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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02H |
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管理番号 | 1156850 |
審判番号 | 不服2005-23706 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-08 |
確定日 | 2007-05-07 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第151562号「電力遮断システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月10日出願公開、特開平 9- 9489〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本件出願は、平成7年6月19日の出願であって、その請求項1ないし6に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1には次のとおり記載されている。 「地震発生信号を送信する送信手段を備えた地震計と、前記送信手段からの地震発生信号を受信する受信手段、前記受信手段からの地震発生信号により電力供給を遮断する電力遮断スイッチ及びこの電力遮断スイッチを制御するとともに通信異常を判定する制御手段を備えた電気ブレーカーとで構成する電力遮断システム。」 2.刊行物 (1) 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-22525号公報(以下「引用刊行物」という。)には、「地震波感知による機器別自動電源しゃ断装置」と題して、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア) 「本発明は自動電源しゃ断装置に係わり、特に、地震の時に計算機や制御装置の構成機器ごとに危険を的確にかつ迅速に把握した上で、危険レベル(振動の周波数成分,加速度,速度)に応じた自動判定を行い、それに応じて各機器毎に外部指令信号を出力し、各機器の電源を遮断することにより、システム全体の保護を可能とする地震波感知による機器別自動電源遮断装置に関する。」(1欄18行ないし2欄6行) (イ) 「従来、この二次的な措置として、加速度計や地震計を用いて地震時にその大きさ(振幅)だけを判断する方法が採用されている。 しかし、地震の大きさ(振幅)だけから危険を判断するのは充分でなく、各機器の固有周波数と振幅、具体的には加速度及び速度の大きさを併せて考慮判断する方法を採用することにより、更にその危険予知能力を向上せしめると判断される。」(3欄4ないし12行) (ウ) 「振動監視をしようとするシステム機器群の設置床に配置された加速度検出器1は、振動の大きさに比例した電圧値を常に出力し、処理装置4へ供給している。処理装置4では入力された検出器からの信号をアナログ入力装置6にてデイジタル化したのち、周波数解析演算及び機器振動情報データとの比較演算を行い、それら一連の処理を周期的に繰返すことにより機器に危険を与える振動(地震)が発生しているかを判断する。」(5欄12行ないし7欄1行) 上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。 「地震による振動の大きさに比例した電圧値を出力する加速度検出器と、前記加速度検出器からの信号を入力するアナログ入力装置を有し、前記アナログ入力装置にてデジタル化された信号により機器に危険を与える振動が発生しているかを判断し、発生している場合には外部指令信号を出力する処理装置とを備え、前記指令信号により機器の電源を遮断する、地震波感知による機器別自動電源しゃ断装置。」 3.対比 (1) 本願発明と引用発明とを対比すると、以下の事項が明らかである。 (ア) 引用発明の「地震による振動の大きさに比例した電圧値を出力する加速度検出器」は、その作用・機能からみて、本願発明の「地震発生信号を送信する送信手段を備えた地震計」に相当する。 (イ) 引用発明の「加速度検出器からの信号を入力するアナログ入力装置」は、その作用・機能からみて、本願発明の「送信手段からの地震発生信号を受信する受信手段」に相当するということができる。 (ウ) 引用発明の「アナログ入力装置にてデジタル化された信号により機器に危険を与える振動が発生しているかを判断し、発生している場合には外部指令信号」「により機器の電源を遮断する」部分と、本願発明の「受信手段からの地震発生信号により電力供給を遮断する電力遮断スイッチ」とは、少なくとも「受信手段からの地震発生信号により電力供給を遮断する部材」の概念で共通する。 (エ) 引用発明の「外部指令信号を出力する処理装置」は、上記(ウ)を踏まえると、外部指令信号により機器に電力を遮断する部分を制御するものであるということができるから、本願発明の「電力遮断スイッチを制御するとともに通信異常を判定する制御手段」とは、少なくとも「電力供給を遮断する部材を制御する制御手段」の概念で共通する。 (オ) 引用発明の「地震波感知による機器別自動電源しゃ断装置」は、その作用・機能からみて、本願発明の「電力遮断システム」に相当する。 すると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 (2) 一致点 「地震発生信号を送信する送信手段を備えた地震計と、前記送信手段からの地震発生信号を受信する受信手段、前記受信手段からの地震発生信号により電力供給を遮断する部材及びこの電力供給を遮断する部材を制御する制御手段を備えた電力遮断システム。」 (3) 相違点 (ア) 相違点1 電力供給を遮断する部材に関し、本願発明は「電力遮断スイッチ」で構成しているのに対し、引用発明のものは遮断する部材の構成が明確でない点。 (イ) 相違点2 制御手段に関し、本願発明は「通信異常を判定する」機能を有しているのに対し、本願発明はそのような機能を有しない点。 (ウ) 相違点3 本願発明は「受信手段」、「電力遮断スイッチ」及び「制御手段」により「電気ブレーカ」を構成しているのに対し、引用発明にはそのような構成がない点。 4.相違点についての判断 (1) 相違点1について 機器への電力供給を遮断する場合に、電力供給ラインに設けたブレーカー、すなわち電力遮断スイッチにより遮断することは、例えば原審の平成16年9月17日付けの拒絶理由通知で引用された特開平4-322120号公報等にもあるように、出願前周知の技術である。 すると、引用発明において、上記周知の技術に基づき、電力を遮断する部材として電力遮断スイッチを採用し、上記相違点1に係る本願発明の構成を想到することは、当業者に容易である。 (2) 相違点2について 一般に、測定装置や制御装置において、外部機器から信号を受信する場合に、通信異常を判定する機能を持たせることは、例えば、特開平4-240997号公報(【請求項1】)、特開平6-233356号公報(【0015】ないし【0019】)、特開平7-21486号公報(特に【請求項2】)等にもあるように、出願前周知の技術である。 すると、引用発明において、上記周知の技術に基づき、処理装置に通信異常を判定する機能を付加し、上記相違点2に係る本願発明の構成を想到することは、格別の技術的な困難性を伴うものとはいえない。 (3) 相違点3について 引用発明において、上記相違点1及び2についての判断を踏まえた上で、アナログ入力装置、処理装置及び機器への電力供給を遮断する部材を、まとめて「電気ブレーカ」と呼ぶことができるよう配置して、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば適宜なし得た程度の単なる設計的事項というべきである。 (4) そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用刊行物に記載された発明及び上記周知の技術から当業者であれば予測し得る範囲のものである。 なお、請求人は、審判請求の理由として、上記相違点2のほか、「発生震度の大きさ又は発生頻度に応じて電力の遮断を決定する構成が相違」する旨、主張している。しかしながら、この主張は請求項1に記載された発明に基づくものとはいえず、また、引用刊行物(上記2.(1)(イ))にも同様の技術が記載されてもいることから、請求人の主張は採用することができない。 よって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明については、特許法29条2項により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-28 |
結審通知日 | 2007-03-06 |
審決日 | 2007-03-19 |
出願番号 | 特願平7-151562 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小曳 満昭、西山 昇、森川 幸俊 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 田良島 潔 |
発明の名称 | 電力遮断システム |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 永野 大介 |
代理人 | 内藤 浩樹 |