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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施 無効とする。(申立て全部成立) A23L
管理番号 1157727
審判番号 無効2002-35294  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-07-15 
確定日 2007-06-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第1912343号「筋組織状こんにやくの製造方法及びそれに用いる製造装置」の特許無効審判事件についてされた平成16年 1月28日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10060号平成17年 6月30日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第1912343号の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯及び本件発明
(1)手続の経緯
本件特許第1912343号に係る発明についての出願は、昭和61年3月1日に特許出願され、平成7年3月9日にその特許の設定登録がなされ、その後、平成14年7月15日付けで請求人 ハタノヤ株式会社より本件特許につき無効審判が請求され、平成15年1月28日に証拠調べ(検証、証人尋問)及び口頭審理を行い、平成16年1月28日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、それに対する訴えが知的財産高等裁判所において平成17年(行ケ)第10060号事件(旧事件番号 東京高裁平成16年(行ケ)第88号)として審理され、平成17年6月30日に上記審決を取り消す旨の判決の言い渡しがあり、当該判決は確定したので、更に当審において審理する。

(2)本件特許に係る発明
本件特許第1912343号の請求項1及び2に係る発明は、出願公告された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】こんにゃく粉に適度の水を加えて膨潤させ、これにゲル化剤を加えて得られたこんにゃくのりを、押出し直後の圧力解放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接するようにノズル押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間を3mm以下とした多孔のノズルで押出し、加熱処理前又は加熱処理と同時に一体化することを特徴とする筋組織状こんにゃくの製造方法。
【請求項2】ホッパー中に投入されたこんにゃくのりを多孔のノズルから押出す押出装置において、前記ノズルを平行ノズルとしてその押出し孔間隙(a)を3mm以下に小、又はノズル押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間(c)が3mm以下の小さい傾斜ノズルとし、押出し後の圧力解放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化するようにしてなることを特徴とする筋組織状こんにゃくの製造装置。」
(以下、上記請求項1及び2に係る発明を、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)

2.当事者の主張及び証拠方法
(1)請求人 ハタノヤ株式会社の主張及び証拠方法
請求人は、「本件発明1の製造方法及び本件発明2の製造装置は、その出願日である昭和61年3月1日よりも前の昭和57年には公然と使用(実施)されていたカネマタの「しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の製造方法及び製造装置と同一または殆ど同一であるから、特許法第29条第1項1号又は2号、又は同条第2項の規定に該当し、同法第49条2号により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項2号の規定により無効とすべきものである。」と主張する。
そして、上記主張事実を立証する証拠方法として、審判請求書と共に下記甲第1号証?甲第16号証を提出し、また、平成14年11月7日付け証人尋問申出書により、中村周至、中村道弘、冠野 禎、吉村文範、片山 稔、久保 就勇の証人尋問を申し出し、さらに、平成14年11月7日付け検証申出書により、検甲第1号証の目皿が本件特許の構成を備えていることを立証する目的で検証を申し立てている。
また、上記主張事実の信憑性を高める目的で、平成14年12月26日付け口頭審理陳述要領書Iと共に下記資料1?4を提出し、平成15年1月21日付け物件提出書により下記甲第17号証?甲第23号証の1ないし3を提出し、平成15年1月28日付け物件提出書により下記甲第24号証の1ないし3?甲第25号証の1ないし8を提出し、平成15年8月22日付け上申書と共に資料5?8(提出された資料は下記のとおり資料5ないし8として扱う。)を提出し、平成15年9月4日付け上申書と共に資料9?10(提出された資料は下記のとおり資料9ないし10として扱う。)を提出し、平成15年10月24日付け上申書と共に資料11?16(提出された資料1ないし6は下記のとおり資料11ないし16として扱う。)を提出し、平成15年10月27日付け物件提出書により、甲第26号証ないし甲第27号証を提出し、平成15年10月27日付け上申書と共に資料17?21(提出された資料は下記のとおり資料17ないし21として扱う。)を提出している。

