内にて取付軸7が自由に回転可能となっていて、これによりキャスタ本体2を任意の方向に向けて走行させることができる。また、この構成からなるキャスタによれば、キャスタの装着が取付ボックス4を脚柱から水平に延びた脚部先端14に単に嵌挿させて固定されるものであるから、取付が簡単であり、かつ、キャスタ取付部が大規模になったり、機構的に複雑となったりすることがなく、体裁的に極めて好ましいものとなる。」(段落【0011】)
10 図1には、先端に車輪6を保持し基端に取付軸7を固定した支持ヨーク5と、支持ヨーク5の取付軸7を嵌挿した円筒状軸受け部10を備えたキャスタ本体取付部3と、キャスタ本体取付部3の壁面11から垂直に直交し延出した取付ボックス4と、取付ボックス4に嵌挿して固定する脚部先端14が、図示されている。

したがって、上記の記載事項及び図示内容からみて、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「円筒状軸受部10を備えたキャスタ本体取付部3と、先端に車輪6を保持し、基端に取付軸7を固定した支持ヨーク5とを有し、このキャスタ本体取付部3の円筒状軸受部10に、支持ヨーク5の取付軸7を回転自在に嵌挿し、キャスタ本体取付部3に支持ヨーク5を円筒状軸受部10を介して旋回可能に連結し、キャスタ本体取付部3の壁面11には、取付ボックス4を垂直に直交し延出し、この取付ボックス4に、水平に延びて先端が開口する脚部の脚部先端14を嵌挿して固定して、キャスタ本体取付部3を、脚部に、取付ボックス4を介して取り付けたベッド等の脚部のキャスター取付構造。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明における「キャスタ本体取付部3」は、その機能・構造等からみて、本願発明における「キャスタ取付本体」に相当し、以下同様に、「円筒状軸受部10」は「旋回手段」に、「車輪6」は「車輪」に、「支持ヨーク5」は「ヨーク」に、「ベッド等の脚部のキャスター取付構造」は「ベッド等におけるキャスタ取付手段」に各々相当する。また、引用発明の「取付ボックス4」は、キャスタ本体取付部3の壁面11に垂直に直交し延出しているから、本願発明の「キャスタ取付本体と一体的に構成した支持腕」であるといえる。更に、引用発明の「脚部」と本願発明の「基部フレーム」は、ベッド等のフレームである点で共通する。

してみれば、両者は、
「キャスタ取付本体と、このキャスタ取付本体に旋回手段を介して旋回可能に連結した、車輪を保持するヨークとを有し、前記キャスタ取付本体を、ベッド等のフレームに、キャスタ取付本体と一体的に構成した支持腕を介して取り付けるようにしたベッド等におけるキャスタ取付手段。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、「ベッド等のメインフレームおよび床部を支える基部フレーム」を備え、「基部フレーム両端」に、キャスタ取付本体とヨークとを有しているのに対して、引用発明は、「ベッド等のメインフレームおよび床部を支える基部フレーム」を備えているか否か明確でなく、また、その「両端」にキャスタ取付本体等を有しているか否かついても明確でない点。
<相違点2>
支持腕に関し、本願発明は、「上に凸状の湾曲形状として、基部フレームとの取り付け箇所の位置が、少なくともキャスタ取付本体の高さ位置より低くなるようにした」のに対して、引用発明は、そのような発明特定事項とはなっていない点。

第6 当審の判断
上記相違点1、2について以下検討する。
1 相違点1について、
ベッドにおいて、メインフレームおよび床部を支える基部フレームを有し、基部フレーム両端にキャスタを取り付けるようにすることは、周知の技術である(例えば、特開平8-243125号公報参照)。
したがって、本願発明の上記相違点1に係る発明特定事項は、引用発明及び上記周知の技術から当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について、
キャスタを備えたベッドにおいて、基部フレームのキャスタとの取り付け箇所とベッド等の支持部分との間を湾曲形状としたり、傾斜形状として、基部フレームのベッド等の支持部分の位置を、キャスタとの取り付け箇所の位置よりも低くすることは周知の技術である(例えば、特開平8-243125号公報、実用新案登録第2551360号公報参照)。
したがって、キャスタ本体を支持腕を介して基部フレームに取り付けるようにしたものにおいて、基部フレームをキャスタ取付本体の高さ位置より低くすることは当業者が容易に想到し得たことであり、そして、その際、支持腕をどの様な形状にするかは当業者が適宜決めることであるから、支持腕を上に凸状の湾曲形状とすることも当業者が適宜なし得た設計的事項である。
よって、支持腕を上に凸状の湾曲形状として、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは、引用発明及び上記周知の技術から当業者が容易に想到し得たことである。

そして、上記相違点1、2によって奏する作用、効果も、引用発明及び上記周知の技術から予測される範囲のものであって、格別なものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-13 
結審通知日 2007-02-14 
審決日 2007-02-27 
出願番号 特願2000-222131(P2000-222131)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土田 嘉一山口 直  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 稲村 正義
和泉 等
発明の名称 ベッド等におけるキャスタ装置  
代理人 三觜 晃司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