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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47D
管理番号 1156919
審判番号 不服2004-16728  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-11 
確定日 2007-05-07 
事件の表示 平成 8年特許願第230099号「児童用椅子」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月28日出願公開、特開平 9-108073号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成6年6月29日に出願した特願平6-148002号の一部を特許法第44条第1項の規定により平成8年8月30日に新たな特許出願としたものであって、平成16年7月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年8月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年9月8日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成16年9月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成16年9月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1(平成15年11月10日付け手続補正書により補正された請求項1)を
「座体と、該座体の左右外側に配置されると共に上端部には背もたれが取付けられた左右の脚枠とを備えており、前記座体を左右脚枠に高さ調節可能に取付けると共に、座体の下方において左右脚枠に足載せ台を高さ調節可能に取付けることにより、身長の低い児童であっても机を正しい姿勢で使用できるようになっている椅子であって、
前記座体は、児童が乗り降りするたびに手で押して後退動させ得る状態にガイド手段を介して左右脚枠に前後移動自在に取付けられており、座体の前後位置を調節することにより、身長の低い児童であっても足載せ台に足を載せると共に背もたれに背を当てた正しい姿勢で着座できるようになっており、かつ、座体は、身長の低い児童が前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に後退動させ得るように脚枠に取付けられており、 更に、座体及び足載せ台は脚枠から前向きに突出している一方、 前記脚枠は、児童が正しい姿勢で机を使用できるように座体が机天板の下方に引き寄せられた状態において、座体を前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に後退させると児童が足載せ台に足を載せた状態で下半身を机天板の下方と机の外側とに移動させ得る側面形状になっている、
児童用椅子。」
と補正するものである。(下線箇所が本件補正により補正された箇所である。)

2 補正の目的の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項である「左右脚枠に足載せ台を取付ける」に、「高さ調節可能に」との限定を、「座体」の取付けに関し、「座体の前後位置を調節することにより、身長の低い児童であっても足載せ台に足を載せると共に背もたれに背を当てた正しい姿勢で着座できるようになっており、かつ、座体は、身長の低い児童が前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に後退動させ得るように脚枠に取付けられており、」との限定を、「座体及び足載せ台」に、「脚枠から前向きに突出している」との限定を、「脚枠は、…座体を後退させると児童が下半身を机天板の下方と机の外側とに移動させ得る側面形状になっている」に、「前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に」、「足載せ台に足を載せた状態で」との限定をそれぞれ付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下検討する。
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-90839号(実開昭63-197439号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
ア 「椅子本体の前側下方に上下調節自在に取りつけられる足載板と、椅子本体の上部に上下調節自在に取りつけられる座板支持枠と、座板支持枠に対して前後方向にスライド自在に取りつけられる座板を有する椅子において、座板支持枠に、長手方向の所定個所に複数の係止孔が形成された固定側レールがとりつけられる一方、座板裏面に前記固定側レールに外嵌して移動側レールを取りつけて、座板を座板支持枠に前後動自在に保持すると共に、後部に前記係止孔に係止する係止突片が形成され、常に係止突片が前記係止孔に係止する方向に弾性が付与されたラッチ杆を、座板に回動自在に保持し、ラッチ杆先端に形成された操作部を座板前端裏面に臨ませた事を特徴とする椅子における座板のスライド装置。」(【実用新案登録請求の範囲】)
イ 「《産業上の利用分野》
本考案は、特に年少の児童が使用する学習椅子の座板スライド装置に関するものである。」(明細書2頁4行?6行)
ウ 「本考案は、離着席時の動作が非常に容易であり、しかも安全で児童の勉学時には、勉学に適した姿勢がとれる位置に座板が移動、固定され、離着席時には離着席動作がしやすい位置に座板が移動する椅子における座板スライド装置を提供する事を目的とし、」(明細書3頁9行?14行)
エ 「第1図に本考案を具備した椅子の斜視図を示し、1は、逆P形となした左右の側枠10、10が背もたれ部11、及び連結杆12・・・で連結され、背もたれ部11の下部、及び下部前方に座板2の取付部3・・・が構成された椅子本体である。そして、4は椅子本体1の前側下方に前方に突出してネジ止め等にて上下調節自在にとりつけられた足載板である。座板2は、椅子本体2の取付部3・・・と、高さ調節自在に連結された座板支持枠5に前後方向にスライド自在に支持されている。すなわち、第2?第4図に示す如く座板支持枠5の左右方向の中央部分に、前後端部が座板支持枠5の前後桟51、51…(略)…にネジ止めされ、長手方向の下面に複数個の係止孔50・・・が形成された、断面上向き略コ字形の固定側レール52が取りつけられる一方、座板2の裏面に前記固定側レール52の後半部に外嵌して、移動側レール53が取りつけられ、座板2は座板支持枠5に対し前後方向にスライド自在に保持されている。」(明細書4頁9行?5頁13行)
オ 「すなわち、本考案は上記の如く構成され、係止突片72と係止孔50が係止し、座板支持枠5に座板2が固定された状態(第2図)、すなわち、机の前方で児童が離着席しやすい位置に本考案を具備する椅子がおかれ、児童が離席した状態から、児童の勉学に適した姿勢になる様、座板を前方に移動する場合は、ラッチ杆7の操作部71を指先で上方に回動させ、係止突片72を下方に移動させて、係止孔50との係止状態を解除させる。そして、この状態を維持しながら、座板2を勉学の姿勢に最も適した位置まで前方にスライドさせる。(第3図に示す状態)そして、指先を操作部71より離して係止突片72と係止孔50を係止せしめて、座板2を座板取付枠5に固定する。」(明細書6頁13行?7頁10行)
カ 第1図には、上端部に背もたれ部11が取りつけられた左右の側枠10を備え、座板2を左右の側枠10に高さ調節自在に取りつけると共に、座板2の下方において左右の側枠10に足載板4を前向きに突出して高さ調節自在に取りつけている椅子本体1が図示されている。
また、第1図、第2図からみて、座板2が側枠10から前向きに突出していることは明らかである。

