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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800062 審決 特許
無効200680053 審決 特許
無効2008800101 審決 特許
無効200680265 審決 特許
無効200680021 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 産業上利用性  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1157714
審判番号 無効2006-80178  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-09-05 
確定日 2007-05-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3742818号発明「シート状パック材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許3742818号に係る発明についての出願は,平成12年3月3日に特願2000-58128号として出願され,平成17年11月25日に特許権の設定の登録がなされた。
これに対して,請求人より,平成18年9月5日に本件無効審判の請求がなされ,指定期間内である平成18年11月27日付けで被請求人より訂正請求がなされ,平成19年1月9日付けで請求人より弁駁書が提出されたものである。

II.訂正請求について
1.訂正の内容
特許請求の範囲の記載,
「【請求項1】高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合された,自己保形性のあるゲル基材層,その表面側に剥離用皮膜フィルム,裏面側に剥離紙を有し,且つ,ゲル基材層のための支持体を必要としないことを特徴とするシート状パック材であって,使用時に該剥離紙を剥がし,上記ゲル基材層を一定時間皮膚面に貼付した後,皮膜フィルムを取り除き皮膚面から上記ゲル基材を剥がし,引き続き上記ゲル基材の皮膜面側を皮膚面に貼付することを特徴とするゲル基材層の両面が逐次的に皮膚面に貼付可能なシート状パック材。」

「【請求項1】金属イオンによる架橋性の高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合された,自己保形性のあるゲル基材層,その表面側に剥離用皮膜フィルム,裏面側に剥離紙を有し,且つ,ゲル基材層のための支持体を必要としないことを特徴とするシート状パック材であって,使用時に該剥離紙を剥がし,上記ゲル基材層を一定時間皮膚面に貼付した後,皮膜フィルムを取り除き皮膚面から上記ゲル基材を剥がし,引き続き上記ゲル基材の皮膜面側を皮膚面に貼付することを特徴とするゲル基材層の両面が逐次的に皮膚面に貼付可能なシート状パック材。」
と訂正する。

2.訂正の適否
上記訂正は,発明を特定する事項である「高分子粘剤」を,これに含まれる事項である「金属イオンによる架橋性の高分子粘剤」と限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして,本件特許明細書には,「...高分子粘剤を金属イオンにより架橋させてゲル化(架橋型)させてもよい。・・・」(段落【0006】)とあり,実施例1,2,3において「水酸化アルミニウム」,実施例4で「硫酸化アルミニウムカリウム」を使用することによって高分子粘剤を架橋している例が記載されているのであるから,上記訂正は,願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。
また,上記訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。

3.むすび
以上のとおりであるから,上記訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書及び同条第5項の規定によって準用する特許法第126第3,4項の規定に適合するので,当該訂正を認める。

III.当事者の主張
請求人は,「特許3742818号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めた。
請求人は,以下の理由により,請求項1に係る発明についての特許は無効とすべきものである旨の主張をしている。
(無効理由A)
訂正後の本件請求項1に係る発明は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
(無効理由B)
訂正後の本件請求項1に係る発明は,特許法第29条第1項柱書きにいう「産業上利用することができる発明」に該当せず,特許法第29条第1項柱書きの規定に違反してなされたものであるから,特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

そして,証拠方法として以下の甲第1号証及び甲第2号証と参考資料1?3を提出した。
甲第1号証:特開平11-137338号公報,
甲第2号証:特開平11-246341号公報,
参考資料1 :本件特許と甲第2号証との対比表
参考資料2 :「粘着技術ハンドブック」(第451?461頁)(日刊工業新聞社・1997年3月31日発行)
参考資料3 :「丸善食品総合辞典」(第1021頁)(丸善株式会社・平成10年3月25日発行)

一方,被請求人は,請求人の主張する無効の理由及び証拠方法によっては,本件特許を無効にすることができないと主張している。

IV.本件発明
訂正後の本件請求項1に係る発明は,訂正後の明細書の特許請求の範囲範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下,「本件発明」という。)
「金属イオンによる架橋性の高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合された,自己保形性のあるゲル基材層,その表面側に剥離用皮膜フィルム,裏面側に剥離紙を有し,且つ,ゲル基材層のための支持体を必要としないことを特徴とするシート状パック材であって,使用時に該剥離紙を剥がし,上記ゲル基材層を一定時間皮膚面に貼付した後,皮膜フィルムを取り除き皮膚面から上記ゲル基材を剥がし,引き続き上記ゲル基材の皮膜面側を皮膚面に貼付することを特徴とするゲル基材層の両面が逐次的に皮膚面に貼付可能なシート状パック材。」

