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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680092 審決 特許
無効200680032 審決 特許
無効200680280 審決 特許
無効200680173 審決 特許
無効200680043 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E03C
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E03C
審判 全部無効 特174条1項  E03C
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  E03C
管理番号 1157715
審判番号 無効2006-80077  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2007-05-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3586347号発明「集合管継手およびこの集合管継手を用いた多層階建築物の排水配管構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3586347号の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
出願(特願平9-36106号) 平成9年2月20日
設定登録(請求項1?3) 平成16年8月13日
(特許第3,586,347号)
審判請求(請求人株式会社クボタ) 平成18年4月27日
(無効2006-80077号)
答弁書、訂正請求書 平成18年7月21日
弁駁書 平成18年8月31日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成19年1月30日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成19年2月6日
口頭審理 平成19年2月6日

第2 請求人の主張する無効理由
1.進歩性欠如1
請求項1の発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものである。

2.進歩性欠如2
請求項1の発明は、甲第1号証に周知技術[甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証]を適用することにより、当業者が容易に発明できたものである。

3.新規事項加入補正
平成15年11月20日付手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲でするものではない。

4.明細書記載不備
請求項1の集合管継手は、明細書に記載された作用効果を奏し得ない実施不能の形態を含む瑕疵を有し、発明の詳細な説明に記載されたものとも言えず、また、特許請求の範囲の記載が明確性を欠くものである。

5.請求項2の進歩性欠如
請求項2の発明は、甲第1?4に記載された発明ないし周知慣用技術に基づき当業者が容易に発明できたものである。

6.請求項3の進歩性欠如
請求項3の発明は、甲第1?4に記載された発明ないし周知慣用技術に基づき当業者が容易に発明できたものである。

審判請求人は、証拠方法として以下の刊行物を提出している。
甲第1号証:特開平7-91581号公報
甲第2号証:特開昭59-121289号公報
甲第3号証:意匠登録第631367号公報の類似1
甲第4号証:実願平5-76210号(実開平7-43468号)のCD-ROM
甲第5号証:特開平10-231544号公報(本件出願の公開公報)
また、弁駁書と共に、以下の参考資料1?6を提出している。
資料1:空気調和・衛生工学第53巻第1号(昭和54年1月)抜粋
資料2:空気調和・衛生工学第59巻第9号(昭和60年9月)抜粋
資料3:空気調和・衛生工学第61巻第11号(昭和62年11月)抜粋
資料4:特開平7-18710号公報
資料5:実願平4-40026号(実開平6-24071号)のCD-ROM
資料6:特開昭63-125735号公報
また、口頭審理陳述要領書と共に、以下の参考資料7を提出している。
資料7:HASS206 給排水衛生設備規準・同解説(非公知文献)
また、平成19年2月15日付上申書と共に、以下の参考資料8を提出している。
資料8:HASS206-1991 給排水衛生設備規準・同解説

なお、甲第4号証、資料5については、提出された書面及び請求人の主張から、実願平のCD-ROMとした。

第3 被請求人の主張
1.進歩性欠如1
請求項1の発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものではない。

2.進歩性欠如2
請求項1の発明は、甲第1号証に周知技術[甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証]を適用しても、当業者が容易に発明できたものではない。

3.新規事項加入補正
平成15年11月20日付手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲内であることは明らかであり新規事項の加入ではない。

4.明細書記載不備
請求項1の集合管継手は、当業者が容易に実施できるように明細書に記載されており、また、発明の詳細な説明に記載されたものであり、発明も明確である。

5.請求項2の進歩性欠如
請求項2の発明は、甲第1?4に記載された発明ないし周知慣用技術に基づき当業者が容易に発明できたものではない。

6.請求項3の進歩性欠如
請求項3の発明は、甲第1?4に記載された発明ないし周知慣用技術に基づき当業者が容易に発明できたものではない。

被請求人は、答弁書と共に、証拠方法として以下の書面及び刊行物を提出している。
乙第1号証:平成15年9月17日付け拒絶理由通知書
乙第2号証:平成15年11月20日付け意見書
乙第3号証:意匠登録第631367号公報
乙第4号証:特開平5-157187号公報

第4 平成15年11月20日付手続補正が、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものか否かの判断
1.補正の内容
当初明細書の請求項1の
「大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に連接された少なくとも2つの横管路とを備える集合管継手。」を
「大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に排水縦管または伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路と、上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備える集合管継手。」と補正するものである。

