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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B |
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管理番号 | 1157892 |
審判番号 | 不服2003-3684 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-06 |
確定日 | 2007-05-16 |
事件の表示 | 平成5年特許願第219276号「被覆高圧型窒化硼素準微粒子、並びに被覆高圧型窒化硼素準微粒子焼結体及びその製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成7年2月28日出願公開、特開平7-53282〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯、本願発明 本願は、平成5年8月12日に特許出願され、平成15年1月23日付けで出願拒絶されたところ、当該拒絶につき平成15年3月6日に審判請求されたものであり、その後、平成18年11月13日付けで当審による拒絶理由が通知され、平成19年1月22日に請求人より手続補正書が提出された。 本願請求項1?9に係る発明は、平成19年1月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されるとおりのものであり、その請求項1には以下のことが記載されている。 【請求項1】高圧型窒化硼素の準微粒子からなる芯粒子粉体を被覆空間に投入し、気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体を、この芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させて、この芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆して得られる被覆高圧型窒化硼素準微粒子の製造方法であって、 (A)分散手段として、この芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる、撹拌式分散機、エジェクター式分散機、細管分散機よりなる分散手段を有する微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μmを越える準微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に準微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、並びに (B)この分散工程で分散させた芯粒子粉体の粒子を、被覆空間の被覆開始領域に、 その平均粒子径が10μmを越え20μm以下のときには全粒子の重量に対する見かけの一次粒子状態の粒子の重量の割合である分散度βが80%以上、 20μmを越え50μm以下のときには分散度βが90%以上、 50μmを越え300μm以下のときには分散度βが95%以上、 300μmを越え800μm以下のときは分散度βが97%以上、そして 800μmを越えるときは分散度βが99%以上 の分散状態で、被覆工程に直接放出し、被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させる被覆工程を備えることを特徴とする、被覆高圧型窒化硼素準微粒子の製造方法。 (以下、必要に応じて、「本願発明」という) II.当審による平成18年11月13日付け拒絶理由の概要 本願請求項1?9に係る発明は、本出願前に頒布された刊行物である下記の引用例1?13に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用例1:特開平3-75302号公報 引用例2:特開平3-245835号公報 引用例3:特開平2-180760号公報 引用例4:特開平3-118850号公報 引用例5:特開昭63-72362号公報 引用例6:特開平2-122847号公報 引用例7:特開昭64-80437号公報 引用例8:特開昭64-24074号公報 引用例9:特開平2-252660号公報 引用例10:後藤邦彰etal.著、「気中撹拌型分散機による微粒子の分散」、化学工業、第22回、秋季大会研究発表講演要旨集、第349頁、1989年 引用例11:特開平2-153068号公報 引用例12:特開昭62-250172号公報 引用例13:特開平5-139844号公報 III.当審の判断 III-1.引用例の記載 III-1-A.引用例1(特開平3-75302号公報) (A-1)「4)気相法によって生成された無機材料または金属材料の超微粒子が含まれる流れの中に被覆されるべき無機材料または金属材料の粒子を導入し、上記の超微粒子と上記の被覆されるべき粒子とを流動状態において接触させることからなる、無機材料または金属材料の超微粒子で表面が被覆された無機材料または金属材料の粒子の製造方法。 