V.当審の判断
1.無効理由Aについて
(1)甲号証の記載事項
甲第1号証及び甲第2号証には,以下の事項が記載されている。
甲第1号証:特開平11-137338号公報
(a)「【請求項1】略均一の厚さとされたピールオフタイプのパック剤と,該パック剤を挟むように配設され,該パック剤に対し剥離可能に貼着された一対のシート部材とを具備することを特徴とするパック。」(特許請求の範囲)
(b)「ピールオフタイプは,パック剤を顔や体に付けた後,乾燥させ剥がすタイプのパックである。このピールオフタイプのパックは,皮膚を柔軟にしっとりさせると共に,乾燥剥離時に皮膚表面の汚垢を取り去る等の長所を有している。」(段落【0003】)
(c)「【発明が解決しようとする課題】しかるに,上記した各パックでは以下のような欠点を有している。ピールオフタイプのパックでは,パック剤を指に取りパック位置に塗布するため,指先にパック剤が付着して汚れてしまう。また,パック位置に均一の厚さでパック剤を塗布することが困難であり,よって乾きにむらがでるため,全体を乾燥させるには時間がかかってしまう。(段落【0005】)
(d)「よって,ピールオフタイプのパック剤であっても,パック剤を指に取り塗布する必要がなくなり,指がパック剤で汚れることを防止できるため使用性を向上することができる。また,塗布が終了した時点で,他方のシート部材をパック剤から剥がすことにより,他方のシート部材がパック剤の乾燥に影響することを防止することができる。更に,パック剤はピールオフタイプのものを用いてるため,乾燥剥離時に皮膚表面の汚垢を取り去ることができる。(段落【0012】)
(e)「パック剤12は,顔や体に塗布した後に乾燥させ剥がすタイプのピールオフタイプのパック剤である。前記したように,このピールオフタイプのパック剤12は,皮膚を柔軟にしっとりさせると共に,乾燥剥離時に皮膚表面の汚垢を取り去る等の長所を有している。」(段落【0018】)
(f)「この第1のセパレーター14としては,例えば50μmの厚さを有したポリエチレンフィルムを用いている。」(段落【0022】)
(g)「本実施例では,この第2のセパレーター16も第1のセパレーター14と同様に,50μmの厚さを有したポリエチレンフィルムを用いている。尚,第1のセパレーター14と第2のセパレーター16は,必ずしも同一材料とする必要はなく,異なる材質により構成することも可能である。」(段落【0024】)
(h)「図10は,パック位置28にパック剤12を塗布した状態を示している。」(段落【0029】)
(i)「上記のようにパック位置28にパック剤12が塗布されると,図11に示されるように,続いて使用者はパック位置28に塗布されたパック剤12から第2のセパレーター16を剥がす処理を行なう。この第2のセパレーター16を剥がす処理を行なうことにより,図12に示されるように,パック位置28にパック剤12のみが塗布された状態となる。
この第2のセパレーター16をパック剤12から剥がす処理も,第2のセパレーター16を指に持って行なうことができるため,パック剤12が指に付着するようなことはない。よって,第2のセパレーター16をパック剤12から剥がす処理も使用性よく行なうことができる。前記したように,パック剤12はピールオフタイプであるため,図12に示すようにパック位置28にパック剤12を塗布した後,しばらくそのまま状態で放置してパック剤12を乾燥させる。この際,前記したように,本実施例ではパック剤12の厚さは略均一とされているため,乾きにむらが生じることを防止でき,よって全体を乾燥させるのに要する時間の短縮を図ることができる。」(段落【0032】,【0033】)