2.新規事項か否かの判断
当初明細書の段落【0005】には、「上の階200と下の階201との間に形成される配管空間500に、エルボ301および横管302の高さ分だけ、他の配管空間600より無駄な高さが必要になり、建築物の建築コストが上がる恐れがある。
そこで、図示していないが、受口130を盲板で塞ぐとともに、伸頂通気管(あるいは排水縦管)300の下端に繋がる横管302を横管路120のうちの1つに接続する方法も考えられるが、この場合でも、受口130および盲板の厚み分だけ、やはり配管空間を余分にとる必要がある。」の記載があり、段落【0018】には、「本発明にかかる集合管継手は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の集合管継手1では、2つの横管路3a,3bが同径であったが、異径であっても構わない。また、横管路の数は、3つ以上でも構わない。」の記載がある。
これらの記載から、本件発明は、エルボの高さ分、あるいは、受口および盲板の厚み分だけ、配管空間の高さを低くすることを目的としたものであり、横管路は、異径であっても構わないのと記載から、径の小さいものについては、大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に排水縦管または伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路よりも、上に上がっていなければよいのであって、全ての横管路が大径部の上端に略一致すると解する必要はない。
結局、排水縦管または伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路以外の、横管路が、大径部の上端に略一致しない構成は、当初明細書に明示的には、記載されていなかったが、当業者が技術常識に照らして当初明細書を見れば、記載されていると理解し得る事項である。

第5 訂正の適否
1.訂正の内容
平成18年7月21日付の訂正請求書による訂正請求は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。
(1)【請求項1】について、訂正前の
「大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、
上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に排水縦管または伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路と、
上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備える集合管継手。」を、

「大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、
上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路と、
前記縦管路の大径部に上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備え、
前記配管空間の幅を縮めることができる集合管継手。」と訂正する。

(2)【請求項2】について、訂正前の
「請求項1に記載の集合管継手が、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように大径部側を上側にして配置され、
この集合管継手の小径部が下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成する排水縦管に接続されているとともに、
前記集合継手の上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に排水縦管または伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路に、前記排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下される排水縦管または伸頂通気管の下端に繋がる横管が接続され、
残りの横管路に前記配管空間に配設された上階の排水の流路となる横枝管が接続されている多層階建築物の排水配管構造。」を

「請求項1に記載の集合管継手が、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように大径部側を上側にして配置され、
この集合管継手の小径部が下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成する排水縦管に接続されているとともに、
前記集合継手の上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路に、前記排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下される伸頂通気管の下端に繋がる横管が接続され、
残りの横管路に前記配管空間に配設された上階の排水の流路となる横枝管が接続されている多層階建築物の排水配管構造。」と訂正する。

(3)特許明細書の段落【0006】の、「排水縦管または伸頂通気管」を「伸頂通気管」と訂正する。

(4)特許明細書の段落【0007】の、「【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明にかかる集合管継手は、大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に排水縦管または伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路と、上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備える構成とした。」を「【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明にかかる集合管継手は、大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路と、縦管路の大径部に上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備え、配管空間の幅を縮めることができる構成とした。」と訂正する。

(5)特許明細書の段落【0008】の2箇所の、「排水縦管または伸頂通気管」を「伸頂通気管」と訂正する。

(6)特許明細書の段落【0020】の、「排水縦管または伸頂通気管」を「伸頂通気管」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(1)の訂正は、請求項1の「排水縦管または伸頂通気管」の択一的記載を「伸頂通気管」と、その一方に限定するものであり、また、「前記縦管路の大径部に」は、横枝管が連接される位置を特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、「前記配管空間の幅を縮めることができる」も、集合管継手を機能的に限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

上記(2)の訂正は、請求項2の「排水縦管または伸頂通気管」の択一的記載を「伸頂通気管」と、その一方に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

上記(3)?(6)の訂正は、特許請求の範囲の訂正に係る上記(1)、(2)の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の欄の記載との整合をとるものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。

そして、上記(1)?(6)の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

訂正の適否について、請求人は、以下の主張をしている。
a.「前記配管空間の幅を縮めることができる」を付加する訂正は、希望される作用ないし効果を付加したに過ぎず、具体的構成を変更したり、加えたりするものではなく、構成の不明りょう性が解消されることはなく、何と比較して幅を縮めることができるのか明らかでないので、特許法第134条の2第1項第1号、同項第3号の目的要件に適合しない。

請求人の主張を検討するに、本件発明は、エルボの高さ分、あるいは、受口および盲板の厚み分だけ、配管空間の高さを低くすることを目的としたものであり、「前記配管空間の幅を縮めることができる」を付加する訂正は、その目的に即した構成を機能的に限定したもので、特許請求の範囲の減縮に該当する。比較対象も、大径部上にエルボあるいは受口等があるものであることも、上記発明の目的から明らかであり、不明りょうとはいえない。

