ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B |
---|---|
管理番号 | 1157916 |
審判番号 | 不服2005-4071 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-03-09 |
確定日 | 2007-05-16 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第197841号「ビートダイ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年9月8日出願公開、特開平10-238233〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続きの経緯・本願発明 本願は、平成9年7月7日(国内優先権主張:平成8年12月27日)の出願であって、平成17年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 そして、その請求項1に係る発明は、出願当初の明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「軟質素材と硬質素材とからなるビートダイにおいて、前記硬質素材の線膨張係数が6.0×10-5/℃以下であることを特徴とするビートダイ。」(請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。) 【2】引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-135319号公報(以下、「引用例」という。)には、「チャンネルガスケット」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。 (イ)「【産業上の利用分野】本発明は,例えば建築物のサッシ窓に用いるチャンネルガスケットの構造に関する。」(段落【0001】) (ロ)「また、該チャンネルガスケットは,断面略コ字状の硬質樹脂製の本体部と,該本体部の開口縁に連設した軟質樹脂製の開口部材とよりなり,・・・」(段落【0010】) (ハ)「上記保持枠としては,例えばアルミニウム合金などの金属枠,或いはプラスチック枠がある。チャンネルガスケットの本体部を構成する硬質樹脂としては,ABS樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリプロピレンなどの合成樹脂がある。また,上記開口部材を構成する軟質樹脂としては,塩素化エチレンコポリマー,ポリ塩化ビニル,EVAなどの合成樹脂がある。」(段落【0015】) (ニ)「更に,本例のチャンネルガスケット1は,硬質樹脂製の本体部11と軟質樹脂製の開口部材12とよりなる。そのため,本体部11の剛性が高く,その開口縁111に設けた開口部材12はガラス部8を嵌合するに充分な大きさに開口している。それ故,ガラス部8に対するチャンネルガスケット1の組付作業が容易である。 また,本体部が硬質樹脂製であるため,組付後においてもチャンネルガスケット1は断面略コ字状の形状を維持し,開口部が拡大してしまうということもない。また,開口部材12は軟質樹脂であるため,上記上方リップ部14及び下方リップ部13は確実にガラス部8に圧接する。そのため,チャンネルガスケット1がガラス部8から脱落することがない。」(段落【0030】?【0031】) これら(イ)?(ニ)の事項及び図面(特に図1)の記載を参照すると、引用例には、以下の発明が記載されている。 「ABS樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリプロピレンなどの硬質樹脂製の本体部11と該本体部11の開口縁111に連設した塩素化エチレンコポリマー,ポリ塩化ビニル,EVAなどの軟質樹脂製の開口部材12とからなるチャンネルガスケット1。」(以下、「引用例記載の発明」という。) 【3】対比 本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「ABS樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリプロピレンなどの硬質樹脂製の本体部11」,「塩素化エチレンコポリマー,ポリ塩化ビニル,EVAなどの軟質樹脂製の開口部材12」,「チャンネルガスケット1」が、本願発明の「硬質素材」,「軟質素材」,「ビートダイ」にそれぞれ相当するから、両者は、 「軟質素材と硬質素材とからなるビートダイ。」の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点> 硬質素材について、本願発明では「硬質素材の線膨張係数が6.0×10-5/℃以下」であるのに対し、引用例記載の発明では硬質素材の線膨張係数がどの程度のものか定かでない点。 【4】判断 上記相違点について判断するにあたり、本願発明が、「硬質素材の線膨張係数が6.0×10-5/℃以下」としていることについて、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面に、以下のような事項が記載されている。 (あ)「【発明の属する技術分野】 本発明はサッシにガラスを固定するためのビートダイに関し、更に詳しくは、収縮しにくく、シール性及び外観に優れ、且つ施工時の作業性の良好なビートダイに関するものである。」(段落【0001】) (い)「従来、この種のビートダイとしては、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂製のものが用いられてきた。しかし乍ら、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂製のビートダイは収縮してシール効果を損ない(コーナー部の隙間発生)、断熱性能を低下させるとともに、著しく外観を損なうという問題がある。