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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1156423
審判番号 不服2005-20728  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-27 
確定日 2007-04-26 
事件の表示 平成11年特許願第207111号「地上に立設される長尺の鋼管製ポールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月 6日出願公開、特開2001- 30032〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成11年7月22日の出願であって、平成17年9月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月27日に審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、同年7月14日付けおよび同年11月28日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「電縫鋼管をスピニング加工することにより管状基部と先細テーパ管部が一体として形成され、前記管状基部の地上高さが0から前記鋼管製ポールの地上高さの1/5以下の範囲であり、前記先細テーパ管部の肉厚が前記管状基部の肉厚以下である地上に立設される鋼管製ポールの製造方法であって、1本の電縫鋼管を、前記管状基部の部分は鋼管母材の肉厚を残して前記先細テーパ管部の部分を先端に行くに従ってスピニング加工中に鋼管に作用させる張力を次第に上げて、前記先細テーパ管部の肉厚を前記管状基部の肉厚よりも次第に薄くするようにスピニング加工することを特徴とする地上に立設される長尺の鋼管製ポールの製造方法。」(以下「本願発明」という。)

2.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、日刊鉄鋼新聞、株式会社鉄鋼新聞社、平成10年(1998年)2月23日発行、第14126号(以下、「引用文献1」という。)には、「テーパー鋼管市場に進出、新日本製鉄、新製法で価格品質に競争力」という見出しの下に以下の事項が記載されている。
(イ)「新日本製鉄は新しくテーパー鋼管を開発し、3月から照明用テーパーポールの市場に進出するとともに、建築構造用や景観材など様々な分野で各種テーパー鋼管の需要開拓を本格化すると20日発表した。従来の他社テーパー管は台形に切断した鋼板を曲げ加工して外面溶接する方法で製作されているが、新日鉄は電縫管をロール成形する新製法を開発し、形状の自由度、強度、真円性に特徴を持たせた。コストパフォーマンスを”売り物”にしていく。」(「テーパー鋼管市場に進出」としている縦書の見出しの左下)
(ロ)「道路などの照明用ポールは・・・この市場に対して新日鉄は、コスト競争力と品質に優れた「温間スピニング加工法」による新製品(商品名「ニッテツポール」)で市場参入する。・・・
このテーパー鋼管は名古屋製鉄所の電縫管工場で製造される。新製法は、鋼管(電縫管)を加熱し、高速で回転させながらNC制御したロールで圧下、形成するという方法で次の三点が特徴である。
(マル1)他社製品はテーパー形状が限られていたが、新製品は温間スピニング加工することにより、テーパー率を自在に設定でき、形状の自由度が高い。曲線状の加工も可能でデザイン性の高いニーズに対応できる。(当審注:「(マル1)」の部分は円の中の数字。以下同。)
・・・
(マル3)・・・
新テーパー鋼管の製品仕様は「元径二四四・五ミリ以下、先端径六〇ミリ以上、板厚三・二?六・〇ミリ、材料はJIS構造用鋼管・耐候性鋼など(強度四百N/平方ミリ以上)、加工長さ最大一三・五メートル、テーパー率百分の一?百分の十五(当審注:製品仕様において「ミリ」、「メートル」の部分は小さな活字)。」(上下方向4段にわたる記事本文)
これら(イ)、(ロ)の事項を総合すると、引用文献1には次の発明が記載されていると認めることができる。
「電縫管を温間スピニング加工することにより、元径と先端径とが連接するように縮径された先細テーパー鋼管を形成する、道路などの照明用ポールに用いられるテーパー鋼管の製造方法。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

同、特公昭36-8569号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「金属管抽伸方法」に関して、特に第2図(イ)とともに、下記の事項が記載されている。
(イ)「軸方向に外径の変化する金属管は例えば街燈柱又は建築物、構築物等に使用せられる鋼管等としてその外観的な美的感覚或は構成的な強度的見地の何れよりしても鋼材等の無駄を省きその利用範囲の広いものであることは明らかである。・・・」(公報1頁左欄11?15行)
(ロ)「・・・第2図のイに示すような内径が一端部12よりも他端部13で大であり、肉厚は一端部14において厚く、他端部15に至るに従い次第に薄く形成され、従つて外面16、内面17共テーパー面であるテーパーパイプ11が得られる。・・・」(公報2頁左欄25?29行)