第6 本件発明
特許第3,586,347号の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、
上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路と、
前記縦管路の大径部に上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備え、
前記配管空間の幅を縮めることができる集合管継手。
【請求項2】
請求項1に記載の集合管継手が、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように大径部側を上側にして配置され、
この集合管継手の小径部が下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成する排水縦管に接続されているとともに、
前記集合継手の上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路に、前記排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下される伸頂通気管の下端に繋がる横管が接続され、
残りの横管路に前記配管空間に配設された上階の排水の流路となる横枝管が接続されている多層階建築物の排水配管構造。
【請求項3】
請求項1に記載の集合管継手が、最上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように大径部側を上側にして配置され、
この集合管継手の小径部が下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成する排水縦管に接続されているとともに、
前記集合継手の上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路に、前記排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下される伸頂通気管の下端に繋がる横管が接続され、
残りの横管路に前記配管空間に配設された最上階の排水の流路となる横枝管が接続されている多層階建築物の排水配管構造。」

第7 明細書の記載不備についての判断
本件発明は、エルボの高さ分、あるいは、受口および盲板の厚み分だけ、配管空間の高さを低くすることを目的としたものであり、例えば、配管空間は必要以上に広くない方が良い、といった当業者の技術常識に照らして理解すれば、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものと言え、特許請求の範囲の記載についても、発明の詳細な説明に記載したものであり、明確であるといえる。

第8 甲号各証の記載内容
上記無効理由の根拠として挙げられた甲第1号証ないし甲第4号証には、概略以下の技術的事項が開示されている。本件発明との対比・判断の都合上、甲第2号証の記載内容から先に検討する。
1.甲第2号証
ア.本発明は排水立て管継手(以下、適宜管継手と略称する)に関し、詳しくは集合住宅や一般ビルなどの建築物(以下、単に建築物という)における複数の枝管又は横主管からの排水を集合させて排水立て管に導くための管継手に関する。(公報第1頁左下欄13?17行)

イ.次に、本発明の第1実施例の構成を第1図?第6図によって説明する。
・・・
次に、本発明の作用について説明する。
管継手1の各フランジ面部20、26にそれぞれに対応するエルボ19、27を介して枝管を接続されている場合、(公報第2頁右上欄4行?右下欄16行)

ウ.次に、本発明の第3実施例を第11図?第15図によって説明するが、本第3実施例も前記第1及び第2実施例と本質的には同一技術であるため、主として相違点について説明する。
この場合、管継手34の主管部35を直管形状として、その下端部に下部立て管接続口36を備え、その上端部に上部立て管接続口37を備えるとともに、該上部立て管接続口37の内側面には上部立て管をねじ接続するための雌ねじ38が螺刻され、かつ、主管部35の側面に枝管接続用の枝管部39を、その上面を水平にし、その仮面を下傾させた状態で突出形成するとともに、該枝管部39の端部に枝管接続口40を形成し、該枝管接続口40とほぼ同一レベルの主管部35の一端部とそれに対向する側部に、上下方向に長手の長円形状の穴41、42とフランジ面部43、44を備えるとともに、該フランジ面部43、44の周縁の各隅部に螺刻される雌ねじ45のうち、枝管部39側に螺刻される雌ねじ45が管継手34を貫通しないようにするため、前記フランジ面部43、44を主管部35の外径より突出形成させたものであって、その作用、効果は前記第1及び第2実施例の場合と同様である。
また、この第3実施例における排水立て管継手34においては、使用される配管形態によって該管継手34の上方には立て管が接続されない場合もあるが、その場合は第16図のようにプラグ46がねじ込まれることとなる。また、その場合に使用することを専用とする場合用として、図示しないが、前記立て管接続部が主管部の肉厚と同じ厚さで一体状に遮蔽されているものも本発明の一実施例として例示し得る。(公報第3頁右上欄5行?左下欄16行)

各図面から、枝管接続口40とほぼ同一レベルの主管部35の一端部とは、主管部35の上端部であることは明らかである。

したがって、上記各記載事項および図面を参照すると、甲第2号証には、
「上端部が主管部の肉厚と同じ厚さで一体状に遮蔽されている主管部35と、主管部35の側面に、その上面を水平にし、その下面を下傾させた状態で突出形成した枝管接続用の枝管部39を有し、該枝管部39の端部に、主管部35の上端部とほぼ同一レベルの枝管接続口40を形成し、主管部35の上端部寄りに、枝管が接続される、上下方向に長手の長円形状の穴41、42とフランジ面部43、44を備える排水立て管継手。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

