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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1156358
審判番号 不服2005-3092  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-22 
確定日 2007-04-23 
事件の表示 平成10年特許願第99473号「構造部材及び建築物」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月26日出願公開、特開平11-293806〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成10年4月10日の出願であって、平成17年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。


【2】平成17年2月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年2月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 特許請求の範囲の減縮を目的として、
「平板状の構造用材料と柔軟性と可撓性を備えた耐火被覆材との積層物を所定の形状に成形加工した構造部材であって、
前記耐火被覆材は、非加硫ゴム、リン化合物、加熱時に膨張する中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、炭酸カルシウムを含む無機充填剤を含有してなる熱膨張性の耐火性非加硫ゴム組成物であり、
該耐火性非加硫ゴム組成物は、前記非加硫ゴム100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20?200重量部の範囲内、無機充填剤が50?500重量部の範囲内、中和処理された熱膨張性黒鉛:リン化合物の重量比が9:1?1:9の範囲内を満たすことを特徴とする構造部材。」(当審注:「無機充填材」は「無機充填剤」に統一して認定した。)と補正された。
そこで、本願の補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。


[2]引用刊行物
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭55-174667号(実開昭57-96309号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、「複合建築材料」に関して、以下の事項が記載されている。
(a)「独立気泡構造を有する可撓性シート状発泡体からなる中間層2の一面に、(イ)二水石膏もしくはこれを主成分とする結晶水を含む非水硬性無機質粉体、(ロ)無機質繊維状物、(ハ)熱可塑性樹脂を基体とする有機質バインダー成分および(ニ)(A)水溶性熱硬化性樹脂、(B)アルカリ金属硅酸塩、(C)燐酸化合物および(D)硼酸化合物の中から選ばれた1種もしくは2種以上の耐火性バインダー成分から構成された連続気泡構造を有する可撓性シート状物からなる表面層1を積層し、さらに該中間層2の他の面に金属板3を積層せしめてなる複合建築材料。」(実用新案登録請求の範囲)
(b)「・・・屋根材もしくは壁材等として使用されるに適した優れた断熱性、防結露性、防音性、耐久性、防火性および耐火性等を兼備した有用な複合建築材料に関する。」(明細書2頁9?12行)
(c)「本考案の表面層を形成する連続気泡構造を有する可撓性シート状物に使用される結合水を含む非水硬性無機質粉体としては、例えば・・・水酸化アルミニウム、・・・水酸化マグネシウム、・・・等を挙げることができ、これらを用いることは防火性および耐火性と共に可撓性のシート状物を得る点で有効である。さらにこれらの無機質粉体の一部を炭酸カルシウム等・・・と代替することも可能である。・・・一方他の必須成分である無機質繊維状物質は該複合建築材料が加熱された時点における該可撓性シート状物の形態保持性を向上させる上で有効であり、・・・ガラス繊維等を挙げることができる・・・」(明細書8頁3?20行)
(d)「本考案に使用される金属板としては・・・亜鉛鉄板等の鉄板およびステンレス鋼板が好ましく、場合によつてはアルミニウム板および銅板も使用でき、その厚さは防火および耐火性能上からは0.6mm以上が好ましく、複合板状物にした場合の折板加工性の点からは2.0mm以下の厚さが好ましい。」(明細書13頁2?8行)
(e)「・・・このようにして複合一体化せしめられた板状の複合建築材料は・・・成形加工され、続いて隣接接合および固定されることによつて屋根もしくは壁構造物とされることができる。」(明細書14頁5?11行)
(f)上記(a),(c)の記載事項から、可撓性シート状物は、耐火性樹脂組成物であることは明らかである。
これら(a)?(f)の記載事項等および第1?3図の記載を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「0.6mm以上2.0mm以下の厚さの金属板と防火性、耐火性とを備え連続気泡構造を有する可撓性シート状物とを積層した複合建築材料を所定の形状に成形加工した屋根材もしくは壁材等であって、
前記可撓性シート状物は、炭酸カルシウムを含む非水硬性無機粉体、ガラス繊維等の無機質繊維状物質、熱可塑性樹脂を基体とする有機質バインダー成分および燐酸化合物等を含有してなる耐火性樹脂組成物である、屋根材もしくは壁材等。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