上記ア?カの記載事項及び図示内容からみて、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「座板2と、上端部に背もたれ部11が取りつけられた左右の側枠10とを備えていて、座板2を左右の側枠10に前向きに突出して高さ調節自在に取りつけると共に、座板2の下方において左右の側枠10に足載板4を前向きに突出して高さ調節自在に取りつけている椅子本体1であって、座板支持枠5に固定側レール52が取りつけられる一方、座板2の裏面に移動側レール53が取りつけられ、座板2は座板支持枠5に対し前後方向にスライド自在に保持され、児童が離着席する際、机の前方で児童が離着席しやすい位置に本考案を具備する椅子がおかれ、座板2を勉学の姿勢に最も適した位置まで前方にスライドさせることができる児童用椅子本体。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「座板2」は、その機能、構造からみて、本願補正発明の「座体」に相当し、同じく「背もたれ部11」は「背もたれ」に、「側枠10」は「脚枠」に、「足載板4」は「足載せ台」に、「椅子本体1」は「椅子」に、「固定側レール52、移動側レール53」は「ガイド手段」に各々相当する。そして、引用発明の椅子本体1(椅子)は、座板2(座体)、足載板4(足載せ台)が左右の側枠10(脚枠)に高さ調節自在に取りつけられているから、身長の低い児童であっても机を正しい姿勢で使用できるようになっている椅子であるといえる。
また、引用発明は、児童の勉学時には、勉学に適した姿勢がとれる位置に座板を移動、すなわち前方に移動し、離着席時には離着席動作がしやすい位置に座板を移動、すなわち後方に移動するものであるから(第2 3(1)ウ、オの記載事項参照)、引用発明の座板2(座体)は、児童が乗り降りするたびに手で押して後方に移動できることは明らかであって、児童が乗り降りするたびに手で押して後退動させ得る状態に固定側レール52、移動側レール53(ガイド手段)を介して左右側枠10(脚枠)に前後移動自在に取付けられているといえる。そして、引用発明は、足載せ台の設置目的からみて、座体の前後位置を調節することにより、身長の低い児童であっても足載せ台に足を載せることができるものであるといえる。
更に、引用発明において、「机の前方で児童が離着席しやすい位置に本考案を具備する椅子がおかれ、座板2を勉学の姿勢に最も適した位置まで前方にスライドさせることができる」ということは、上述したように、座板2(座体)は、身長の低い児童が正しい姿勢で着座する位置よりも更に後退動させ得るように側枠10(脚枠)に取付けられているといえるし、また、引用発明は、離着席時には離着席動作がしやすいのであるから、側枠10(脚枠)は、児童が正しい姿勢で机を使用できるように座板2(座体)が机天板の下方に引き寄せられた状態において、座板2(座体)を前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に後退させると児童が足載板4(足載せ台)に足を載せた状態で下半身を机天板の下方と机の外側とに移動させ得る側面形状になっているといえる。