5)無機材料または金属材料の超微粒子が含まれる流れが、CVD法またはPVD法により作られるものである請求項4に記載の製造方法。 6)PVD法がRFプラズマ法である請求項5に記載の方法。」(特許請求の範囲第4?6項) (A-2)「すなわち、本発明の無機材料または金属材料の超微粒子で表面が被覆された無機材料または金属材料の粒子は、CVD法またはPVD法例えばRFプラズマ法(・・・)レーザー法などによって気相において生成された無機材料または金属材料の超微粒子が含まれる流れの中に被覆されるべき無機材料または金属材料の粒子を単分散した状態で吹込んで供給し、上記の超微粒子と上記の被覆されるべき粒子とを流動状態において接触させ両粒子を接着させ、もって被覆されるべき無機材料または金属材料粒子の表面に強固に超微粒子が結合し固着した全く新規の粉体材料として得ることができる。」(第3頁左上欄第3?15行) (A-3)「本発明によれば上記のようにして生成された無機材料または金属材料の超微粒子が含まれる気体流の中に、被覆されるべき無機材料または金属材料の粉体を任意の手段、例えばキャリアガスに担持させた気相の分散体として圧入するなどによって導入し、超微粒子と、被覆されるべき粒子とを流動状態において接触させるのである。この場合、超微粒子は物理的又は化学的手段で生成せしめられたばかりのものでそれ自体はいわば発生期の状態、すなわち、遊離ラジカルを有していて活性化されている状態にあることから、粒子との接触によって粒子とは共有結合的に結合し、両粒子は強固に化学結合することになる。」(第3頁右下欄第9行?第4頁左上欄第4行) (A-4)「本発明の超微粒子で表面が被覆される無機材料または金属材料としては、・・・ほう素化物であるBP、BNなど、が挙げられる。 これらの超微粒子で表面が被覆される無機または金属材料の粒子は通常0.1μm?100μmの範囲の粒径を有する粉体であって、殊に1μm?10μmの範囲のものが取扱い操作上好ましい。」(第3頁左上欄第16行?右上欄第17行) (A-5)「これらの超微粒子で被覆された粒子は、前述のように超微粒子が被覆された粒子と強固に固着しているので、この粒子からなる粉体を焼結する場合、その焼結時間をそれだけ短縮することができ、かつまた均質な焼結体を得ることができるのである。」(第4頁左下欄第6?11行) (A-6)「得られた窒化けい素の粒子(0.1?数μm)にはY2O3超微粒子(0.01?0.05μm主として0.02μm)が均一に被覆されていた。」(第5頁右上欄第15?17行) (A-7)「この方法によって得られた被覆超微粒子はほぼ0.02μmの均一な粒径のもので、ダイヤモンド粒子全面にほぼ均一に被覆されていた。」(第5頁右下欄第7?9行) (A-8)「得られたダイヤモンドの粒子(40?60μm)にはカーボン超微粒子(0.01?0.05μm主として0.02μm)が均一に被覆されていた。」(第6頁右下欄第2?4行) (A-9)「この方法により得られたダイヤモンドの粒子(40?60μm)にはチタン超微粒子(0.01?0.05μm主として0.02μm)が均一に被覆されていた。」(第7頁左上欄第14?16行) III-1-B.引用例3(特開平2-180760号公報) (B-1)「立方晶窒化硼素原料粉体表面に、物理的蒸気凝縮法により周期律表第4a、5aまたは6a属の遷移金属、・・・のうち少なくとも1種類以上を均一にコーティングし、これを粉末状で、若しくは型押し成形後、立方晶窒化硼素の熱力学的安定領域の超高圧高温下で固相で焼結せしめることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体の製造方法。」(特許請求の範囲第2項) (B-2)「ここで特記すべきことは、PVD法で立方晶窒化硼素粉体粒子表面に均一にコーティングするため、従来の粉体を用いた固相焼結の場合に問題となっていた助剤の均一な添加が可能となり、高効率に焼結助剤がその役割を果たしていることである。そのため、固相焼結でありながら、従来の液相焼結と同程度の工業的に容易に実現容易な焼結条件で、しかも当該助剤の添加量を少量としても効率よく、緻密でしかも高硬度に焼結できる。」(第2頁右下欄第11?19行) III-1-C.引用例4(特開平3-118850号公報) (C-1)「従来、気相法や液相法等で生産されるセラミックスや合成シリカ等は1ミクロン以下の超微紛体であるが、ケミ・メカ的な結合により種々の大きさの凝集二次粒子(以下凝集体という)となる。」(第1頁右下欄第7?10行) III-1-D.引用例7(特開昭64-80437号公報) (D-1)「従来、粒度が数μm以下の超微粒子は、粒子間の強い付着力のため凝集体になりやすく流動化が困難であり、」(第1頁右下欄第8?10行) III-1-E.