2.甲第1号証
エ.【0002】【従来の技術】
アパート、マンション等の高層集合住宅では、図4に概略図で示した如く上層階から下層階に連通する排水立管Bの適所に集合排水継手Cを配設し、該集合排水継手Cにトイレ、浴槽等の排水機器と接続した横引き管Aを接続すると共に、下流側の排水立管Bを横主管Dを介して排水継手Eに接続した排水システムが採用されている。

オ.【0009】
継手本体1の下部は漏斗状に縮径して接続部2が設けられており、該接続部2に下流側の排水立管Bが接続できるようになっている。また、継手本体1の上部は通気口31を有する天板3で覆われており、前記通気口31を介して空気の流入・排出が行なわれることによって継手本体1内が常に大気圧に維持されるようになっている。

したがって、上記各記載事項および図面を参照すると、甲第1号証には、
「上層階から下層階に連通する排水立管Bの適所に集合排水継手Cを配設し、該集合排水継手Cにトイレ、浴槽等の排水機器と接続した横引き管Aを接続すると共に、下流側の排水立管Bを横主管Dを介して排水継手Eに接続した高層集合住宅排水システム。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

3.甲第3号証
カ.A-A線断面図から、「上端が閉塞している縦管路と、上端縁が縦管路上端に略一致する横管路」の構成が読み取れる。

4.甲第4号証
キ.【図10】から、「排水接続管24が、上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管され、縦配水管21に接続されている」構成が読み取れる。

第9 当審の判断
1.本件発明1に対して
(1)引用発明1との対比
引用発明1の主管部35は、本件発明1の縦管路に相当し、甲第2号証第15図において枝管部39の箇所を示す線が指している部分である下傾させた部分が、本件発明1の縮径部に相当し、縮径部上部の枝管接続口40を形成した部分が本件発明1の大径部に相当し、縮径部下部が本件発明1の小径部に相当する。したがって、引用発明1の「上端部が主管部の肉厚と同じ厚さで一体状に遮蔽されている主管部35」は、本件発明1の「大径部の上端が閉塞している縦管路」に相当する。
引用発明1の「主管部35の上端部とほぼ同一レベルの枝管接続口40」と、本件発明1の「上端縁が大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路」とは、「上端縁が大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に横管が連接される1つの横管路」の点で一致する。
引用発明1の「主管部35の上端部寄りに、枝管が接続される、上下方向に長手の長円形状の穴41、42とフランジ面部43、44」と、本件発明1の「縦管路の大径部に上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路」とは、「排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路」の点で一致する。

したがって、両者は、
「大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、
上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に横管が連接される1つの横管路と、
前記縦管路の大径部に排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備える集合管継手。」である点で一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
本件発明1は「上端縁が大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に横管が連接される1つの横管路」に連接される横管が、伸頂通気管の下端に繋がるのに対し、引用発明1は、そのような限定がない点。

(相違点2)
本件発明1は「縦管路の大径部に排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路」に連接される横枝管が、上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となるのに対し、引用発明1は、そのような限定がない点。

(相違点3)
本件発明1は、配管空間の幅を縮めることができる集合管継手であるのに対し、引用発明1は、そのような限定がない点。

(2)判断
(相違点1)について
集合管継手が用いられる排水配管構造の、集合管継手に接続される配管としては、排水配管と通気管が主なものであることは、資料1?6から判断しても、当業者にとって自明な技術事項と言える。そして、上端が閉塞している集合管継手の横管路に、いずれの管を接続するかは、当業者が適宜決定し得る設計事項である。
そして、資料4の「通気管9」と管継手との関連構成、資料5の「主通気管12」と「排水立て管継手20」との関連構成からも、集合管継手の横管路に通気管を接続することは、当業者が容易に想到し得る技術事項である。
さらに、その際に、上端縁が大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に横管が連接される1つの横管路を選択することも、当業者が適宜決定し得る設計事項である。
結局、引用発明1の上記相違点1に係る本件発明1の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

(相違点2)について
集合管継手が用いられる排水配管構造の、排水の流路となる横枝管が、上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる場合があることは、当業者にとって自明な技術事項である。この点は、甲第4号証の【図10】からも伺われる。そして、そのような横枝管を、集合管継手の横管路に連接することは、当業者が適宜決定し得る設計事項である。
結局、引用発明1の上記相違点2に係る本件発明1の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