甲第2号証:特開平11-246341号公報
(j)「高分子粘剤と湿潤剤とを含有するパック料(3)がシート状保持基材(2)に塗布されたシート状唇用パック料(1)であって,該シート状唇用パック料(1)の略中央部分に折り曲げ可能な線状折り罫線(4)を形成することを特徴とするシート状唇用パック料」(特許請求の範囲)
(k)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら,秋から冬の空気が乾燥した状態では,唇の乾燥に伴う荒れは激しい場合が多く,・・・本発明者らは,唇の表面状態か゛悪くて悩んでいる女性について,唇の状態について分析した結果,上下の唇の奥側の口腔に近い粘膜の部分が特に水分量が少なく,かさつき,きれ,皮むけがおこり,また口紅ののりが悪いことがわかった。」(段落【0003】)
(l)「本発明は,唇の粘膜部分の荒れを改善し,口紅等の化粧料ののりを良くする効果に優れたシート状唇用パック料に関する。さらに詳しくは,高分子粘剤と湿潤剤を含有するシート状のパック料を用い,上下の唇の粘膜に近い部分までパックすることが可能であるシート状唇用パック料に関する。」(段落【0001】)
(m)「本発明で言う高分子粘剤とは,水との親和性がより強く,増粘する性質を有していれば構わず,従来,食品や化粧品で使用されてきた高分子粘剤を用いることができる。高分子粘剤の例としては,例えば,カラギーナン(カッパ,ラムダ,イオタ型等),ジェランガム,キサンタンガム,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ポリ酢酸ビニル,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,力ルポキシビニルポリマー,アルキル変性力ルポキシビニルポリマー,アルギン酸,寒天,澱粉,ポリアクリル酸,ペクチン,ゼラチン,アルブミン,ポリペプチド,ポリアクリルアミド等が挙げられるが,その中でもカラギーナン,ジェランガムが形態保持性に優れることから特に好ましい。尚,これらの内,イオン性のあるものでは,ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,バリウム等の塩が形成されていてもよく,また,それぞれの共重合体,混合物であっても構わない。」(段落【0005】)
(n)「本発明で言う湿潤剤としては,従来,化粧品,食品,医薬品で使用されてきたものが挙げられ,例えば,グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン,エチレングリコール,ジエチレングリコール,ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール,1,3-プチレングリコール,インプロピレングリコール等の多価アルコール,ソルビット,糖類等が挙げられるが,その中でもグリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリンが特に唇の状態を改善する効果に優れることから好ましい。」(段落【0007】)
(o)「本発明における,高分子粘剤と湿潤剤の配合量は,パック料の総量に対して,高分子粘剤が0.01?95重量%,湿潤剤が0.1?95重量%の範囲にあることが好ましい。」(段落【0009】)
(p)「【発明の効果】本発明のシート状唇用パック料は,唇の部分で特に荒れやすい粘膜をパックすることが可能であり,粘膜のかさつき等の荒れや口紅等ののりを改善する効果があることは明らかである。」(段落【0028】)

(2)対比判断
本件発明は,金属イオンによる架橋性の高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合した,自己保形性のあるゲル基材層を基材シ-トとし,その表面に剥離性のある皮膜フィルム,裏面に剥離紙を配置してなるシ-ト状パック材であり,ゲル基材層のための支持体を必要とせず,ゲル基材層の両面を逐次的に皮膚面へ貼付可能とするものである。そして,ゲル基材層のための支持体を必要とせず,両面を逐次的に皮膚面へ貼付可能なゲル基材層は,含水ゲル自体を基材とし,含水ゲルの水分量を調節することにより調製される(本件明細書段落【0005】)。
一方,甲第1号証には 「略均一の厚さとされたピールオフタイプのパック剤と,該パック剤を挟むように配設され,該パック剤に対し剥離可能に貼着された一対のシート部材とを具備することを特徴とするパック。」(上記記載事項(a))が記載されている。そして,この一対のシート部材は,例えば50μmの厚さを有したポリエチレンフィルムであるが必ずしも同一材料とする必要はなく,異なる材質により構成することも可能なものである(上記記載事項(f),(g))。