2.同じく、特開平10-8595号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「防火付与組成物」に関して、以下の事項が記載されている。
(a)「【発明の属する技術分野】本発明は防火付与組成物に関し、更に詳しくは不燃性外装材、石膏ボード等に塗装したりまたはシート状で貼り付けることにより、火災にさらされた際に強固な発泡炭化複合膜を形成して、その防火及び耐火性能を向上させる効果がある防火付与組成物に関する。・・・」(段落【0001】)
(b)「本発明で用いられる成分(A)は、防火付与組成物に用いられる顔料成分(B)?(D)を混合可能な有機樹脂である。本発明でいう顔料を混合可能な有機樹脂とは以下のものが含まれる。
(1)(当審注:当該文献では丸で囲まれた数字である。以下同様。)各種溶剤によって溶解されている一般塗料用樹脂、例えばアルキッド樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等であるが、これに限定されるものではない。
・・・
(4)常温で液体または半固体の各種ゴム系樹脂、たとえばプロピレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンープロピレンージエン三元共重合体(EPDM)などであるが、これに限定されるものではない。」(段落【0010】?【0014】)
(c)「本発明で用いられる成分(B)は、熱膨張性黒鉛である。・・・
熱膨張性黒鉛の使用量は、通常は、成分(A)である樹脂に対して10?90重量%であり、好ましくは20?60重量%の範囲である。」(段落【0016】?【0017】)
(d)「成分(D)であるポリリン酸アンモニウムのマイクロカプセルの配合量は、通常は、成分(A)である樹脂に対して10?90重量%で、好ましくは20?70重量%の範囲である。」(段落【0025】)
(e)「本発明の防火付与組成物に補助成分(任意成分)として、特に限定されないが、例えば、シリカ、タルク、硫酸バリウム等の体質顔料;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、・・・モンモリロナイト、・・・等の、加熱により水蒸気を発生する無機充填剤;・・・ガラス繊維、セピオライト、・・・等の繊維状の物質、・・・等の配合も出来る。」(段落【0027】)
(f)そして、段落【0032】?【0041】に記載された実施例1?3及び比較例1?3の何れも、有機樹脂(常温で液体または半固体の各種ゴム系樹脂の例ではないが)100重量部に対して、リン化合物と熱膨張性黒鉛との合計量が20?200重量部の範囲内、熱膨張性黒鉛:リン化合物の重量比が9:1?1:9の範囲内を満たしている。


[3]対比
補正発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、
引用文献1記載の発明の「可撓性シート状物」,「複合建築材料」,「炭酸カルシウムを含む非水硬性無機粉体、ガラス繊維等の無機質繊維状物質」,「燐酸化合物」が補正発明の「柔軟性と可撓性を備えた耐火被覆材」,「積層物」,「炭酸カルシウムを含む無機充填剤」,「リン化合物」にそれぞれ相当し、
また、引用文献1記載の発明の「0.6mm以上2.0mm以下の厚さの金属板」,「熱可塑性樹脂を基体とする有機質バインダー成分」,「屋根材もしくは壁材等」と補正発明の「平板状の構造用材料」,「非加硫ゴム」,「構造部材」とが「平板状の建築用材料」,「有機樹脂」,「建築用部材」である点でそれぞれ技術的に共通し、
さらに、補正発明の「耐火性非加硫ゴム組成物」が引用文献1記載の発明の「耐火性樹脂組成物」に概念上含まれるものであるから、両者は、
「平板状の建築用材料と柔軟性と可撓性を備えた耐火被覆材との積層物を所定の形状に成形加工した建築用部材であって、
前記耐火被覆材は、有機樹脂、リン化合物、及び、炭酸カルシウムを含む無機充填剤を含有してなる耐火性樹脂組成物である建築用部材。」の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点1>
平板状の建築用材料及び建築用部材について、補正発明では、平板状の建築用材料が構造用材料であり、建築用部材が当該構造用材料と耐火被覆材との積層物を成形加工した構造部材であるのに対して、引用文献1記載の発明では、平板状の建築用材料が0.6mm以上2.0mm以下の厚さの金属板であり、建築用部材が当該金属板と可撓性シート状物とを積層した複合建築材料を成形加工した屋根材もしくは壁材等である点。
<相違点2>
有機樹脂及び耐火性樹脂組成物について、補正発明では、有機樹脂が非加硫ゴムであり、耐火性樹脂組成物が非加硫ゴム、リン化合物、加熱時に膨張する中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、炭酸カルシウムを含む無機充填剤を含有してなり、非加硫ゴム100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20?200重量部の範囲内、無機充填剤が50?500重量部の範囲内、中和処理された熱膨張性黒鉛:リン化合物の重量比が9:1?1:9の範囲内を満たす熱膨張性の耐火性非加硫ゴム組成物であるのに対して、引用文献1記載の発明では、そのようなものではない点。