甲第1号証:カネマタ専務取締役中村道弘氏の証明書
甲第2号証:カネマタ専務取締役中村道弘氏のこんにゃく製造装置につい
ての証明書
甲第3号証:カネマタの目皿の斜めの孔から押し出された糸こんにゃくが
付着する様子を示した説明図(中村道弘氏作成)
甲第4号証:川口屋の吉村文範氏の証明書
甲第5号証:株式会社清水万蔵商店の冠野禎氏の証明書
甲第6号証:三星セロファン株式会社の久保就勇氏の証明書
甲第7号証:カネマタ代表取締役中村周至氏の証明書
甲第8号証:カネマタ専務取締役中村道弘氏の証明書
甲第9号証:やまと食品工業株式会社取締役会長立花幹生氏の証明書
甲第10号証:株式会社清水万蔵商店林原文雄氏の証明書
甲第11号証の1?13:カネマタ所有の納品伝票、物品受領書、得意先
元帳の写し
甲第12号証:川口屋の吉村文範氏の証明書
甲第13号証:高島屋の加藤修氏の証明書
甲第14号証:株式会社ソミックス代表取締役船井勲氏の証明書
甲第15号証:片山稔氏の証明書
甲第16号証の1?3:カネマタのしゃぶしゃぶ用こんにゃく包装用の現
在の包装袋の写真
甲第17号証:マンナン麺包装袋の写真
甲第18号証:写真撮影報告書
甲第19号証:事実実験公正証書
甲第20号証の1?7:目皿の写真
甲第20号証の8:巣板の写真
甲第21号証:カネマタ食品工業株式会社から日本繊食有限会社への回答
書の写し
甲第22号証の1?18:日本繊食有限会社から侵害者と目される者への
警告書の写し
甲第23号証の1:売上伝票(控)写し
甲第23号証の2:カネマタ食品工業株式会社の仕入れ先元帳の三星セロ
ファン株式.会社の部分の写し
甲第23号証の3:「しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の包装袋
甲第24号証の1?3:墓石の写真
甲第25号証の1?8:年賀状
甲第26号証:被請求人がカネマタ食品工業株式会社に送付した通知書写 し
甲第27号証:カネマタ食品工業株式会社が送付した回答書の写し
資料1:中村家墓碑写真
資料2:平成10年中村周至宛年賀状
資料3:中村周至(裏面HIROSHI NAKAMURA)、中村博の
名刺
資料4:中村周至、中村博宛の宅配便の宛名部分複写
資料5:写真1?3
資料6:写真説明1?3
資料7:昭和57、58年新入社員名簿
資料8:昭和57年研修カネマタ引率者、証言者経歴
資料9:中村道弘氏陳述書
資料10:藤井二郎氏陳述書
資料11:赤アンダーライン付き資料1
資料12:赤アンダーライン付き資料2
資料13:赤アンダーライン付き資料3
資料14:赤アンダーライン付き審判事件答弁書(2)
資料15:通知書写し
資料16:回答書写し
資料17:川村哲氏陳述書
資料18:谷口徹氏陳述書
資料19:豊田直二氏陳述書
資料20:広瀬増実氏陳述書
資料21:松原宗久氏陳述書

(2)被請求人 川原 信彦の主張及び証拠方法
被請求人は、答弁書と共に下記の乙第1号証?乙第7号証の1ないし10を提出して、「本件特許を無効とすべき理由の要点として請求人が挙げた甲第1?甲第16号証は何れも公知性を立証するには証拠力に欠け、また、これら証拠力の欠ける各号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第1項1号又は2号、又は同条第2項の規定のいずれにも該当しない。」と主張する。
さらに、上記主張事実を立証するために、平成15年1月28日付け物件提出書により、下記乙第8号証?乙第12号証を提出し、また、平成15年2月28日付け答弁書(第2)と共に下記乙第13号証?乙第15号証を提出し、さらに平成15年3月7日付け上申書(2)と共に資料1ないし3を提出している。