本件発明とこの甲第1号証に記載された発明とを対比する。
本件発明のシート状パック材を構成するゲル基材層の表面側には「剥離用皮膜フィルム」が設けられ,裏面側には「剥離紙」が設けられているが,ゲル基材層の表面側に設けられる「剥離用皮膜フィルム」と裏面側に設けられる「剥離紙」には,ともに「ポリエチレンテレフタレート」,「ポリプロピレン」,「ポリエチレン」などのフィルムが共通して用いられ得るものであり(本件明細書段落【0009】),形状,厚さにおいて区別されるものでもなく,本件発明における表面側の「剥離用皮膜フィルム」と裏面側の「剥離紙」には実質的に差異がないものと認められる。
してみると,本件発明の表面側の剥離用被覆フィルム及び裏面側の剥離紙と,甲第1号証に記載された発明の「該パック剤を挟むように配設され,該パック剤に対し剥離可能に貼着された一対のシート部材」は,ともに剥離可能なポリエチレンフィルムが用いられ得るものであり,本件発明の上記剥離用被覆フィルム及び剥離紙は,甲第1号証に記載された発明の上記一対のシート部材に相当する。また,本件発明の「ゲル基材層」は薬剤や水分を含み皮膚に貼付されるものであるから,甲第1号証に記載の発明の「パック剤」に相当する。
したがって,本件発明とこの甲第1号証に記載された発明は,パック剤の両面に剥離可能に貼着された一対のシート部材を有するパック材である点で一致し,本件発明は,パック剤が「金属イオンによる架橋性の高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合された自己保形性のあるゲル基材層であり,この基材層は,ゲル基材層のための支持体を必要としないものであり,かつ,使用時に該剥離紙を剥がし,上記ゲル基材層を一定時間皮膚面に貼付した後,皮膜フィルムを取り除き皮膚面から上記ゲル基材を剥がし,引き続き上記ゲル基材の皮膜面側を皮膚面に貼付することを特徴とするゲル基材層の両面が逐次的に皮膚面に貼付可能なもの」であるのに対し,甲第1号証に記載された発明では,略均一の厚さとされたピールオフタイプのパック剤である点で相違する。

次に,甲第2号証には,高分子粘剤と湿潤剤を含有するシート状のパック料を用い,上下の唇の粘膜に近い部分までパックすることが可能であるシート状唇用パック料に関する発明が記載されている。(上記記載事項(j),(k),(l))
そして,高分子粘剤とは,水との親和性がより強く,増粘する性質を有していれば構わず,従来,食品や化粧品で使用されてきた高分子粘剤を用いることができること,その中でもカラギーナン,ジェランガムが形態保持性に優れることから特に好ましいこと,イオン性のあるものでは,ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,バリウム等の塩が形成されていてもよいこと(上記記載事項(m)),湿潤剤としては,従来,化粧品,食品,医薬品で使用されてきたものが挙げられ,その中でもグリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリンが特に唇の状態を改善する効果に優れることから好ましいこと(上記記載事項(n)),高分子粘剤と湿潤剤の配合量は,パック料の総量に対して,高分子粘剤が0.01?95重量%,湿潤剤が0.1?95重量%の範囲にあることが好ましいことが(上記記載事項(o))記載されている。

請求人は,本件発明が,甲第1号証および甲第2号証に記載された発明と同一の目的を有するものであることを勘案すれば,上記のように,甲第1号証のパックにおける「パック剤」として,甲第2号証に記載された「パック料」と同一の組成を採用して,本件発明の「シート状パック材」とすることは,当業者が容易に想到し得たことである旨主張している。

以下,この主張について検討する。甲第1号証に記載された発明は,剥離可能に貼着された一対のシート部材を具備するピールオフタイプのパックの発明であり(上記記載事項(a)),ピールオフタイプとは,パック剤を顔や体に付けた後,乾燥させ剥がすタイプのパックである(上記記載事項(b))。そして,甲第1号証に記載された発明は,剥離可能に貼着された一対のシート部材を具備することにより,パック剤を指に取り塗布する必要がなくなり,また,パック剤の顔や体への貼付時にも,指がパック剤で汚れることを防止できるとの効果を奏するものである(上記記載事項(b)?(e),(i))。
すなわち,ピールオフタイプのパックの発明である甲第1号証に記載の発明では,パック剤としては,顔や体に付けた後,乾燥し剥がせることが不可欠であり,パック剤を塗布した後,しばらくそのままの状態で放置して乾燥させるものであり(上記記載事項(i)),パック剤を乾燥後,乾燥した片方の面を更に皮膚面に貼付する態様は想定できないのである。
一方,甲第2号証に記載された発明は,乾燥による唇の粘膜部分の荒れを改善し,口紅等の化粧料ののりを良くする効果に優れたシート状唇用パック料に関する発明である(上記記載事項(k),(l),(p))。甲第2号証のシート状パック料は唇の粘膜部分に対して乾燥による荒れを改善するものであり,パック中にパック料を乾燥させ剥すことを必要とするピールオフタイプのものでないこと,更に使用時もシートとパック料が分離しないことから(甲第2号証の図3)パック料の両面を用いるものでないことは明らかである。
そして,甲第1号証と甲第2号証に記載された発明は,顔や皮膚に対するピールオフタイプのパックと唇の粘膜部分の荒れの改善のためのパック料という対象部位,使用形態を全く異にするものであるので,当業者といえども,甲第1号証に記載されたピールオフタイプのパックのパック剤として甲第2号証に記載された粘膜部分のシート状パックに使用される高分子粘剤と湿潤剤を含有するパック剤を使用することは容易に想到し得ることではなく,まして,上記のとおり甲第1号証,甲第2号証のいずれにもパック剤の両面を使用することが開示されていないのであるから,甲第1号証のピールオフタイプのパック剤を,「ゲル基材の水分量を調節することにより調製した,支持体を必要とせずかつ『使用時に該剥離紙を剥がし,上記ゲル基材層を一定時間皮膚面に貼付した後,皮膜フィルムを取り除き皮膚面から上記ゲル基材を剥がし,引き続き上記ゲル基材の皮膜面側を皮膚面に貼付すること』によりパック剤の両面を逐次的に皮膚に貼付可能となるような程度に自己保形性を有するゲル基材」という異なる特性を持つものに置き換えることは当業者が容易になし得るものとはいえない。
したがって,本件発明が,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