引用例8(特開昭64-24074号公報) (E-1)「高純度ウルツ鉱型窒化ホウ素の一次微粒子が結合剤としての金属あるいはセラミックスを媒体として結合されており、・・・高純度ウルツ鉱型窒化ホウ素の結合体。」(特許請求の範囲) (E-2)「本発明者は一次粒子の結合によるW-BN二次粒子に関して種々調査を進めるに従って、現状のW-BN二次粒子には大きな3つの問題点が有ることが判明した。 第1の問題点はW-BN二次粒子を構成している一次粒子間の結合が必ずしも充分な結合及び靱性を有していないことである。」(第2頁右上欄第1?7行) (E-3)「実施例1 出発材料として爆薬により合成された平均粒径10μmのW-BN二次粒子を用いた。・・・。 次に振動ボールミルによりW-BN粒子とボールの体積比を1:4として1時間の粉砕を行った。・・・。更に溶融KOHにより再精製することで、六方晶窒化ホウ素(002)における明確な回折ピークの認められない高純度W-BNの一次粒子とした。 以上の工程により得られた高純度W-BNの一次粒子90体積%とモリブデン粉末10体積%を100として、更にアルミニウム粉末2体積%の割合で配合し、n-ヘキサンを加えて充分な均一混合をした。この混合粉末を圧粉成形し・・・焼結した。得られた結合体の硬度はマイクロビッカースで4000?4400kgf/mm2でクラックのない健全なものであった。」(第4頁左上欄第14行?左下欄第7行) III-1-F.引用例11(特開平2-153068号公報) (F-1)「1.金属、セラミックスまたはプラスチックの微粉末を、 (イ)不活性雰囲気中で流体ジェット・ミル処理して一次粒子に分散し、・・・・スパッタリングすることにより被覆することからなる微粉末を被覆する方法」(特許請求の範囲第1項) (F-2)「しかしながら、10μm以下の粒径の微粉末は一般に凝集力が強いために容易に二次粒子を形成し、また水分や各種のガスなどを強固に吸着しているために、・・・PVD法でこのような微粉末の周囲に金属およびセラミックスを強固にかつ均一に被覆するのは極めて難しいといわれ、報告例も全くみられない。」(第2頁右下欄第6?14行) (F-3)「これらの被覆微粉末は従来から一般に用いられている条件に従って成形・焼培することにより新しい粉末材料として広範囲の用途、例えば超硬工具、真空機器用ヒータ、研磨材、・・・、耐火レンガなどに使用することができる。」(第6頁左下欄第1?7行) III-1-G.引用例12(特開昭62-250172号公報) (G-1)「一次粒子の粒径が100Åから1μmの範囲の金属、セラミックまたはプラスチックの超微粉末を、(イ)不活性雰囲気中で、液体ジェットミル処理して一次粒子に分散し、不活性気体流で搬送し、・・・スパッタリングによって金属、セラミックまたはプラスチックで被覆し、・・・ことからなる超微粉末の被覆方法。」(特許請求の範囲第1項) (G-2)「すなわち、不活性ガス流に乗せて乾式法で超微粉末の粉砕および分散を繰り返しつつ・・・減圧乾燥除去してスパッタリング被覆できることから、表面活性に優れ凝集力の強固な超微粉末の一次粒子の周囲にほぼ均一な被覆が可能であると共に、超微粉末に対する被膜の密着力も強固となる。」(第4頁左上欄第14行?右上欄第1行) III-2.対比・判断 III-2-1.本願発明1 引用例1には、その前記(A-1)によれば、「気相法によって生成された無機材料または金属材料の超微粒子が含まれる流れの中に被覆されるべき無機材料の粒子を導入し、上記の超微粒子と上記の被覆されるべき粒子とを流動状態において接触させることからなる、無機材料または金属材料の超微粒子で表面が被覆された無機材料の粒子の製造方法」が記載されている。 そして、該被覆される無機材料の粒子として、前記(A-4)によれば、BN(窒化ホウ素)が挙げられ、また、その粒径として0.1μm?100μmの範囲のものが用いられることが示される。 更に、被覆されるべき無機粒子の上記導入形態として、前記(A-3)によれば、超微粒子が含まれる気体流の中に、被覆されるべき無機材料または金属材料の粉体をキャリアガスに担持させた気相の分散体として圧入するなどによって導入することが示される。 そうであれば、引用例1には、 「気相法によって生成された無機材料または金属材料の超微粒子が含まれる気体流の中に、被覆されるべきBN粒子をキャリアガスに担持させた気相の分散体として圧入することによって導入し、上記の超微粒子と上記の被覆されるべきBN粒子とを流動状態において接触させることからなる、無機材料または金属材料の超微粒子で表面が被覆されたBN粒子の製造方法」に関する発明(以下、必要に応じて、「引用発明」という)が記載されているということができる。 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明のBN粒子は、その粒径が0.1?100μmであるというのであるから、それは、本願発明でいう「窒化硼素の準微粒子」である態様を含み、そのBN粒子は、超微粒子で被覆されるものであるから本願発明でいう「芯粒子粉体」に相当する。 