(相違点3)について
相違点3に係る構成は、集合管継手を機能的に限定したものであるところ、本件明細書の記載から、本件発明は、エルボの高さ分、あるいは、受口および盲板の厚み分だけ、配管空間の高さを低くすることを目的としたものであることは明らかである。
そこで、引用発明1を見てみると、引用発明1も、主管部35の上端部が主管部の肉厚と同じ厚さで一体状に遮蔽されており、この部分の構成は、本件発明1と同様であるので本件発明1と同様の機能を奏すると判断される。
結局、引用発明1の上記相違点3に係る本件発明1の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

そして、本件発明1の作用・効果も引用発明1、及び排水配管構造として周知・慣用の技術事項から予測される範囲内のものである。

よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、及び排水配管構造として周知・慣用の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

2.本件発明2に対して
(1)引用発明2との対比
引用発明2の「集合排水継手C」あるいは「排水継手E」と、本件発明2の「請求項1に記載の集合管継手」は、「集合管継手」である点で一致し、引用発明2の「集合排水継手C」あるいは「排水継手E」も【図1】【図4】を参照すれば、「大径部を上側にして配置され」、「小径部が排水立管Bに接続されている」ことは明らかであり、「排水立管B」は、本件発明2の「排水縦管」に相当する。
また、引用発明2の「排水継手E」は、複数の「横主管D」を有していることは明らかであり、これらは、本件発明2の「横管」あるいは「横枝管」に相当する。
また、引用発明2の「排水立管B」は、本件発明2の「排水縦管」に相当する。
また、引用発明2の「横主管D」が接続される部分が、本件発明2の「横管路」に相当する。
引用発明2の「高層集合住宅排水システム」は、本件発明2の「多層階建築物の排水配管構造」に相当する。

したがって、両者は、
「集合管継手が、大径部側を上側にして配置され、
この集合管継手の小径部が排水縦管に接続されているとともに、
前記集合継手の1つの横管路に、横管が接続され、
残りの横管路に横枝管が接続されている多層階建築物の排水配管構造。」である点で一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
本件発明2の集合管継手は、請求項1に記載の集合管継手であるのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点2)
本件発明2では、集合管継手が、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように配置されているのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点3)
本件発明2では、排水縦管が、下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成するのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点4)
本件発明2では、横管路が、上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接されるのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点5)
本件発明2では、伸頂通気管が、排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下されるのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点6)
本件発明2では、横枝管が、配管空間に配設された上階の排水の流路となるのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(2)判断
(相違点1)について
請求項1に記載の集合管継手は、上記「1.本件発明1に対して」で検討したように、甲第2号証に記載された発明、及び周知・慣用の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、排水配管に用いられるものであることは明らかであるので、引用発明2の上記相違点1に係る本件発明2の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

(相違点2)、(相違点6)について
上階の排水の流路となる横枝管を、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に設けることは、周知・慣用の技術事項(その例として、甲第4号証【図10】、資料1第49頁右欄10?19行、図-2.1、図-2.2等参照。)であり、集合管継手を、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように配置すること、及び、横枝管を、配管空間に配設された上階の排水の流路とすることは、当業者にとって容易である。

(相違点3)について
排水縦管路を室外壁面に沿って配設することは、周知・慣用の技術事項(その例として、甲第4号証【図10】、資料1第49頁右欄10?19行の「一般的に配管はほとんどが隠ぺい配管を要求される」、図-2.1、図-2.2等参照。)であり、引用発明2の上記相違点3に係る本件発明2の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

(相違点4)について
(相違点4)は、上記「1.本件発明1に対して」で検討した(相違点1)の内容と実質的に同じであり、同様の理由により、引用発明2の上記相違点4に係る本件発明2の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

(相違点5)について
伸頂通気管と排水縦管とをずれた位置で垂下させることは、資料1、3?5にも示されるように周知・慣用の技術事項である。したがって、請求項1に記載の集合管継手に、伸頂通気管と排水縦管とを接続する場合に、引用発明2の排水継手Eの横主管Dに接続した排水立管Bを伸頂通気管として、引用発明2の上記相違点5に係る本件発明2の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

そして、本件発明2の作用・効果も引用発明2、引用発明1、及び排水配管構造として周知・慣用の技術事項から予測される範囲内のものである。

よって、本件発明2は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明、及び排水配管構造として周知・慣用の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

