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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C |
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管理番号 | 1156026 |
審判番号 | 不服2005-20345 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-20 |
確定日 | 2007-04-12 |
事件の表示 | 平成11年特許願第344690号「携帯型地図表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月12日出願公開、特開2001-159537〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年12月3日の出願であって、平成17年9月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月21日付で手続補正がなされたものである。 2.平成17年11月21日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年11月21日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「地図を表示可能な表示器と、 自己の現在地の位置情報を取得可能な位置情報取得装置と、 外部に設けられたデータベースから電話回線を通じて地図データをダウンロード可能に設けられた電話インターフェース部と、 この電話インターフェース部を通じて前記データベースから地図データをダウンロードして記憶装置に記憶すると共に、その記憶地図データを前記表示器に表示させる制御手段とを備え、 前記制御手段は、前記電話インターフェース部を通じて地図データをダウンロードする際に、前記位置情報取得装置が取得した位置情報により示される現在地を中心とした所定範囲の地図データをダウンロードして、揮発性メモリより成る記憶装置に記憶し、 前記表示器には、前記記憶装置から読み出された前記ダウンロードした地図の中心であって、前記所定範囲の中心となる位置に、自己位置を示すポインタが表示されることを特徴とする携帯型地図表示装置。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「制御手段」について、地図データを「揮発性メモリより成る記憶装置に記憶」との限定を付加し、同じく表示器が表示する「地図」について「記憶装置から読み出された」との限定を付加するとともに「ポインタ」について「前記所定範囲の中心となる位置」に表示されるとの限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用文献 (2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-62200号公報(以下「引用文献1」という。)には、「ナビゲーション装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「【0005】本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、装置のサイズを極力小さなものとして、搭載する移動体を自動車等に限らず、例えば歩行者や自転車、オートバイ等でも使用可能として、必要な地図情報を使用者に与えることができるナビゲーション装置及びこの装置を用いたナビゲーションシステムを提供することにある。」 ・「【0006】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、現在の位置に関する情報を取得する位置取得手段、この位置取得手段で得た位置情報を送信する第1の送信手段、この第1の送信手段で送信した位置情報に対応して送信される地理情報を受信する第1の受信手段、及びこの第1の受信手段で得た地理情報を出力する出力手段を有する端末装置と、地理情報を記憶した地理データベース、上記端末装置から送られてくる位置情報を受信する第2の受信手段、この第2の受信手段で得た位置情報により上記地理データベースを検索して対応する地理情報を読出す検索手段、及びこの検索手段で読出した地理情報を送信する第2の送信手段を有するセンタ装置とを備えたことを特徴とする。」 ・「【0007】このようなシステム構成とすれば、端末装置側では装置内に地理情報を記録している記録媒体及びその記録媒体から地理情報を読出すための駆動部を必要としないため、例えば歩行者が携帯可能な程度まで装置を大幅に小型化することが可能であり、且つ上記駆動部による電力消費がないので長時間に渡って連続して使用することができる一方、センタ装置側では端末装置のある周辺に関する常に最新の詳細な地理情報を、この地理情報に付随する例えば渋滞情報等の即時性に優れた情報を付加して与えることができる。」 ・「【0030】 【発明の実施の形態】 (第1の実施の形態)以下本発明をGPSによる測位及びデジタル携帯電話網による無線通信を利用したナビゲーションシステムに適用した場合の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。」 ・「【0031】図1はその回路構成を示すもので、11が端末装置である。この端末装置11は、GPSアンテナ12、GPSレシーバ13、無線アンテナ14、無線通信部15、制御部16、及び表示部17で構成される。」 ・「【0032】上記GPSアンテナ12……で受信された電波中のC/AコードデータをGPSレシーバ13が復調、解読して現在位置の緯度、経度、高度、時刻等を割出し、制御部16に出力する。制御部16は、こうして得られた現在の位置情報と時刻情報を無線通信部15に送り、デジタル携帯電話網を用いた所定のデータフォーマットに則って変換させた後に変調させ、無線アンテナ14より送信させる。」 ・「【0033】そして、この送信に対応して後述するセンタ装置21側から返送されてくる地図情報を無線アンテナ14で受信し、無線通信部15で復調した後、制御部16がこの地図情報に施されている圧縮処理を解除してから地図展開して表示データを得るもので、得た表示データを例えばバックライト付のカラー液晶表示パネルで構成される表示部17により表示出力させる。」 ・「【0039】こうして得た位置情報に基づき、情報処理部26は図示しない地図データベースを検索して端末装置11の位置周辺の地図情報を読出し、圧縮処理を施した後に所定のデータフォーマットで上記固定網25、無線網制御部24を介して基地局23から送信させるものである。」 ・「【0046】次いで、この誤差訂正した位置情報を基に情報処理部26では、図示しない地図データベースを検索して端末装置11の位置周辺の地図情報を読出す(ステップB7)。」 ・「【0047】そして、読出した地図情報を一旦展開し(ステップB8)、端末装置11の誤差訂正した位置情報を表わす数値列と地図上での端末装置11の位置を表わすシンボル等を合成した上で(ステップB9)、所定の圧縮処理を施し(ステップB10)、これを所定のデータフォーマットで上記固定網25、無線網制御部24を介して基地局23から送信する(ステップB11)。」 ・「【0049】端末装置11では、センタ装置21から返送されてくる地図情報を無線アンテナ14で受信し、無線通信部15で復調した後(ステップA3)、制御部16がこの地図情報に施されている圧縮処理を解除してから地図展開して自己の位置情報を表わす数値列と地図上での自位置を表わすシンボルを含む表示データを得(ステップA4)、得た表示データを表示部17により表示出力させて(ステップA5)、以上で一連の処理を終了し、再び上記ステップA1からの処理に戻る。」 これらの記載事項によれば、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「地図を表示可能な表示部と、 自己の現在の位置情報を取得可能な位置取得手段と、 センタ装置に設けられた地図データベースからデジタル携帯電話網を通じて地図情報を受信可能に設けられた無線通信部と、 この無線通信部を通じて前記地図データベースから地図情報を受信すると共に、その地図情報を前記表示部に表示させる制御部とを備え、 前記制御部は、前記無線通信部を通じて地図情報を受信する際に、前記位置取得手段が取得した位置情報により示される端末装置の位置周辺の地図情報を受信し、 前記表示部には、前記受信した地図に、自己位置を表わすシンボルが表示される携帯可能な端末装置。」 (2-2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-206900号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「移動体において、自身の位置情報を検知し、自身の固有信号と前記検知された検知信号とを合成して、該合成された信号を固定局に送信し、固定局において、前記移動体の位置を含む領域の地図を地図データベースより取り出して、地図情報を移動体に送信し、移動体において、前記固定局からの地図情報と前記検知信号とを合成して画像出力するようにしたことを特徴とする移動体ナビゲーションシステム。」(特許請求の範囲) ・「地図データベース23には、地図情報等が記録されている。受信された位置情報により、この位置を含む任意の大きさの地図情報が地図データベース23から画像処理器24により引出される(第3図(f))。地図情報は、移動体の位置が地図の中央付近になるように地図データベース23から地図情報が引き出される。」(第3頁左下欄20行?右下欄6行) (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「表示部」は前者の「表示器」に相当し、以下同様に「現在の位置情報」は「現在地の位置情報」に、「位置取得手段」は「位置情報取得装置」に、「センタ装置」は「外部」に、「地図データベース」は「データベース」に、「デジタル携帯電話網」は「電話回線」に、「地図情報」は「地図データ」に、「受信」は「ダウンロード」に、「無線通信部」は「電話インターフェース部」に、「制御部」は「制御手段」に、「表す」は「示す」に、「シンボル」は「ポインタ」に、「携帯可能な端末装置」は「携帯型地図表示装置」に、それぞれ相当する。 また後者の「端末装置の位置周辺」と前者の「現在地を中心とした所定範囲」とは「現在地に関係する所定の範囲」との概念で共通する。 