また、引用発明の超微粒子は、気相法によって生成したものであり、かつ、BN粒子を被覆するものであって、本願発明の「気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体」に相当する。 そして、引用発明における、超微粒子と上記の被覆されるべきBN粒子とが流動状態において接触するところの空間は、本願発明でいう「被覆空間」に相当する。 よって、両者は、 「窒化硼素の準微粒子からなる芯粒子粉体を被覆空間に投入し、気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体を、この芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させて、この芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆して得られる被覆窒化硼素準微粒子の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点1】該窒化硼素が、本願発明では、「高圧型窒化硼素」であるとするのに対して、引用発明では、BN、すなわち、窒化ホウ素とされるだけでそれが高圧型であることまでは示されず、したがって、上記構成を具備しない点 【相違点2】当該製造法において、本願発明は、「(A)分散手段として、この芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる、撹拌式分散機、エジェクター式分散機、細管分散機よりなる分散手段を有する微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μmを越える準微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に準微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程」を具備するのに対して、引用発明では、超微粒子が含まれる気体流の中に、被覆されるべきBN粒子をキャリアガスに担持させた気相の分散体として圧入することによって導入するのであるから、本願発明でいうところの「準微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に準微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする工程」を実質上具備するといえるものの、その余の構成が示されず、したがって、上記構成全体を具備しない点 【相違点3】当該製造法において、本願発明は、「(B)この分散工程で分散させた芯粒子粉体の粒子を、被覆空間の被覆開始領域に、その平均粒子径が10μmを越え20μm以下のときには全粒子の重量に対する見かけの一次粒子状態の粒子の重量の割合である分散度βが80%以上、20μmを越え50μm以下のときには分散度βが90%以上、50μmを越え300μm以下のときには分散度βが95%以上、300μmを越え800μm以下のときは分散度βが97%以上、そして800μmを越えるときは分散度βが99%以上の分散状態で、被覆工程に直接放出し、被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させる被覆工程」を具備するのに対して、引用発明では、BN粒子を超微粒子を含む気体流中に分散体として導入して、両粒子を接触させ、BN粒子を超微粒子で被覆するものであるから、本願発明でいうところの「芯粒子粉体の粒子を被覆空間の被覆開始領域、及び、被覆工程に放出し、被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させる被覆工程」を実質上具備するといえるものの、その余の構成が示されず、したがって、上記構成全体を具備しない点 以下、上記相違点につき検討する。 【相違点1】について 窒化ホウ素粒子を被覆する分野においては、その窒化ホウ素粒子として、高圧型窒化硼素粒子を用いることは、周知ないしは公知の事項に過ぎない(必要があれば、引用例3及び13の記載を参照)。 そうであれば、引用発明において、その被覆されるべきBN粒子として、高圧型窒化硼素粒子を採択することに何等の困難も伴わない。 【相違点2】について 引用発明は、その前記(A-6)?(A-9)によれば、被覆される粒子の種類のかかわらず、いずれも、均一に、被覆した粒子を製造することを意図するものであるといえるものであり、引用発明において、上記相違点1についての箇所で記載したとおり、BN粒子として高圧型窒化硼素粒子を採択した場合においても同じく均一被覆を意図しているものであるということができる。そもそも、粒子を被覆する分野において、均一被覆を実現しようとすることは周知の課題に外ならない。 