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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1158074
審判番号 不服2005-5583  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-31 
確定日 2007-05-21 
事件の表示 特願2002-122496「建材用昇温防止材」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月6日出願公開、特開2003-313972〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯・本願発明
本願は、平成14年4月24日の出願であって、平成17年2月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月31日に審判請求がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明は、平成16年10月18日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「金属製建材の中空部に充填する昇温防止材であって、重量比で水酸化アルミニウムを40%以上含有し、このほかにセラミックファイバー及び/又はセラミックウール、及びセメントを含有することを特徴とする建材用昇温防止材。」(以下、「本願発明」という。)


【2】引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平11-159031号公報(以下、「引用例1」という。)には、「建造物構造」に関して、以下の事項が記載されている。
(イ)「【発明が解決しようとする課題】・・・
すなわち、建造物の素材として、鉄や木材を用いた場合には、弾性、剛性を有しており、耐震性の点では優れているが、火災に弱く、耐火性の点で問題があった。また、鋼材を用いた場合には、不燃材である点では、耐火性に優れているが、鋼材は、火災時等の高温度環境下で急速に剛性を失うといった欠点があった。」(段落【0004】?【0005】)
(ロ)「壁構成板2は、厚さ約1?3mmのチタン合金又はアルミニウム或いは亜鉛引きスチール素材等の鋼板を左右幅方向へ向けて一定間隔で表裏に折曲して、上下方向に平行状態に伸延する凹溝6と凸条7とを形成している。
・・・2枚の壁構成板2,2の裏面間に柱状空間8を形成し、同柱状空間8には、・・・木質芯材9を配設し、更には、木質芯材9の周面と壁構成板2,2の裏面に形成された間隙に高温度環境下で・・・含有する水分を大量に放出する消火性物質10を充填している。」(段落【0033】?【0034】)
(ハ)「ここで、消火性物質10とは、・・・高温度環境下で含有する水分を大量に放出する物質であり、・・・水酸化アルミニウム、・・・、或いは、高吸水性樹脂類のいずれか一種又は二種以上の混合物がある。
すなわち、・・・水酸化アルミニウムは、200℃?350℃で分解して、結晶水を放出し、大量の熱を吸収する物質である。又、高吸水性樹脂類であるグラファイト化澱粉系樹脂やポリアクリル酸ソーダ系樹脂は、自体の200 ?1000倍の量の水を吸い込み、保水することのできる物質である。」(段落【0039】?【0040】)
(ニ)「これらの消火性物質10は、自らも消火性を有する物質である・・・、セメント、・・・によって結合固着している。
すなわち、・・・、セメント、・・・も、前記・・・水酸化アルミニウム等を固結する凝結剤として機能するとともに、自らも吸熱作用を有する水和結晶の消火性物質である。・・・」(段落【0041】?【0042】)
(ホ)「かかる消火性物質10は、平常時においては、断熱材、湿度調整材として機能し、火災時においては、遮熱材、吸熱材として延焼や類焼を防止する機能を有し、さらに、火災熱が高温度に至ると、自ら・・・水を放出して、火勢を弱め鎮火させる機能を有している。」(段落【0043】)
これら(イ)?(ホ)の記載事項および図面の記載を参照すると、引用例1には、以下の発明が記載されている。
「厚さ約1?3mmのチタン合金又はアルミニウム或いは亜鉛引きスチール素材等の鋼板からなる壁構成板2の柱状空間8に充填する消火性物質10であって、該消火性物質10は、高温度環境下で含有する水分を大量に放出する物質である水酸化アルミニウム、或いは、自体の200 ?1000倍の量の水を吸い込み保水することのできる物質である高吸水性樹脂類等とのいずれか一種又は二種以上の混合物であり、これらの消火性物質10を、前記水酸化アルミニウム等を固結する凝結剤として機能するとともに自らも吸熱作用を有する水和結晶の消火性物質であるセメントにより結合固結してなるようにした建造物用消火性物質。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)