3.本件発明3に対して
(1)引用発明2との対比
引用発明2の「集合排水継手C」あるいは「排水継手E」と、本件発明3の「請求項1に記載の集合管継手」は、「集合管継手」である点で一致し、引用発明2の「集合排水継手C」あるいは「排水継手E」も【図1】【図4】を参照すれば、「大径部を上側にして配置され」、「小径部が排水立管Bに接続されている」ことは明らかであり、「排水立管B」は、本件発明3の「排水縦管」に相当する。
また、引用発明2の「排水継手E」は、複数の「横主管D」を有していることは明らかであり、これらは、本件発明3の「横管」あるいは「横枝管」に相当する。
また、引用発明2の「排水立管B」は、本件発明3の「排水縦管」に相当する。
また、引用発明2の「横主管D」が接続される部分が、本件発明3の「横管路」に相当する。
引用発明2の「高層集合住宅排水システム」は、本件発明3の「多層階建築物の排水配管構造」に相当する。

したがって、両者は、
「集合管継手が、大径部側を上側にして配置され、
この集合管継手の小径部が排水縦管に接続されているとともに、
前記集合継手の1つの横管路に、横管が接続され、
残りの横管路に横枝管が接続されている多層階建築物の排水配管構造。」である点で一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
本件発明3の集合管継手は、請求項1に記載の集合管継手であるのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点2)
本件発明3では、集合管継手が、最上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように配置されているのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点3)
本件発明3では、排水縦管が、下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成するのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点4)
本件発明3では、横管路が、上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接されるのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点5)
本件発明3では、伸頂通気管が、排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下されるのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(相違点6)
本件発明3では、横枝管が、配管空間に配設された最上階の排水の流路となるのに対し、引用発明2では、そのような限定がない点。

(2)判断
(相違点1)について
請求項1に記載の集合管継手は、上記「1.本件発明1に対して」で検討したように、甲第2号証に記載された発明、及び周知・慣用の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、排水配管に用いられるものであることは明らかであるので、引用発明2の上記相違点1に係る本件発明3の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

(相違点2)、(相違点6)について
上階の排水の流路となる横枝管を、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に設けることは、周知・慣用の技術事項(その例として、甲第4号証【図10】、資料1第49頁右欄10?19行、図-2.1、図-2.2等参照。)であり、集合管継手を、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように配置すること、及び、横枝管を、配管空間に配設された上階の排水の流路とすることは、当業者にとって容易である。また、上階に当たる階が、最上階の場合、上階を最上階と限定することは、当業者にとって設計事項に過ぎない。

(相違点3)について
排水縦管路を室外壁面に沿って配設することは、周知・慣用の技術事項(その例として、甲第4号証【図10】、資料1第49頁右欄10?19行の「一般的に配管はほとんどが隠ぺい配管を要求される」、図-2.1、図-2.2等参照。)であり、引用発明2の上記相違点3に係る本件発明3の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

(相違点4)について
(相違点4)は、上記「1.本件発明1に対して」で検討した(相違点1)の内容と実質的に同じであり、同様の理由により、引用発明2の上記相違点4に係る本件発明3の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

(相違点5)について
伸頂通気管と排水縦管とをずれた位置で垂下させることは、資料1、3?5にも示されるように周知・慣用の技術事項である。したがって、請求項1に記載の集合管継手に、伸頂通気管と排水縦管とを接続する場合に、引用発明2の排水継手Eの横主管Dに接続した排水立管Bを伸頂通気管として、引用発明2の上記相違点5に係る本件発明3の構成を限定することは、当業者にとって容易である。

そして、本件発明3の作用・効果も引用発明2、引用発明1、及び排水配管構造として周知・慣用の技術事項から予測される範囲内のものである。

よって、本件発明3は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明、及び排水配管構造として周知・慣用の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