乙第1号証:特開昭59ー82066号公報
乙第2号証:カネマタ食品工業株式会社の会社登記簿謄本写し
乙第3号証:無効審判2002-35072号(後日取り下げ)に甲第1
2号証として添付された吉村文範氏の証明書
乙第4号証の1:無効審判2002-35072号(後日取り下げ)に甲
第15号証として添付された片山稔氏の証明書
乙第4号証の2:有限会社片山商店の会社履歴事項全部証明書
乙第5号証:「高級料亭の味 しゃぶしゃぶ用こんにゃく」
乙第6号証:本件製品と侵害品、並びに警告・訴訟事件の経過年表
乙第7号証の1?10:本件特許製品に係る新聞雑誌記事写し
乙第8号証の1:無効審判2002-35072号(後日取り下げ)審判
請求書1?3頁及び14頁
乙第8号証の2:平成14年2月25日付け中村道弘氏証明書
乙第9号証:平成14年5月25日付け中村道弘氏証明書
乙第10号証の1:無効2002ー35294号(本件)の「口頭審理陳
述要領書II」
乙第10号証の2:平成14年5月25日付け中村道弘氏証明書(平成1
4年6月6日差し替え分)
乙第11号証の1:平成11年(ワ)第12586号訴訟においてやまと
食品工業株式会社が提出した「しゃぶしゃぶ用こんにゃく」
の包装紙(昭和58年11月24日納品)
乙第11号証の2:平成11年(ワ)第12586号訴訟においてやまと
食品工業株式会社が提出した「しゃぶしゃぶ用こんにゃく」
の包装紙(平成2年10月17日納品分)
乙第11号証の3:平成11年(ワ)第12586号訴訟においてやまと
食品工業株式会社が提出した「しゃぶしゃぶ用こんにゃく」
の包装紙(平成12年8月25日現在使用中)
乙第11号証の4:平成14年9月30日付け被請求人答弁書添付の被請
求人が平成12年11月5日に撮影した「しゃぶしゃぶ用こ
んにゃく」の包装紙
乙第12号証:大阪地裁 平成11年(ワ)第12586号訴訟における
平成12年8月25日付け「証拠説明書(4)」の第1?2
頁、7?9頁
乙第13号証の1:カネマタ食品工業株式会社旧工場付近の地図
乙第13号証の2:カネマタ食品工業株式会社旧工場付近の南側写真
乙第14号証:故中村謙吉氏の改製原戸籍謄本
乙第15号証:大阪地裁平成11年(ワ)第12586号及び平成13年
(ワ)3381号事件判決書抄録
資料1:公正証書(甲第19号証、無効2002-35295の甲第22
号証)について
資料2:検甲第1号証答弁のまとめ(検証目的と結果)
資料3:証拠、証言の信用性

3.知財高裁審決取消判決(平成17年(行ケ)第10060号)の概要
(1)発見品について
発見品(訴訟段階で提出された「しゃぶしゃぶこんにゃく」の現物であって、このこんにゃくの形状、構造は、本件発明1及び2によって製造される「筋組織状こんにゃく」と同一であることについては、当事者間に争いがない。)には、 「60.10.27製造」又は「60.11.1製造」の日付印が押されていることから、発見品自体又は日付印部分がねつ造に係るものであることを疑わせる事情その他の特段の事情が認められない限り、上記日付印から、発見品が昭和60年10月27日又は同年11月1日に製造されたものであることが推認されるというべきである。
原告が提出した証拠及び弁論の全趣旨から認定できる事実によれば、発見品は、その包装袋に押された日付印のとおり、昭和60年10月27日又は同年11月1日に製造されたものであると認めるのが自然というべきであり、この認定を覆すに足りる的確な証拠は見当たらない。
発見品が発見されたタイミングがよいこと、発見品の発見によって、原告のみならずカネマタ食品が利益を受けること等は、被告の主張するとおりであるとしても、そのことから直ちに、発見品の製造時期がその製造日付とは異なる時期であることが推認されるというわけではないから、被告の主張は、上記の認定判断を左右するものではない。
以上によれば、発見品は、その日付印のとおり、昭和60年10月27日又は同年11月1日に製造されたものであると認めるのが相当である。

(2)本件公然実施の事実について
発見品は、昭和60年10月27日又は同年11月1日に製造されたものであるとの上記(1)の認定を前提に、本件公然実施の事実の有無について検討すると、原告が提出した証拠及び弁論の全趣旨から認定できる事実を総合すれば、カネマタ食品は、本件発明1と同一の筋組織状こんにゃくの製造方法及び本件発明2と同一の筋組織状こんにゃくの製造装置に係る発明を、遅くとも、カネマタ食品が本件こんにゃくの製造販売を本格的に開始した昭和58年11月ころまでには、公然実施していたものと認めるのが相当である。
したがって、本件公然実施の事実を認めるに足りないとした審決の認定判断は、結果的に誤りであったというほかはなく、原告の取消事由の主張は理由があるから、審決は、違法として取消しを免れない。

4.むすび
上記知財高裁審決取消判決(平成17年(行ケ)第10060号)において、「カネマタ食品は、本件発明1と同一の筋組織状こんにゃくの製造方法及び本件発明2と同一の筋組織状こんにゃくの製造装置に係る発明を、遅くとも、カネマタ食品が本件こんにゃくの製造販売を本格的に開始した昭和58年11月ころまでには、公然実施していたものと認めるのが相当である。」と判示された。
この判示事項は、審判合議体を拘束する。
したがって、本件発明1及び2は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用は、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-13 
結審通知日 2005-12-22 
審決日 2006-01-06 
出願番号 特願昭61-44489
審決分類 P 1 112・ 112- Z (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 孔一  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鵜飼 健
河野 直樹
登録日 1995-03-09 
登録番号 特許第1912343号(P1912343)
発明の名称 筋組織状こんにやくの製造方法及びそれに用いる製造装置  
代理人 小林 正治  
代理人 森 寿夫  
代理人 森 廣三郎  

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