なお,請求人は,弁駁書において,被請求人の「高分子粘剤」を「金属イオンによる架橋性の高分子粘剤」に限定的に減縮したことにより,本件特許発明が甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいては,容易に発明をすることができなかったものであるとの答弁は誤りであると主張している。
しかし,上記のとおり,甲第1号証に記載された発明において,パック剤として甲第2号証に記載された高分子粘剤と湿潤剤を含有するパック剤を使用すること自体容易に想到し得ることではないのであるから,「金属イオンによる架橋性」を発明を特定する事項とするか否かに拘わらず,本件発明が甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2.無効理由Bについて
請求人は,本件発明は,「ゲル基材層を一定時間皮膚面に貼付した後,…皮膚面から上記ゲル基材を剥がし,引き続き上記ゲル基材の皮膜面側を皮膚面に貼付する」ことが特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項となっているから,「皮膚」すなわち人体が発明の構成要件の一部となっており,本件発明は,特許法第29条第1項柱書きにいう「産業上利用することができる発明」に該当しないと主張している。
しかしながら,本件発明は,シート状パック材の発明であり,化粧料の一つとして有用性を持つものであり,また,特許・実用新案審査基準第II部第1章「産業上利用することができる発明」)に,2.1「産業上利用することができる発明」に該当しないものの類型として挙げられている,(1)人間を手術,治療又は診断する方法,(2)その発明が業として利用できない発明,(3)実際上,明らかに実施できない発明のいずれにも当たらないものであるから,産業上利用することができる発明であることは明らかである。
したがって,本件発明は,特許法第29条第1項柱書きにいう「産業上利用することができる発明」に該当しない旨の請求人の主張は採用できない。