[4]判断
上記各相違点につき、以下検討する。
<相違点1について>
相違点1について検討するに際し、本件出願当初の明細書の記載をみると、段落【0036】に「・・・構造部材は、建築物の主要構造部に用いることができる。例えば、柱、梁、床小梁、屋根の小屋組、外壁支持部材、床面下地材、外壁パネル面材、屋根面下地材、天井野縁、バルコニー支持梁、ブレース等に用いることができる。」との記載があり、また、段落【0037】に「本発明に用いる構造用材料の厚さは、所定の形状に形成したとき構造強度を有し、所定の形状に形成できる厚みであり、0.3?6.0mmが好適である。・・・」との記載があり、これによれば、建築物の主要構造部が、柱,梁等の構造部以外に、外壁パネル面材,各種下地材等の仕上部をも含む概念のものであり、そして、このような建築物の主要構造部に用いることができる構造部材が、「0.3?6.0mm」の厚さの構造用材料と耐火被覆材との積層物を所定の形状に形成してなるものであるということが把握できるものであるところ、
引用文献1記載の発明の「0.6mm以上2.0mm以下の厚さの金属板」が「防火および耐火性能上からは0.6mm以上が好ましく、複合板状物にした場合の折板加工性の点からは2.0mm以下の厚さが好ましい」ものである「亜鉛鉄板等の鉄板およびステンレス鋼板」等であり、このような金属板と可撓性シート状物とを積層した複合建築材料を成形加工して「屋根材もしくは壁材等」を形成する(上記[2]1.(d)の記載を参照。)ものであるから、
本補正発明に用いる構造用材料としては、引用文献1記載の発明の「0.6mm以上2.0mm以下の厚さの金属板」を包含するものであり、また、構造部材としても、引用文献1記載の発明の「0.6mm以上2.0mm以下の厚さの金属板」を成形加工してなる「屋根材もしくは壁材等」を包含するものであるといえるから、上記相違点1の点において、補正発明と引用文献1記載の発明との間に実質上の差異があるとは認められない。
尚、仮に、上記相違点1、つまり、構造材であるか仕上材であるかの点において、補正発明と引用文献1記載の発明との間に実質上の差異があるとしても、構造材として使用できる構造強度を有するものであれば、たとえ、仕上材として主に使用する部材であっても、これを構造材として使用するようなことは、当業者が必要に応じて適宜なす程度の設計事項にすぎないものである。
<相違点2について>
相違点2について検討するために、引用文献2をみると、引用文献2には、有機樹脂が非加硫ゴムで、非加硫ゴム、リン化合物、加熱時に膨張する熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなる熱膨張性の防火付与非加硫ゴム組成物が記載されており、当該防火付与非加硫ゴム組成物は、有機樹脂100重量部に対して、リン化合物と熱膨張性黒鉛との合計量が20?200重量部の範囲内、熱膨張性黒鉛:リン化合物の重量比が9:1?1:9の範囲内を満たしており、
また、中和処理された熱膨張性黒鉛を用いること、有機樹脂100重量部に対して、無機充填剤は50?500重量部の範囲内を満たすことは、何れも周知技術(例えば、査定時に提示した特開平8-259794号公報,特開平8-217910号公報等を参照。)にすぎないし、
さらに、炭酸カルシウムを含む無機充填剤を用いることは、引用文献1にも記載されているが、当該技術も、周知技術(例えば、特開平8-93077号公報,上記特開平8-259794号公報等を参照。)にすぎないから、
上記相違点2の点は、引用文献2及び周知技術から当業者が容易に想到しえたものである。

そして、補正発明全体の効果も、引用文献1,2記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができないから、補正発明は、引用文献1,2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。


【3】本願発明について
平成17年2月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成16年10月6日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】平板状の構造用材料と柔軟性と可撓性を備えた耐火被覆材との積層物を所定の形状に成形加工した構造部材であって、
前記耐火被覆材は、非加硫ゴム、リン化合物、加熱時に膨張する中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなる熱膨張性の耐火性非加硫ゴム組成物であり、
該耐火性非加硫ゴム組成物は、前記非加硫ゴム100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20?200重量部の範囲内、無機充填剤が50?500重量部の範囲内、中和処理された熱膨張性黒鉛:リン化合物の重量比が9:1?1:9の範囲内を満たすことを特徴とする構造部材。
【請求項2】?【請求項5】(記載を省略する。)」(当審注:「無機充填材」は「無機充填剤」に統一して認定した。)(請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)


[1]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物とそれの記載事項は、上記【2】[2]に記載したとおりである。


[2]対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明の「無機充填材」についての「炭酸カルシウムを含む」との限定事項を省いたものであって、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、上記【2】[4]で述べたとおり、引用文献1,2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1,2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


[3]むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1,2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2007-02-20 
結審通知日 2007-02-21 
審決日 2007-03-07 
出願番号 特願平10-99473
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04B)
P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
発明の名称 構造部材及び建築物  

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