また巻物状の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂製のビートダイは、これを展開して所定のサイズに裁断して用いるが、その際、元の巻物形状に戻ろうとする変形癖をかしめ、接着等により固定して施工する必要があり、作業性が極めて悪いという問題を包含している。 かかる問題を解決せんとして、ビートダイの一部に硬質塩化ビニル系樹脂組成物を使用したものが実用化されている。しかし乍ら、このような硬質塩化ビニル系樹脂組成物を用いたビートダイにおいても、収縮、熱変形に起因する上記問題は十分に解決されているとは云い難い。」(段落【0003】?【0004】) (う)「【課題を解決するための手段】 ・・・ また、好ましい態様としては、硬質素材がポリ塩化ビニル系樹脂及び/又は塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂、又はこれらとABS樹脂及び/又はAS樹脂との混合物からなるビートダイである(請求項6)。 また、好ましい態様としては、請求項6記載の硬質素材100重量部に対し、ガラス繊維、マイカ、タルク、炭酸カルシウム及び木粉よりなる群から選ばれる少なくとも1種の充填剤5?50重量部配合した樹脂組成物からなるビートダイである(請求項7)。 ・・・」(段落【0006】) (え)「【実施の態様】 本発明における硬質素材としては、公知の熱可塑性樹脂が用いられるが、ポリ塩化ビニル系樹脂及び/又は塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂、又はこれらとABS樹脂及び/又はAS樹脂との混合物からなる樹脂組成物が好適である。・・・」(段落【0007】) (お)「本発明の硬質素材は線膨張係数は6.0×10-5/℃以下であることが必要であり、・・・線膨張係数が6.0×10-5/℃を越えると、アルミニウムの線膨張係数(2.31×10-5/℃ at0℃)よりも大きくなり過ぎ、本発明の収縮防止の目的が達成されなくなる。 上記線膨張係数を満足する硬質素材は特に限定されないが、硬質素材にガラス繊維、マイカ、タルク、炭酸カルシウム及び木粉等から選ばれる少なくとも1種の充填剤を配合した樹脂組成物を用いることが好ましい。」(段落【0013】) (か)段落【0027】の表1,段落【0028】の表2及び段落【0036】の表4の記載を参照すると、例えば、実施例1,2と比較例1とで、また、実施例5,6と比較例3とでは、ガラス繊維が配合されているか否かの差異しかなく、更に、実施例7?18と比較例4とでは、ガラス繊維,マイカ,タルク,炭酸カルシウムが配合されているか否かの差異しかないものであり、しかも、ガラス繊維等が配合されていない比較例1,3,4の線膨張係数が、何れも、「7.24×10-5/℃以上」であることが例示されている。 これら(あ)?(か)の事項及び図1の記載を参照すると、本願発明には、軟質素材と硬質素材とからなるビートダイであって、作業性を良好にするという目的達成のため、及び、断熱性能の低下や著しく外観を損なわないように収縮防止という目的達成のために、ポリ塩化ビニル等の樹脂にガラス繊維等を配合して、「硬質素材の線膨張係数が6.0×10-5/℃以下」としたものと解される。 一方、樹脂にガラス繊維を配合することによって、線膨張係数をガラス繊維無配合のものより低減化させ、変形等を防止することは、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-180299号公報,特開平2-214639号公報,特開平6-229172号公報等を参照。)であるところ、 本願発明の「硬質素材の線膨張係数が6.0×10-5/℃以下」であることについては、そのような値がどのように導き出されたのか、或いは、そのような値を境に格別に顕著な作用効果の差があるのか否かが、本願明細書の発明の詳細な説明を参酌しても、何れも定かでなく、 さらに、引用例記載の発明が、本体部11(硬質素材)の素材として、本願発明の実施例で挙げられているABS樹脂,ポリ塩化ビニルなどの硬質樹脂を採用していること等を考慮すると、 引用例記載の発明において、チャンネルガスケット1(ビートダイ)の形状維持を目的の一つとして、ABS樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリプロピレンなどの硬質樹脂を採用してなる本体部11(硬質素材)に、上記周知技術を採用して、作業性を良好にするという目的達成のため、及び、断熱性能の低下や著しく外観を損なわないように収縮防止という目的達成のために、硬質素材の最適な線膨張係数を推測し、本願発明の上記相違点に係る「硬質素材の線膨張係数が6.0×10-5/℃以下」との構成を想起することに、格別の技術的困難性があったとは認められない。 【5】むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明および周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-05 |
結審通知日 | 2007-03-13 |
審決日 | 2007-03-26 |
出願番号 | 特願平9-197841 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E06B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長島 和子 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
宮川 哲伸 西田 秀彦 |
発明の名称 | ビートダイ |
代理人 | 伊丹 健次 |
代理人 | 伊丹 健次 |