VI.むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,訂正後の本件請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シート状パック材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンによる架橋性の高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合された、自己保形性のあるゲル基材層、その表面側に剥離用皮膜フィルム、裏面側に剥離紙を有し、且つ、ゲル基材層のための支持体を必要としないことを特徴とするシート状パック材であって、使用時に該剥離紙を剥がし、上記ゲル基材層を一定時間皮膚面に貼付した後、皮膜フィルムを取り除き皮膚面から上記ゲル基材を剥がし、引き続き上記ゲル基材の皮膜面側を皮膚面に貼付することを特徴とするゲル基材層の両面が逐次的に皮膚面に貼付可能なシート状パック材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲル基材層に含まれる薬剤を無駄なく活用できるシ-ト状パック材に関する。
また、本発明のシ-ト状パック材は、皮膚面に貼付するのは、ゲル基材層のみで、支持体層を必要としないシート状パック材に関する。
さらに、本発明のシ-ト状パック材では、肌あれ、シワ、くすみ、保湿、美白、ニキビなどの防止や改善の効果、皮膚冷却やクッション効果、経皮吸収能及び角質や皮脂の除去の効果を経済性に発揮することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、シート状パック材は、肌あれ、シワ、くすみ、保湿、美白、ニキビなどの改善や防止、冷却やクッション効果及び経皮吸収能の向上、角質や皮脂の除去の目的で、高分子粘剤や湿潤剤などを含む含水性ゲルに種々の薬剤を添加している。また、ゲルを構造上安定に保持させるために、天然繊維、合成繊維、再生繊維からなる不織布、編織布及び紙などの支持体にゲルを塗布している。
【0003】
シ-ト状パック材として代表的なものは、透湿性基材の内部全体に被膜形成性化粧料が含浸されてなるシ-ト状パック(特開平7-330575号公報)、水溶性高分子、多価アルコ-ル、保湿成分、架橋剤、美肌成分及び水からなるシ-ト状パック材(特開平8-188527号公報)、カラギ-ナンやジェランガムなどの高分子粘剤と湿潤剤を含有するシ-ト状パック料(特開平11-60443号公報、特開平11-246341号公報)、ポリアクリルアミド系高分子中に湿潤剤と水を含有する高分子ゲルを使用したシ-ト状唇保湿パック料(特開平11-209222号公報)、粘剤と湿潤剤と水を含有するカラ-透視性の保湿シ-ト(特開平11-209226号公報)、ポリオキシアルキレンアルキルエ-テルやテトラカイン・塩酸などの局所麻酔効果を有する化合物と粘着性樹脂及び/又は高分子を含有するパック料(特開平10-291927号公報)がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述するような従来のシ-ト状パック材では、一般に薬剤を配合した含水性ゲルを使用するが、含水性ゲルを構造上安定に保持させるために不織布、編織布及び紙などの支持体にゲルを塗布するのがほとんどである。この支持体を有する構造のものでは、使用時に離型紙をはぎ取って支持体に塗布した含水性ゲルの面を皮膚面に貼付けても、皮膚面とは逆の側に含水性ゲルの支持体が存在するので、ゲルからの水分蒸発が遅延され、冷却効果を向上させることに限界があった。さらに、一定時間経過すると、ゲルと支持体のパック材をはぎ取って破棄していた。これでは含水性ゲルの片側面(使用直前に剥がした離型紙に接していた面)しか活用できなかった。また、ゲルの片面だけしか皮膚面に貼付できないため、通常の貼付時間ではゲル中の薬剤の一部の量しか皮膚面に効果を発揮できず、含水性ゲルに含まれる大部分の薬剤はパック材とともに破棄されることとなり、大部分の薬剤が無駄になるという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の実情に鑑み、鋭意研究した結果、含水性ゲルを支持するための不織布、編織布及び紙などの支持体を使用することのないシ-ト状パック材が効率的に使用できることを見い出した。すなわち、含水ゲル自体を基材とし、含水性ゲルの水分量を調節することにより、ゲルの両面を逐次的に皮膚面に貼付可能の、冷却効果及び経皮吸収能などに優れたシート状パック材を見出した。すなわち、本発明では、高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合したシート状含水性ゲルを基材シ-トとし、その表面に剥離性のある皮膜フィルム、裏面に剥離紙を配置してなるシ-ト状パック材とすることによって、ゲルの両面が逐次的に皮膚面へ貼付が可能なシ-ト状パック材を開発した。
本発明のシ-ト状パック材は、まず最初の使用時には、裏面側の剥離紙を剥がし、高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合した含水ゲル基材を一定時間皮膚面に貼付し、一定時間経過後に皮膚面からゲルを剥がし、さらに使用の必要あるときには、表面側の剥離性の皮膜フィルムを剥がして引き続いて含水性ゲル基材を皮膚面に貼付してゲル基材の両面を逐次的に皮膚面に貼付できるようにするものである。
【0006】
本発明のゲル基材の主成分に使用する高分子粘剤は、水との新和性が良く、増粘する性質を有しているものであれば、制限はなく、例えば食品や化粧品で使用されているものを用いることができる。具体体には、ジェランダガム、カラギーナン(カッパ、ラムダ、イオタ型など)、キサンタンガム、ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリ酢酸ビニール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニールポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、アルキル変性カルボキシビニールポリマー、アルギン酸、寒天、デンプン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ペクチン、ゼラチン、アルブミン又はポリペプチドなどが使用できる。