第10 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?3についての特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
集合管継手およびこの集合管継手を用いた多層階建築物の排水配管構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路と、前記縦管路の大径部に上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備え、前記配管空間の幅を縮めることができる集合管継手。
【請求項2】
請求項1に記載の集合管継手が、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように大径部側を上側にして配置され、この集合管継手の小径部が下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成する排水縦管に接続されているとともに、前記集合継手の上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路に、前記排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下される伸頂通気管の下端に繋がる横管が接続され、残りの横管路に前記配管空間に配設された上階の排水の流路となる横枝管が接続されている多層階建築物の排水配管構造。
【請求項3】
請求項1に記載の集合管継手が、最上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように大径部側を上側にして配置され、この集合管継手の小径部が下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成する排水縦管に接続されているとともに、前記集合継手の上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路に、前記排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下される伸頂通気管の下端に繋がる横管が接続され、残りの横管路に前記配管空間に配設された最上階の排水の流路となる横枝管が接続されている多層階建築物の排水配管構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、集合管継手およびこの集合管継手を用いた多層階建築物の排水配管構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
中層、高層等の多層階の建築物では、排水縦管と各階の排水をこの排水縦管に導く横枝管とが、集合管継手と称される継手を介して接続されている。
図3に示すように、従来の集合管継手100は、大径部111と小径部112とが徐々に下方に縮径する縮径部113によって一体化された形状の縦管路110を有し、大径部111周面に横枝管が接続される複数の横管路120がその一端を開口させるように設けられているとともに、大径部120上面に上方の排水縦管または伸頂通気管の下端が接続される受口130が設けられている。
【0003】
そして、横枝管および横管路120を介して大径部111に流入した排水を縮径部113で集水するとともに、縮径部113の内面のテーパあるいは縮径部内面に設けられた螺旋溝や旋回羽根によって旋回流にして小径部112に接続された排水縦管に流下させるようになっている。
すなわち、この集合管継手100は、各階の排水が横枝管から多量に排水縦管に流入しようとした場合でも、縮径部113で排水を常に旋回流にして小径部112から下方の排水縦管に流入させるようになっているので、集合管継手100および排水縦管の中央に常に空気芯を形成することができ、排水縦管の閉塞をなくすることができる。したがって、排水縦管のつまりによる圧変化によって、各階の排水管に設けられたトラップの封水効果が損なわれることを防止できるようになっている。
【0004】
しかし、マンションなどの多層階建築物では、図3に示すように、上の階200と下の階201とで間取りが異なり、上の階200の室外壁に沿って垂下される伸頂通気管(排水縦管)300と、下の階201の室外壁に沿って垂下される排水縦管400とを垂直に並べることができない場合がある。
このような場合、図3に示すように、従来の集合管継手100では、大径部111の上方に設けられた受口130と、伸頂通気管(あるいは排水縦管)300の下端とを、エルボ301および横管302を介して接続させなければならない。
【0005】
したがって、上の階200と下の階201との間に形成される配管空間500に、エルボ301および横管302の高さ分だけ、他の配管空間600より無駄な高さが必要になり、建築物の建築コストが上がる恐れがある。
そこで、図示していないが、受口130を盲板で塞ぐとともに、伸頂通気管(あるいは排水縦管)300の下端に繋がる横管302を横管路120のうちの1つに接続する方法も考えられるが、この場合でも、受口130および盲板の厚み分だけ、やはり配管空間を余分にとる必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みて、上階とその下の階との間取りが異なり、上方から垂下される伸頂通気管と、集合管継手の下方に垂下される排水縦管との位置がずれる場合でも、上階の床とその下の階の天井との間に形成された配管空間を、他の配管空間と同一の高さにすることができる集合管継手およびこの集合管継手を用いた多層階建築物の排水配管構造を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明にかかる集合管継手は、大径部と小径部とが徐々に縮径する縮径部を介して一体化された形状をし、大径部側を上方にして配管されるようになっているとともに、大径部の上端が閉塞している縦管路と、上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路と、縦管路の大径部に上階の床とその下の階の天井との間に形成される配管空間に配管される上階の排水の流路となる横枝管が連接される少なくとも1つの横管路とを備え、配管空間の幅を縮めることができる構成とした。
【0008】
本発明にかかる多層階建築物の排水配管構造は、請求項1に記載の集合管継手が、上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように大径部側を上側にして配置され、この集合管継手の小径部が下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成する排水縦管に接続されているとともに、前記集合継手の上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路に、前記排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下される伸頂通気管の下端に繋がる横管が接続され、残りの横管路に前記配管空間に配設された上階の排水の流路となる横枝管が接続されている構成とした。