したがって両者は、 [一致点] 「地図を表示可能な表示器と、 自己の現在地の位置情報を取得可能な位置情報取得装置と、 外部に設けられたデータベースから電話回線を通じて地図データをダウンロード可能に設けられた電話インターフェース部と、 この電話インターフェース部を通じて前記データベースから地図データをダウンロードすると共に、その地図データを前記表示器に表示させる制御手段とを備え、 前記制御手段は、前記電話インターフェース部を通じて地図データをダウンロードする際に、前記位置情報取得装置が取得した位置情報により示される現在地に関係する所定の範囲の地図データをダウンロードし、 前記表示器には、前記ダウンロードした地図に、自己位置を示すポインタが表示される携帯型地図表示装置。」である点で一致し、 [相違点] (イ)本件補正発明では、地図データを、「揮発性メモリより成る記憶装置に記憶」するのに対し、引用発明では、このような構成を有していない点、および、 (ロ)現在地に関係する所定の範囲に関して、本件補正発明では、「現在地を中心とした所定範囲」であるのに対し、引用発明では、「端末装置の位置周辺」である点、および、 (ハ)本件補正発明では、表示器が、「記憶装置から読み出された」ダウンロードした地図「の中心であって(現在地を中心とした)所定範囲の中心となる位置」にポインタを表示しているのに対し、引用発明では、ダウンロードした「端末装置の位置周辺」の地図に、ポインタを表示している点で相違している。 (4)相違点に対する判断 相違点(イ)について 引用発明においても受信した地図データを表示するためには受信したデータを記憶させているものと認められる。そして、この様な記憶手段として、揮発性メモリより成る記憶装置は周知の事項であるから、この点の相違は必要に応じて適宜設計し得る事項である。 相違点(ロ)および(ハ)について 「端末装置の位置周辺」とは、自己を取り巻く周囲のことであるから、引用発明の、端末装置の位置周辺の地図データは、おおむね自己を中心とする範囲の地図データであり、「現在地を中心とした所定の範囲」と格別に相違するものとも認められない。 また、引用文献2には、「地図情報は、移動体の位置が地図の中央付近になるように地図データベース23から地図情報が引き出される。」と記載されており、引用発明においてもポインタを地図の中央に表示されるようにすることは当業者が容易になし得たことと認められる。 また、本件補正発明の奏する効果は、引用文献1,2に記載された発明及び上記周知の事項から予測しうる程度のものと認められる。 したがって、本件補正発明は、引用文献1,2に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年11月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年11月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「地図を表示可能な表示器と、 自己の現在地の位置情報を取得可能な位置情報取得装置と、 外部に設けられたデータベースから電話回線を通じて地図データをダウンロード可能に設けられた電話インターフェース部と、 この電話インターフェース部を通じて前記データベースから地図データをダウンロードして記憶装置に記憶すると共に、その記憶地図データを前記表示器に表示させる制御手段とを備え、 前記制御手段は、前記電話インターフェース部を通じて地図データをダウンロードする際に、前記位置情報取得装置が取得した位置情報により示される現在地を中心とした所定範囲の地図データをダウンロードし、 前記表示器には、前記ダウンロードした地図の中心に、自己位置を示すポインタが表示されることを特徴とする携帯型地図表示装置。」 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記したとおりであって、前記2.で検討した本件補正発明から「制御手段」について、地図データを「揮発性メモリより成る記憶装置に記憶」する点、同じく表示器が表示する「地図」について「記憶装置から読み出された」との限定、及び、「ポインタ」について「前記所定範囲の中心となる位置」に表示されるとの点を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用文献1,2に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1,2に記載された発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1,2に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-07 |
結審通知日 | 2007-02-13 |
審決日 | 2007-02-26 |
出願番号 | 特願平11-344690 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹下 晋司、片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 田中 秀夫 |
発明の名称 | 携帯型地図表示装置 |
代理人 | 佐藤 強 |
代理人 | 佐藤 強 |