そうすると、両者は、本願補正発明の文言を用いて表現すると、
「座体と、上端部には背もたれが取付けられた左右の脚枠とを備えており、前記座体を左右脚枠に高さ調節可能に取付けると共に、座体の下方において左右脚枠に足載せ台を高さ調節可能に取付けることにより、身長の低い児童であっても机を正しい姿勢で使用できるようになっている椅子であって、
前記座体は、児童が乗り降りするたびに手で押して後退動させ得る状態にガイド手段を介して左右脚枠に前後移動自在に取付けられており、かつ、座体は、身長の低い児童が前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に後退動させ得るように脚枠に取付けられており、座体の前後位置を調節することにより、身長の低い児童であっても足載せ台に足を載せるようになっており、
更に、座体及び足載せ台は脚枠から前向きに突出している一方、
前記脚枠は、児童が正しい姿勢で机を使用できるように座体が机天板の下方に引き寄せられた状態において、座体を前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に後退させると児童が足載せ台に足を載せた状態で下半身を机天板の下方と机の外側とに移動させ得る側面形状になっている、
児童用椅子。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明は、左右の脚枠が座体の左右外側に配置されているのに対して、引用発明はそのような構成になっていない点。
<相違点2>
本願補正発明は、座体の前後位置を調節することにより、身長の低い児童であっても背もたれに背を当てた正しい姿勢で着座できるようになっているのに対して、引用発明は、座板2を勉学の姿勢に最も適した位置まで前方にスライドさせることができるもののその位置で背もたれに背を当てることができるか否か明らかでない点。

(3)判断
上記相違点について以下検討する。
ア 相違点1について
児童用椅子において、左右の脚枠を座体の左右外側に配置することは周知の技術である(例えば、実願昭60-140055号(実開昭62-48264号)のマイクロフィルム参照)。
したがって、左右の脚枠を座体の左右外側に配置し、本願補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、引用発明及び上記周知の技術から当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
児童用椅子において、児童の体格の変化に応じて、座体の前後位置を調整することにより、背もたれに背を当てた正しい姿勢で着座できるようににすることは周知の技術である(例えば、実願平2-85267号(実開平4-43140号)のマイクロフィルム参照)。
したがって、本願補正発明の上記相違点2に係る構成とすることは、引用発明及び上記周知の技術から当業者が容易に想到し得たことである。

そして、上記相違点1、2によって、本願補正発明が奏する作用、効果も、引用発明及び上記周知の技術から予測される範囲のものであって、格別なものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成15年11月10日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「座体と、該座体の左右外側に配置されると共に上端部には背もたれが取付けられた左右の脚枠とを備えており、前記座体を左右脚枠に高さ変更可能に取付けると共に、座体の下方において左右脚枠に足載せ台を取付けることにより、身長の低い児童であっても机を正しい姿勢で使用できるようになっている椅子であって、
前記座体は、児童が乗り降りするたびに手で押して後退動させ得る状態にガイド手段を介して左右脚枠に前後移動自在に取付けられており、
前記脚枠は、児童が正しい姿勢で机を使用できるように座体が机天板の下方に引き寄せられた状態において、座体を後退させると児童が下半身を机天板の下方と机の外側とに移動させ得る側面形状になっている、
児童用椅子。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1」の本願補正発明から、限定事項である「高さ調節可能に」、「座体の前後位置を調節することにより、身長の低い児童であっても足載せ台に足を載せると共に背もたれに背を当てた正しい姿勢で着座できるようになっており、かつ、座体は、身長の低い児童が前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に後退動させ得るように脚枠に取付けられており、」、「脚枠から前向きに突出している」、「前記正しい姿勢で着座する位置よりも更に」、「足載せ台に足を載せた状態で」の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに、他の構成を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、引用発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-01 
結審通知日 2007-03-07 
審決日 2007-03-20 
出願番号 特願平8-230099
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦井上 哲男  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 和泉 等
稲村 正義
発明の名称 児童用椅子  
代理人 東野 正  
代理人 石井 暁夫  
代理人 西 博幸  

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