また、本発明にかかる多層階建築物の排水配管構造は、請求項1に記載の集合管継手が、最上階の床と、その下の階の天井との間に形成された配管空間に横管路を臨ませるように大径部側を上側にして配置され、この集合管継手の小径部が下の階の室外壁面に沿って配設された排水縦管路を形成する排水縦管に接続されているとともに、前記集合継手の上端縁が前記大径部の上端に略一致するように縦管路の大径部に伸頂通気管の下端に繋がる横管が連接される1つの横管路に、前記排水縦管とずれた位置で上階の室外壁面に沿って垂下される伸頂通気管の下端に繋がる横管が接続され、残りの横管路に前記配管空間に配設された最上階の排水の流路となる横枝管が接続されている構成とした。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は本発明にかかる集合管継手の実施の形態をあらわし、図2は図1の集合管継手を用いた排水配管構造の実施の形態をあらわしている。
【0010】
図1に示すように、この集合管継手1は、縦管路2と2つの横管路3a,3bとを備えている。
縦管路2は、大径部21と小径部22とが縮径部23を介して接続された形状をしている。
【0011】
大径部21は、上端が閉塞していて、横管路3a,3bが、その上端縁31,31を大径部21の上端面21aに一致させるように連接されている。
縮径部23は、小径部22側に向かって徐々に縮径していて、大径部21に流れ込んだ排水を集水しながら旋回流とするとともに、内面に複数の旋回羽根24が設けられ、大径部21側から流れ込んだ排水をこの旋回羽根24によってより確実な旋回流にして小径部22に流下させるようになっている。
【0012】
小径部22は、その下端が図2に示すように排水縦管8の受口81に接続されるようになっている。
【0013】
この集合管継手1は、以上のようになっており、図2に示すように、最上階5と直下の階6とで間取りが異なり、屋上から最上階5の室外壁51に沿って垂下される伸頂通気管7と下の階6の室外壁61に沿って垂下される排水縦管8とをずれた位置に設けざるを得ない排水配管構造になる場合でも、最上階5の床52と下の階6の天井62との間の配管空間9を他の配管空間9´と略同じ幅にした排水配管構造Aとすることができる。
【0014】
すなわち、この排水配管構造Aは、大径部21側を上にして集合管継手1の横管路3a,3bが配管空間9に臨むとともに、小径部22が排水縦管8に接続されている。また、一方の横管路3aに伸頂通気管7の下端と接続される横管71が接続され、他方の横管路3bに配管空間9に配管された横枝管91が接続されている。
【0015】
そして、横枝管91および伸頂通気管7に接続される横管71の接続される横管路3a,3bの上端縁と大径部21の閉塞部の上面が一致している。
したがって、配管空間9の幅を略横枝管91の配管スペースだけにすることができ、他の配管空間9´と同じにすることができる。
【0016】
因みに、呼び径100mm(外径114.3mm)および呼び径80mm(外径89.1mm)の伸頂通気管7を図2の排水配管構造Aおよび図3の排水配管構造にそれぞれ配管したところ、図3の排水配管構造の場合、配管空間9を200mm程度とらなければならなかったのに対し、図2の排水配管構造Aの場合、110?170mmと、30?90mm程度縮めることが可能であった。
【0017】
なお、図2中、93はスラブである。
【0018】
本発明にかかる集合管継手は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の集合管継手1では、2つの横管路3a,3bが同径であったが、異径であっても構わない。また、横管路の数は、3つ以上でも構わない。
また、上記の集合管継手1では、小径部22の下端が排水縦管8の受口81に嵌まり込む差口タイプになっていたが、受口タイプにしても構わない。
【0019】
さらに、上記の集合管継手1では、縮径部23の内壁面に旋回羽根24が設けられていたが、旋回羽根24はなくても構わない。
【0020】
【発明の効果】
以上のように構成されているので、本発明にかかる集合管継手は、無駄な配管空間を採ることなく、上方から垂下された伸頂通気管を接続することができる。
また、本発明にかかる多層階建築物の排水配管構造は、上記本発明の集合管継手を使用して、上の階と下の階の間取りが異なる場合でも、各階の排水配管空間を一定にすることかできるので、建築物の建築コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明にかかる集合管継手の実施の形態をあらわす断面図である。
【図2】
図1の集合管継手を用いた多層階建築物の排水配管構造の1例をあらわす断面図である。
【図3】
従来の集合管継手を用いた多層階建築物の排水配管構造をあらわす断面図である。
【符号の説明】
A 排水配管構造
1 集合管継手
2 縦管路
21 大径部
21a 上端面
22 小径部
23 縮径部
3a,3b 横管路
31 上端縁
4 排水縦管
5 最上階(上階)
51 室外壁
52 床
6 直下の階(下の階)
61 室外壁
62 天井
7 伸頂通気管
8 排水縦管
9,9´ 配管空間
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-02-21 
結審通知日 2007-03-05 
審決日 2007-03-22 
出願番号 特願平9-36106
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (E03C)
P 1 113・ 536- ZA (E03C)
P 1 113・ 537- ZA (E03C)
P 1 113・ 55- ZA (E03C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 陽  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森口 良子
佐藤 昭喜
登録日 2004-08-13 
登録番号 特許第3586347号(P3586347)
発明の名称 集合管継手およびこの集合管継手を用いた多層階建築物の排水配管構造  
代理人 速見 禎祥  
代理人 菊岡 良和  
代理人 菊岡 良和  
代理人 岩坪 哲  
代理人 小原 英一  
代理人 小原 英一  
代理人 小原 英一  
代理人 菊岡 良和  

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