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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1156466
審判番号 不服2004-22781  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-04 
確定日 2007-04-27 
事件の表示 特願2000-382665「変位センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月19日出願公開、特開2001-289614〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年12月15日の特許出願(優先権の主張の基礎とされた先の出願の出願日:平成12年1月31日)であって、拒絶査定が平成16年10月4日付けでされ、同月6日に発送されたところ、この拒絶査定に対する審判が同年11月4日に請求されるとともに手続補正書が同年12月2日に提出されたものである。


第2 平成16年12月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成16年12月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】 撮像素子から取得した画像から、所定の測定点抽出アルゴリズムを用いて前記画像上における変位方向の測定点座標を自動抽出し、該自動抽出された測定点座標に基づいて目的とする変位量を算出する変位センサであって、前記画像取得から変位量算出に至る過程で使用されたデータを画像モニタ用の表示データに編集する表示データ編集手段を有する変位センサ。」
を、
「【請求項1】 二次元撮像素子から取得した画像から、所定の測定点抽出アルゴリズムを用いて前記画像上における変位方向の測定点座標を自動抽出し、該自動抽出された測定点座標に基づいて目的とする変位量を算出する光切断法に基づく変位センサであって、変位測定方向における受光輝度分布を示すラインブライト波形の画像に相当するデータを画像モニタ用の表示データに編集する表示データ編集手段を有する変位センサ。」
と補正する補正事項を含んでいる。
上記補正事項は、本件補正前の「撮像素子」及び「変位センサ」という記載を、それぞれ「二次元撮像素子」及び「光切断法に基づく変位センサ」とし、「前記画像取得から変位量算出に至る過程で使用されたデータ」を「変位測定方向における受光輝度分布を示すラインブライト波形の画像に相当するデータ」とするものであって、「撮像素子」、「変位センサ」及び「データ」の構成をさらに具体的に限定したものであるから、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 引用例
(1)特開平3-186706号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の先の出願の出願前の平成3年8月14日に頒布された刊行物である特開平3-186706号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「第1実施例の3次元形状寸法計測装置は、自動車用ボディ組付け寸法計測システム例で第1図乃至第6図図示のように、3次元視覚センサはスリット光源lとテレビカメラ2から成る撮像部3と座標演算部4とから成る。該座標演算部4は高精度の3次元座標を得るための重心計算を行うスリット光中心検出回路5と、対象物6の表面性状の影響を少なくするためのスリット光反射強度検出回路7と、スリット光投射強度設定回路8及び座標ルックアップテーブル9から構成されている。そして、3次元視覚センサと寸法計測アルゴリズムを用いた自動車用ボディ組付寸法計測システムは、3次元視覚センサと該3次元視覚センサを位置決めするためのロボットとロボットコントローラおよび3次元視覚センサから得られた3次元座標について寸法処理を行う特徴点検出部10と寸法演算部11を有する。」(第4頁左下欄第18行?同頁右下欄第14行)

イ 「座標演算部4では、対象物に投射され、テレビカメラで撮像して得られた光切断線画像において、各走査線ごとに、スリット光の中心位置を、その反射信号強度の重心を求めることで精度よく検出し、得られたスリット光の中心位置と、テレビカメラ及びスリット光源の位置から三角測量の原理により、3次元座標(Y、Z)を検出する。なお、本実施例では投射されるスリット光のスリット方向とTVカメラの走査方向とは空間的に直角方向に設定されている。ここで、例えばY方向に30mmの範囲を500本の走査線のテレビカメラで撮像する場合のY方向のデータピッチは、約0.06mmとなり、Y、Zの3次元座標は、500点得られる。」(第5頁左上欄第3?16行)

ウ 「次に寸法演算部11では、検出された特徴点の3次元座標において、Y方向の引算を行うことで隙間を算出し、Z方向の引算を行うことで、段差を算出する。そして、判定部14は得られた寸法と、予め設定してある判定基準とを比較して、組付け寸法すなわち隙間・段差寸法の良否を判定する。」(第5頁左下欄第5?11行)