同じく、特開平3-242357号公報(以下、「引用例2」という。)には、「膨脹性無機材料」に関して、2頁左上欄19行?同頁左下欄8行に、以下の事項が記載されている。
「すなわち、本発明は、無機繊維10?50重量%、無機固結材15?40重量%、・・・及び耐火材20?40重量%からなる湿式吹付材料において、ほう酸塩1?10重量%、加熱膨脹性無機材料1?10重量%が配合されてなる膨脹性無機材料である。
・・・
本発明の無機繊維としては、耐熱性を有するものであり、具体的には・・・、セラミックファイバー等が挙げられる。・・・
無機固結材としては、水硬性を有するものであればよく、具体的にはポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント等が挙げられる。・・・
・・・
耐火材としては、・・・、水酸化アルミニウム等が挙げられる。・・・」


【3】対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「厚さ約1?3mmのチタン合金又はアルミニウム或いは亜鉛引きスチール素材等の鋼板からなる壁構成板2」,「柱状空間8」,「消火性物質10」,「建造物用消火性物質」は、それぞれ、本願発明の「金属製建材」,「中空部」,「昇温防止材」,「建材用昇温防止材」に相当するから、両者は、
「金属製建材の中空部に充填する昇温防止材であって、水酸化アルミニウムを含有し、このほかにセメントを含有する建材用昇温防止材。」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
建材用昇温防止材の含有物について、本願発明では、水酸化アルミニウムのほかに、セラミックファイバー及び/又はセラミックウール、及びセメントを含有するのに対し、引用例1記載の発明では、水酸化アルミニウム及びセメントを含有するものの、このほかには、自体の200 ?1000倍の量の水を吸い込み保水することのできる物質である高吸水性樹脂類を含有する点。
<相違点2>
建材用昇温防止材における水酸化アルミニウムの含有量について、本願発明では、重量比で水酸化アルミニウムを40%以上含有しているのに対して、引用例1記載の発明では、それの含有量が定かでない点。


【4】判断
<相違点1について>
本願発明において、「セラミックファイバー及び/又はセラミックウール」を含有させる目的および作用効果は、本願の当初明細書に何ら記載されていないので定かでないが、請求人は、審判請求書において、「発生する水分が、一気に飛散せず、セラミックファイバー及び/又はセラミックウールによって形成される微細な空隙に保持される結果、冷却効果が持続し、効果的な冷却が行われるのである。また、セラミックファイバー及び/又はセラミックウールは、体積を増加させる増量材としての機能もあるので、水酸化アルミニウムの量を不必要に多くしなくてもすむ。」と主張している。
ところで、引用例1記載の発明における高吸水性樹脂類は、大量の水を吸い込み保水することのできる物質であり、これを含有させれば、特に明記はされていないが、体積を増加させる増量材としての機能をも果たすことは明らかであって、水酸化アルミニウムの量を不必要に多くしなくてもすむものと思料されるから、審判請求書で主張するような、「セラミックファイバー及び/又はセラミックウール」についての作用効果と同等の作用効果を奏するものといえる。
一方、引用例2には、金属製建材の耐火被覆材料に関するものではあるが、耐火材としての水酸化アルミニウムに、無機固結材としてのセメントと無機繊維としての耐熱性を有するセラミックファイバーとを含有させることが記載されており、該セラミックファイバーが本願発明の「セラミックファイバー及び/又はセラミックウール」と同等の作用効果を奏するものであることは容易に推認できる。
したがって、引用例1記載の発明における高吸水性樹脂類を含有させることに代えてセラミックファイバーを含有させて、上記相違点1に係る本願発明の構成を想到することは、当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことなくなしえたものと認められる。
<相違点2について>
水酸化アルミニウムの含有量を、「重量比で40%以上」とすることは、本願の当初明細書の段落【0013】に、「水酸化アルミニウムの含有量が少な過ぎると発生する水の量が少な過ぎて十分な効果が得られにくい。」と記載されているように、昇温防止材として好適な吸熱機能を実現するための含有量として適宜選択した程度のものと認められるから、上記のように、「重量比で40%以上」とすることは、適宜採用する程度の設計的事項にすぎないものと認められる。
また、仮に、そうでないとしても、水酸化アルミニウムの配合量を40重量%以上とすることは、例えば、特開平9-13533号公報,特開平6-80909号公報,特開平5-97498号公報に記載されているように、耐火材の技術分野において従来から周知の事項であるから、上記相違点2に係る本願発明の構成を想到することは、当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことなくなしえたものと認められる。


【5】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2記載の発明及び耐火材の技術分野における周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-13 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-02 
出願番号 特願2002-122496(P2002-122496)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 建材用昇温防止材  
代理人 菅原 弘志  

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