同、特開昭61-67524号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「中空円筒管材のスピニング加工方法」に関して、下記の事項が記載されている。
(イ)「2.特許請求の範囲
(1)中空円筒管材を回転させながら該管材周面に接離自在で管材長手方向に進退自在とした成形ロールで管材を所定の形状に成形する方法において、該円筒管材を軸心方向に圧縮力および/または引張力を加えることを特徴とする中空円筒管材のスピニング加工方法。」(公報1頁左欄4?10行)
(ロ)「この発明は、中空円筒管材のスピニング加工方法、特に・・・照明灯用支柱のような一端と他端の径が異なるいわゆるテーパー管の製造に適する方法に関する。」(公報1頁左下欄18行?同右下欄1行)
(ハ)「・・・成形ロールを右方へ移動させながら、その位置を上げて、テーパー加工する際には、第4図の矢印に示すように、素管1に引張力を加えると第10図および第11図に示すように管の肉厚が厚くならずにすむ。・・・」(公報2頁左下欄12?16行)
(ニ)「4)適当な応力制御方法と組合せることによって、製品の肉厚を任意に調節することができる。」(公報3頁右下欄15?17行)

3.対比・判断
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明の「電縫管」、「温間スピニング加工」、「元径と先端径とが連接するように縮径された先細テーパー鋼管を形成」、「道路などの照明用ポールに用いられるテーパー鋼管の製造方法」は、それぞれ、本願発明の「電縫鋼管」、「スピニング加工」、「管状基部と先細テーパ管部が一体として形成」、「地上に立設される長尺の鋼管製ポールの製造方法」に相当している。

してみると、両者は、
「電縫鋼管をスピニング加工することにより管状基部と先細テーパ管部が一体として形成される地上に立設される鋼管製ポールの製造方法。」
の点で一致し、下記の点で相違している。

相違点:本願発明では、管状基部の地上高さが0から前記鋼管製ポールの地上高さの1/5以下の範囲であり、先細テーパ管部の肉厚が前記管状基部の肉厚以下であって、1本の電縫鋼管を、前記管状基部の部分は鋼管母材の肉厚を残して前記先細テーパ管部の部分を先端に行くに従ってスピニング加工中に鋼管に作用させる張力を次第に上げて、前記先細テーパ管部の肉厚を前記管状基部の肉厚よりも次第に薄くするようにスピニング加工するのに対し、引用文献1記載の発明では、そのようになっていない点。

そこで、上記の相違点につき検討する。
引用文献2にも記載されているように、街燈柱等に用いられる鋼管に「内径が一端部12よりも他端部13で大であり、肉厚は一端部14(本願発明の「管状基部」に相当。)において厚く、他端部15(本願発明の「先細テーパ管部」に相当。)に至るに従い次第に薄く形成され、従つて外面16、内面17共テーパー面であるテーパーパイプ11(本願発明の「長尺の鋼管」に相当。)」を用いることは、従来から広く知られている事項であるとともに、鋼管製ポールにおける管状基部の地上高さをどの程度の範囲とするかは、鋼管製ポールに求められる強度や母材の肉厚や強度特性などに応じて当業者が適宜設定することができる設計的事項であるということができる。
また、引用文献3には、照明灯用支柱のような一端と他端の径が異なるいわゆるテーパー管の製造方法として、スピニング加工中に素管に引張力を加えると肉厚が薄くなり、かつ、適当な応力制御方法と組合せることによって、製品の肉厚を任意に調整することができることが記載されており、該技術を、引用文献1記載の発明の、先細テーパー鋼管を形成する手段として採用することは、当業者が容易に想到し得る事項であるということができる。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2および引用文献3に記載された事項、および周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および引用文献2、3に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-27 
結審通知日 2007-03-02 
審決日 2007-03-13 
出願番号 特願平11-207111
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 地上に立設される長尺の鋼管製ポールの製造方法  
代理人 山本 文夫  
代理人 綿貫 達雄  

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