(2)引用発明
上記「(1)」の摘記事項アより、「スリット光源l」、「テレビカメラ2から成る撮像部3」及び「座標演算部4」とを有する「3次元視覚センサ」と「3次元視覚センサから得られた3次元座標について寸法処理を行う特徴点検出部10と寸法演算部11」を含む「3次元形状寸法計測装置」が読み取れる。
同摘記事項イより、「投射されるスリット光のスリット方向とTVカメラの走査方向とは空間的に直角方向に設定され」、「Y方向に30mmの範囲を500本の走査線のテレビカメラで撮像」し、「座標演算部4」において、「テレビカメラで撮像して得られた光切断線画像」について「各走査線ごとに、スリット光の中心位置を、その反射信号強度の重心を求めること」により検出し、「スリット光の中心位置と、テレビカメラ及びスリット光源の位置から三角測量の原理により、3次元座標(Y、Z)を検出」することが読み取れる。
同摘記事項ウより、「寸法演算部11」において、検出された3次元座標について「Y方向の引算を行うことで隙間を算出し、Z方向の引算を行うことで、段差を算出する」ことが読み取れる。
以上より、引用例には、「スリット光源l、テレビカメラ2から成る撮像部3及び座標演算部4とを有する3次元視覚センサと、3次元視覚センサから得られた3次元座標について寸法処理を行う特徴点検出部10と寸法演算部11を含む3次元形状寸法計測装置において、投射されるスリット光のスリット方向とTVカメラの走査方向とは空間的に直角方向に設定され、Y方向に30mmの範囲を500本の走査線のテレビカメラで撮像し、座標演算部4において、テレビカメラで撮像して得られた光切断線画像について各走査線ごとにスリット光の中心位置をその反射信号強度の重心を求めることにより検出し、スリット光の中心位置とテレビカメラ及びスリット光源の位置から三角測量の原理により、3次元座標(Y、Z)を検出し、寸法演算部11において、検出された3次元座標についてY方向の引算を行うことで隙間を算出し、Z方向の引算を行うことで段差を算出する3次元形状寸法計測装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3 対比・判断
(1)本願補正発明1と引用発明との対比
本願補正発明1(以下、「前者」という。)と引用発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「テレビカメラで撮像して得られた光切断画像」、「各走査線ごとにスリット光の中心位置をその反射信号強度の重心を求めることにより検出」及び「3次元形状寸法計測装置」は、それぞれ前者の「二次元撮像素子から取得した画像」、「所定の測定点抽出アルゴリズム」及び「光切断法に基づく変位センサ」に相当する。
後者の「TVカメラの走査方向」は、「投射されるスリット光のスリット方向」と「空間的に直角方向に設定」されているから、前者の「変位測定方向」に相当し、後者の「各走査線ごと」の「反射信号強度」は、前者の「変位測定方向における受光輝度分布を示すラインブライト波形」に相当する。
後者の「スリット光の中心位置とテレビカメラ及びスリット光源の位置から三角測量の原理により、3次元座標(Y、Z)を検出」は、前者の「前記画像上における変位方向の測定点座標を自動抽出」に相当し、前者と後者とは、「変位測定方向における受光輝度分布を示すラインブライト波形に基づいて変位方向の測定点座標を抽出する」点で共通する。
後者は、「検出された3次元座標についてY方向の引算を行うことで隙間を算出し、Z方向の引算を行うことで段差を算出」しているから、前者と「該自動抽出された測定点座標に基づいて目的とする変位量を算出する」点で共通する。
してみれば、前者と後者とは、「二次元撮像素子から取得した画像から、所定の測定点抽出アルゴリズムを用いて前記画像上における変位方向の測定点座標を自動抽出し、該自動抽出された測定点座標に基づいて目的とする変位量を算出する光切断法に基づく変位センサであって、変位測定方向における受光輝度分布を示すラインブライト波形に基づいて変位方向の測定点座標を抽出する変位センサ」という点で一致し、以下の相違点で相違する。

[相違点]
前者では、「ラインブライト波形の画像に相当するデータを画像モニタ用の表示データに編集する表示データ編集手段」を有しているのに対して、後者では、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
以下、上記相違点について検討する。
例えば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の先の出願の出願前の平成7年8月4日に頒布された刊行物である特開平7-200828号公報(以下、単に「刊行物」という。)には、「指定されたXライン上の画像データのグレイ・レベル分布をビデオ・モニタ16に表示させることをラインブライト表示という」と記載されている(段落【0066】及び図7参照)。 この「グレイ・レベル分布」は、本願補正発明1の「ラインブライト波形」に相当するものであり、かかる「ラインブライト表示」を行うためには、画像データのグレイ・レベル分布の画像に相当するデータをモニタ用の表示データに編集する表示データ編集手段を当然備えているものと認められる。
したがって、「ラインブライト波形の画像に相当するデータを画像モニタ用の表示データに編集する表示データ編集手段」は、上記刊行物にて周知の技術であり、かかる周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明1のごとく構成することに格別の困難性はない。
そして、本願補正発明1の奏する効果は、引用例及び上記刊行物に記載された周知の事項に基づいて当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、引用発明及び上記刊行物に記載された周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
平成16年12月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?24に係る発明は、平成15年9月11日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】 撮像素子から取得した画像から、所定の測定点抽出アルゴリズムを用いて前記画像上における変位方向の測定点座標を自動抽出し、該自動抽出された測定点座標に基づいて目的とする変位量を算出する変位センサであって、前記画像取得から変位量算出に至る過程で使用されたデータを画像モニタ用の表示データに編集する表示データ編集手段を有する変位センサ。」


第4 引用例及び引用発明
前掲の引用例(特開平3-186706号公報)には、図面とともに上記「第2」の「2」の「(1)」において摘記した事項が記載されており、同「(2)」において認定した引用発明が記載されているものと認められる。


第5 対比・判断
本願発明1は、上記「第2」において検討した本願補正発明1の発明特定事項のうち、「二次元撮像素子」及び「光切断法に基づく変位センサ」という記載を、それぞれ「撮像素子」及び「変位センサ」とし、「変位測定方向における受光輝度分布を示すラインブライト波形の画像に相当するデータ」という記載を「前記画像取得から変位量算出に至る過程で使用されたデータ」としたものであり、「撮像素子」、「変位センサ」及び「データ」の構成につき具体的な限定を省いたものであるところ、本願補正発明1が、引用発明及び上記刊行物にて周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様に、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項2?24に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-22 
結審通知日 2007-02-28 
審決日 2007-03-15 
出願番号 特願2000-382665(P2000-382665)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01B)
P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 雅人  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 濱野 隆
下中 義之
発明の名称 変位センサ  
代理人 飯塚 信市  

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