上記高分子粘剤のなかで、イオン性のあるものでは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又はバリウムなどの塩が形成されていてもよく、また、それぞれの共重合体、混合物であっても構わない。また、上記高分子粘剤を金属イオンにより架橋させてゲル化(架橋型)させてもよい。このゲル化の場合、保形成の付与、糊残り及びはみ出し防止Nなどの特長がある。
【0007】
本発明の含水性ゲルの架橋に使用する金属イオンには、1価の陽イオンより2価の陽イオンの方が好ましく、例えば、マグネシウムカルシウムが好ましく、さらに3価の陽イオンとしてアルミニウムが最も好ましい。また、金属イオンは塩として用いることが好ましく、例えば硫酸アルミニウムカリウム、塩化アルミニウム、ジヒヂロキシアルミニウムアミノアセテート、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム又は水酸化鉄などが挙げられる。ゲル化させるための製剤的調整には、例えばゲル化速度調整剤としてエチレンジアミン4酢酸2ナトリウム、クエン酸、乳酸、リン酸、酒石酸及びこれらの塩類などの添加を行うこともよい。さらに、上記高分子粘剤と共に、ベントナイト、有機変性ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸又は表面処理無水ケイ酸などの無機系粘剤を使用することも可能であるが、無機系粘剤を単独で使用した場合には、製品の形態保持力が弱いため、あまり好ましくはない。
【0008】
本発明の保湿剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品及び食品で使用されているものが挙げられ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールやイソプロピレングリコールなどの多価アルコール又はソルビット、デンプンやプルランなどの糖類などが挙げられる。
本発明のシート状ゲル基材は、厚さが10mm以下、好ましくは2mm以下の板状の形状のものを用いる。シートの厚さは、均一でも不均一でも構わないが、シートの強度保持のため、0.5μm以上の厚さのあることが好ましい。本発明のシート状パック材の平面形状は、円形、楕円形、長方形、菱形又は勾玉形などが挙げられるが、特に形状には限定されない。また、肌により密着性を持たせるために、シートの端に切れ目を付けることが好ましい。
本発明のシート状パック材は、上記の高分子粘剤中に湿潤剤や下記の生理活性物質などが保持された構造を有しており、肌に接触させたときに、湿潤剤や生理活性物質が肌に浸透していく構造を有しているものが好ましい。
【0009】
本発明のシート状パック材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルフォン、ポリアミド又はポリイミドなどのフイルム離型紙の表面に高分子粘剤と湿潤剤を少なくとも配合された自己保形性のある含水性ゲルを展膏し、さらにその表面側に皮膜フィルムを積層した積層構造に形成されたものが、形態保持性、使いやすさ又は衛生面などから好ましい。含水性ゲル基材の他方の面を被覆する皮膜フィルムとしては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン又はこれらのフィルムの積層体あるいは発泡体であっても良い。
本発明における高分子粘剤と湿潤剤の配合量は、パック材の総量に対して高分子粘剤が0.01?95重量%、湿潤剤が0.1?95重量%の範囲内であればよい。高分子粘剤が95重量%以上になると、シートから湿潤剤が分離したり、0.01重量%以下であるとゲル状を呈しなくなり、シート状の形態を保持できなかったり、また肌を改善する効果が得られない場合がある。従って、上記ゲル基材の配合割合の中で、好適範囲としては、高分子粘剤が1?20重量%、湿潤剤が1?40重量%の範囲であり、特に好ましい範囲は高分子粘剤と湿潤剤の合計量が5?50重量%である。
【0010】
本発明では、シート状パック材が肌と接触する面が接着性を有することが、肌とのフィット感を上げる点で好ましい。接着性を有する樹脂や高分子は、例えば、ポリアクリル酸及びその塩類、ポリメタクリル酸及びその塩類、ポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミト及びその塩類、ポリメタクリルアミド及びその塩類、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-iso-ブトキシアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミドアウルホン酸及びその塩類、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メトキシエチレン無水コハク酸共重合体、塩化ジメチルアミノアンモニウム又はこれら重合性モノマー原料と他の重合性モノマーとの共重合体、あるいはカルポキシメチルセルロース塩、アルギン酸塩、カラギーナン、キサンタンガム、寒天、カチオン化ガムなどの水溶性高分子、酢酸ビニール・クロトン酸共重合体、プロピオン酸ビニール・クロトン酸共重合体、ポリ酢酸ビニール、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン樹脂、ポリスチレン、アクリル変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル又はこれら重合性モノマー原料と他の重合性モノマーとの共重合体などがある。
なお、上記の接着性の樹脂は、パック材の中に高分子粘剤と湿潤剤と共に配合してもよいし、肌に接触するパック材の表面に上記の樹脂などの薄い層を形成するようにしたものでも構わない。
【0011】
本発明のシート状パック材では、上記成分の外に、通常化粧品、医薬部外品、医薬品、などに用いられる粉体(顔料、色素、樹脂)、油剤、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、粘剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性物質(セラミド類、ヒアルロン酸及びその塩類、プロポリス、美白剤、血行促進剤、ビタミン剤、抗炎症剤、皮脂抑制剤、冷剤、酵素)、包接剤、塩類、溶剤、キレート剤、中和剤又はpH調整剤などの成分を同時に配合することができる。