一方、この種の粒子は凝集して二次粒子を形成し易いことは周知の事項〔必要ならば、引用例4の前記(C-1)、引用例7の前記(D-1)、等を参照〕となっており、そして、粒子を被覆する場合には、その均一被覆を実現する等のために、被覆処理の前段階において、粒子に一次粒子の形態に分散する分散処理を施すことは本願出願前に周知ないしは公知の事項〔必要ならば、引用例11の前記(F-1)及び(F-2)、引用例12の前記(G-1)及び(G-2)、引用例8の前記(E-2)及び(E-3)、等を参照〕となっている。 そうであれば、引用発明で高圧型窒化硼素を採択した場合において、超微粒子で高圧型窒化硼素超微粒子を均一に被覆する等の観点から、上記の周知ないしは公知の教示に従い、その被覆処理の前段階において、凝集した又は凝集する虞のある高圧型窒化硼素粒子について一次粒子の形態に分散する分散処理を施こす分散工程を具備するようにすることは当業者であれば当然のこととして実施し得るものであり、そのようにしないことがむしろ不自然である。 そして、引用発明で高圧型窒化硼素を採択した場合において、キャリアガスにより分散体として存在する高圧型窒化硼素粒子、すなわち、気中に分散する高圧型窒化硼素粒子について、分散工程の分散処理を施すときに、周知・慣用の気中分散手段であるところの、撹拌式分散機、エジェクター式分散機及び細管分散機を採択し、それら分散機を組み合わせて高分散処理手段群とすることは当業者であれば困難なく適宜なし得ることに過ぎない。 この場合、分散処理に付する高圧型窒化硼素は、その粒径が0.1?100μmであって100μm近辺のものからなる態様を含むものであるから、その分散前(ないしは分散後)においては、その平均粒径は、通常、体積基準頻度分布で10μmを超える態様を含むものであり、また、気中に分散する高圧型窒化硼素粒子について上記分散処理を施こせば、高分散高圧型窒化硼素粒子・気体混合物となることは当然のことである。 以上のとおり、引用発明において、上記の周知ないしは公知の事項を適用することにより、更には、分散機を含む分散条件を適宜設定することにより、上記相違点2に係る構成を自ずと具備する至るものである。 【相違点3】について 上記相違点2についての箇所で記載したとおり、引用発明において、その被覆処理の前段階において、凝集した又は凝集する虞のある高圧型窒化硼素粒子について一次粒子の形態に分散する分散工程を具備するようにすることは当業者であれば当然のこととして実施し得るものである。 そのうえ、同じく上記相違点2についての箇所で記載したとおり、この種の粒子は凝集して二次粒子を形成し易いことは周知の事項となっている。 そうであれば、引用発明において分散工程を具備するようにしたときに、高圧型窒化硼素粒子の凝集を抑制し、ひいては高圧型窒化硼素粒子に対する均一被覆を実現する等の観点から、高圧型窒化硼素粒子が超微粒子と接触する空間(本願発明の被覆空間)のその接触開始領域(本願発明の被覆開始領域)に、かつ、被覆する工程(本願発明の被覆工程)に、分散工程後の高圧型窒化硼素粒子を、直接放出することは、当業者であれば当然のこととして実施し得るものであり、この場合、その分散工程が高圧型窒化硼素粒子を一次粒子の形態に分散するものであることから、分散工程で高圧型窒化硼素粒子を一次粒子分散状態(ないしは完全分散状態)に近似する又は同状態に相当するところの「全粒子の重量に対する見かけの一次粒子状態の粒子の重量の割合である分散度β99%」程度又はそれ以上に分散させて、その状態で被覆工程かつ被覆開始領域に放出することは当業者が困難なく適宜設定し得るものである。 以上のとおり、引用発明において、そこに上記の周知ないしは公知の事項を適用し、分散機を含む分散条件及び高圧型窒化硼素粒子の放出条件を適宜設定することにより、上記相違点3に係る構成を自ずと具備するに至るものである。 なお、引用発明において、上記相違点1?3に係る構成を具備するようにしたことにより、格別予想し難い効果を奏したものであるということができない。 したがって、本願請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物1?13に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 IV.まとめ 本願請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-01 |
結審通知日 | 2007-03-06 |
審決日 | 2007-03-23 |
出願番号 | 特願平5-219276 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 板谷 一弘 |
特許庁審判長 |
多喜 鉄雄 |
特許庁審判官 |
廣野 知子 板橋 一隆 |
発明の名称 | 被覆高圧型窒化硼素準微粒子、並びに被覆高圧型窒化硼素準微粒子焼結体及びその製造法 |
代理人 | 高木 千嘉 |
復代理人 | 西村 公佑 |
代理人 | 高木 千嘉 |
代理人 | 西村 公佑 |
復代理人 | 高木 千嘉 |
代理人 | 西村 公佑 |