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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04B
管理番号 1157084
審判番号 不服2005-12156  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-28 
確定日 2007-05-11 
事件の表示 平成11年特許願第156666号「ユニット建物」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月12日出願公開、特開2000-345617〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成11年6月3日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年1月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び平成19年3月1日付けの手続補正書により補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「大きな強度を必要とする下階部分は外寸法が比較的大きい大断面柱を隅柱として使用した建物ユニットで構成し、大きな強度を必要としない上階部分は外寸法が比較的小さい小断面柱を隅柱として使用した建物ユニットで構成したユニット建物であって、
前記小断面柱の外側隅角部を前記大断面柱の外側隅角部と一致させたことを特徴とするユニット建物。」

2.引用例
(2-1)これに対して、本願の出願前に頒布された特開平5-239865号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
(あ)「【0003】ところで、都市部においては、建物の高層化により空間の有効利用が図られている。この有効利用は集合住宅にも適用され、ユニット建物で三階建て以上の集合住宅が建築されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような高層のユニット建物では、各建物ユニットの剛性や強度をユニット建物の高さに応じて増大する必要がある。特に、ユニット建物を集合住宅として使用する場合には、外廊下をユニット建物の全幅にわたって設ける必要があり、ユニット建物は外廊下の設置により大きな開口が側面に形成されて剛性や強度が不足するので、各建物ユニットの剛性や強度を大幅に増強する必要がある。このため、各建物ユニット、特に低い階に配置される建物ユニットは、ユニット建物の高さに応じてその柱や梁等を太くする必要がある。……」

ここで、建物ユニットが4本の鋼管からなる隅柱を通常有することは、技術的常識(例えば、特開平4-343942号公報の段落【0024】等参照。)であって、引用例1に記載されているに等しい事項であり、「特に低い階に配置される建物ユニットは、ユニット建物の高さに応じてその柱や梁等を太くする必要がある」とは、高い階に配置される建物ユニットの隅柱や梁等の外寸法と比較して、低い階に配置される建物ユニットの隅柱や梁等の外寸法の方が大きい断面とすることを意味するから、引用例1には、
「大きな強度を必要とする下階部分は外寸法が比較的大きい大断面柱を隅柱として使用した建物ユニットで構成し、大きな強度を必要としない上階部分は外寸法が比較的小さい小断面柱を隅柱として使用した建物ユニットで構成したユニット建物」
という発明が記載されていると認める。

(2-2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平9-296513号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(い)「【0011】
【発明の実施の形態】この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。この実施形態に係る異径鋼管柱の柱・柱接合金物1は、図1のように鋳鋼製で角筒状の下側金物3と、下端が前記下側金物3に突き合わせ溶接された鋼管製で角筒状の上側金物2とからなる。下側金物3は、直管部3aの上方に管径が上端側に次第に窄まる絞り部3bを有するものであり、絞り部3bの上面の周囲に嵌合用突壁3cが形成されている。この絞り部3bは、図1(A)で示すように上端の一つの角部が直管部3aの角部と一致するように窄まる2方絞りの形状であり、その周壁は直管部3aの周壁より若干厚肉としてある。……………前記柱・柱接合金物1は、図5に示す建物の外周において、その角部に位置する異径鋼管柱の接合に使用され、建物内部側が窄まるように配置される。これにより、異径鋼管柱の管径に変化にかかわらずに、建物の外壁面を同一平面に仕上げることが容易となる。」
(う)「【0013】図2は、図1の柱・柱接合金物1を用いた柱・柱接合構造を示す。この柱・柱接合構造は、下側金物3と同径の角形の下側鋼管柱8と、前記柱・柱接合金物1の上側金物2と同径の角形の上側鋼管柱7とを、前記柱・柱接合金物1を介してボルト接合したものである。……………」
(え)図2及び図5から、柱・柱接合金物1の上側に接合する隅柱の角形の上側鋼管柱7は、管径が小さい断面の柱であり、柱・柱接合金物1の下側に接合する隅柱の角形の下側鋼管柱8は、管径が大きい断面の柱であり、それらの外側の角部が一致していることが看取できる。

3.対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、両者は、
「大きな強度を必要とする下階部分は外寸法が比較的大きい大断面柱を隅柱として使用した建物ユニットで構成し、大きな強度を必要としない上階部分は外寸法が比較的小さい小断面柱を隅柱として使用した建物ユニットで構成したユニット建物」
点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明が、小断面柱の外側隅角部を大断面柱の外側隅角部と一致させたものであるのに対し、引用例1記載の発明が、そのような記載がない点。
[相違点の検討]
上記「(2-2)」の記載及び図2、5からみて、引用例2記載の建物は、隅柱の角形の上側鋼管柱7が、管径(本願発明の「外寸法」に対応する。)の比較的小さい小断面柱であり、隅柱の角形の下側鋼管柱8は、管径(本願発明の「外寸法」に対応する。)の比較的大きい大断面柱であり、それらの外側の角部(本願発明の「隅角部」に対応する。)が一致しているものである。
そうすると、引用例2には隅柱に関して、
「小断面柱の外側隅角部を大断面柱の外側隅角部と一致させた」
点が記載されているといえる。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用例2記載の上記の点を引用例1記載の発明に適用して当業者が容易に想到しえたものというべきである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1記載の発明及び引用例2の記載事項から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-15 
結審通知日 2007-03-22 
審決日 2007-03-27 
出願番号 特願平11-156666
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 青山 敏
柴田 和雄
発明の名称 ユニット建物  

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