【0012】
本発明で用いる粉体としては、例えば赤色104号、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号などの色素、黄色4号A1レーキ、黄色203号Baレーキなどのレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロンパウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダーなどの高分子、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーポンブラック、群青、紺青などの有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリンなどの体質顔料、雲母チタンなどのパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどの金属塩、シリカ、アルミナなどの無機粉体、アパタイト又はヒドロキシアパタイトなどがある。
なお、これらの粉体の形状は、板状、球状、紡錘状、針状、棒状又は不定形状などがあり、特に制限がない。大きさも平均一次粒子径で0.005?100μmの範囲であれば、特に問題ない。好ましくは、平均一次粒子径が0.01?20μmの範囲のものが適当である。また、金属石鹸処理、N-アシル化アミノ酸処理、シリコーン処理、フッ素化合物、多価アルコール処理、油剤処理、シラン処理又は無機酸化物処理などの表面処理を行ってあっても構わない。
【0013】
本発明の油剤には、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸又はオレイン酸などの脂肪酸、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリル酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール又はオキシステアリン酸オクチルなどのエステル類、流動パラフィン、ワセリン又はスクワランなどの炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウなどのロウ、ミンク油、カカオ油、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油又はオリーブ油などの油脂、エチレン・α-オレフィン・コオリゴマーなどがある。また、別の形態の油剤の例としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコーン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸又はシリコーンゴムなどのシリコーン化合物、パーフルオロポリエーテル、フッ素ピッチ、フルオルカーボン、フルオロアルコール又はフッ素化シリコーンレジンなどのフッ素化合物などがある。
【0014】
本発明の界面活性剤には、例えば、アニオン型、カチオン型、ノニオン型又は両性型の界面活性剤を用いることができる。
本発明のシート状パック材の使用方法は、一方の面にある剥離紙を剥がし、一定時間皮膚面に含水性ゲルが接するように貼付けけておけば効果が発揮されるが、一定時間には制限がない。本発明のシート状パック材のメリットをより発揮させるために、あるいは冷却効果や経皮吸収能などを向上させるために、剥離紙を剥がし皮膚面に貼付後、直ちに剥離皮膜フイムルを剥がして含水ゲル基材の外面を露して冷却効果を上げることもできる。また、就寝前で肌の荒れがひどい場合などでは、シート状パック材を貼付したまま1?12時間放置することで、肌の状態を改善するすることも可能である。
本発明のシート状パック材は、使用直後には肌の水分を多価アルコールが吸収して肌が逆に乾燥する場合があるが、直ぐにパック材の密閉効果により均衡し、保温効果、肌の改善効果を得ることが可能である。したがって、使用直後に密閉効果が得られない段階で剥離してしまうと本来の効果が得られにくくなるので、肌の状態にもよるが、一般に5分間は密着させておくことが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明のシ-ト状パック材で、1はゲル状パック材の層、2はポリエステル製皮膜フィルムの層、3は離型紙の層を示す。
そして、離型紙を剥がした本発明の製品は、下記の条件で目元に貼付して官能評価(肌荒れ改善効果及び肌の滑らかさ向上)を実施した。
本発明の製品の官能評価試験は以下の通りである。
シート状パック材の官能評価試験;
専門パネラー男性10名及び女性10名、計20名に試験品を1?3週間使用してもらい、試用後の結果をアンケート形式で回答してもらった(試用条件は、各実施例に記載)。アンケート結果から各評価項目に対して効果があるを10点とし、効果がないを0点として、全パネラーの平均点(少数点以下四捨五入)をもって評価結果とした。したがって、高い点数程効果が高いことを示す。
【0016】
【実施例1】
下記表1の処方でシート状パック材を作成した。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-03-13 
結審通知日 2007-03-15 
審決日 2007-03-19 
出願番号 特願2000-58128(P2000-58128)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A61K)
P 1 113・ 14- YA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子大宅 郁治  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
福井 悟
登録日 2005-11-25 
登録番号 特許第3742818号(P3742818)
発明の名称 シート状パック材  
代理人 長谷部 善太郎  
代理人 児玉 喜博  
代理人 児玉 喜博  
代理人 長谷部 善太郎  
代理人 長谷部 善太郎  
代理人 野河 信太郎  
代理人 長谷部 善太郎  
代理人 児玉 喜博  
代理人 児玉 喜博  

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